今週末(4月4日、5日)、世界選手権の代表選考を兼ねた全日本選抜体重別選手権大会が行われる。この大会は、強化選手の選考や入れ替えを目的にしたものではないので、各階級の上位8名、敗者復活戦なしで行われる
敗者復活戦がない理由は、優勝者=世界選手権代表を決める大会であるから、2位や3位は関係ないという前提であった。しかし、ここ数年では優勝者=代表というように簡単なものではなく、優勝者以外から代表が選考されることが多くなってきた。そういった意味では、この大会も2位、3位という位置づけが必要な大会になりつつあり、敗者復活もある意味で必要かもしれない
今年の大会の特徴は、近年にないスター不在ということだろう。ここ10年、いやそれ以上の長い間、柔道界を牽引してきた選手達が引退、休養など様々な理由から欠場している。男子の野村、井上、鈴木、女子の谷などがそうである。
スター不在というと一見した華やかさには欠けるものの、実は見所もある。スターの陰に隠れて代表の座を射止めることができなかった選手が、そういった選手がいなくなった状況の中でいかに力を発揮するかである
北京五輪において100級で鈴木選手が敗退したが、この原因は井上選手の引退にあったのではないかと密かに考えている。なんだかんだいっても、いつも脚光を浴びるのは井上選手であり、鈴木選手はいい意味でその陰に隠れて伸び伸びと力を発揮してこられた。北京五輪では井上選手が引退し、初めて矢面に立たされた。もちろん、それまでもプレッシャーはあっただろうが、2番手としてのものであった。柔道人生の目標でもあったであろう井上選手が突然いなくなり、自分の立ち位置が急に不安定なものになったのではないだろうか
自分の前に立ちはだかっていた壁が大きければ大きいほど、逆にそれがバネになって頑張る原動力になっていることが多い。そういった意味では、今回、いくつかも大きな壁がなくなった後、2番手、3番手といわれてきた選手達がどういった戦いを見せるかに興味がある。自分が矢面に立たされ、絶対勝たなければならないプレッシャーを受けて初めてトップを走っていた人の背負っていた重みがわかる
また、これまでは最終選考会といいながらも「この大会で勝っても選ばれないのでは?」といった疑心暗鬼の部分があったに違いない。まあ、今大会でもヨーロッパツアーで成績を残した選手達が有利であることは間違いない。しかしながら、彼らや彼女たちが絶対といえるまでのものもないのも事実だ。そういった状況のなかで、出場選手の多くが「自分でも」という可能性を持って挑んでいける
最近の柔道は見ていて面白くないという指摘を受けることが多い。私もそう感じる。組み手に時間がかかりすぎること、お互いの手の内を知っていることもあろうが、思い切った技をしかけず小手先の勝負が目立つ
女子はヨーロッパで行われた国際大会の成績をみても、誰が選ばれてもおそらく世界で全階級においてメダルに絡むだけの力を持っている。ただ、そのメダルが何色になるかが当たり前だが重要だ。この大会で「無難に優勝すれば」ぐらいの戦いだったとしたら金メダルは難しい。世界を目標にするのであれば、この大会はステップに過ぎない。それぐらいの強気の姿勢で負けを恐れず勝負する度胸がみたい。その勝負度胸こそが世界のトップを競う段になれば必須の要素だからである。今大会の出場選手で、実は世界選手権の金メダリストは塚田真希(2007カイロ無差別級金)しかいない。メダルは獲れても金はそう簡単には獲れない
男子は女子とは比較にならないほど厳しい。金どころかメダルに絡める選手がどれほどいるか。期待できるのは、66kg内柴選手と100kg穴井選手だろう。内柴選手は経験、実績は申し分ないが、ベテランだけに調整次第という部分もある。また、女子の谷本同様に世界選手権では金がない。穴井も力をつけているものの、全幅の信頼をおけるほどではない。ということは、今年の世界選手権を戦うにあたって大黒柱がいないということだ。そういうチームが成功する場合には、意外な選手の活躍など、その大会で生まれるスターがでるかどうかにかかっている。そのスターに成りうるような選手が今大会で出てくるかに期待がかかる。若さと勢い、意外性を兼ね備えた選手が必要だそして日本の男子柔道は、北京の時の石井選手のように苦しい時期に、そういった選手を生み出せる底力があった
谷、野村、井上という選手達が大スターであっただけに、これに匹敵するスターが出てくるまでにはしばらく時間がかかると思われる。しばらくの間は、スター不在の時代が続くだろう。そういった時代だからこそ柔道の本質が問われる。これまでは、柔道を知らない人でも、スターの名前だけでみてくれたが今はそうはいかない。見るに値する戦いかどうかが問われる。しかし、この時期に認められれば本物でもある。技術が超一流でなくても、引きつけられる試合はある。WBCがなぜあれだけ人々を魅了したのかといえば、普段とは違う(プロで百何十試合もあればある程度割り切った勝負に成るのは仕方がない)彼らの真摯な態度、取り組む姿勢にあった
今大会に出場する選手一人一人が次の時代を担う一人としての柔道を背負う自覚を持った戦いぶりを期待したい
敗者復活戦がない理由は、優勝者=世界選手権代表を決める大会であるから、2位や3位は関係ないという前提であった。しかし、ここ数年では優勝者=代表というように簡単なものではなく、優勝者以外から代表が選考されることが多くなってきた。そういった意味では、この大会も2位、3位という位置づけが必要な大会になりつつあり、敗者復活もある意味で必要かもしれない
今年の大会の特徴は、近年にないスター不在ということだろう。ここ10年、いやそれ以上の長い間、柔道界を牽引してきた選手達が引退、休養など様々な理由から欠場している。男子の野村、井上、鈴木、女子の谷などがそうである。
スター不在というと一見した華やかさには欠けるものの、実は見所もある。スターの陰に隠れて代表の座を射止めることができなかった選手が、そういった選手がいなくなった状況の中でいかに力を発揮するかである
北京五輪において100級で鈴木選手が敗退したが、この原因は井上選手の引退にあったのではないかと密かに考えている。なんだかんだいっても、いつも脚光を浴びるのは井上選手であり、鈴木選手はいい意味でその陰に隠れて伸び伸びと力を発揮してこられた。北京五輪では井上選手が引退し、初めて矢面に立たされた。もちろん、それまでもプレッシャーはあっただろうが、2番手としてのものであった。柔道人生の目標でもあったであろう井上選手が突然いなくなり、自分の立ち位置が急に不安定なものになったのではないだろうか
自分の前に立ちはだかっていた壁が大きければ大きいほど、逆にそれがバネになって頑張る原動力になっていることが多い。そういった意味では、今回、いくつかも大きな壁がなくなった後、2番手、3番手といわれてきた選手達がどういった戦いを見せるかに興味がある。自分が矢面に立たされ、絶対勝たなければならないプレッシャーを受けて初めてトップを走っていた人の背負っていた重みがわかる
また、これまでは最終選考会といいながらも「この大会で勝っても選ばれないのでは?」といった疑心暗鬼の部分があったに違いない。まあ、今大会でもヨーロッパツアーで成績を残した選手達が有利であることは間違いない。しかしながら、彼らや彼女たちが絶対といえるまでのものもないのも事実だ。そういった状況のなかで、出場選手の多くが「自分でも」という可能性を持って挑んでいける
最近の柔道は見ていて面白くないという指摘を受けることが多い。私もそう感じる。組み手に時間がかかりすぎること、お互いの手の内を知っていることもあろうが、思い切った技をしかけず小手先の勝負が目立つ
女子はヨーロッパで行われた国際大会の成績をみても、誰が選ばれてもおそらく世界で全階級においてメダルに絡むだけの力を持っている。ただ、そのメダルが何色になるかが当たり前だが重要だ。この大会で「無難に優勝すれば」ぐらいの戦いだったとしたら金メダルは難しい。世界を目標にするのであれば、この大会はステップに過ぎない。それぐらいの強気の姿勢で負けを恐れず勝負する度胸がみたい。その勝負度胸こそが世界のトップを競う段になれば必須の要素だからである。今大会の出場選手で、実は世界選手権の金メダリストは塚田真希(2007カイロ無差別級金)しかいない。メダルは獲れても金はそう簡単には獲れない
男子は女子とは比較にならないほど厳しい。金どころかメダルに絡める選手がどれほどいるか。期待できるのは、66kg内柴選手と100kg穴井選手だろう。内柴選手は経験、実績は申し分ないが、ベテランだけに調整次第という部分もある。また、女子の谷本同様に世界選手権では金がない。穴井も力をつけているものの、全幅の信頼をおけるほどではない。ということは、今年の世界選手権を戦うにあたって大黒柱がいないということだ。そういうチームが成功する場合には、意外な選手の活躍など、その大会で生まれるスターがでるかどうかにかかっている。そのスターに成りうるような選手が今大会で出てくるかに期待がかかる。若さと勢い、意外性を兼ね備えた選手が必要だそして日本の男子柔道は、北京の時の石井選手のように苦しい時期に、そういった選手を生み出せる底力があった
谷、野村、井上という選手達が大スターであっただけに、これに匹敵するスターが出てくるまでにはしばらく時間がかかると思われる。しばらくの間は、スター不在の時代が続くだろう。そういった時代だからこそ柔道の本質が問われる。これまでは、柔道を知らない人でも、スターの名前だけでみてくれたが今はそうはいかない。見るに値する戦いかどうかが問われる。しかし、この時期に認められれば本物でもある。技術が超一流でなくても、引きつけられる試合はある。WBCがなぜあれだけ人々を魅了したのかといえば、普段とは違う(プロで百何十試合もあればある程度割り切った勝負に成るのは仕方がない)彼らの真摯な態度、取り組む姿勢にあった
今大会に出場する選手一人一人が次の時代を担う一人としての柔道を背負う自覚を持った戦いぶりを期待したい