Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

文系より理系がオススメな理由

2010-08-26 11:54:00 | その他
昔どこかで書いた気もするが、ちょうどこんなニュースもあったことだし、久しぶりに
書いておこう。少なくとも今から進学するなら、理系がおススメだという話。

この手の話をする前には、まず対象を明確化しておく必要がある。
職種で見るのか、出身学部か。20代から50代まで全世代を対象とするのか。
官僚や弁護士というキャリアパスのある大学か、ごく普通の大学か。
というわけで、職種ではなく出身学部で、2,30代の若手を対象とし、東大まではいかない
けどそこそこ良い総合大学をイメージして話を進める。

この手の調査や賃金統計は賃金カーブの低下を反映しておらず
(具体的に言うとやたら50代が高く、今の若いもんは絶対そこまで到達しない)今の2,30代
には当てはまらないことが多いのだが、実際の現場感覚からすると、本調査の通り明らかに
理系の方が高い。
一般的にいって、労働市場における人材価値が理系の方が高いからだ。

まず、採用段階で差が出る。
日本でグローバル企業といえば、まず製造業だ。もちろん、日本型雇用で言うと二階建て
部分、つまり文字通りの終身雇用と年功序列が保証されている(後者はかなり怪しくなったが)。
こういった企業には、圧倒的に理系の方が入りやすい。
僕の経験でいえば、2000年前後の氷河期の底で、早慶とか東大の文系学生が内定貰えずに
四苦八苦している横で、あまり聞いたことのない地方大学の理系修士が二日で内定貰っていた
のが印象に残っている。

また、こういった企業が不況になって採用数を減らす場合、
まず営業や管理部門等の事務部門 から減らす。

最近だとNTTが2000年から3年ほど新規採用を凍結していたが、研究職を例外
としていたことが記憶に新しい。
これは、日本型雇用の柱である長期雇用による人材育成が、理系技術職では今でも機能して
いると(少なくとも会社サイドは)信じているためで、不況時に抑制した分を好況時に
多めに採ってもその間のOJT期間分の人的資本の蓄積が無駄になるという考えからだ。
少なくとも事務系は中途や第二新卒で後からいくらでも補充できるのは事実なので、この選択
はある程度合理的だと思われる。

というわけで、日本型雇用のバリバリの二階建て部分である大手製造業に常に安定して椅子が
用意されているという点で、理系の方が有利である。

さらに言うと、多くの場合、リストラの際も企業は同じスタンスをとるので
技術系の方が サバイバルできる可能性は高い。

経営上の都合で特定の事業丸ごとリストラなんてこともあるにはあるが、そういう場合でも
たいてい技術者は再就職しているものだ。
(ちなみに、一番悲惨なのはコスト部門かつガラパゴス化している可能性の高い事務系)

ちなみに、「選択肢が多い」という意味でも理系の方が上だ。
たとえば新卒段階でもそうで、理系出身の事務部門や営業部門志願者は毎年一定数いて内定者
もいるが、逆はありえない。転職時も「技術系のキャリアを活かしつつ営業やコンサル」と
いうのは認められる、というか大歓迎されるが、逆はない。
これも長期的には平均年収をキープする要因になるはずだ。

というわけで、手に技術の付く理系の方が就職を考えるとおススメである。
なんてことは、恐らく実社会で働くパパ達はよくわかっているらしいけれども。

ついでに、有名な「文系の方が生涯賃金5000万円高かった」説だが、あれは90年代に、ある
大学のOBを調査したもので、全世代からの回答を積み上げて生涯賃金を試算している。
「文系50代の平均が1600万超」という数字を見れば、この国立大学がどこで、OBがどういう
業種に就いているのかはだいたい想像がつく。恐らく大学は東大、メジャーな就職先は都銀だろう。
よって、この調査結果を引用するのであれば、正確には「昔の都銀マンはメーカーより給料
が高かった」もしくは「昔の東大出身者は文系の方が理系より稼げた」というべきだ。※

普通の人にはあまり関係ないし、そもそもメガバンクの給料は3割くらい下がって普通の会社
になっているので、今はそこまでの格差は無い。

ちなみに、大手の技術職採用、特に学校推薦制では成績をわりとしっかり見られることが
多いので、単に理系に進学するだけでなくしっかり勉強しないとダメなのは言うまでも無い。


※松繁教授自身「金融業と製造業の賃金格差」という構図を明言しており、引用者が理系と
 文系の賃金格差に持っていくのはややミスリーディング。