和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

悪夢の終わり、物語の続き:4

2011-02-28 21:03:10 | 小説――「RUMOR」
小麦、委員長、伊崎先生の3人が、一瞬だけ視線を合わせる。
そのわずかなコンタクトだけで、息を合わせて遠野輪廻へと突撃。
「夕月!」
僕は、その後ろに隠れるように立つ男へと声をかける。
「3対1が卑怯とか言わねえよな?」
「言うよ。卑怯じゃないか」
「は、うるせえ。勝てばいいんだ」
「ふふふ、ごもっとも」
などと、どちらが悪者なのか分からない会話。
まぁ、元より善人のつもりなどないのだけど。

小麦の拳をいなし、委員長の剃刀を紙一重でかわし、先生の煙管を手刀で打ち落とす。
遠野輪廻の動きはやはり異常だった。
しかし、勝負はまだまだ始まったばかりだ。
「二人とも、引いてくださいっ!」
最初に行動を起こしたのは、やはり委員長。
彼女の持ち味は、小麦すら凌駕するスピードである。
軽快なフットワークで左右から流れるように斬りかかる。
正直、僕には分身と変わらないレベルに見えた。
つまり、左右二択、、、、ではなく、左右同時、、、、攻撃。
もはや、目で追える領域を逸脱している。
「――風舞カザマイ
これに対し、瞬間移動スキルで回避する遠野輪廻。
出現地点は、委員長から見て奥。わずかにバックしたことになる。
「まだまだですっ!」
それを確認すらせず、委員長が追撃する。
そう、委員長には敵の行動が簡単に予測できたのだ。
左右同時攻撃は、両手を犠牲にしたガード、または回避の2択を迫るもの。
そして、回避の場合――出現地点は今遠野輪廻が現れた、その場所しか有り得ない。
なぜなら、委員長の後方には小麦と先生が控えているのだから。
故に委員長は迷わず次の一歩を踏み出し――今度は剃刀をガードさせることに成功する。
勿論、委員長の刃を完全に防ぎきることなど不可能だ。
ざっくりと切れる腕。一瞬遅れて、血飛沫の花が咲いた。
「――ほう」
感心したような夕月の声。
「輪廻が出血するとは。生徒会長殿はかなり特殊な攻撃ができると見える」
やはりロアが血を流すことは珍しい現象らしい。

「ビビッてんなよ、化物」
流血に怯む遠野輪廻の懐に、すかさず先生が潜り込む。
「――俺は接近戦が得意でね」
煙管を咥えた先生が、何を血迷ったか素手でボディブローを打ち込む。
「先生!?」
そんなことをすれば、やられるのは手の方だ!
しかし。
わずかではあるが、足が浮くほどの衝撃を与えているではないか。
「はん、いらん心配だぜ、虎春」
不敵な言葉。
そんな!素手で――何故?
「なるほど、ドーピングアイテムか」
「ドーピング?」
夕月の声に、思わず聞き返す。
「その煙管、なかなか厄介だな。恐らく吸うことで一時的に能力を跳ね上げるものだろう。
 ――名付けて『活性の煙管アクティブ・パイプ』というのはいかがでしょう、先生?」
「ヒトの武器に勝手な名前付けんなゴルァ!」
夕月の中二行動にキレる先生。そりゃそうだ。
――しかし、なるほどそういうことか。
でも、そうなると煙管で殴りかかった最初の一撃は?
あれを見て僕はてっきり直接攻撃用の武器だと思っていたのだが。
要するに・・・僕まで騙されていたというわけか。
「まだまだァ!」
煙管の力を上乗せしたパワーでボディを激しく連打する。
その衝撃に、遠野輪廻の体躯が、今度は明らかに浮く。
何という腕力。
「おッッッらァァァ!」
そしてシメの蹴り上げ。黒い影が大きく宙を舞った。

今だ――!

「準備万端っ!いっくよ――炎舞エンブ香車ヤリィ!」
後方で両手に炎を溜めた小麦が、槍を撃ち出す!
遠野輪廻にできることは、小麦にだってできるのだ。
そして、その方向――遠野輪廻のすぐ背後には、夕月明。
これはかわせない。かわせば攻撃を喰らうのは夕月だ。
遠野輪廻は、瞬間移動することなくその炎の槍を両手で受け止める。
が、手だけで受け止めることができるわけもなく。
槍は深々と腹に突き刺さる!
「よし、入った!」
思わず拳を握り叫んでしまった。
しかし敵も只者ではない。
槍が刺さった状態でも見事体勢を立て直し、夕月へ攻撃が通ることは完全に防いでしまった。
となると、問題は――超回復能力。
ここで畳み掛けなくては、折角の3人の連撃が無駄になってしまう。
腹に刺さった炎の槍はその役目を終え、霧消する。
いけない、早くとどめを――否!
「待て、止まれェェェ!」
僕は全力で叫んだ。
その言語に驚くように、追撃態勢に入った3人の挙動が止まる。
「な――何でよハル君!?今とどめ刺さないと――」
僕を振り返り抗議する小麦。
「危ない、引くんだ!」
そして、僕の悪い予感は見事に当たる。

「――炎舞エンブ桂馬ケイ

漆黒の巫女が、右腕に炎を灯して前方を薙ぐ。
当然ノックバックした今の位置からの攻撃など届かないはずだが。
――ゴウ
熱風とそれに伴う爆音。
静止した3人の目の前を、炎のカーテンが真横にかすめて行った。
「な――!」
何だ、今のは!?
僕の疑問に答えるのは、饒舌なペテン師。
炎舞エンブ桂馬ケイ。輪廻の中距離攻撃だ」
玩具を自慢する子供のような、誇らしげな声音。
今のは・・・かなり危なかった。
追撃の寸前に嫌らしく笑う夕月が見えてなければ、3人を止めることなどなかっただろう。
そうなれば・・・今の炎に、全員焼かれていた。
これはまずい。危険だ。
「近距離の通常炎舞エンブ、中距離の桂馬ケイ、遠距離の香車ヤリ、ってことか」
「さすが虎春君、よく気付いたね。じゃあ」
間髪入れず、黒巫女はダッシュで距離を縮める。
「次の展開も、読めるだろう?」
彼女がぬるりと忍び寄ったのは、比較的密集してしまった3人のおよそ中心。
――ヤバい!
「みんな!散れッ!」
予感に従い、絶叫。
しかし今度は、みんなが僕の声に反応するより早く。

「――炎舞エンブ玉将ギョク

遠野輪廻を中心に、炎の渦が巻き上がる!
紅い渦は柱となって、小麦を、委員長を、先生を、拒絶するように跳ね飛ばした。
「全方位攻撃の炎舞エンブ玉将ギョク。どうだい、見事だろう?」
近距離攻撃。中距離攻撃。遠距離攻撃。全方位攻撃。
――言われてみれば。
理想を語れば。
これだけの手駒は欲しいところだ。
だから、本来ならばこの展開は読めていなければならなかった。
「だからって、本当に全部できるとか・・・有り得ねえだろ」
愚痴るようにこぼす。
誰にも聞こえない程度に。
弾き飛ばされた3人は、よろよろと起き上がっているところだ。
良かった。致命傷にはなっていないらしい。
「みんな、無事か!?」
3人に声をかける。
「大丈夫っ、これくらい何ともないよ!」
と小麦。明らかに一番元気そうだ。
「ッてェな畜生・・・うお、髪燃えてる!」
先生も何とか無事。しかし衣服がだいぶ燃えてボロボロだ。
「・・・くぅッ・・・」
そして、一度立ち上がりながらもよろめく委員長。
慌てて彼女のもとへ駆け寄る。
「委員長っ!」
ふらり、と倒れる委員長を、間一髪抱きとめた。
どうやら彼女のダメージが最も深刻らしい。
「柊君・・・ごめんなさい」
「大丈夫、動くな!」
委員長を抱え、邪魔にならないよう戦線から離脱する。
衣服のみならず、腕や足も明らかに焼け爛れている。
これほどまでの高熱なのか――。
「ふっ・・・防御に力を割かなかった報い、でしょうか」
自嘲するように、そんなことを言う。
小麦は全能力がチート級、且つ超回復能力がある。
先生はドーピングで力を底上げしている。
無防備だったのは・・・委員長だけだったというわけか。
「仕方ねえよ、とにかく今は引くんだ」
「・・・クッ。そうですね、この手足では、足手まといにしか・・・」
思い通りに動かないであろう手足に涙を浮かべ、唇を噛む。
彼女は――最も、久我さんと縁があったから。
この闘いにかける意気込みも並々ならぬものがあったのだろう。
でも、大丈夫だ。
「あとは二人が――何とかしてくれるから」
黙ったまま、委員長は頷いた。

とにかく、いつまでも彼女を抱えているわけにもいかない。
距離を置いた安全な場所に座らせる。
戦況は――?
僕は改めて状態を確認する。
幸い、僕と委員長をかばうように二人が立ち塞がっており、睨み合いになっているらしい。
次は、どう動く?
この闘いを一歩引いて俯瞰できるのは僕だけなのだ。
ここで的確な指示を出すことが、今の僕にできること。
これまでのやりとりは、僕のミス。負けだ。
相手のカードが、こちらの予想以上にキレていた。
もうこれ以上ヘタは打てない。
これ以上無駄にみんなを傷つけるわけにはいかない。
責任は重大。
素早く、深く、抜かりなく――考えろ。
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メカ怖い。

2011-02-27 22:38:29 | いつもの日記。
インフィニット・ストラトスって今話題じゃないですか。
・・・あれ、ぶっちゃけどうなんですか。
小説も漫画も手を出してません。
アニメはこっちじゃ放映してません。
でも、気になってきた。

そもそも何で手を出してないのか? って話なんですが。
理由は簡単。
ロボ・メカものっぽかったから。
それだけで僕が避ける理由としては充分なのですなー。
僕、アニメ好きでありながらガンダム嫌いだし。マクロスも見てない。
唯一、エヴァは見てるな。そんな感じ。
だから、完全なる食わず嫌いでインフィニット・ストラトスも見てないんです。

でもなー・・・何か、話題になってるのを見てるとちょっと興味出てきた。
絵は完全に好みだし、アニメの方では花澤香菜も出てるじゃないですか。
キャストのためだけに見ようかしらと考えたりしてます。
そこで気になるのが、どれくらいメカメカしいのか。
エヴァくらいならセーフ。
ガンダムくらいならアウト。
どうなんでしょうね。
知ってる人いたら、教えてください~。

・・・ま、どんな結果でもいずれ見るような気がしないでもないけどなー。
コメント (2)
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雑記。

2011-02-26 18:03:59 | いつもの日記。
RUMORバトル描写に挫折なう。なうとか言うな。
なんだよもー・・・。
だんだんワケがわからなくなってくるよ・・・。
君たち人間はいつもそうだ。
ええい、バトル部分全ボツにして書き直そうかな。
それも極端な気がするけど。
迷い出したら止まらない。迷宮に入った感があります。

「僕は友達が少ない」、ドラマCDキャスト正式発表!
というわけで、以下のように決まったそうです。
◆羽瀬川 小鷹:木村良平 (知りません・・・)
◆三日月 夜空:井上麻里奈 (ナツルとかキッチリとかのひと)
◆柏崎 星奈:伊藤かな恵 (佐天さんとかエルシィとかのひと)
◆楠 幸村:山本希望 (ぎゃる☆がんのヒロインのひとりらしい。詳細は知りません)
◆志熊 理科:福圓美里 (芳佳ちゃんとかヤミちゃんのひと)
◆羽瀬川小鳩:花澤香菜 (黒猫とか撫子とかのひと)
◆高山 マリア:井口裕香 (インなんとかさんとかのひと)
すげーな。
シスターが井口裕香とか、邪気眼娘が花澤香菜とか、狙ってやったらしいぜ?
公式ブログによると。
やりたい放題じゃないか。
・・・買うかぁ・・・。

久々にジャンプの新連載が個人的にヒット。
いや、ライトウィングも好きだったんだけどね。あの超展開、最高でした。
でも今回は真っ直ぐしっかり大ヒットです。
勿論、まだ1話ですからね。今後の展開次第でしょうけども。
でもいいと思うんだよなぁ。
画面もしっかりしてるし、魔法の迫力もデカいし、ヒロインも可愛いし。
ジャンプではガチファンタジーは当たらない、という定説を覆して欲しいです。
難しいかなぁ。
とにかく、少しでも長く続きますように。

ジャンプといえば、未だにめだかボックスが大好きです。
もう、西尾節全開じゃないですか。毎回。
台詞回しに展開、キャラ造形。どれを取っても西尾維新ですよ。
個人的には、早くも次のボスらしい安心院さんが気になって仕方ない。
何なんだ、あの存在感。
・・・めだかが最近空気になりつつありますが。
連載が長くなってくると仕方ないんだよ!
そういえば、もしアニメ化したら善吉の声はやっぱり神谷浩史なんでしょうか。
だとしたら、彼は西尾作品に縁がありすぎだと思います。
ありゃりゃぎさんと善吉って。あんまりだ。
コメント (3)
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悪夢の終わり、物語の続き:3

2011-02-25 22:36:10 | 小説――「RUMOR」
「柊君っ!」
部室で顔を合わせるなり、委員長――二条三咲は僕に詰め寄った。
「な、なな、何ですか委員長」
「私は委員長じゃありません。って!そんなことはどうでもいいんです!」
どうでもよくない。
僕と委員長の、大事なお約束というやつである。
「聞きましたよ?ついにお付き合いを始めたんですね!?」
何が楽しいのか、委員長らしからぬハイテンションで問い詰めてくる。
「・・・誰が?」
「柊君が」
「誰と?」
「神荻さんと」
「・・・ええぇ?」
「だって、噂になっていますよ?」
「どんな噂?」
「『あの最強美少女・神荻小麦に彼氏ができた!』とかなんとか」
「それ、彼氏が僕だって判明してないよね?」
「まぁそうですけども。柊君以外にいないでしょう?」
「・・・ノーコメントで」
「ず、ずるいっ!教えてくださいよ、ひーいーらーぎーくぅーん!」
がくがくと僕の襟首を掴み揺さぶる。
や、やめやめっ!委員長だって小麦ほどじゃなくても強いんだからな!?
全くもって、僕の周囲は恐ろしい女性ばかりだ。
女性恐怖症になったらどうしてくれる。

どうにかこうにか委員長をなだめ、落ち着かせる。
所要時間10分程度。
・・・めんどくせぇー。
落ち着きを取り戻した委員長だが、しかし追求を諦めたわけではなさそうだった。
「だって、同じ部の仲間ですよ?知りたいじゃないですか・・・」
少しいじけたように呟く。
可愛く言われても、今はノーコメントである。
「というか」
気を取り直して――話を逸らす。
「夕月との決戦に委員長も来るって、本当?」
「当たり前です」
そうか・・・当たり前なんだ・・・。
「仲間外れは、なしですよ?」
「別に面白いこともないと思うんだけどな」
それに、夕月の手下はもう概ね倒した。
この決戦が終われば、委員長たちに迷惑をかけることもなくなるはずである。
「友達の一大事ですからね。それに、先生も来るって言ってましたよ」
「伊崎先生も?」
そりゃまた、オオゴトになったものだ。
まぁ、実際オオゴトなんだけどさ。
「そっか。先生も来るなら、夜の校内に無断侵入して怒られる心配もないな」
「そうですね」
こういうときくらい、先生の権力を利用させてもらうことにしよう。
大した権力でもないけどねー。
「それにしても」
と、そこで急にシリアスモードの委員長。
「大変なことに・・・なりましたね」
「確かにね。でも――これも全部ヤツの思惑通りなんだよな」
そう思うと本当に腹立たしい限りだ。
ヤツさえいなければ、きっと最近のロアとの闘いは避けられたはず。
何より、久我さんも――。
だからせめて、ここでヤツとはしっかり決着をつけて。
小麦だけでも、守らなくては。
「柊君、先に言っておきますけど――」
「ん、何?」
「闘いに手を出すな、とか腑抜けたことを言ったら、殺しますからね」
笑顔で、怖いことを言う。
目が本気だ。
やばい、下手すると僕殺されるの!?
「・・・言わねえよ」
正直、委員長が手出しすれば小麦が黙っていないと思う。
しかしここでは、委員長が言うことの方が正論なのだ。
僕もできる限りの手出しはするつもりだし。小麦が、何と言おうと。
ただし。
「あいつ――遠野輪廻は、強いよ」
もしかすると、小麦と委員長が協力してかかっても尚歯が立たないかも知れない。
「そんなこと分かってます。未来の神荻さん、なんでしょう?」
言って、ニヤリと口元だけで笑う。
そうか――彼女は、小麦をライバルだと思っているフシがあるから。
そんな相手と、何のためらいもなく、全力でぶつかれることが嬉しいのだろう。
小麦も委員長も、二人揃ってとんだバトルマニアだよ、全く。

「あ、そうだ委員長」
「はい?」
「ちょっとお願いがあるんだけど」
「お願い、ですか?私に?」
「うん。まぁ大したことじゃないんだけどさ――」

そうして――あっという間に、時間は過ぎて。
約束の日。
約束の場所。
僕と小麦、委員長と伊崎先生。
勢揃い、である。
季節はまだ冬。夜風は特に冷たい。
しかし、ある程度動きやすい服装である必要もあり、みんな比較的軽装だ。
小麦に至っては――体操服である。
そりゃまぁ、動きやすさという点では最強だわな・・・。
しかし、半袖シャツにブルマって。こいつ寒くねーのかな。
・・・寒くないんだろうなぁ。バカだから。バカだから。バカだから。
取り敢えず3回繰り返してみた。まだ足りないかも知れないがこれくらいにしておく。
「で、夕月のヤローはいつ来るんだ?」
少しイライラ気味に先生が訊く。
「詳しい時間は指定してませんでしたけど・・・夜、としか」
ちなみに、現在19時。日はすっかり落ちて、完全に夜である。
「時間が決まってないって・・・アバウト過ぎません?」
委員長は呆れている。
「うん・・・ごめん、何か、頭に血が上っててさ?」
言い訳してみた。
委員長は苦笑し、それ以上何も言ってこない。
これは許してくれたと取っていいだろう。多分。

「オイ――虎春」
先生が静かに僕に近寄り、耳打ちするように何やら囁く。
「実際のところ、どうなんだ。勝ち目は」
「・・・ぶっちゃけ五分五分?」
「マジで!?オイオイ、頼むよ・・・自分の部活で生徒が失踪とか勘弁だぞ?」
「うわぁ、この状況で保身発言?」
まさかの最低教師っぷりを発揮である。
この人にはそろそろ腹パンしてもいいかも知れない。
「これでも、心配してんだぞ」
ちょっとだけ真面目な声で、付け足す。
「はい、分かってますよ。現時点では、最善を尽くしますとしか」
「『尽くします』?『尽くしました』だろ?虎春の場合は」
「――今回は、もっと頑張ろうと思いまして」
「・・・そうか。まァ何だ。無理だけはすんなよな、お前弱ェんだから」
本当に一言多い大人である。
でも、まあ。
心配してくれているのは確かみたいだ。

「柊君」
今度は、委員長。
「この前も言いましたけど、私、思いっきり手出ししますから」
「――ああ、分かってる。小麦もそれでいいな?」
準備運動にラジオ体操をやっている小麦に確認を取る。
「・・・うん、いいけど」
少し不服そうではあるものの、案外素直だった。
さすがにコトの重大さが分かっているらしい。何つっても自分の身がかかってるからな。
「了解が頂けて何よりです」
「委員長は怒ると怖ぇからなぁ」
より正確に言うなら、キレると見境がなくなるという感じか。
「何か言いました?」
ぐりっ、と足を踏んでくる。勿論超痛い。
「いいえ、何も言ってません・・・」
「よろしい」
僕は多分、今後もこの人には絶対勝てないと思った。

「ハル君」
そして最後に、小麦。
ラジオ体操を続けながら、僕へ問いかける。
「あたし、勝てるよね?」
どうも小麦らしくない、妙に殊勝な発言。
ただ、顔を覗き込んでも不安そうな様子はない。
「珍しいな。いつもなら『絶対勝つ』の一言だろ?」
「そうだけど。ハル君はどう思ってるかなって」
「そりゃ――勝つだろ。小麦だしな」
「本当に?」
ラジオ体操を途中で止め、じっと真っ直ぐ僕の瞳を見つめる。
「本当に、あたしが勝つと思ってる?」
「・・・んー、もし小麦ひとりだったら、危ないかな」
「そっか」
「怒らねえの?」
「うん。あたしは・・・ひとりじゃないからね。だから、勝つよ。いつも通りに」
「ああ、それでいい。小麦には、僕が・・・みんながついてるからな」
優しく微笑む小麦の頭を、よしよしと撫でる。
「もぉー!子供扱いすーるーなー!」
膨れて抗議する小麦。
そんないつも通りの小麦が、やたら可愛いと思った。
そして。
――勝たなきゃな。
と、改めて感じた。

「ふふふ、これはみなさん――お揃いで」

どこからともなく聞こえる、低い声。
校庭のライトが照らし出すのは、全身真っ黒の男。
そして同じく全身真っ黒の女。
夜でさえ、この二人の異質さを和らげることができないらしい。
それは――実に忌まわしい、黒。
「役者はこれで、全て揃ったことになるのかな?」
「ああ、これで全部だ」
夕月明はゆったりとメンバー全員を確認し、最後に僕を見やる。
「どちらが勝っても――恐らく君と話すのは今日が最後になるね」
「そうだな」
改めて言われると、妙な因縁を感じてしまう。
結構長い時間、コイツとは水面下でやり合ってきたからな。
「テメーが、夕月か」
そこに割って入る、伊崎先生。
「貴方は?」
「俺は、コイツらの顧問の先生だよ」
「あぁ、これはこれは先生。小麦ちゃんがお世話になっています」
「はん、もう保護者ヅラかよ。気に食わねえな」
本当に気に食わないのだろう、先生は普段の猫かぶりキャラを最初から捨てている。
「ふふふ、これは酷い嫌われようだ」
「当ッたり前だろロリコン野郎。俺の生徒に手を出すヤツは殺す」
「おお、これは熱い。今時珍しい熱血先生じゃありませんか。ひとつお見知りおきを」
「うるせェ、俺も今日が終われば二度とテメーに会う気はねえよ」
ギロリと凶悪な目付きで夕月を睨み付ける先生。火花の散るような眼力だ。
そして――先生は、懐から煙管を取り出す。
あれは・・・いつもの煙管?
急に、何を?
「あー、虎春。今日は俺もガチで闘うぜ」
「・・・・・・は?」
「何寝惚けた声出してんだよ。俺も一緒に闘う、ッて言ッてんだ」
「・・・どうやって?」
「コレだよコレ」
コンコン、と僕の頭を煙管で叩く。
「・・・もしかして、『修正者』?」
「ま、そういうことだ」
「だって、先生は『語り部』なんじゃ・・・」
「ドッチかひとつしかできねー、なんて決め付けんなよ少年」
言って、ニッと歯を出して笑う。
畜生、またやられた。
確かにこの場にいる以上闘いに参加する可能性は考えていたのだが。
まさか、能力アリとは。
これはまぁ、頼もしいと思っておこう。
「虎春君、先生、私からもよろしいですか?」
「あ、うん」
僕と先生を押し退けるように、委員長が前に出る。
「初めまして。私は二条三咲――生徒会長と言えば分かってもらえます?」
「おお――貴方が生徒会長の二条さんですか。初めまして」
恭しく一礼。そんな仕草も、何だか人を小馬鹿にしているように感じられる。
「描が随分とお世話になっていたそうですね」
「ええ、だから今日は楽しみにしていました――ようやく、殺してあげられる!」
言って、剃刀を構える。
「久我さんの仇、討たせて貰います」
最初から本気だ。
こっちは頼もしいというより・・・若干怖いというのが本音だったりする。

「じゃ、自己紹介も終わったところで」
――開戦と、いきますか。
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雑記。

2011-02-25 16:56:01 | いつもの日記。
RUMORのラストバトル執筆なう。なうとか言うな。
ああああああバトル難しい!
意味わかんねえよ! 何で小説でバトってんだよ!
めんどくせえ上にどんだけやっても地味なんだよ!
しかも最後だからそれなりの分量書かないとカッコつかねんだよ!
誰のせいだ! 僕か! そうか! じゃあ仕方ねえや!
そんな感じでテンパってます。
爆発したらドッカーンでよくない? って言ってた某オタク女子中学生を思い出す。
それじゃ駄目なんだよきりりん・・・何かこう、色々とさ・・・。

「僕は友達が少ない」の隣人部ツイッターがカオス状態。
・・・これ、いいのか。
夜空が「実は姉と妹がいる・・・ような・・・」とか「手から炎とかだせそうな気がする」とか
「無性にキッチリしていないと腹が立つ」とか言い出した。
それ完全に井上麻里奈だよね!?(上の3つは、南夏奈/瀬能ナツル/木津千里)
他のメンツも各自好き勝手にはっちゃけてるし。
中の人ネタ、解禁なの?
でも、正式発表ってまだ・・・だよね・・・?
まぁ、一部噂になってるキャストが本当だとしたら僕は小躍りしますが。
超豪華なんだぜ。笑えるくらい。
気合入ってんなー。

そういえば、来期のアニメが大体固まったみたいですが。
ヤバイです。見たいのが多すぎる。
何だよ! 今期はすげー少ないのに!
もっと均等に散らしてくれよ・・・。
取り敢えず、現段階で見たいのは以下。
・電波女と青春男
・ロッテのおもちゃ!
・日常
・Steins;Gate
・SKET DANCE
・神のみぞ知るセカイ 第2シーズン
・緋弾のアリア
・もしドラ
・トリコ
・まりあ†ほりっく あらいぶ
・変ゼミ
こんなん網羅できるかぁぁぁ!
まぁ、多分この中の半分くらいはこっちじゃ放映されないんだけどね。
変ゼミとか絶対無理だろ。ってかあれは実質AT-Xのみみたいな感じか?
良作、期待作が多いのは歓迎なんですけどねー。
だから嬉しい悲鳴的な。
あー、全部見てぇー。
多分、全部見れたら見れたで、やっぱ半分くらいは途中で挫折するんだろうけどね!
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悪夢の終わり、物語の続き:2

2011-02-24 22:10:33 | 小説――「RUMOR」
後手に回るのは好きじゃない。
僕は自らアクティブに動き回る方ではないけれど、主導権は持っておきたいタイプだ。
・・・客観的に述べるとすげぇワガママな人だな。
ともあれ、今は夕月の出方を待つしかできない。
そんな現状が、どうにも苛立たしかった。
勿論、僕にできることはできるだけやってるんだけどね、これでも。

さてさて、話は変わるが、ここで改めてロアについて語ろう。
ロアとは、特定の地域内で語られる噂が具現化した怪物のことだ。
この時、ロアの強さは噂を知る人の数とその深さ、信じる度合いで決まる。
つまり多くの人が強く「実在する」と信じる噂ほど強いロアになる。
これは僕らが実際に体験し、導き出した答えである。
後々伊崎先生に確認を取ったが、概ね間違ってないらしい。
ここで――例外に当たるケースがあることが分かるだろう。
それは、ロア・遠野輪廻の存在。
あれは元を辿れば電話ボックスの噂である。
そこに小麦の存在が加わり、「未来の小麦」となった。
未来の小麦ということは、当然現在の小麦と同等か、それ以上の強さとなる。
遠野輪廻は、存在するのに必要最低限の噂レベルで、その強さを発揮できるのだ。
遠野輪廻の特殊性は、ここにある。
実に厄介な存在と言えるだろう。
そして、僕は前々から考えていた。
・・・小麦は、強くなった。
じゃあ、「未来の小麦」は?
強くなった小麦に合わせて、より強くなるのではないか?
小麦はまだまだ成長途中だ。
遠野輪廻が具体的に何年後の小麦なのか不明だが、5年や10年では衰えないだろう。
むしろ、絶対強くなっているはずだ。
そうなると、「現在の小麦」は「未来の小麦」には絶対勝てない道理になってしまう。
僕らが勝つには、この道理を埋めなければならないのだ。
当然――それは、僕の役割。
夕月明と僕、どちらがパートナーとして優秀であるか。
この闘いは、それこそが問われている。
そして現在は、どう贔屓目に見ても・・・僕の完敗なのである。

ふう、とひとつ息を吐く。
放課後、小麦と歩く帰り道。
夕日を浴びながら通学路を歩いていると、何だか無性にさみしい気分になってくる。
「ハル君、疲れてる?」
そんな僕を、心配そうな顔で小麦が覗き込んだ。
「いや、んなことは――ないこと、ない、かな」
「どっちだよー」
咄嗟に嘘を吐き損ねた感じ。
いかんいかん。小麦に心配をかけているようではまだまだである。
何だかんだ言って、直接闘うのは小麦なのだから。
「大丈夫、気にすんな」
これ以上無駄に心配させるわけにもいくまい。
僕はいつも通り、笑顔を作って答える。
そんな僕の内心を知ってか知らずか――
「ハル君は、さ」
小麦は、進行方向を真っ直ぐ向いて、語りかけた。
「頑張ってると、思うよ」
「小麦・・・」
「あたしはバカだから。ムカつく奴がいたら殴る!蹴る!・・・そんだけなんだよね。
 でも――今回は、それじゃダメなんでしょ?それくらいは、あたしにも分かるよ。
 だからハル君は毎日頑張ってる。あたしには、絶対にできないことようなことを」
そんな小麦の言葉に、僕は少なからず驚いた。
意外にも、小麦は小麦なりに考えていたのだ。
「・・・僕はてっきり、毎度働かずにサボりやがって、程度に思われてるのかと」
「そんなわけないよ!」
それは何気に酷いよハル君!?と、頬を膨らませて不満を口にする。
が、すぐにまた真面目な顔に戻って、
「・・・でもまぁ、ちょっと前までは、ひとりでもやれる!とか思ってた、かな」
と付け足した。
――それはそうだろう。
小麦は強い。
今回のようなイレギュラーさえなければ、もう僕の事前調査や戦略など不要だ。
だけど。
「でもさ。やっぱりひとりじゃダメなんだよ。あたしだけじゃ、赤マントには勝てなかった」
そう――まれに、イレギュラーとしか言いようがない、理不尽な出来事が起こる。
ロアに、絶対ということはない。
そして、ひとつの手違いが、致命傷になりかねない。
僕は、そんな万が一の可能性すら潰してしまいたい。そうしなければならない。
慎重に慎重を重ねて。
「今回も、そうなんでしょ?多分、あのもうひとりのあたしは――赤マントより強いよ」
赤マントより、今の小麦は強い。
今の小麦より、遠野輪廻は強い。
だから、赤マントより遠野輪廻の方が圧倒的に強い。
そんなパワーバランスだ。
「だからさ、あたしには・・・ハル君が必要なんだよ」
僕が、必要。
必要にされる――頼られるというのは、何だか。
うん、何だか、こう。
悪い気はしない・・・かな。
そんな風に、僕は思った。
妙にムズ痒い胸の内をごまかすように、僕は呟く。
「そうか。だったら、お兄さん頑張んないとなー」
「・・・もぉー、い、いつまでもお兄ちゃんじゃないってばぁ!」
「ふふん、いつまでたっても、小麦は小麦だろー」
「・・・そうだけど!そうだけど、違うもん。あたしは――」
急に、小麦の足が止まる。
そしてその身に纏う空気が変わる。
一体、どうしたって――

「あたしは、そんなハル君が、好き・・・だよ」

「え・・・?」
「なっ・・・何驚いてんの、今更。そんなの、当たり前・・・じゃない」
顔を赤くして、恥ずかしそうに小麦は言った。
え。
コムギさん。
マジですか。
・・・マジモードですか。
僕はもう一度小麦を見つめる。
嘘とか、冗談の類には見えない、かな。
好き・・・か。
うん、そりゃあ、嫌われてはないだろうと思ってたけども。
はっきりと言葉にされると、さすがにね。
「いつも一緒にいてくれて。助けてくれて。優しくしてくれて。子供の頃からずっと――。
 そ、それで好きにならないわけ、ないでしょ」
照れているのは小麦も一緒らしい。
いつも考えなしの小麦といえど、さすがにこういう状況では恥ずかしいんだな。
「ハル君は?あたしのこと・・・その、どう思ってるのかな?」
そして更に、そんな恥ずかしいことを聞く。
そそそ、そんなものは、そりゃあ――決まっているじゃないか。
「小麦は――小麦だよ」
「もう、またそんなこと言ってごまかすんだから!」
ぺしっ、と僕の肩を叩く。
「――ぐぉっ、痛ぇよ!?」
小麦の「ぺしっ」は、そんな可愛らしい擬音で表せるレベルをはるかに越えていた。
例えるなら、標準的男子高校生の全力正拳突きくらい?
「まーたまたぁ。本当ハル君は調子いいんだから!」
ぺしっ。ぺしっ。
「あがっ、ぬおっ!?」
やめて!マジでやめてください!
僕はお前みたいに近接パワータイプじゃないんだからね!?
「――で?」
がしっ。
今度は、回避態勢に入った僕の右腕袖口を掴む。
ほら、よくラブコメなんかであるじゃないか。
小さくて可愛い女の子が、きゅっと主人公の袖口を掴んでくるシーン。
あれを思い浮かべて欲しい。
で、そこに込められた力が万力クラスだと思って欲しい。
「きゅっ」じゃなくで、「ぎりぎりっ」とか「みちみちっ」とかそういう雰囲気。
完全に僕を拘束してるよねコイツ!?
「ちょ、小麦っ!や、やめっ、手首がちぎれる!?」
「だから。ハル君は・・・どう思ってるのかなって、聞いてるんだけどな?」
目が笑っていなかった。
なるほど、これがヤンデレですね。分かりました。
もしこの状態で「僕、別にお前のことなんか好きじゃねえし」とか言おうものなら。
そうだな。まぁ、よくて右手切断くらい?
・・・怖いなんてもんじゃねえ。
「おおお、落ち着け小麦。いいか、まずはこの手を離せ。話はそれからだ」
「・・・ちゃんと答えてくれる?」
「お、おう、大丈夫だから。安心していいぞ」
「うん・・・」
ようやく小麦が僕を解放してくれる。
ふう、まずは第一関門突破、である。
しかし、さてこれはどうしたものか・・・。
「いいか、小麦」
「うん」
「ぼ、僕は」
「うん」
「僕はっ、その・・・こ、小麦のことをどう思ってるかというと、だな」
「うん」
「・・・その・・・す」

「ちょっと待ってもらおうか」

――絶妙のタイミングで待ったがかかる。
た、助かった!
僕は驚きと安堵の気持ちで声のした方を振り向いた。
「危ない危ない。目を離すとすぐこれだ――」
そこには。
「ふふふ、久し振りだね、小麦ちゃんに虎春君」
どんな景色にも馴染まない、喪服の男――。
「・・・夕月・・・!」
そう。
災の元凶、夕月明。
いつからいたのか。どこから現れたのか。
奴はさも当然のように、そこに立っていた。
小麦は無言で臨戦態勢に入る。
「おお、怖い怖い――輪廻」
その言葉に反応するように、夕月の前に黒い巫女装束の女性が現れた。
遠野輪廻。
彼女は「風舞カザマイ」という瞬間移動スキルを持っている。
こんな風に出現することなど造作もない。
そして、その遠野輪廻も戦闘モードに切り替わる。
「まあ待て、輪廻。今日は――話をしにきたんだから」
「話・・・だと?」
夕月の言葉は全て癇に障る。僕は苛立ちを隠すこともせず、答えた。
「もう、あんたと話すことなんか何もねぇはずだけどな」
「そう言うなよ虎春君。つれないなぁ」
「はん。虫唾が走るぜ、人殺しめ・・・ッ」
そうだ。こいつは――仲間であるはずの久我さんを殺した。
役に立たなくなったからなのか。情報を漏らされるのが怖かったのか。
それとも、完全に気まぐれなのか。
どんな理由にしても、許せるはずもなかった。
小麦の件もあるから、とうに許す気もなかったのだが――もはや決定的だ。
「それは描のことか?いやいや、殺したのは俺じゃないよ。俺が殺せるわけないだろう?」
「ふざけんな!お前以外に誰がやるってんだ!」
「だから、俺じゃないよ。描を殺したのは輪廻だ」
「き、貴様ァ・・・ッ!」
そんな詭弁にもならないことを、よくも平然と言えるものだ。
癇に障る、どころではない。
おぞましい。忌まわしい。呪わしい。
「ま、そんなことはもうどうでもいいじゃないか」
「どうでもいいだと!?テメェ!」
「いや、そりゃ止められなかったのは俺にも責任がある。
 しおらしく悔い改めれば描が生き返る、というならそうするさ。
 俺としても、彼女を失うのは辛いからね。
 何せ・・・彼女は俺の言うことなら何でも聞くいい玩具だったから」
平然と。
あくまでも悪びれることなく、夕月はそう言ってのけた。
「ふふふ、知ってるかい。描は俺が命じれば靴だって平気で舐めたんだぜ?」
そんなことを、自慢気に――。
僕の頭の中で、何かが音を立てて切れる。
刹那。
小麦が何も言わずに夕月めがけて突進していった。
瞬間移動のようなその瞬発力で、距離は瞬時にゼロになる。
激しい衝突音。
それはまるで、いつかの再現のように。
「・・・ありがとう、輪廻」
小麦の右腕は、遠野輪廻によって遮断された。
ギリ、と小麦が足を踏みしめる音が聞こえる。
「オマエは、人間じゃない!」
・・・小麦。
怒りや悔しさが綯い交ぜになった表情で、彼女は責める。
「仲間を殺して!バカにして!平気で笑って!オマエなんか、人間じゃない!」
「ふふふ、おかしいな小麦ちゃん。人間じゃないのは――」
言いかけた夕月の顔が、大きく歪む。
――僕の拳が、夕月にクリーンヒットした。
遠野輪廻を小麦が押さえてくれていたお陰だ。
「あんたはもう、喋るなよ。耳が腐りそうだ」
「ぐっ・・・なかなかやるじゃないか、虎春君。やっぱり若さは素晴らしいね」
殴られてバランスを崩した夕月は、しかしまだ不敵に笑っている。
この野郎・・・何度でもぶん殴ってやる!
「ハル君っ」
追撃しようとしたところを、小麦に無理矢理引き戻された。
次の瞬間、目の前を炎の槍が横切る。
「――炎舞エンブ香車ヤリ
あッ・・・ぶねええええ!
小麦に引っ張られてなければ、今の遠野輪廻の一撃で僕なんか即死だ。
冷静に・・・冷静になれ。
僕は直接闘えない。あくまでも、参謀のポジションなのだ。
「輪廻――もういい、やりすぎだ」
口元に滲む血を拭いながら、夕月は遠野輪廻に命じた。
くそ、やはり簡単にはいかない、か。
「虎春君、まずは冷静になって、聞いて欲しい」
「・・・何を、だよ?」
あれだけのことを言ってこちらの動揺を誘っておきながら、滅茶苦茶な言い分だ。
しかし、これ以上熱くなっても遠野輪廻に返り討ちにあってしまう。
「今日俺はメッセージを伝えにきただけなんだ」
「メッセージ?」
「ああ。ようやく、輪廻の育成が終わった、とね」
遠野輪廻を育て、小麦と再戦すること。
それが、約束だった。
確かに夕月にいいようにあしらわれている感はある。
だがそれを打ち倒してこその勝利であり、真の撃退と言えるのも間違いない。
僕らが目指すのは、夕月と二度と接触しないで済むことなのだ。
「へえ。じゃあ、今からでもやってやる!」
息巻く小麦。
「まあ、落ち着き給えよ小麦ちゃん。こういうのは、セッティングも大事なんだ」
「ちっ、めんどくさいなあ」
「小麦、ちょっと黙って」
僕は、小麦を制して続きを促す。
「場所と日時を決めて、正式に闘うってことだな?」
「その通り」
ふふふ、と不気味に笑う夕月。
「そうだな、3日後の夜、君たちの学園の校庭でどうかな」
「・・・分かった」
「俺が――輪廻が勝ったら、小麦ちゃんは俺のものだ」
「小麦が勝ったら、あんたは二度と僕らの前に顔を出すな」
「いいだろう、約束だ――輪廻、帰るぞ」
言いたいことを言い切って。
夕月は、遠野輪廻を呼び寄せてその腰に手を回した。
「では、3日後に。楽しみにしているよ、小麦ちゃん」
「ふん。あたしは絶対負けない。今度こそあたしが最強だって分からせてあげる」
「ふふふ――」
そんな、気持ちの悪い言葉を残して。
「――風舞カザマイ
夕月明と遠野輪廻は、僕らの視界から掻き消えた。

負けられない。
僕は拳を握りしめる。
――勝負は、3日後。
僕にできることは、残りわずかだ。
「ハル君」
先程までの緊張が嘘のように、小麦は柔らかく笑った。
「大丈夫。あたしたちなら、勝てるよ」
あたしたち、、
そう、僕と小麦なら。
ふたりなら――きっと、勝てるはずだ。
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スタート。

2011-02-23 22:01:54 | いつもの日記。
昨日、公開はもうしばらく待って下さいと言ったな。
あれは嘘だ。

というわけでRUMOR最終話「悪夢の終わり、物語の続き」開始しました。
ストックはありません。
推敲とかほとんどしてません。
あとで直せば良いんだよ! 今はとにかく先を書くのが優先なんだよ!
という理念に基づいております。ご了承ください。

多分、最終話だからといって特別長い話にはならないと思いますが、
まぁゆっくりとお付き合い頂ければ幸いです。
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悪夢の終わり、物語の続き:1

2011-02-23 21:47:36 | 小説――「RUMOR」
例の「赤マント」騒動から数日。

最強のロア・赤マントは見事撃破。事件も一段落し、何事もなかったような日々が戻った。
平和だ。
実に、平和だ。
それが僕には――異常に見えた。
今回は死人が出ているというのに。それも、超有名人、生徒会副会長久我描だ。
それなのに、たった数日でまるで何事もなかったように元の生活に戻るなんて。
少なくとも僕は、僕ひとりだけは、その影響を断ちきれずにいた。

「辛気臭ェツラしてんなァ、オイ」
部室に現れるなりそう言ってのけたのは、顧問である伊崎先生。
どうにも気まぐれで、部室に来る日と来ない日がまちまちである。
「――あれ?小麦と委員長はどうした?」
「委員長は生徒会、小麦は掃除当番です」
「あー。で、虎春ひとりなわけか。つーかお前マジ暗くねェ?」
半笑いで僕をからかいつつ、僕がいるテーブルの対面に座る先生。
「まぁ・・・色々、考える事が多くて」
「相変わらず苦労性だな、お前はよ」
「そりゃあ、あんなことがあれば誰だってそうなりますよ」
「・・・副会長のこと、か」
言って、スーツのポケットから煙管を取り出す。
先端に何やら詰め込んで口に咥え、すうっと大きく一息。
「先生」
「んー?」
「そろそろ、教えてもらってもいいですか」
「あー・・・」
「もうのらりくらりと躱すのはやめてくださいよ。何たって――今回は死人が出てる」
そう。
この人は、きっと何か知っている。
もしかしたらそれは、もの凄く大きく、重要なことなのかも知れない。
今の僕は、とにかく情報が欲しいのだ。
攻めるにしても、守るにしても。
どうも話したくないらしいが、こっちだってもうなりふりかまっていられない。
「そう、だな」
観念したように呟き、溜息を吐く。
「これ以上隠すのも、無意味か」
「やっぱり何か、知ってるんですね」
「ああ、ま、大したことは知らねェ。だからあんまり期待はすんな」
さて、どこから話したモンかねェ――と苦笑混じりに呟き、伊崎先生は語り始める。

「俺は・・・まァなんだ。結構嘘を吐いてる」
「・・・嘘?」
「そうだ。例えば――俺は、夕月明を、、、、知っている、、、、、
・・・驚いた。全く予想してなかったわけではないが、それでも充分驚愕に値した。
目の前にいるのが僕が知る伊崎先生ではない別の誰かのような、そんな違和感さえ覚えた。
夕月明。
忌まわしく疎ましく憎らしく腹立たしい、呪われた喪服の男。
「言ッとくが、別に仲間ッてオチはねーぞ。ただ、俺も『友達の友達F.O.A.F.』の一員だからな」
「な――そんな!」
「あー、隠してたことは謝る。でもな、あの組織はもう何の力も意味もねェ」
「それでも・・・ロアのことだって、闘い方のことだって、知ってたんじゃないですか!?」
「おう、知ッてたぜ。だから、たまにトレーニングしてやッてただろ?」
――トレーニング。
僕はその言葉にハッとする。
そう。切断魔ジャック・ザ・リッパー――あれは、伊崎先生が作り出したロアだった。
つまり。
語り部、、、――」
「ああ、夕月のヤローはそんな名前を付けたらしいな」
そうか。伊崎先生は、ロアと語り部のことを知った上で、狙ってロアを作り出したのか。
それって。
「小麦を鍛えるため、だったんですか?」
「だから、それは最初からそうだと言ッてただろ?」
・・・そうだったような気もする。
でも、そんなもん完全に嘘かテキトーなことを言ってるだけだと思っていた。
っていうかこの人にそんな思慮があったとは到底思えな
「お前は今失礼なことを考えているな?」
「ハハハとんでもない!」
笑ってごまかしてみた。
ぶっちゃけ超意外だった。黙っておこう。
「ま、それよりも、だ」
こほん、と小さく咳払い。先生が話を続ける。
「組織内で夕月はそこそこ有名だ。勝手に下部組織作ッたりな。でもそれだけだ」
「処罰とか、そういうのはなかったんですか?」
「下部組織を作るな、という規定はないからな」
「適当だ・・・」
「そう、テキトーなのさ、あの組織は。だから俺も、正直何も知らないのと大差はない」
末端まで情報が行き渡らない。
命令が伝わらない。
管理できない。
大きな組織というものは、往々にしてそういうものだと聞く。
「だが――更に有名なのは、神荻小麦、、、、遠野輪廻、、、、だ」
「なっ――小麦と、小麦のお母さん?」
「そう。遠野は、組織の実験台だッた。そして小麦はその実験結果――サンプル、、、、だ」
実験結果・・・だと?
何だ、その忌々しい言葉は。
小麦のお母さんが、実験台?
小麦が、サンプル?
腹の中に泥のような憎悪が渦巻く。
何が、何を、何で、何故、なぜ――!?
額に嫌な汗が浮かぶ。
ああ、頭が痛い――。
そんな中でも、僕は自然と、その意味を導き出す。
それは、つまり。

「小麦は、人間とロアのハーフだ」

――人間と、ロアの、ハーフ。
人間・遠野輪廻は、ロアと・・・怪物との間に子供を作らされた。
その子供が、小麦だと。
そう言うのか。
「賢いお前のことだ、これまで全く気付かなかッた・・・わけでも、ないだろ?」
「・・・気付きませんよ、そんなこと。気付くわけが、ない」
「そうか?」
「ええ」
「ま――それならそれで、いいんだけどよ」
それから。
先生は、補足するように語ってくれた。
実験は、組織内の極少数による過激派によって独自に行われたこと。
その過激派は他のグループによって既に消され、遠野輪廻と小麦の存在が知れ渡ったこと。
組織の暗部であり罪の象徴であるとして、小麦は保護対象となっていること。
小麦を引き取った小萩さんも組織の一員であり、学内での監視役が伊崎先生であること。
「誤解だけはしないで欲しい。俺も神荻さんも――小麦に幸せになッて欲しいんだ」
酷い実験の犠牲者ではあるけれど。
ひとりの人間として、当たり前に幸せになる権利がある。
そう願っている――。
小萩さんを知る僕には、それは疑う余地もないことだった。
それは、先生だって。
信用に足る人物だと、僕は思っているから。

長い沈黙が続いた。
部室の外から聞こえる運動部の掛け声。演劇部の発声練習。ブラスバンドの奏でる音色。
淡い夕日が差し込む部屋の中、僕は頭を抱えるようにして冷静さを取り戻そうとしている。
普段ならこんな雰囲気に耐えられないであろう伊崎先生も、今は黙って煙管をふかしていた。
――小麦は小麦。
生い立ちも何も、別に関係ない。
だから僕も、これまでと態度を変える必要はないし、むしろ変えちゃいけない。
そんな当然の結論は、既に出ている。
あとはただ冷静になるだけ。
新しい事実を、当然のこととして受け入れるだけ。
「――よし」
顔を上げ、パンッと強く両頬を張る。
「オッケー、飲み込みました」
「ハッ、さすがだよ、ハル君」
わざとらしい。
これくらいは受け入れろと、乗り越えてみせろと、そういう意図だったくせに。
さて。
事実を事実として、しっかりと乗り越えて。問題は、そこから先なのだ。
「先生。例えば、夕月が操るロアの弱点とか知りませんか?」
「あー、知らんなァ」
「じゃあ、夕月の居場所とか?」
「知らん」
「次の夕月の狙いは?」
「知るわけねーだろ」
「・・・役に立たねえ!」
「だから最初から言ッてるだろうが!俺に頼るな!」
うわぁ!逆ギレかよ!
何だこの大人。最低だ・・・。
「そもそも俺ァ、夕月のそもそもの目的も分からねえんだよ」
「あー。それはアレですよ、ロリコンだから」
「それそれ。意味が分からん。どこまでマジなんだ?」
「目を見た感じ、全部マジっぽかったですよ」
「やッぱりそうかー・・・理解できねー」
今度は先生が頭を抱える番だった。
まあ、あんな奴は理解しなくていいと思うんだけどね。
しかし・・・こうなると、本気で困ったな。
敵は夕月明。そして、「未来の小麦」――ロア・遠野輪廻。
小麦は強くなった。
それはもう、見違えるほどに。
しかし、これでいいのか?
勝てるのか?
不安は尽きない。
それほどに、不気味だった。

と、そこで勢いよく部室の扉が開く。
「ハル君ー、遅くなってごめん!」
小麦だった。
「っと、園絵ちゃんもいたの?久しぶりー」
「おー。元気か小麦ィー」
「うん!元気元気!」
言って、にっこりと笑う。
コイツは・・・多分、何も考えてないな。
いや、自分は勝てるとしか思ってない。
それが小麦の長所であり、強さなのだ。
僕は小さく溜息を吐いて。
「小麦、帰るぞー」
「うん!」
取り敢えず、いつものように。
ありのままの小麦を、尊重すべきなのだと思った。
そして。
それで足りない分は――僕が補ってやればいい。
ただそれだけのことなのだ。
誰にも気付かれないように、僕はひとり、覚悟を決めた。
小麦と、小麦がいる僕の世界を守るために。
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「バカとテストと召喚獣 (9)」読了。

2011-02-23 15:44:46 | 読書感想文。
バカテス9巻読了。
対Cクラス編完結です。
っていうか、前編である8巻の内容をもう覚えてません。
ま、いっかー。

今回は全編通して試召戦争って感じでしたね。
本作に戦略とか、そういうのあんま期待してないのは僕だけじゃないはず・・・。
いやまぁ、面白かったけどさ。
でも、どーしてもギャグ部分にしか目がいきません。
だってバカテスだもん! 仕方ないよね!

しかし、9巻で一応話は一段落ではあるんですが、最後に若干次回への伏線が張られてましたね。
うーん・・・どうしよう。これ、確実に忘れる自信がある。
何だよ、そういう猪口才なことするなよ!
小手先のテクに頼るなんてバカテスらしくないぞ!?
とまぁ、勝手なことを言ってますが。
きっと次を読めば違和感ないはず。そういう作りにしてくれるはず。
僕、信じてる。

とはいえ、次は短篇集になるみたいですね。
9.5巻? かな?
やっべー・・・絶対伏線忘れる。
仕方ないっちゃ仕方ないっすねぇ・・・。
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雑記。

2011-02-22 21:02:55 | いつもの日記。
名塚佳織さんが結婚されたそうです。
びっくりした! 超びっくりした!
何だろう、普段芸能人の結婚とか全く興味ないのになー。
別にショックだったってわけじゃないんですけどね。
むしろ晩婚化の激しい声優業界ですので喜ばしい限りです。
でも、驚いたのは驚いたんですよー。
まぁ、何にしても、ご結婚おめでとうございます。
いちファンとして、今後も変わらぬご活躍を期待しています。

RUMORの執筆を再開したよ!
・・・どんだけ期間あいてんだって話。
あんまり久々だったんで、キャラ忘れてます。
文体も忘れてます。
もう何もかもだ!
駄目じゃん。
何はともあれ、最終話です。長かった。
上手いことキレイにまとめられればいいなーと思ってます。
公開は、もうしばらくお待ち下さいませ。

PS3キャサリンが楽しそう。
いや、それはもうだいぶ前から言ってるんだけどさ。
買うタイミングを見計らおう、と思ってるんですが、どうにも気になっちゃうって話。
面白そうなんですよー。くぅぅ。
でもな。まだ他にもやりたいゲームとか読みたい本とかあるし。
少しずつ、こなしていこうと思ってます。
キャサリンは後回しー。
・・・でもやりたい。
いや、後回しだけどさ。

3DSの実機を初めて見ましたよ。
いやー、確かにあれは目が疲れますね。
5分が限界、という噂も決して大げさじゃないかも。
それに視野角が異常に狭いってのも前評判通り。
ちょっと横にズレるともう3Dに見えません。ただのブレ画像になっちゃう。
でも、画面はキレイだししっかり裸眼で3Dに見えました。
だからまぁ、スゴイのは間違いなくスゴイです。
レイトン教授の新作はやりたいし、3DはOFFにすることも可能なので、いずれ買おうかしら。
にしても、相当先の話ではあるな。
むしろNGPの方が個人的には気になります。
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