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しあわせのパン <特別論評>

2012-05-01 | 2015以前の映画評


 仕事には好きだからする仕事と、辛くていやだけれどお金のためにしなければならない仕事があるといいます。一般的にはほとんどの人が生活のために急ぎ足で競争しながら仕事を続けています。でも、この映画に登場する人々のように、好きな野菜を育てたり、ガラスを焼いたり、自分が納得できる仕事をして一日一日を心豊かに過ごすこともできるのです。 
 広々とした野原の中にパンカフェ「マーニ」はあります。りえさんという心に何か深い哀しみを持った人とそんなりえさんにそっと寄り添っている水島君という夫婦が営んでいます。
 常連さんは、何が入っているのか誰も知らない秘密のカバンを持った男の人、地獄耳のガラス職人の女の人、そして、「りえさん、きれいですね。」が口癖の郵便屋さんです。物語を解説してくれるのは羊のゾーヴァです。
 美しい湖が見える「マーニ」には季節ごとに、あれやこれやの悩みを持った老若男女が訪れます。そんなお客様にふたりはさりげなくそっと心をこめて接します。焼きたてのパンと季節の食材を使って丁寧に調理された料理、挽きたてのコーヒーでお客様は生きる力をもらいます。そして、哀しみを抱えたりえさん自身も救われていくのでした。
 北海道の四季の自然の美しさに加え、場面にあった主張しすぎない音楽、時々入る羊の「メエ」という効果的な鳴き声、丁寧な言葉使い、やさしいしぐさ、食べることを大切にする姿を通して観客も豊かな気持ちになります。出演者全員がそれぞれの持ち味を発揮しています。特に主演の原田知世は久々に彼女にしかできない役どころを魅力的に演じていました。
 毎日時間に追われ、詰め込むように食事をし、あくせく働いている人にひと時の安らぎを与えてくれる「しあわせの映画」です。

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