2023年11月3日、"日光街道太陽のもとのてらこや"オープニングセミナーで行われた「さとのば大学」発起人・信岡良亮さんによるセミナーに参加しました。
地域を旅する大学・さとのば大学では、地域をめぐり暮らしながら学ぶ「越境学習」として、自分で選んだ地域を1年毎に地域留学する取り組みをされています。
関西出身の信岡さんは、東京でITベンチャーでの経験を経て、会社を軸にするのではなく自分の力で働くことの大切さを学んだそうです。その後2年半ほどWebのディレクターとして働き、大きすぎる経済の成長の先に幸せな未来があるイメージが湧かなくなったことを機に25歳で島根県の海士町に移住。
都会での生活はお金を稼げば生活がまわり、社会と接続しなくて良い。一方で海士町では贈与経済でなければ暮らしが回らなかったといいます。移住して何を行うかと言うと、島のコンテンツを発見する冒険から始まるとのこと。何かが当たり前にある暮らしではなく、ないから探すところから始まるのだそうです。
信岡さんは海士町に移住し、「自治」を身近に感じる機会が増えたといいます。
「等身大の社会課題をまちという単位で改善してくプロセスが楽しい」その言葉が印象的でした。
都心に近いとまちの単位が大きく、「自治」がどこか遠くのことのように感じられますよね。
「未来のコミュニティを一緒に作っているのが楽しい」という信岡さんの言葉にあるように、自分が関わることで未来が変わっていくという期待値が人を動かす原動力になっているように感じました。
地域を越えて交流する「越境学習」により、日常では何も変わらなかった景色に彩りが加わります。
さとのば大学で地域留学をするとまず自分が行った地域で、「あなたは何をしにきたの」という問いから始まります。「私、何者だっけ」と365日問われます。1年その地域に住み、慣れてきた頃にまた新たな地域での留学が始まることで、1年目に考えていた「何がしたい」がより芯のあるものになっていき、意志を持って行動することができるように。
自分にとって慣れ親しんだ環境、コンフォートゾーンを飛び出していくことで良質な問いが生まれます。
会社で働いていると、「〇〇銀行の〇〇」と名乗ることになり、肩書があることで「あなたは誰か」という問いに向き合う必要がなくなります。肩書がある安心感とともに、肩書があることでコンフォートゾーンを知らぬ間に作っているように思います。
さとのば大学では4つの地域を交流することで、4つの地域のアイデンティティをもらえます。
アイデンティティは自分だけに拠るものではなく、お裾分けすることもでき、アイデンティティは地域を旅した関係性の中で育まれていきます。
「イントラパーソナルダイバーシティ」信岡さんから出た、その言葉は、「自分の中の多様な一面を知り、自分自身を膨らませていくこと」。
良いビジネスモデルもいいけれど、学び続ける文化を作ることの大切さについて語っていました。
学びは、成長や変化できる余白のことを指し、学びが楽しいのは自分の未来に希望を持てることを指すそうです。自分のアクションの先に、自分の描いた未来に繋がっていくと思えたら、学びが格段に楽しくなりそうですね。
「誰かが良くしてくれたらいいな」で終わらず、やる人を育てるためにも、全ての資源に誰かが手をかけていく仕組みづくりが大切とのこと。
さとのば大学では、定性的なものを評価していくのは難しいけれど「さとのばWay」があり、それも含めて独自の指標で自己評価して対話しながら成長実感を持たせていくことで、学習コミュニティとして循環するエコシステムが構築されているようでした。