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和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

幼馴染の恋愛事情

2020-07-11 11:43:39 | 小説。
「好きな人ができたんだ」

下校中、幼馴染のアキラが急にそんなことを口にした。
――好きな人。
中学生にもなれば、そういうこともあるんだな、などと思う。
ただ、一点気になることが。

「ヒメカじゃないよな?」
と、僕は思ったことをそのまま言った。
「ヒメカぁ? ないない。幼馴染を今更好きになるかよ」
「だよなあ」
もうひとりの幼馴染、ヒメカのことじゃなくてほっとした。

これは何も僕がヒメカのことを好きだからじゃない。
アキラも言ったように、幼馴染を好きになるという感情が分からないからだ。
いや、嫌いじゃないけども。
幼馴染は、もう、それ以上進展しようがない関係だと考えている。

髪は長くて、優しくて、学級委員をやっていて。
そんな聞いてもない「好きな人」情報を公開するアキラ。

待ってくれ、これは、僕がアキラの恋愛相談に乗る流れか?
マジでか?
そんなの・・・分かるわけないだろう。
学級委員って言っても、僕はアキラとは違うクラスだ。
誰のことかも分からないし、そもそも僕に恋愛スキルはないぞ。

「ま、まあ・・・そんなこともあるわなあ・・・」
適当に相槌を打つ僕。
悲しい。
アキラはそんな適当な僕の言動にも気づかず、好きな人トークを続けている。

いやいや。これ軽い拷問じゃね?
好きな人がヒメカだったらまだ良かったかも知れない。
アイツのことなら僕も分かってるし。
幼馴染同士で・・・というところにさえ目を瞑れば、祝福できる。

でも、アキラが知らない女の子のことを好きになって、となると。
これは、うーむ、気持ち悪い。

何だこの感情。
どういう気持ちだ。
アキラを知らない女の子に取られるのが嫌だ! とかそういうアレか。
・・・違うなあ、多分。

アキラが変化していくことに慣れていない、ということか。
これはまだしっくり来る。
いつも一緒に遊んでいる友達が、ある時急に大人になったような。
そんな気持ち悪さ。
不気味さ。
言葉は悪いが、そういうことなんだろう。

とにかく。

「なあ、アキラ」
「うん?」
「また、ヒメカと三人で海でも行こうぜ」
「・・・お前、俺の話聞いてた?」
聞いてません。

あー気持ち悪い。

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