JINCHAN'S CAFE

My essay,My life
エッセイを書き続けることが、私のライフワーク

to be continued

2008年09月04日 23時36分00秒 | 恋バナ
 あー魅惑の人妻の夏も、終わったなぁ。ご想像通り、つつがなく、ひっそりと、幕を閉じまして。『君が代』を歌いたい気分です・・・って、苔むしたないわっ!魅惑の人妻の股間・・・おっと間違えた、沽券に係わる。

 秋の夜長に語ることはないだろうかと、つらつらと考えていたのですが、久しぶりに恋バナでも。別れた彼(又は彼女)との思い出の場所へ、一人で行ったことがありますか?私ね、あるの。思い切る為ではなく、忘れない為にでした。心の中へ、もう一度、色んな風景を焼き付けておきたかったんです。渦中にいた時はドキドキしていたし、時間に追われてせわしなく動いていたから、周りを見渡す余裕なんてなかった。でね、同じ道を改めて辿ることによって、確認していったの。公衆電話、駅の改札・・・そういった一つ一つに、思い出がありました。

 友達関係から出発した二人のデート。いたずら心いっぱいの私は、後ろからケリ入れたろかトカ、膝カックンしたろかトカ、不埒なことを考えていて。でも落ち合った途端にね、恥ずかしくなって何にもできなかった。可笑しいですよね。心を許し、お色気トークもしていた間柄なのに。旅行パンフを握り締めて改札に立っていた彼の姿、今も覚えています。ちょっとした日帰り旅行だったの。行き先は、お寺でした。落ち着いた大人の雰囲気を漂わせる男女なら、渡辺淳一の世界になり得るんですが、彼はともかく私はねぇ。黒木瞳というよりは~(いうよりはー)寺島しのぶと・・・どういう意味で使こてるかは、聞かないで~!

 その日の私、白というよりはアイボリーといった趣きかな、そんな色の夏らしいワンピースを着ていました。全体にうすーく小花模様が散っていて、裾に色彩のアクセントをあしらってるの。ウェストの所で、サテン地の大きなリボンを結ぶようになっていてね、トウシューズ履いて背中に羽をつけたら、そのまま飛んでいきそう天国まで。勝手に殺すなー。”そーのてーで そーのてで♪”別の意味で彼に思われてるよ。「首絞めたろか!」とんだ『愛ルケ』劇場ですが、私が渡辺淳一の世界をなぞっても、こんなものよ。若さ全開といったお年頃でもなかったけれど、それでも可愛く見られたかったのね。女心という名の黒い欲望だ。

 彼と肩を並べ歩いた参道。その石畳を一人踏みしめました。若干息がはずみます。過ぎし日に想いをめぐらし、あな侘びし・・・心持の所為じゃな。いやいや、オモイはオモイでも体の所為でしょう。ほっとけ!季節が変わって、緑が目に映えます。太古から、そこへ存在していたであろう威厳を見せ、たたずむ杉の木。その梢の緑から漏れいずる光線。そっと手をかざし、空を見上げました。寺島しのぶに見えるかしら・・・。寺島しのぶというよりは~(いうよりはー)敬礼してるピーポくんやっちゅーねん。

 広い境内を、ゆっくり眺めていきました。当時はね、ずっと見つめられているようで、そそくさと移動してた。後で彼に、「どんどん離れていっちゃった」と指摘された位。照れくさかったのね。もうアカン・・・また来た時に見よ~。かなり早い段階で、観光という目的を捨て去りました。かと言って甘えることもできず。二人で正座して、お寺の歴史を聞いたんです。長時間で足が痺れました。「うー辛かったぁ」立ち上がって歩く時に、寄りかかればよかった。今なら、そう思いますけど、やっぱりできなくて。廊下の途中に掲げてあるパネルの所まで来ました。人としてあるべきことを、美しい写真に載せて掲示してあるの。道ならぬ恋行の二人には、耳が痛い言葉です。真剣に読んでいる私の後ろで、彼がクスリと笑った。ささやかなヒトコマ。そんなことを覚えているし、そんなシーンが好きよ。小説を書こうとする時に、想像では書き得ない部分じゃないかしら。いかな渡辺淳一さんの小説にも。うん、ないでしょう。

 いくつかの建物が長い廊下でつながっていて、中庭が見えるのね。自然なたたずまいの。眺めていて飽きがこないというか。木々の緑に空の青って、こんなに美しかったんだ・・・って、しばし見惚れていました。共に感動できればよかったのだけど、一人になって気づくことってあるんですよね。彼と来た時には足を運ばなかった裏庭があり、奥へ続いているの。ちょっとした水辺が清々しい。心地よく安らげる空間でした。やがて鐘楼へたどり着きます。ここまでの道々はね、目立たず人もまばら。絶好の・・・おっと、やめておこう。チクショウ。こんないい場所があったのに。悔やんでも、もう遅い。一人鐘をつきました。後ろでカップルが待っていやがる。鐘の中に入っとれ。思い切りついたるわ~!そんなこと考えてませんよ。

 お昼は、正門の前にある、お蕎麦屋さんへ入りました。名物のお蕎麦をいただきまして、「すみません。熱燗くださーい。」あら、エッセイ・ブログ本文では言ってなかったわね。酒好きなの。小鉢物をアテに一口、また一口と、運びます。おっさんか!左手には、宇野千代の文庫本『生きて行く私』(宇野さんの『嫌われ松子・・・』を地でいく愛の遍歴)ちゃうちゃう・・・。やがて相席を頼まれましてね、ふと見上げると先程のカップルが。向こうも、あっ・・・という表情になりまして。虚構世界のように一人しみじみいかないのが、世の常でございます。

 店を出て、門前の坂道を下ります。あの時、隣にいた彼の様子が、よみがえってきました。片手でリズムをとり、少し弾むように歩みを進めていた。それはささやかな喜びの表現だったんじゃないか、と今にして思います。とびっきりの笑顔よりも、この場面の穏やかな微笑み、覚えておきたいな。それは私を切なくもさせるけれど・・・いとおしい気持ちを呼び起こすから。

 肩を並べて歩く、ただそれだけのことが幸福だったあの頃、あなたの隣は居心地がよかったです。 -いま、会いにゆきます-

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「ありますよ~♪ (じんちゃん)
2012-03-06 08:35:11
「ありますよ~♪
ビジネスホテルの一室でケンタのチキンに、まるで獣のようにかぶりついておりました。
28歳の私、美しくない風景でございました^^
すぐ隣に居なくても、彼の彼女だと思える・・・ それだけでも幸せなんですよね・・・。
離れてみるとよく分かります。
あなたの隣は、居心地が悪かったけど幸せでした -はるか-」 (BY はるかさん)

「何でノリツッコミしてるの(笑)
照れ隠し?それとも・・そうしてないと涙でもこぼれるのでしょうか?
思い出の場所とは少し違うけど、私は彼と別れた時にカラッポなことに気がついて。
つまらない事なんだけど、映画に行ったらパンフレットを買うとか、チケットをとっておくとか・・
だから新しい彼ができた時、食事したりお茶した場所で必ずマッチをもらって帰りました。
そのマッチを見ながら色々思い出してた(笑)チープやなぁ、私(^^ゞ」 (BY すずちゃん)

「彼との思い出の海岸に、次の彼と行った・・・鬼か!?
今のだんなも、のちとなれば、前のだんなと呼ぶようになるのかもなんて、思ったりして。
・・・寺島しのぶに、なっちゃいかん(笑)(そういう意味でなく!)」 (BY チヤさん)

「うーん・・・’居心地がよかったです’ですか。どうだろう。
居心地の悪い人間とは付き合いたくないなあ。恋人には落ち着きを求めますねやっぱり。」 (BY ギャツビイくん)

「ちやさん おれも…
前の彼女と行ったところに、今の彼女と…
でも、ちやさんとでも同じとこに行くと思う
時が季節が違えば… 何より相手が違えば…(鬼と呼ばれても)」 (BY 徹さん)

「ひとりで忙しくボケと突っ込みだね じんちゃんはそうやって心和ませてくれるよね
でも、そんな中に気持ちが表れていて 乙女心をいろんな角度から表現してみたり(*^_^*)
そういや思い出の場所なんかに行ったことないかも。。
っていうか、恋愛そのものの経験もそうないから、思い出も。。。ね。。 なんか寂しいな。。。」 (BYなおさん)

「いつものじんちゃんの後ろに可愛らしいじんちゃんがいる?!
忘れないために思い出を巡るって素敵な考え方ですね。
別れた彼との一番の思い出の場所は近所の公園なんだけど、そこで結婚式のパンフレットの写真を撮りました。
今更ながら後悔してます(>_<)」 (BY みーちゃん)

「恋してると、胸がいっぱいで、物が食べられなくなったものです。(でも・・痩せなかったけど・・)
純情だったのよ、私も!」 (BY izumiyaさん)

「思い出の地に・・・一人で再来ですか^^
かつての彼女と行った思い出の地に、新たにできた彼女と行ったことがあります
同じ場所で・・・元カノと今カノの動きを比べていた自分がいましたね^^;
あぁ~~~ 天狗って 何という悪党なんでしょ (苦笑)」 (BY 鞍馬さん)

「真夏の夢もつつがなくひっそりとですかぁ。ま、そんなもんでしょ。」 (BY あんちゃん)

「昇華できれば良いと思うけど、そればっかりはね~。
俺は?って思いを巡らすと、ろくでもないことばかり・・・。 幸せそうに笑う顔を、あまり思い出せない。
ごめんなさい。(誰にあやまってんだか?」 (BY ずとさん)

「じんちゃん…何だか私の小さい可愛らしいお胸が(←誰がペチャパイや!)キュンってなってしまいました。
ホントに何でもないような些細な事が幸せだった頃ってあったよね。なんだかとっても前のことのようだけど。。
あぁまた じんちゃんの可愛い一面を見てしまった気がするわぁ^^♪」 (BY OK牧場ちゃん)

最後の一文は、映画のセリフを利用しました(あえて)。
あんまり飾る気がなかったのか、笑いの部分に気を取られていたのか、文章ド下手ですねぇ。
今頃気づいたんかい!って感じですが、それでも憎めない、私にとっては、クスクス読み進めながらも、
ほんのり切なくなるエッセイです。

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