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東日本のヒトのための奈良市観光案内⑥

2024-08-14 22:55:07 | 日記

東日本のヒトのための奈良市観光案内⑥

 興福寺は門がないのと東大寺にはあった仲見世がないのが特徴である。多分昔は門があったはずだが、焼き討ちされた後境内が狭められた後門の再建がかなわなかったのではないか。仲見世がないのは観光寺ではなかった何よりの証であろう。

多分正式の入り口は、猿沢池の前の階段(52段あるので五十二段と称している。芸のないネーミングである。)を登るところと思う。ここを登り切って寺に入らないで右に曲がって真っすぐ行くと春日大社に至る。この猿沢池前の景色は写真家に好まれている。多くの観光客は近鉄奈良駅からいきなり上がっていく道をとるので、あれでは裏口から入るようなものである。裏口から入ってもいいけど帰りには表に回って必ず猿沢池はご覧になると良い。

さて表門から入ったとして、五重塔は今は修理中だろう。どうしてもというなら三年くらい待たねばいけない。左手に南円堂がある。日程があうなら南円堂が解放されている日にお見えになるのが良いと思う。右手に東金堂、ほぼ正面に中金堂(新築)がある。中金堂には灯篭を担ぐユーモラスな鬼の像(天灯鬼であったか竜灯鬼であったか失念した)などがお雛さんのように並んでいる。中心の像は平成大仏といってつい最近の像である。

一番のお勧めは、東金堂の奥にある興福寺国宝館である。ここは東大寺戒壇院の四天王像と並んで絶対外してはいけない。ここには阿修羅像はじめ七つだったと思うが羅のつく像が収められている。羅のつく像は仏様の中では格が低いはずだが、他にある観音様の像などを抑えて圧倒的な人気である。しかも30台から40代くらいのご婦人に大人気である。特に阿修羅像の正面のお顔ではなく側面のちょっとふてくされたような少年のお顔が人気である。

聞き及ぶところでは、光明皇后には夭折した王子がおり、その王子の姿を写し取る像の依頼をして完成したのが阿修羅像であるという。皇后はこの像によって王子を偲んで悲しみを紛らわせようとしたらしい。像の完成からもう千二百数十年である。長い間人類の母性本能は変わらず強烈なものがあることが一つ。依頼に応じて作成した天平の仏師の腕の冴えはその長い期間母性本能に答えるだけの像を生み出したころがもう一つである。

 

興福寺は皇后のご実家である。ご実家に保管されているということは、皇后は藤原家と皇后になってからも深い関係があり続けたという証拠でもある。藤原家が外戚として力を持つことになったことを表す一品でもある。他の羅の付く像もそれぞれ特に御婦人方に人気である。



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