Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

たまに遊びに来るくらいがちょうどいい国、日本

2010-08-19 13:08:37 | その他
先日、香港の金融機関で働く友人と久々に食事した時のこと。

彼は元々は東京勤務で、経済系メディアに何度か露出したこともあるやり手だが、リーマン
危機後に海を渡った。海外まで出稼ぎに行かなきゃならないのも大変だな、と勝手に同情
していたのだが、話を聞くと全然逆で、今が一番充実しているそうだ。
「そりゃそうだよ、所得税が17%のフラット税制なんだから」

社会保障の差も大きい。香港には世界中からエリートが集まるが、彼らは若く自由な香港で
働くことにより「老人による若者の搾取」という先進国共通の現象を回避している。
そして、第一線を引くと同時に帰国して、母国の社会保障の受け手に回るわけである。
ちなみに、世界中からやってきてガンガン稼いでくれて、将来の社会保障の世話を焼かず
ともよい彼らは、香港にとっても上客らしい。

これが日本の30代サラリーマンだと、30%程度の所得税を負担しつつ、約15%の年金保険料
も払うために汗水垂らして働いているわけだ。しかも30年後に受け取る社会保障給付は、
今の高齢者より年金だけでも4000万円以上も少ないことがほぼ確定している。
(その少ない給付にしても、その時の現役世代に「ほぼ1人で1人の高齢者を支えること」に
同意していただかないといけないのだが…)

こりゃ法人税少々下げたところで焼け石に水だろう。
彼自身、現役の間は帰国する気はないそうだ。そりゃそうだろう。将来破綻確実なネズミ講
だとわかっていて最後に飛び込むバカはいない。悪いのは膨大な世代間格差や破綻確実な
社会保障を放置している国の方だ。
しかも、フラット税制という世界的潮流に逆行して民主党は累進課税の強化なんて言い出し
ている。働く場としての日本の競争力は、今後も期待できそうにない。

というわけで日本国の先行きはとてもよろしくないのだが、外から見て気付いた日本の魅力
もあるという。
「日本というのは。それ自体がブランドなんだよね」
同じサバでも築地からい入れたサバには倍の値がつく。
同じものは自国で売っているのに、わざわざ銀座に行ってショッピングする。
中国製の商品を銀座で中国人観光客に買わせているユニクロなんて、大したものだと思う。
彼らはみな、日本というブランドに対してお金を払ってくれているわけだ。

そう考えると、日本を働く場として充実させることよりも、金を使って
もらう場として 充実させた方が効果的なのではないか。

もちろん前者も必要だが、正直いって、日本で多様な労働環境やフラットな税制や英語環境
などが10年くらいで整備できるとはとても思えない。
いや、仮に小泉政権以上の改革力を備えた政権が誕生して力技でやったとしても、香港や
シンガポールと違って国土の細長い日本の場合、インフラ整備にそこそこのコストがかかって
しまい、租税競争では絶対に太刀打ちできない。
しかも、過去の世代が垂れ流した膨大な借金も返済しないといけないから、その意味でも
手足は縛られてしまっている。
なので、まあそっちはそっちで頑張りつつ、ビザ緩和やFTAなどで金を使っていただく環境
を整備するというわけだ。

考えてみれば、日本には他にも他国にはない魅力がいくつもある。
独裁もいないし38度線もない。共産党はあるけどちっこくて無害だ。土地買って後から政府
に取り上げられたりすることもない。
ミシュランに絶賛されるくらい飯は美味いし、空気も水も綺麗だ。
成長戦略というとどうしても輸出産業を想像してしまいがちだが、家電や自動車だけでなく
そういったサービスの付加価値を見直すべき時期に来ているのではないか。

最近は銀座に行くと、目を輝かせた中国人でにぎわっている。そこだけ高度成長期の匂いが
するのは、気のせいか。