無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

家庭の庭 <特別論評>

2012-05-03 | 2015以前の映画評

  
 物語は定年間近で市民農園が趣味のトムとジェリーの夫婦のもとに訪れてくる人々の人間模様を描いています。秀作の一つですが、イギリス中間層のタバコ事情という視点から見るとよりおもしろく勉強になります。
 ジェリーの同僚のメアリーは自己防衛からかいつも自分のことをしゃべっています。禁煙中と言いながらタバコが離せません。ワインをがぶ飲みするし自由になりたくて手に入れた車ですが、逆に振り回されてしまいます。
 トムの古い友人のケンは見るからにメタボ体型でやはりタバコとビールが手放せません。人生を嘆いてばかりいます。
 トムの兄ロニーは長いこと患っていた妻を亡くしたばかりで、一人息子は家に寄りつきません。葬式に遅れてきた息子は「父さんが母さんを大事にしなかったからだ。」となじりますが、室内で平気で喫煙するロニーの悪習を指しているのかと、と推測されます。
トムとジェリーの庭に友人たちが集まった席で、ケンとメアリーがタバコを吸い始めるとみんな離れていき、二人だけでコソコソと喫煙する姿は滑稽というよりも哀れです。
また、トムとジェリーが留守の時にメアリーとロニーがタバコを吸おうとします。ロニーは「外で吸わないと」と言い、メアリーは「二人しかいないからだいじょうぶよ。」と言います。しかし、次の場面で二人は玄関の外で寒さに震えながら喫煙しています。この間にどんな会話があったのでしょう。
ラストは息子の恋人を囲んでのトムとジェリー一家の幸せな食事のテーブルに座る場違いなメアリーのアップが続きます。表情は微妙に変化します。この解釈はこの作品を観ている観客に委ねられます。私はメアリーにこう声をかけたい。「まだまだ人生はこれから。とりあえず、念願だった禁煙をして新しい自分と出会ってみませんか。」


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« しあわせのパン <特別論評> | トップ | ル・アーヴルの靴みがき »
最新の画像もっと見る

2015以前の映画評」カテゴリの最新記事