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無煙映画を探せ  

映画のタバコシーンをチェック。FCTC(タバコ規制枠組条約)の遵守を求め、映画界のよりよい発展を願うものです。

散歩する侵略者

2017-09-15 | 2017日本語映画評


「散歩する侵略者」 黒沢清監督 ◯ ☆☆

 Jホラーの黒沢監督が劇団イキウメの戯曲を映画化しました。SFに初挑戦です。
 のどかな金魚すくいの場面から一転して残忍な殺人事件の場面となり血まみれのセーラー服の少女が徘徊し「おお、黒沢だ!」と映画に引き込まれます。
 一方、行方不明だった夫しんちゃん(松田龍平)は妻鳴海(長沢まさみ)のもとに戻りましたがぼうっとして医者に見せても原因がよくわからず、自宅療養をすることになりました。時々「散歩してくる」とどこかへ行ってしまいそのたびに鳴海はイライラさせられます。
 また、殺人事件の現場を取材に来たジャーナリスト桜井(長谷川博己)は宇宙人の天野(高杉真宙)と出会い二人は行動をともにすることになります。宇宙人たちは出会う人間たちから人間を理解するために「概念」を吸収していきます。「仕事」「家族」「競争」などの概念を失った人間たちの異常行動が目立つようになり、いよいよ国家権力が3人とその「ガイド」になっている鳴海や桜井に近づいてくるのでした。
 ホラーの黒沢らしい場面もあり、従来のファンにも納得できるSFです。信じがたい「宇宙人」の存在を次第に受け止めていくようになる過程がちょっとした表情の変化などそれぞれの俳優の名演で丁寧に描かれ観客も共感していきます。単なる「宇宙人の侵略物」に終わらず、人間にとって大切なもの、国家権力の横暴さ、セクハラ、パワハラまで織り交ぜ現代社会への風刺とも警告とも、そして新たな社会への提案ともなっています。筆者にとって今年度ベストスリーには確実に入る作品です。(☆☆)
 タバコは、なし。無煙です。
 


三度目の殺人

2017-09-14 | 2017日本語映画評


「三度目の殺人」 是枝裕和監督 △ 

 是枝監督自身の原作、脚本で現代社会の「理不尽」を裁きました。さて、真に裁かれたのは?
 優秀で勝ちにこだわる弁護士の重盛(福山雅治)は同僚からある殺人事件の犯人の弁護を任されます。雇用主である社長を殺した罪に問われている三隅(役所広司)と接見をしますが、そのたびに供述が変わり重盛は翻弄され始めます。一方、週刊誌には社長の妻(斉藤由貴)に頼まれたと書かれたり、被害者の娘(広瀬すず)の衝撃の告白があったりします。その上、30年前に三隅が起こした殺人事件をさばいた重盛の父親(橋爪功)からは「あの時死刑にしておけば・・・」など言われ混乱させられます。果たして本当に三隅が殺したのか、真実はどこにあるのでしょうか。
 司法を批判した裁判物というと「それでもボクはやってない」がありますが、それ以上の緊迫感と複雑性で日本の司法世界を裁きました。影の主役は「なあなあの裁判」を勧めた裁判長とセリフが一つもなかった検事です。
 「生まれてこなかった方がよかった」人は本当にいるのでしょうか。観客に問いかけます。
 登場時間は短いものの斉藤由貴や検事役の市川実日子が印象的でした。
 ヴェネツィアで授賞を逃した理由はテーマの「日本の司法」が海外の人には理解できなかったのではないかということと、やはり「死刑制度」が存在することに抵抗があったのではないかと想像したりしています。
 タバコは、同僚役の本田博太郎が電子タバコを事務所の窓のところで吸いました。また、三隅が勤務していた食品工場の喫煙所で喫煙している人が何となく映りました。このあたりも賞を逃した原因としてタバコを出すのは海外の常識ではありえなくなっているのではないかとも危惧しています。
 人間性のマイナスの表現のひとつにかつてはタバコが利用されましたが、この作品では重盛がコーヒーに砂糖をいくつも入れることとか、ゼリーで食事に変えているとかの方法を取っていました。


トリガール!

2017-09-07 | 2017日本語映画評


「トリガール!」 英勉監督 ◯ ☆ 無煙映画賞候補作

 中村航原作の「鳥人間」コンテストに青春をかける大学生の姿を英勉監督が実写映画化しました。
 一浪して建築を学ぶために入学したまわりは男子ばかりの大学で鳥山ゆきな(土屋太鳳)は声をかけられた和美(池田エライザ)とともに高橋圭(高杉真宙)にスカウトされて「人力飛行サークル」に入部します。自転車をこぐ動力で飛行するという競技でゆきなはパイロット候補となりトレーニングが始まります。一方、昨年の大会で大きなミスをしてからサークルに来なくなっていた坂場先輩(間宮祥太朗)を圭を通して知ります。アクシデントがきっかけとなり坂場とゆきながコンビを組むことになるのでした。はたして無事琵琶湖の上を飛ぶことができるのでしょうか。
 主役の土屋太鳳がかつてないのびやかな演技を見せています。ダンスで鍛えたしなやかな肉体にコメディの間のとり方の絶妙さが加わり笑わせてくれます。青春映画というと恋の駆け引きばかり中心になりますが、この作品ではそのあたりはサラリと流し、一つのことに打ち込む姿をさわやかに描きました。また、コンテストそのものも大変新鮮でロボコンとはちがうおもしろさを知りました。いろいろなことに一生懸命になっている人がいることを改めて認識させてもらいました。(☆)ただ、ナダルのセリフが独特の抑揚がありすぎる話し方で聞き取りにくかったのが残念です。
 タバコは、なし。無煙です。


関ヶ原

2017-08-30 | 2017日本語映画評


「関ヶ原」 原田眞人監督 ◯

 司馬遼太郎原作の時代小説を映画化しました。あの関ヶ原の戦いの前後数日を中心に描いています。
 豊臣方の石田三成(岡田准一)は秀吉亡き後、権力の乗っ取りを企てている徳川家康(役所広司)に対抗し、豊臣家を守るため各大名を説得するものの策略では一枚上手の家康側に大名たちは集まっていくのでした。軍師島左近(平岳大)や忍びの初芽(有村架純)とともに奮闘するのですが・・・。
 セリフが早口な上に方言が入り乱れ聞き取りにくいという致命的な欠陥があります。観客はストーリーを知っているという前提のもとに書かれた脚本のせいか、戦国史に興味がない筆者には成り行きがほとんど理解できませんでした。
 「乱」とかせめて「天と地と」くらいは期待したのですが、ちょっとがっかりです。戦闘シーンもどちらが味方なのか敵なのかわかりにくかったです。三成はやっぱり小さいやつでしかなかったし、小早川はやっぱり裏切り者でしかなかったのではないでしょうか。もっとも時代劇を撮らないと日本映画界が衰退してしまうのでそういう意味では、監督の心意気は応援したいのですが。
 タバコは、なし。無煙です。


打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

2017-08-27 | 2017日本語映画評


「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」 武内宣之監督 ◯

 岩井俊二原作でテレビドラマ化された作品を大根仁脚本でアニメーション映画としました。
 海辺の町の中学生たちは夏休みを前にウキウキしています。プール掃除の当番中典道(声 菅田将暉)と祐介(声 宮野真守)はクラスのアイドルなずな(声 広瀬すず)とかけをし、競争をします。ところでなずなは母親の再婚のため引っ越すことが決まっていました。一方「花火を横から見るとどんな形にみえるのか、丸いのか平らなのか男の子たちの意見は分かれ茂下(もしも)神社のお祭りで打ち上げられる花火を灯台から見て証明しようと決まります。
 神社のお祭になずなといっしょに行くのは祐介だったのですが・・・。
 なずなが海辺で拾った不思議なガラス玉の効果で、同じ時を違う世界で迎えることができるのですが変わらないことがひとつあるのでした。
 「もしも・・・」という過去を何度も体験しているのにそれを知っているのが一人だけという不思議な世界を描いています。「わからないこと」はあってもいいのですが、多くの筆者の周囲の観客たちは「わけわかんない」という感想で不消化に終わったようです。
 タイトルの面白さは今年一番ではないでしょうか。タイトルに惹かれて見に来ている観客も多かったのではないでしょうか。
 タバコは、なし。無煙です。
 

君の膵臓を食べたい

2017-08-27 | 2017日本語映画評


「君の膵臓を食べたい」 月川翔監督 ◯

 住野よる原作の青春小説を実写映画化しました。タイトルとストーリーのギャップが話題となっています。
 高校生の桜良(浜辺美波)は膵臓の病気で余命が短いのですがそれを隠して健気に高校生活をおくっていました。たまたま、それを知ったクラスで一番目立たない僕(北村匠海)は桜良と「なかよし」の関係になります。生きている間にしたいことを次々ふたりは経験していきますが、親友の恭子(大友花恋)は反発します。
 そして、数年後教師として高校に戻った僕(小栗旬)は解体される図書館の片付けを任されそれがきっかけである大切な手紙を発見するのでした。
 気味の悪いタイトルから敬遠する人がいるとしたら大変残念です。タイトルの本当の意味は全く別の深い意味があるのですが・・・。生きていることを大切にしたくなるドラマになりました。
 タバコは、なし。無煙です。


彼女の人生は間違いじゃない

2017-07-26 | 2017日本語映画評


「彼女の人生は間違いじゃない」 R15+ 廣木隆一監督 ☓ ☆

 原発事故が原因で仮設住宅に暮らし、妻を津波で亡くした父親と娘がさまざまな問題を抱えながらもなんとか生きていこうとする姿を描きました。福島出身の監督が書いた小説が原作です。
 父親の修(光石研)は朝起きるとすぐにタバコに火を付け、夜は酒が手放せず、昼間はパチンコ通いという荒れた生活を送っています。娘のみゆき(瀧内公美)は父親を咎めます。しかし、彼女自身も平日は市役所に務め、週末は「英会話教室に通う。」と嘘をついて渋谷でデリヘル嬢をしていました。働きたくても農業しか経験がない父親や海に出られない漁師はパチンコ屋でうさを晴らすしかありません。仮設には夫が原発作業員のため辛い思いをしている妻もいます。
 それでも人々は小さなことに希望を見出して生きていこうとするのでした。
 東京へ向かう高速バスの車窓から見える延々と続く送電線が田舎から都会の快適な生活のためにエネルギーを送り届けているのと同じように、バスに乗って田舎から都会へデリヘルという快楽を提供しに行く主人公の姿が重なります。私たちは地方を犠牲にして、もしくは踏み台にして繁栄を築いていたのでしょうか。光石研、高良健吾、柄本時生らの名演技と地味な脇役の面々もそれぞれ名演怪演しています。心にヒリヒリと突き刺さるような場面やセリフで私たちにいやおう無く深い内省を促される作品です。(☆)残念なのはR指定されていることです。
 タバコは、冒頭で光石研が1回喫煙します。(☓)酒タバコギャンブル3大依存症というキャラクター設定だと思います。イメージとしてはかなりマイナスイメージでした。
 無煙映画賞は無理ですが、一般の映画賞の候補には必ず入る秀作です。


メアリと魔女の花

2017-07-12 | 2017日本語映画評


「メアリと魔女の花」 米林宏昌監督 ◯

 米林宏昌監督がスタジオジブリを退社後独立し、イギリスのメアリー スチュワート原作の児童文学をアニメにしました。
 赤毛が気に入らない少女メアリは大叔母の元へ越してきました。そして、森の中で見たこともない花を見つけます。それは「夜間飛行」という珍しい花でした。美しい花でしたがその花にはある秘密が隠されていたのです。そして彼女はある霧が深い夕暮れ、大叔母や近所のピーターが止めるのも聞かず黒猫に導かれるままこっそり森深く入ってしまいます。そこではメアリは花のお陰で優秀な魔女として魔法大学の校長やドクターに歓迎されるのでした。しかし、実はその大学では魔法を使ってとんでもない実験をしていたのでした。
 いきなり冒頭部分でハラハラドキドキさせる展開が大変うまい演出です。主人公は少女ですが大人でも十分共感できる内容となっています。「この世界の片隅に」効果で「アニメは子どものもの」という呪縛がすっかり取り払われた感があります。特にこの作品では「制御できないものを持つことの恐ろしさ」(現在社会では例えば原発とか、大量破壊兵器とかでしょうか)がテーマになっています。特にある場面である物が溶け出していくさまはまるでメルトダウンを見ているようでした。こういうシーンはアニメだからこそできる映像でしょう。
 精神的に成長したメアリが気に入らなかった赤毛を受け入れるラストがいいです。
 タバコは、なし。無煙です。
 


忍びの国

2017-07-05 | 2017日本語映画評


「忍びの国」 中村義洋監督 ◯

 侍対忍者の「天正伊賀の乱」を題材にした和田竜原作の小説を映画化しました。
 織田信長が勢力を拡大していた時代伊賀国だけは織田に屈していませんでした。とうとう隣国の伊勢を信長の息子(知念侑李)が支配し、いよいよ伊賀へと矛先を向けようとしていました。一方伊賀では伊賀者同士の小競り合いで無門(大野智)によって弟を見殺しにした父親に歯向かって平兵衛(鈴木亮平)は織田軍に伊賀を攻めるよう説得し織田軍として伊賀と対峙します。
 実際に大軍が押し寄せると伊賀では「金にならない仕事はしない」と無門を筆頭にみんな逃げてしまうのでした。
 伊賀一の忍者である無門ですが一目惚れしてさらってきた愛妻お国(石原さとみ)には頭が上がらないやりとりが現代的で楽しいです。
 それに対して、台詞がある女優がお国を含め数人しかいなかったのがちょっと残念です。
 タバコは、なし。無煙です。口にキセルのようなものを咥えていましたが実は忍者の◯◯でした。


兄に愛されすぎて困っています

2017-07-04 | 2017日本語映画評


「兄に愛されすぎて困っています」 河合勇人監督 ◯

 夜神里奈原作の少女コミックの実写映画版ラブコメディです。
 女子高生の橘せとか(土屋太鳳)は今まで10人以上に振られ続けていましたが、最近は急に「モテキ」となり近所に住む初恋の高嶺(千葉雄大)や今まで相手にしてくれなかったイケメンたちが急にせとかに接近してくるのでした。子どもの頃からずっと見守ってきた兄のはるか(片寄涼太)は気が気ではありません。せとかとはるかは兄妹として育てられましたが実はせとかは養子だったのです。二人の関係はどうなるのでしょうか。
 少女コミックの世界ですからドロドロしたものは何もなく、近親相姦の危うさや本当の親は誰なのかといった一般的な諸問題は完全にスルーしています。同じ状況で全く違う暗く陰湿なドラマも可能でそちらのほうがきっと現実的かもしれませんが、「少女コミックの世界」ですからまあ良しとしますか。
 せっかくエグザイルのメンバーを起用するならちょっとでもいいからダンスシーンを入れてほしかったです。土屋太鳳とのダンス名場面をいれてほしかったです。
 タバコは、なし。無煙です。