本の感想

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半分生きて、半分死んでいる(養老孟司 PHP新書)

2023-06-15 22:25:36 | 日記

半分生きて、半分死んでいる(養老孟司 PHP新書)

 相変わらずの人間社会への舌鋒鋭い批判の連続で胸がすく思いがする。理由もなく心が鬱曲するときはこの人の本を読むに限る。前提を壊して考えるといろいろのものが見えてくることをこの人の本から教わった。しかし、折角この本を読んで鬱曲が晴れてもまた次の日に勤めに出ると世の中は前提だらけでその前提に無理やり自分を合わせていると、その日の夕方には再び鬱曲が始まってくる。そうするとまた帰りの電車の中では養老さんの本を読まねば胸が苦しくなる。この繰り返しをすることを少し前は「養老中毒」と言ったらしい。わたくしは相変わらず「養老中毒」が続いている。

 想像するに養老さんはお勤めの時かなり周囲からの攻撃、またはいじめに遭ったのではないか。このような理屈を展開してかつその理屈を本にしてかなり売れている、周囲は面白くないはずである。ところが周囲が攻撃すればするほど養老さんの理屈はますます巧緻になっていくからますます本が面白くなってくる。そうするとますます本が売れるという好循環をもたらすことになる。私の想像通りだとすれば、周囲のヒトの攻撃は却って養老さんの本が良く売れるきっかけを齎したと思う。周囲のヒトは攻撃したつもりで養老さんに塩を送ったようなものである。そのことが分かれば周囲のヒトはますます面白くなくなるであろう。

 なお、私の経験観察では周囲にあわせることのできない人以上に周囲とは違う手段で自分を売り出したり事業を起こしたりした人を、周囲のヒトは徹底的にイジメて排除する傾向がある。そのような人を仲間にしたくないのであろう。これが日本だけの文化なのかどうかに興味がある。ある程度は万国共通であるような気がするが日本は突出しているであろう。

この本にも書かれていたが小さいころ養老さんは「兵隊さんにだけはなりたくない」と言ったそうである。(終戦前のことだから勇気のある発言である。)周囲にあわせることが大嫌いな人であるようだ。養老さんの本に中毒をするところまでいかなくても好きだという人は、多かれ少なかれ周囲に合わせることが嫌いな人で私と同質のヒトとみられる。この本がたくさん売れているというのは、私と同質のヒトがたくさんおられるということで大変喜ばしいことだと密かに思っている。