Winning Ticket for All Vol.2

レース展望と回顧、馬券術について

宮田式馬券術のエッセンス④

2023-06-08 | 馬券作戦

[第90回日本ダービーを制したタスティエーラ(撮影・郡司修) 2023年05月19日 スポニチ競馬Webより]

【日本ダービー1週前追い】タスティエーラの強烈ラスト1F!目を引く伸び脚 | 競馬ニュース - netkeiba.com

 部屋の整理をしていてたまたま見つけた古本ですが、宮田比呂志さんの著書『「数運」をつかむ技術』(講談社 2008)から、その馬券術を学ぶシリーズです。ここ2回は宮田さんの軸馬選びのポイントを引用させてもらっていますが、先週までの【タイム】(持ち時計)、【バイオリズム】に続いて、今日は【変化】です。

変化が見える馬に注目 ――

 ……【バイオリズム】と同じ比重で調教……(がありますが)、大事なのは出走各馬の横並びの比較ではなく、一頭一頭の個々の縦の比較を見ていくことです。

 調教は文字通り、そのレースで力を発揮するためのトレーニングですわ。だから、こっちの馬のほうが調教時計がいいからといって、レースでもその通りになるわけではありません。中には調教とレースの違いを知っている頭の良い馬もいて、調教では力を抜くものもいるという話を聞いたことがあります。ましてや、現在では坂路コース、ウッドチップコースなどトレーニングコースも多彩で、横並びの比較すらできにくくなっています。

 したがって、各馬の縦の比較をして調子の良し悪しを判断するんですが、厩舎スタッフのコメントは読み流すぐらいにしてください。預かっているカワイイ馬のことを悪く言う人はいませんわ。幼稚園児のパパ、ママとおんなじだと思いますよ。

 それよりも調教の変化には注意するべきですわ。これまでの追い切りを坂路に変更したり、強めに追っていたのを軽めにしたり、本馬場に入れたりなど、これまでとトレーニングのやり方を変えてきた場合は、当然何らかの意図があってのことです。変更が今回のレースにかける意欲の表れなのか、体調の変化によるものなのか、単なる馬のストレス解消のためか、外部の私たちにはわかりませんが、こうした変化が見える馬は、えてして好走することが多いようです。……

 この「変化」というのは見逃すことのできない馬券ポイントです。この点を少し説明しておきましょう。

 みなさんが調教師になったと思って考えてください。おわかりのようにサラブレッドを馬主から預託されて管理トレーニングするのが調教師の仕事ですわ。そして、レースで走らせて良い結果が得られれば、それだけ収入が増えるし、預けようとする馬主も多くなりますな。調教師にとって競馬はビジネスでもあるのだから、力はあるのに成績はぱっとしない馬を預かっていたとしたら、みなさんだっていろいろ考えをめぐらすでしょう。

 ですから、腕の良い調教師ほど研究や工夫をおろそかにしません。少しでも好着順を得ようと努力しますわ。時には血統を無視したような距離のレースを使ってきたりすることがありますが、やけでやっているわけではないんですな。そこで我慢を覚えさせたり、スタミナをつけたりして、その次のレースに活かす狙いが隠されているんですわ。

 よく「障害帰りは買い」なんて言うでしょ、障害レースでスタミナと我慢を身につけてきた馬が平場のレースで好走するのはよくあることです。

 目につく「変化」を挙げてみましょう。

 ①調教方法。これはもう説明しました。

 ②騎手。若手騎手からベテラン騎手へ乗り替わることがしばしばあります。武豊、安藤勝、岩田、横山典騎手などへ乗り替わると人気になってしまい、そう旨味はありませんが、3着に突っ込んでくることも多いのでマークしておく必要がありますわ。……クラシックレースを控えた2歳馬の場合、ベテラン騎手への乗り替わりはとくに注意が必要ですわ。距離適性を測ったり、馬の個性を把握するため乗り役の意見を汲み取るなど、先を睨んだ意気込みの表れと見るべきです。

 ③初ブリンカー。臆病な馬は馬込みに入ると萎縮してしまい、能力を発揮できなくなることがあります。こうした他の馬を気にする馬に装着するのが、視界をさえぎって他馬を見えなくするブリンカーです。以前は遮眼革と言われていました。馬の心理面を考えた道具で、これまでつけていなかった馬が、はじめてブリンカーをつけてきたときは注意が必要です。とくに先行馬の場合は、それまでとは一変した粘りを発揮するんですわ。……

 ④距離。1600や1800メートルの中距離レースばかり使っていた馬が1400や1200のレースに出てきたときは要注意です。これは【タイム】のところでも例を挙げてますから詳細は省きますが、距離短縮馬は赤丸マークしてください。逆に、距離延長で好走する例は少ないようですが、時折、夏のローカルで穴をあけることがあります。

 ⑤芝→ダート、ダート→芝。調教師は、この馬は芝が向いている、ダートが向いていると適性を見極めてレースを選んできます。したがって「芝馬」「ダート馬」といわれるんですが、にもかかわらず、時にその路線を変更する場合があります。芝馬をダートで使ったり、ダート馬が芝へ出てきたり……。こうした際はそのレースと次のレースをチェックしなければいけません。変更したレースに勝負がかかっている場合と、ひと叩きした次のレースに勝負がかかっている場合があるからですわ。例を挙げておきましょう。

 07年12月9日、阪神11レース・ダート1400のギャラクシーS。勝ったのはダート初めてのマイネルスケルツィでした。それまで芝の1400、1600を中心に使われていたんですが、ダートレースに変更してひさしぶりに勝利を挙げてます。単勝590円、馬単4830円、3連単45万3720円でしたわ。

 07年12月23日、阪神12レース・芝1600のファイナルSは馬単1万1150円、3連単14万700円でしたが、2着となった11番人気のマイネルフォーグの場合、前走で初めてのダートを走り12着。そして、芝のここに駒を進めて好走というケースです。スタミナをつける、太かった体をしぼる、目先を変えてヤル気を出させる……前走のダート選択の意図は推測するほかありませんが、こちらのケースでは前走の成績が悪いので高配当になることが多いですな。

 出馬表から読み取れる「変化」は、レースに出す側の意欲の表れですから、それを見つけ出すことは相手馬選びに有効ですわ。ここに挙げた5項目に限らず、「変化」のリストを作っておくのもいいと思いますよ。……

(宮田比呂志『「数運」をつかむ技術』 99-104頁)

<続>

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