
「パリの調香師 しあわせの香りを探して」 グレゴリー マーニュ監督 仏 ✗✗
挫折して人との関わりもうまくできない調香師が、仕事も家庭も失いかけている運転手と出会い自分を取り戻していく物語です。
一流調香師アンヌ(エマニュエル ドゥボス)は4年前に仕事で挫折して以来、聴覚異常を経験し、今はほそぼそと地味な仕事をこなしていました。気難しいアンヌは運転手を雇っても嫌われますが、他に仕事がないギヨーム(グレゴリー モンテル)はアンヌに振り回されながらもなんとか誠実に仕事をし、それがアンヌにも伝わり指名されるようになります。お互いの私生活を知るうちに少しずつ関係も改善され、ギヨームの調香師としての才能も開かれていくのでした。
調香師という仕事自体がフランス的でその仕事の仕方も興味深いものがありました。常にたくさんの香りのサンプルを持ち歩いて嗅覚の訓練を怠らず、不愉快な香りがついているものを遮断し、自己研鑽していることにプロとして姿勢を伺えます。一方、主人公に足りない人間関係を豊かにする術を雇った運転手から助言され実行する姿も素直です。経済力や社会的立場が全く異なる二人が理解し合い協力する内容には共感を感じます。
ただ、大気汚染をしている公害企業の煙に近隣住民から苦情が出ないよう「自然な香りの香料」を混ぜてごまかすという仕事はいい仕事だとは思えません。
タバコ的には色々問題があります。冒頭で出会う前に喫煙していたギヨームに対し「○○のライト?」とギヨームからそのタバコを受取「バージニア種の○○」と香りから葉タバコの産地を当てます。その上で「仕事中は禁煙」と言ってそのタバコをゴミ箱に捨てます。そこまではいいのですが、その後ギヨームは日本ではあまり見ない煙(蒸気?)がモクモクでる新型タバコをパーティーの場などで喫煙しますがそのタバコに対してはなにも苦情を言わないのはなんだか変です。
ただ、アンヌがホテルに到着するとすぐにシーツなどを持参したものに交換しますが理由が「○○の匂いがついているから」という場面があり、これには強く共感します。安っぽい洗剤の香料は健康にも良くないですね。
日本でも柔軟剤や洗剤にムダで不健康な匂いをつけている調香師の皆さんも最高の香りは「無臭」もしくは「そのもの自身の匂い」だということを知ってほしいです。