山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

選抜体重別選手権1日目

2009-04-04 15:38:58 | Weblog
 選抜体重別選手権大会1日目は、男子が軽い級から3階級、女子が重い方から4階級の計7階級が行われた

 今日注目されたのは、63kg級の因縁の対決とも言っていい、谷本ー上野戦、北京チャンピオン66kg級内柴の戦いぶりだろうか

 谷本ー上野戦は、ゴールデンスコアまで持ち込まれたが、上野が意地の大外刈で技ありを奪って勝利した。谷本はチェコ国際で優勝した後、膝を痛めたらしく、出場辞退も考えたほど状態は良くなかったらしい。しかし、初戦、準決勝は意地の一本勝。ただ、決勝戦に関しては「今年どうしても勝ちたい」といった執念はなく、淡々と試合をしていた感じであった。オリンピック2連覇をして、さらにロンドンも目指すと決めたことで、安易に大会を欠場せず厳しい環境に自分をおく意味での出場は立派であったし、価値もあったと思う。谷本としては今年の世界選手権は休んで仕切り直しの年と位置づけるのもいいだろう

 勝った上野は、おそらく初の世界代表に選ばれると思われる。常に、谷本に比べポイント柔道である点を指摘されてきた。この先、谷本との国内での争いが続くことを考えれば、世界選手権では何が何でも優勝し結果を残さなければならない。挑戦者として挑むのと、自分が日の丸を背負って戦うプレッシャーの違いを実感することだろう。ここからはある意味で自分との戦いとなる

 内柴の戦いぶりは見事だった。機をみて攻め込む思い切りの良さはすばらしい。谷本の柔道もそうだが、「柔道に華がある」。決勝は32歳、ベテランの江種との対戦であった。ベテラン同士の味のある戦いではあったが、若手の顔が見えてこなかったことが残念でもあるし、男子柔道のさらなる厳しさも感じる

 初日全体を振り返ってみると、いくつか気がついたことがあった。
ゴールデンスコアが多かった:49試合中18試合がゴールデンスコアで、そのうち10試合が判定までもつれ込んだ。中には見応えのある試合もあったが、多くは互いに攻めあぐんだり、組み手争いが多かったりの’つまらない’試合が多かった。また、「効果」がなくなったことも一つの要因だと思われる。
一本勝ちの数:49試合中13試合が一本勝ち。階級によって、随分差があった。男子60kg級、73kg級、女子70kg級、78kg級はいずれも一本勝ちが少なく、ゴールデンスコアが多かった。これらの階級は国際大会でも苦戦している階級であることを考えると納得できる。
白柔道着同士:世界選手権、オリンピックはもちろん、ブルー柔道着に目が慣れているので白柔道着同士の試合は見辛さを感じる。国際審判規定であり、世界選手権の選考会であるのであれば、国際使用(畳はそうしている)でやるべきだろう。
コーチ席の排除:国際柔道連盟がコーチ席を排除したことに伴って、今大会もコーチ席はおかれなかった。コーチ達は観客席の最前列に陣取って大きな声で指示を出していた。確かに、コーチ達の態度等に問題があるケースはあるが、観客席から叫ぶのであれば、コーチ席をおいた方がスマートのような気もする。また、審判の明らかな間違いなどが起きた場合には、選手が抗議できるのか?ジュリー(審判補佐?管理?)がいるので大丈夫というのがIJFの見解だが、何か起きてからよりも起きる前に確認しておくことが大事である。

 試合をみるといつも疲れるが、各階級8人で、敗者復活戦もない割には時間が長く、疲労感を感じた。面白い試合も多かったが、ゴールデンスコアも多かったことが原因だろうか?最終試合では女王塚田選手がまさかの一本負けもあった。塚田選手が一本負けしたのはいつだったか思い出せない。7階級4階級は初タイトルの選手だった。オリンピック翌年にふさわしく新しい波を感じる。明日は男子が重い階級、女子が軽い階級である。今日以上に見ている人に「ワクワクさせる戦い」が多く見られることを期待したい