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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第03巻【ネタバレばれ】

2014-09-21 02:56:20 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第03巻 ※第3章(途中から)※第4章 ※第5章(途中まで)

第3章 風の中を行く

しんと静まり返った公会堂ロビー。
物音ひとつ聞こえない劇場内。
いいようのない焦りをおぼえた亜弓は勢いよく会場への扉を開けた。
その目の前には・・・。

自分が演じたのとは幕まったく異なる美登利がそこにいた。
ーーー姐御肌で美しくも凛々しく光り輝く少女、美登利。
つい数十分前までそこにいた自分の美登利の匂いを全く消し去るように
舞台上で跳ね、動き回るどこまでも元気な美登利。
誰もがあまりにイメージの異なるマヤの美登利に呆れながらも、
目は釘付けになっていた。
そして美登利の小さな初恋が踏みにじられるそのシーン、
亜弓が泣きわめいたそのシーンで、マヤはにっこり微笑んだ。
亜弓がくやしさを表現したシーンで、マヤは哀しみを表現した。
最後まで亜弓の美登利とは全く異なる美登利がそこにいて、そして
観客を魅了した。

劇団つきかげの上演が終わった。
下馬評を覆す喝采に、マヤ達は沸き立ち、亜弓達は驚愕した。
そして結果発表ーーー。
第3位 劇団ポー『バラの一族』
第2位 劇団市季『ジーザス・クライスト・ウルトラスター』
第1位・・・・
劇団オンディーヌ『たけくらべ』
そして
劇団つきかげ『たけくらべ』

異例の2劇団同時入賞で、マヤ達は劇団存続の可能性をつなげた。
北島マヤという存在が、もはや目を背けることなどできないほど側にいることを確信した亜弓、
更なるライバル心を燃やす。
そして妨害工作にも関わらず同時入賞させてしまった小野寺も、
本選ではどんな手を使ってでもつきかげを潰しにいくことを誓う。
速水真澄は、率直にマヤの演技を評価していた。
「きみの美登利はよかったよ 実によかった」
思わず顔を赤らめるマヤに真澄は茶化しながらあんなおてんばみたことない、
とマヤをからかいながら大笑いした。
マヤも必死に言い返してはみるものの反対に「がんばりたまえ おチビちゃん」
と軽くあしらわれてしまう。
そんな中マヤのもとにまた、紫のバラが届けられた。


第4章 春の嵐
本戦出場を果たした劇団つきかげ、次の演目は『ジーナと5つの青いつぼ』
そして主役ジーナはやはりマヤだった。
配役に納得するメンバーが大半である一方、ここへきて
露骨にマヤびいきの演目が続くことに不満を感じる団員も出てきていた。
劇団内にすこしずつひびが入りつつあるなか、稽古は続き、いよいよ
全国大会まであと5日、開催地名古屋入りとなった。
滞在先の古びた旅館につくと、なにやら賑やかな一行を目撃した。
新幹線でも一緒だったその一行、実は同じく演劇コンクールに出場する
北海道代表、劇団一角獣、優勝候補との呼び声高い劇団である。

会場となるフジホールで、上演順が発表された。
劇団一角獣は初日、劇団オンディーヌは4日目、そして劇団つきかげは
6日目となった。
舞台稽古を終え、優しく亜弓を支える桜小路を見たマヤは、
もやもやした気持ちを抱いていた。
そして桜小路にそのことを尋ねると、桜小路は
ずっと以前からきみが好きだよ、とマヤに微笑んだ。
その言葉はマヤの心を温かくみなぎらせるのだった。
そしていよいよコンクール開催。
やつれるほど稽古にこもりきりの亜弓擁するオンディーヌ、
いったいどんな演出なのか、全く予想もつかない一角獣、
そしてこれに敗れれば存続はないつきかげ、
戦いはスタートした。

**

コンクール初日、前評判通り劇団一角獣の演技は圧倒的で、
強烈な印象は他の舞台を完全にかすませた。
しかし真の敵は劇団つきかげであると確信するオンディーヌの小野寺は、
ひそかに工作を進めた。
つきかげ内に潜む不協和音を利用し、言葉巧みに仲間に引き込んだ。

劇団オンディーヌ、亜弓の舞台はやはり圧巻で、
敵でありながらマヤは亜弓の演技にどんどん魅了されていった。
そしてその舞台を見るため、速水真澄も会場に駆けつけていた。
そこで真澄は小野寺の「手はうってある」という言葉を耳にする。
いよいよ劇団つきかげの出る6日目の朝、事件は起きた。

劇団つきかげの舞台セット、大道具小道具そして衣裳、なにもかもが
ばらばらに破壊され、使い物にならなくなっていた。
かろうじてマヤの衣裳だけは使用できる状態だが、後は
見るも無残に破壊されている。
犯人が誰かも分からない中、マヤは黙々と修復作業にとりかかった。
上演は午後2時から、一角獣のメンバーも作業に協力を申し出、
みんなで最後まで希望を捨てずに修復作業を行っていた。
そんな中、使えそうな大道具や衣裳を貸してくれる所が見つかったという
情報が飛び込んできた。
今からトラックで取りに行けば上演には何とか間に合う。
この渡りに船の幸運に団員は歓喜し、小道具の修理を担当するマヤを残した
残りのメンバーは全員荷物を引き取りに向かった。

その頃会場では、あの大都芸能の速水真澄が来ていることがちょっとした話題になっていた。
あわよくばスカウトされるかも、などと色めきだつ女優の卵達、
そんな声には全く興味も感じない真澄だったが、ロビーで一人
小道具の修繕をするマヤが目に留まる。
大道具も小道具も壊されたのだという事を知り、真澄は前日の小野寺の不穏な言葉を思い出す。

11時半、そろそろみんなが戻ってくる時間だ。
あいにくと降りだした雨は激しさを増し、マヤの不安も高まる。
そして12時を過ぎ、帰ってくる時間になっても一向に戻ってくる気配がない。
時は無常にも過ぎ、とうとう前の舞台が終了する時間となってしまった。
このままセットも役者もいない状態では棄権するしか道はない。
マヤは一人雨の中びしょびしょになりながらみなの到着を祈るしかなかった。
そんな様子をみかねた真澄は、マヤに自分のコートをかぶせ、
中に入るよう諭す。
しかしそんな真澄を自分達の敵だと思っているマヤはコートを真澄に叩き返し、その場から走り去った。
「かまわないでください!本当はおもしろがっているくせに!
上演できなくなればいいと思っているくせに・・・」
「ああ、そうだったな、とくにきみ達はいなくなってくれた方がいい・・・」
マヤは真澄に対して明確な嫌悪感を覚え、その時真澄は
あんな小さな少女のためにびしょぬれになる自分を嘆いていた。
速水真澄ともあろう者が・・・!

劇団一角獣のみんなの協力で修復出来たセットを運び、
何とかギリギリまで時間を稼ぐことはできた。
しかし肝心の役者陣が到着しないまま、開始の時間を迎えてしまった。
もはや棄権するしかない、誰もが諦めかけたその時、
「あたし演ります・・・」
マヤはひとかけらの希望を胸に、たった一人で舞台に立った。

**

劇団つきかげ『ジーナと5つの青いつぼ』
マヤはたった一人で舞台に立ち続けた。
不思議なことに相手役の見えないことが気にならなくなってくる。
さっきまで雨の中震えていた少女とは思えない堂々とした舞台に、
真澄はただただ見入るばかりだった。
そしてとうとうマヤは最後まで一人でこの舞台をやり遂げたのだった。
舞台の幕が降り、客席は静寂ののちの大歓声が響き渡っていた。

全日本演劇コンクールは最終日を迎え、いよいよ審査結果の発表となった。
一般投票
第3位 劇団オンディーヌ『灰の城』
第2位 劇団一角獣『運命』
そして・・・
第1位 劇団つきかげ『ジーナと5つの青いつぼ』
このままいけば入賞は間違いない、しかしその時、
オンディーヌの小野寺から異議が唱えられた。

多数の出演者が無断で欠席、唯一の出演者が勝手にセリフを変え、
身勝手な演技を押し通したのは演劇精神に反するーーー

最終的に優勝は劇団オンディーヌの『灰の城』に決まり、
つきかげは審査対象から外された。

優勝トロフィーを手にしても、亜弓の心は晴れなかった。
たとえ結果はどうであれ、たった一人で1時間45分もの舞台を演じ抜き、
一般投票で最多得票を獲得したのはマヤに違いないのだから。

劇団つきかげ存続の道は絶たれた。
涙が止まらないマヤは、差し出された真澄のハンカチも突き返し、食ってかかる。
東京に戻った一行は、青柳プロが建てた研究所から追われ、
本当に千草の元で演劇を続けたいという熱意のあるものだけが
オンボロアパートに移って劇団つきかげとしての活動を続けることになり、
マヤは月影千草、青木麗と共に6畳一間のアパートで暮らすことになった。
その頃大都芸能では新人発掘に躍起になっていた。
北島マヤを他の大手プロスカウトマンが狙っている事を知った真澄は、
マヤを必ず大都の物にすることを決意する。

一方マヤは、新天地でも未来だけを見つめ、明るく過ごしていた。
明日の事だけ考えて。
あたしはきっと女優になる!


第5章 あした草

おんぼろアパート白百合荘の朝は、マヤの大きな「おはよう」の声で始まる。
中学3年に進学したマヤ、
高校を卒業し、喫茶店でアルバイトを始めた麗、
住み込みのパン屋でアルバイトをするさやかと泰子、
稽古場もなく、生きるだけで日々忙殺される日々に、皆焦りを感じ始めていた。

そんな中、マヤは『リア王』の上演されている会場の前を通りかかった。
会場には亜弓をはじめ、姫川歌子や速水真澄など大都芸能・オンディーヌの
関係者も多数いるようだ。
当然チケットなど買えるはずもなく、ただスチール写真を眺めることしか
できないマヤ。
それに気づいた真澄は紫のバラを添えたチケットを子供に託してマヤへプレゼントした。

上演が終わり、久々の興奮を覚えるマヤ、気づけば夜9時、あわてて帰ろうとした所で
またもや真澄とぶつかってしまう。
送っていこうか、という真澄にあっかんベーを返したマヤを笑いながら見送る真澄。
「もののみごとに振られましたわね、真澄さま」
大都芸能一の社長秘書、水城がマヤに会ったのは今日が初めてだった。
真澄が小野寺と秘密裏に進めている、北島マヤ争奪作戦。
しかし水城には単に真澄がマヤを金の卵として見ているだけには思えなかった。

ボロアパートでは声が筒抜け、夜の公園では通報される、
なかなか稽古できる環境になかった劇団つきかげだが、近所の古びた教会が
掃除をしてくれることを条件に稽古場として使用することを許してくれた。
やっとこれで本格的に演劇ができる。
みんなの目にきらめくものがあった。

その頃、真澄と小野寺は桜小路を呼び出していた。
マヤと懇意にしている青年、彼にマヤのことで話があったのだ・・・。

**

教会での稽古は続いた。みな日々の学校や労働との両立で疲労困憊、
稽古が終わると泥のように眠る毎日だ。
ある日マヤは千草に『紅天女』について尋ねる。
いつか自分も・・・漠然と思うマヤに千草は紅天女は人ではなく、梅の木であると告げる。
いまのマヤではまだまだ、しかしいつか、いつかきっと・・・。

学費の足しにといくつかアルバイトを探すマヤだったが、
中学生を雇ってくれるところはどこにもない。
そこへ桜小路が現れ、オンディーヌに来ないかと言ってきた。
一緒の舞台へ立ちたいという純粋な思いから必死にマヤを誘う桜小路、
しかしマヤはつきかげのメンバーから離れることなどできなかった。
例え桜小路の誘いでも・・・。

アルバイトも見つからず、沈む心のマヤは、ある広告記事を見つける。
“田淵エミ出演初映画『白い青春譜』クラスメイト役一般募集”
どうせアルバイトをやるのなら、演劇でやればいいのだ。
そう思い立ったマヤはさっそくオーディションに応募した。

オーディション当日、なんとか一次審査を通過したマヤだったが、
二次審査で落とされてしまう。
しかし審査員の一人がマヤの演技がどうしても心に残り、特別に
別の役で出演しないかというオファーを受ける。

入院患者の一人、左足がマヒしていて不自由、セリフは一言
「はい おとしもの」

動かない左足の演技を習得するため、
マヤは縄で左足を縛った。


~~~出演以外の登場作品~~~~~~~~~~~~~~~~
(演劇)リア王 1Fる27席
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


第04巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
おなじみのマヤと真澄のやりとりが本格的にスタートするのは、本巻の『たけくらべ』から
だったようです。
からかいながらも演技をほめる真澄、
それにはむかい文句で応酬するマヤ。
最初こそ「おチビちゃん」という表現ですが、チビちゃん呼びもここからです。
『たけくらべ』でとうとう、月影千草の秘蔵っ子、北島マヤという存在が
関係者の間で確固たる記憶に残り、物語が動き出すといった所でしょうか。

個人的には、真澄はもはや“上演終わったら紫のバラおーくろっ”って思いながら
見てる気がして仕方ないんですけど・・・。

そして個人的に結構好きな劇中劇『ジーナと5つの青いつぼ』を経て、
完全にマヤと真澄の掛け合い漫才は確立といった感じです。
若さゆえか、“速水真澄ともあろうものが・・・”をやたら繰り返す真澄ですが、
それだけ女っ気もなく仕事しかしてなかった青年時代だったんですね・・・。
だから気づくのがあんな遅くなるんだ・・・と思ってみたり。

それにしても、まだまだこれからずっと先の話ですが、
風火水土のエチュードで亜弓さんがやった土器の演技がBest Favoriteの私は
ツボ好きなだけなのでしょうか・・・。

リア王のチケットでは、真澄のマヤの扱いもだんだん手慣れたものになってきて、
多分ぜったいわざとぶつかったと思うんですよね~。
おなじみクックッ笑いも炸裂ですし。

あとそうです、リア王で水城秘書も登場し、いよいよこれで主力メンバーほぼ
出そろった感あります。
水城さん、最初から真澄の思いに気づきかけているという恐ろしさ。

最後は初期おなじみのスポ根的稽古です。
縄、好きですよね・・・。

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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第02巻【ネタバレばれ】

2014-09-17 10:32:12 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第02巻 ※第2章(途中から)※第3章(途中まで)

第2章 炎の階段


『若草物語』のベスとして過ごすうちに、マヤは心の底からベスの気持ちを
吸収してしまった。
立ち振る舞いや言い回しなど、いつものマヤとは全く違う
人見知りで引っ込み思案なマヤ、そう
「ベス」と声をかけても返事をしてしまうくらいに・・・。

一週間後の適性テストの日、密かに鍛錬を積んでいた水無月さやかを含めた4名とともに、
マヤは稽古場内の椅子に静かに腰かける、ベスとして。
10分、20分、時は流れるが椅子に座る以外に与えられた課題はない。
徐々に集中力を切らしていく他の団員に比べマヤは一人、実に自由にベスとしての時間を
過ごし続けた。
1時間半ほど経過したその時、もうマヤのベスを否定する物は劇団の中に
一人も存在していなかった。

ピアノが得意なベスの役をつかむため、桜小路の家でピアノを習うマヤ。
「いつか一緒にお芝居できるといいね」
そんな桜小路の言葉に心をきゅんとときめかせるのだった。

ある雨の日、桜小路に借りていたピアノの教本を返しに行くと、
桜小路の母がマヤのような家柄の人とつきあうなと言っている声を聞いてしまう。
ショックを受けたマヤは、そのまま一人公園で雨に打たれ続けるのだった。
ベスの最重要シーンである、猩紅熱にかかって重態に陥るシーンを演じるためだけに・・・。

劇団つきかげ 創立第1回公演初日 @アート劇場

会場には姫川母子、大都芸能の速水真澄、劇団オンディーヌの小野寺や
有名演劇評論家、新聞雑誌記者も多数も来ており、
とても単なる新規創設劇団の初公演という雰囲気ではなかった。
『紅天女』の上演権を狙う真澄、すべては彼の差し金により、
批判的な評論で劇団つきかげをつぶしにかかろうとしているのだ。
異様な雰囲気の中、幕が開く。

舞台は順調に進んでいた。
ベスを演じるマヤもそつなくこなしている。
しかしその時実は40度もの高熱にうかされている状態だったのだ。
その事実を知った桜小路、亜弓は、およそそんな雰囲気を感じさせない
マヤの演技に驚愕する。
そしてもう一人、速水真澄もまた、それほどまでにひたむきに演劇に
打ち込むマヤに激情を禁じ得なかった。

劇は進み、途中意識がもうろうとしながらも舞台上で
どんどん輝きを増すマヤに、亜弓は驚きと焦りを、
真澄はもてあますほど抑えきれない心の抑揚を感じていた。
そしてクライマックスのベスの高熱シーン、
観客は皆、息を飲んで舞台に釘づけとなった。

終演後、真澄はいいようのない敗北感に包まれていた。
中学生の少女がどうしてその小さな体にあれほどまでの
情熱を燃やすことができるのか、自分の人生にあれほどの情熱は
果たしてあっただろうか・・・。
帰りの車の中でふと目に留まった花屋の店先にあった紫のバラ、
真澄はその珍しいバラをありったけ花束にして劇場に戻って行った。

舞台を降りるなり倒れこんでいたマヤ、
その控室前におかれた紫のバラの花束、そしてメッセージ
“早く元気なベスになってください あなたのファンより”

どんどん自分の所へ向かってくるのを感じるマヤの足音、
誰よりもシビアに、ストイックに演劇に向かう亜弓は、
マヤのこれまで、そしてこれからを確信していた、
しかしつねに私はあの子の上に立つ!

10以上も年下の少女に花束を渡そうとしている、
そんな自分に直前で言いようのない戸惑いを感じた真澄、
彼女は気付いただろうか、そのまま置いてきたあのバラに。
そしていつか、彼女にも恋する女を演じる日が訪れるのだろうか・・・
1輪残した紫のバラを手に、静かにお酒を傾けるのだった。

誰だかわからない、だけど生まれて初めてもらったファンからの
花、自分の人生初めてのファン、
どんな人かもわからないけれど、確実に存在する紫のバラの人に
マヤは熱も忘れて感謝の気持ちで満たされていった。


第3章 風の中を行く

劇団つきかげ初公演『若草物語』はその後4日続き、
大盛況の内に千秋楽を迎えた。

初日に初めてのファンにもらった紫のバラの花束、
もう枯れてしまったけど、花びらを1枚押し花にして、
マヤは大切にしおりとして持ち歩いていた。
学校生活も再開、相変わらず勉強は苦手だが、
ドラマのセリフはすぐにすべて覚えてしまう。
そんな不思議な少女の学校生活は穏やかに過ぎていた、だがーーー

週刊誌に掲載された劇団つきかげの中傷記事。
月影千草と青柳芸能社長との関係をスキャンダラスに示唆、
そして先日の『若草物語』公演の酷評記事と、
明らかに劇団つきかげを陥れるための工作だった。
しかし例え内容が事実無根だとしても影響力は大きく、
ひとり、またひとりと劇団から人が消えていった。

『若草物語』の稽古に集中し、公園のアルバイトを
サボっていたマヤは、重い足取りで売店に向かっていた。
しかしマヤが休んでいる間、桜小路が代わりに働いていた事を
知ると、マヤはその優しさに改めて小さな好意を感じるのだった。
二人でボートに乗り、桜小路が今度文化祭でやるという
騎士役の読み合わせの相手をするマヤ、
しかし桜小路がどんなに愛のセリフを語っても
演劇の事ことで頭がいっぱいのマヤとの間の心の距離感に、
桜小路は近くて遠い思いを抱く。

ある日劇団つきかげに、青柳芸能の人間がやってきた。
週刊誌に載ったような、千草と青柳社長との間にみだらな関係こそないが、
出資を受けていることは事実、
散々な劇評に憤慨する青柳芸能は、今度の演劇コンクールで優勝し、
汚名を返上することを条件に突きつけた。
もしそれが出来なければ青柳芸能は劇団つきかげから手をひく、
すなわちそれはつきかげが潰れることを意味していた。

全日本演劇連盟に、コンクールの申し込みに来た千草とつきかげメンバー、
週刊誌記事の影響で刺さるような視線を浴びていた。
あの週刊誌の記事は全て大都芸能の速水真澄の仕業、
自分の目的のためなら卑劣な手をもいとわない仕事の鬼。
その真澄と、申し込み会場で遭遇した千草。
嫌がらせ工作を激しく非難する千草に、真澄は冷たく関与を否定し、
空とぼけてみせた。
千草の戻りが遅いのを気にして、迎えに行ったマヤは、
そんな現場に遭遇してしまう。そして「いい暇つぶしになった」という
真澄の『若草物語』の感想を聞いたマヤは固まって震えてしまった。
これまで千草などから真澄の冷徹なやり口を聞いてはいたが、
いまいちそれが信じられずにいたマヤ。
しかし今目の前で真澄の口から出た、直接的な中傷の言葉、
マヤはこの男が決して自分達の側の人間ではない事を自覚した。
仕事のためならどんなひどいことだって平気でやる、
冷酷な人間、大都芸能の速水真澄ーーー。

一方真澄も、自らの悪意ある言葉、汚いやり口をマヤに
知られてしまった事に後悔の念を感じていた。
いつもなら何とも思わないはずなのに・・・。

動揺するマヤが思わず落とした紫のバラのしおり、
自分が渡したバラを大切に思い大事にとっていてくれた事に、
真澄は普段なら絶対見せることのない微笑みを浮かべていた。

演劇コンクール東京地区予選、背水の陣で挑む千草は、
演目『たけくらべ』の主役、美登利役にマヤを抜擢した。
経験の浅いマヤ、しかしもはや劇団内にそれを非難するものは
誰もいなかった。

私には演劇しかない・・・、未来だけを見つめ、
希望だけを胸に意気込むマヤ、
しかしその時、同じ東京地区予選を争う劇団オンディーヌの小野寺は
つきかげと同じ『たけくらべ』を選び、本格的なつきかげ潰しに
乗り出した。
姫川亜弓を主役に擁して・・・。

**

本格的な稽古がスタートした。
頭の中に明確に役のイメージが浮かび、自信に満ち溢れる亜弓、
一方マヤはまだ掴みきれていなかった。
そんな折、オンディーヌも同じ演目でくるという情報が入ってくる。
しかも主役は亜弓、そしてその相手役は桜小路。
これも大都の速水真澄の差し金なのか。
このコンクールに勝てなければ、劇団つきかげは潰れる、
団員は皆いいようのない不安とプレッシャーを心に抱えながら
稽古に取り組んでいた。

真澄は小野寺の策略を聞き、さらにつきかげ側はマヤが主役を演じると知る。
幼少時、大都芸能社長 速水英介を父にしたその日から、
真澄はただ、大都のために生きる事を叩き込まれてきた。
それ以外に道はなく、義父とも仕事のつながりしか存在しない、
それが当たり前、それでいいと思ってきた人生、しかし今、
心にはマヤのがむしゃらに生きる輝きが思い出され、
なぜかそんな彼女の生き方にひかれていくのを感じていた。

その後も劇団つきかげへの執拗ないやがらせは続く。
公演前に一度だけ許されている大会会場での舞台稽古、
つきかげの予定日時が何者かによって変更され、その事が
事前に知らされていなかったため、つきかげは一度も本番舞台に
立つことなく当日を迎えねばならなくなった。
愕然とする中、ちょうど舞台稽古をしているオンディーヌの
もう一人の美登利、姫川亜弓の完璧な演技に、
まだ役をつかむには程遠いマヤは力量の差を痛感させられた。

亜弓の完璧な美登利を目にして以降、マヤは完全に自信を失い、
演じることに恐怖を覚えていた。
そんなマヤを千草は無理やり物置小屋に閉じ込め、
事実上の降板を通達した。
小屋の中で悲嘆にくれるマヤ、暖房も何もない部屋は寒く、
降りだした雪が更に温度を下げていく。
テレビも何もない部屋で、マヤはただ無為に時間を過ごすしかなかった。
目の前には、先ほど自分自身でビリビリに破いた台本、
何となく声に出して美登利のセリフを言ってみる、するとそこには
今まで表現できなかったさまざまに色を変える美登利が存在していた。
頭にこびりついて離れない亜弓の演じる完璧な美登利、
マヤは美登利になりきれないことにこだわるのではなく、
自分で役をつくっていくことで、亜弓とは違う美登利を演じられる事に気づいた。
そしてそんなマヤに呼応するように、雪降りしきるドアの向こうから、
千草のセリフが聞こてきた。
扉を隔てた内と外、千草とマヤは身を削るような日々をそうして過ごし、
ついに5日間にも及ぶ通し稽古を終えた。
小屋の中のマヤはこれ以上はないという幸せな微笑みを浮かべたまま
深い眠りに落ちていた。

**

年明けすぐ、全日本演劇コンクール東京地区予選が始まった。
最終日の午後2時半から劇団オンディーヌの『たけくらべ』、そして
その後午後4時20分から劇団つきかげの『たけくらべ』が並んだ。
どこまでも続く妨害工作、いやでも比べられるマヤと亜弓、
しかしマヤの心の中はもう、自分の美登利しか気にならなかった。

つきかげへの露骨ないやがらせをする小野寺に対し、
速水真澄は知らず知らずに否定的な発言を口する。
人を人とも思わない冷徹な仕事の鬼が見せた違和感、
しかし一番戸惑ったのはそのことを指摘された真澄自身だった。

舞台上ではオンディーヌの舞台がスタートした。
会場には入らず楽屋に向かうマヤ、そして楽屋の鏡前に1輪の紫のバラを見つける。
“あなたをみています あなたのファンより”
私の初めてのファンがまた見にきてくれている、それがマヤを何より
勇気づけてくれるのだった。

亜弓の美登利は完璧だった。
舞台上でキラキラと輝く亜弓の存在感は圧倒的で、
観客のだれもが亜弓演じる美登利に夢中になった。
どう考えても、こんな舞台のすぐ後に、全く同じ演目で挑むつきかげは不利、
ましてや全く知名度も経験もないマヤの美登利では・・・。
つきかげの出番直前に出くわしたオンディーヌそして真澄。
プレッシャーをかけてくる小野寺に毅然とした態度で対応する千草。
真澄も小野寺と共謀して嫌がらせをしていると思っているマヤは
声をかけてきた真澄に食ってかかる。
これまで誰も速水に対してそんな口をきいた者はいない、あせる周囲をよそに
真澄は意外にもそれを咎めることなく、自分のファンである紫のバラの人の為、
精一杯の演技をしたいというマヤの言葉に目を細めた。

そしていよいよマヤの舞台の幕があくーーー


第03巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
のちに何度も何度も語り継がれる、伝説の高熱にうかされるマヤ、ベス役の熱演です。
とりも直さずこれが真澄の紫のバラデビューのきっかけです。
真澄が(恐らく)唯一自分で買ったバラの花束を持って控室まで自分で
持っていく(直接渡してはいないけど)というある意味貴重なシーンです。
のちのフローリスト聖が出てくるまでは、その辺の子供使ったり、配達使ったり、
いろんな方法で渡している紫のバラですが、果たして楽屋にはどうやって
置いておいたのでしょうか・・・。

それからこの巻から、マヤの中で速水真澄=イヤな奴の構造が確立されます。
少なくともマヤの前ではあまり冷酷な顔は見せていなかったので、
信じられなかったのも無理はありませんが、
例の真澄に対してつけられるさまざまな呼び名は、まだまだ先です。

ちなみに「チビちゃん」デビューもまだまだ、
この頃は真澄はマヤのことを「北島マヤちゃん」と呼んでいました。

後から振り返ればこの時すでに真澄はマヤのことを好きだったわけですが、
当時真澄24、5歳、マヤ13歳ということを考えれば、
それが愛だと思う方が無理な話だと思います。
良くも悪くも時が解決してくれることって、大きいですね・・・・。



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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第01巻【ネタバレばれ】

2014-09-15 10:52:19 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら
49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第01巻 ※第1章 ※第2章(途中)

第1章 千の仮面を持つ少女

@横浜 中華街の裏通りにある中華“万福軒”
住み込みで働く母子 北島春と娘マヤ(中学1年・12歳)
マヤは一見平凡、とりたてて美少女でもなく、
成績もよくはなかった。
しかし、胸に秘めた熱く激しい演劇への炎が
今まさに大きく燃えあがろうとしていた・・・。

住み込みの中華料理店で出前を手伝うも、
配達先の映画館でつい映画に夢中になってしまい
時の経つのも忘れ叱責にあう日々。
不器用で針仕事もままならないが、
ひとたびテレビでドラマが流れると
すべてを忘れてのめりこんでしまう。

ある日、いつものように出前の途中で寄った映画館で見た
場面を公園で子供たちに再現してみせるマヤ。
その様子をのぞき見たひとりの女性が、
驚きと感動を隠せず、マヤに名前を問う。
しかしその風貌への恐ろしさからマヤは思わず逃げてしまう。

年の瀬の12月、住み込みの中華料理店の娘、杉子が
年明け1月にボーイフレンドに観劇を誘われている事を知る。

『椿姫』主演:姫川歌子 @東京大都劇場

今まで一度も見たことのない舞台劇をどうしても見たくて、
マヤは杉子と無謀な賭けを行う。

ーー12月31日、大みそかの年越しそばの配達、計120軒をたった一人で
0時までに終わらせるーー

当日、雪が降り続く横浜の街でマヤはひたすらそばの
配達を続ける、ひと時も休むことなく・・・。
腕がしびれ、肩が抜けそうになりながらも必死で運び、
とうとうすべての配達を時間内に終えたマヤ。
しかし杉子はその芝居のチケットを無情にも海へと投げ捨ててしまう。

マヤ!

一瞬のためらいもなく冬の海へ飛び込み、チケットを拾い上げるマヤに
もはやだれも話しかける言葉を持たなかった・・・。

「いける・・・これで『椿姫』をみに・・・いける・・・」

**

新年1月2日
東京大都劇場で上映される『椿姫』
はじめての舞台劇、しかも大劇場の雰囲気に圧倒されるマヤ。
自分の席を探してうろうろしていると、同じく観劇に来ていた男性と
ぶつかってしまう。
さらに劇場で、有名な映画監督である姫川と、その娘亜弓を
目撃する。
今回の舞台で主演を務める女優姫川歌子の夫であり、娘だ。
同じ学年でありながら、5歳の時から子役として演劇活動を行い、
その美貌と天才的な演技力から、将来有望視されている亜弓に、
マヤはただひたすら驚きのまなざしを向けるばかり。
さらに、先ほどぶつかってしまった男性も、この大都劇場のオーナーであり、
芸能界で多大な影響力を持つ大都芸能の社長令息、次期社長である
事を知る。
スタイルもよくハンサムながら、冷たい人間と噂されるが、
先ほど優しく助けてくれた彼に、マヤは悪印象は持たなかった。

はじめて生で観る舞台劇に、マヤはたちまち引き込まれてしまい、
観客が皆帰ってしまっても席を立つことができないくらいの
放心状態におちいってしまった。
さらに、家に帰ってからも心を劇場に忘れてきてしまったかのように
心ここにあらずのマヤ。
いつにもまして叱責を受ける毎日。

ある日万福軒に出前の注文が入る。
しかし配達先は店から20分もかかる家、ラーメン1杯に1万円も
出すという・・・。
出前に向かった先は月影邸、そこで待っていたのは、
かつて公園で子供相手に映画のシーンを演じていた時に話しかけてきたあの謎の女性だった。

その女性と、先日の『椿姫』について意気投合。
言われるままにマヤは見たままの劇のシーンを一言一句間違えずに再現する。
そこへ偶然、劇場で出会った大都芸能の次期社長、速水真澄と劇団オンディーヌの
小野寺が訪ねてきた。
まだまだ粗削りで演技ともいえないマヤの演技を嘲笑する二人、
しかしマヤが、その舞台をたった一度しかみていない事を知り、
驚愕する。

「おそろしい子!」

**

1月も中旬を過ぎ、マヤの通う青葉中学校では、3月1日の創立記念日に催される学校祭の
出し物について話し合いが行われた。
マヤのクラス1年B組は演劇『国一番の花嫁』を行う事が決まったが、
クラスメートの推薦で、マヤもなにか役がもらえることになった。
初めてのお芝居、あの『椿姫』のような華麗な役を想像していたマヤだったが、
指名されたのは貧乏でブスで笑われ者でおばかさんのビビ役だった。

落胆しながら帰路につく途中、マヤはまたあの月影夫人に出会う。
台本を見せながら恥ずかしくも落ち込むマヤに、
しかし月影夫人はビビが登場人物の中でも
最も難しくやりがいのある役であることを諭す。
家に帰ると、母はみじめな娘を恥ずかしく思い、涙を流すが、
マヤは月影夫人に言われた言葉を思い出しながら、役作りに取り掛かる。
“素顔を隠し、仮面をかぶる・・・”
ただただ一心にセリフを体にしみこませ続け、いつの間にかそのまま
夜が明けていた。
一人の平凡な少女の中に、抑えきれない熱い演劇への魂が燃えあがった瞬間であった。

学校での劇の練習は続く。
マヤはビビの役を心でつかみ、必死に取り組むが、どうしても最後の場面の
感情表現がうまくいかない。
自分は国一番のみっともない女、こんな女が結婚してあげるよと言って
周囲は大爆笑になる・・・・でも本当にそうだろうか、自分だったらとても悲しくて
およそ笑いを取れるほど陽気になんかなれない・・・。

悩みながらマヤは月影夫人の邸宅を訪ね、そのためらいを相談する。
月影夫人からはビビの心をつかめばいいとだけアドバイスを受け、
いよいよ3月1日、本番の日を迎える。

たとえどんな役だとしても初めての舞台、母には大好きなおかずがいっぱいの
お弁当を持って見に来てほしい・・・そう告げたものの、
娘の恥ずかしい姿が大勢の人の前でさらされる所など直視できない母は、
約束を果たさず、会場に姿をみせることはなかった。
自分がバカでみにくくてみっともない役をやるから・・・・!
その時、マヤはビビの仮面をかぶった。

マヤの演技は抜きんでていた。
時におどけて、時に観客の笑いを誘うその演技は、主役をかすませるほどの
注目を浴びた。
しかしやはり最後のシーン、最後までマヤが悩んでいた、ビビが結婚を断られ
バカにしてみな嘲り笑うはずのそのシーン、マヤの心を打つせつなさのあふれでた
演技に、会場の誰ひとり笑う者はなく、いつしか大きな拍手でマヤをたたえるのだった。
その様子を、月影夫人は静かに客席の後ろで観ていた。

**

春休みに入り、演じる事への情熱を抑えきれないマヤは、
新聞の広告で、"劇団オンディーヌ"の研究生募集記事を見る。
東京渋谷の劇団オンディーヌ、そこで以前『椿姫』の観劇で遭遇した
姫川亜弓を見かける。彼女はここ、劇団オンディーヌに所属していた。
とりあえず受付で入団希望を伝えるマヤだったが、入学にかかる費用は
マヤにとってはとても現実的な額ではなく、意気消沈のまま劇団を後にする。
それでもどうしても諦めきれず、塀によじ登って中の様子を覗き見る。
気付けば2時間も、マヤは窓にしがみついたまま稽古の様子を見ていた。
気味悪がった劇団生が、マヤがいる裏庭に猛犬を2頭放つ。
ちょうどそこへ訪れた大都芸能の速水真澄、そして劇団オンディーヌの
桜小路優がマヤを救い出す。

救い出した少女が、先日月影夫人邸で『椿姫』を演じていた少女だと気付いた
真澄は特別に許可を取り、マヤに見学する機会を与えた。
仕事と結婚していると言ってはばからないかたぶつの青年、速水真澄。
ただ何となく、マヤの放つ情熱が心に残っていた。

真澄と、劇団オンディーヌの小野寺理事が連れだって向かった先は月影邸。
そこで月影夫人の謎が明かされていく・・・。

32年前、月影千草は劇作家尾崎一蓮が書いた演劇『紅天女』の主演女優として
舞台に立った。
その後上演回数は200回を超える大ヒット、尾崎一蓮は千草以外の誰も
この主役を演じることを許さず、そして死の間際『紅天女』の上演権を
千草に与えて亡くなった。
一蓮の死後も上演を続けていた千草に不幸が起こる。
舞台上のライトが転落、直撃した千草の顔面は醜く潰れ、千草の女優生命は
絶たれてしまった。
それ以降、舞台に立つことのなかった千草、そして同時に『紅天女』も
上演されることはなく、上演権は誰にも譲られないまま、20年の時が経過していた。

紅天女を演れる女優を自らの手で見つけ出し、育て上げ、再演を画策する千草、
一方劇団オンディーヌで『紅天女』を上演したい小野寺理事と劇団を経営する
大都芸能の次期社長、速水真澄。
それぞれの思惑は対極に位置していた・・・・。

その頃、見学を許されたマヤは、劇団員の挑発により「逃げた小鳥」の
パントマイムをやることになった。
もちろん初めての経験、どうしていいかわからないまま、マヤはスタジオの真ん中で
パントマイムに挑む。
逃げた小鳥は部屋の中を飛び回る。
タンスの上、ちゃぶ台の上、捕まえようとするとパッと飛び立ち、今はもう高い棚の上・・・。
手が届かない所にいる小鳥をどうしていいのか戸惑うばかりのマヤ。
見ていた劇団員はその姿を笑ってみていた、ただ一人、亜弓を除いて。

本気で小鳥を捕まえられないと悩むマヤに、演技の本質を感じた亜弓は、
華麗なパントマイムでマヤの後を引き継ぎ、小鳥をカゴの中に連れ戻す。
そのあまりの素晴らしさに、マヤは周囲に馬鹿にされたことも忘れ、
帰りの電車の中でただただ亜弓の演技を思い出していた。
一方亜弓も、マヤの底知れぬ演技への情熱と舞台度胸を強く印象に残していた。

亜弓が家に戻ると、姫川邸に速水真澄と小野寺理事が訪ねてきた。
亜弓の母である、姫川歌子を主役に『紅天女』を再演したい小野寺と真澄。
特に真澄には『紅天女』に対して一方ならぬ思い入れがあるようだ。

姫川亜弓ーーー
母親譲りの美貌、
名門聖華学園中等部トップの才女、
両親から受け継いだ芸術性で日舞、バレエ、音楽、どの分野においても才能を発揮、
なにより演劇においては天才と評判高く、生まれたときからスターの器
今はまだ13歳だが、ここ数年のうちにあるいは・・・。

しかしその時真澄はふと、同じ13歳の小さな少女の事を思い出した。
もしや月影千草の言っていた自ら育てる逸材とは・・・・。

横浜に戻ってきたマヤは、月影千草に抑えきれない演劇への情熱を語っていた。
中途半端な夢ならあきらめたほうがいい、冷たく突き放す千草になおも
食らいつくマヤを、千草は自ら設立準備を進めていた施設へと連れて行く。
「劇団つきかげ」
マヤの心の中から「女優になる」という思いを引き出した千草。
とっさとはいえ自分の口からついてでた「女優」という言葉、
その重大さに、マヤは小さく崩れ落ちていた。
一方亜弓は、新公演の舞台挨拶で堂々と母親へのライバル宣言をした。

二人の小さな女優はそれぞれの場所から『紅天女』へ向けての道を踏み出し始めた。

**

東京・杉並の「劇団つきかげ」での演劇活動。
母親に笑われ、反対されたマヤは、夜に家を抜け出し、一人東京へと向かっていく。
長い道のりだったが、マヤには希望の光しか見えていなかった。

劇団つきかげに着いたマヤは、寄宿生としての入団を直訴する。
家出してきたことをを薄々察しながらも、千草は他の寄宿生にマヤを紹介する。

沢渡美奈 高校2年生、16歳 北海道出身
春日泰子 高校2年生、16歳 福岡出身
水無月さやか 中学3年生、15歳 長野出身
青木麗 高校3年生 17歳 東京出身

それぞれが地元の劇団で秀でた才能を見出され、千草のもとにやってきた逸材、
そんな中、とりたてた演劇経験がないにもかかわらず、奨学生として
入団したマヤは異質で、みないぶかしい思いを抱いていた。

「劇団つきかげ」オープン日、
家出をしたマヤを連れ戻しに春がやってきた。
マヤの情熱と才能を認めようとない春に、千草は毅然と立ち向かい、追い払う。
そして千草はマヤに演じるということ、仮面をかぶるということを教える。
「マヤ、あなたは千の仮面を持っている・・・」


第2章 炎の階段

劇団つきかげでの本格的な演劇稽古が始まった。
演技はほぼ未経験のマヤはCクラスから、まだまだ発声練習もままならない。

並行してマヤの転校手続きも何とか整い、他の寄宿生と同じ星城学園での
中学2年生生活をスタートさせた。
奨学生とはいえ、文具やテキスト代など何かとお金はかかる、
そこでマヤは公園の売店で日曜日、アルバイトをすることにした。
日曜日となると目の回るような忙しさ、そこで偶然、
以前劇団オンディーヌで猛犬から助けてくれた桜小路優と再会する。
優しい笑顔で気さくに話しかけてくれる桜小路に、マヤはドキドキする
気持ちを抱いていた。

母への想いを胸に、日々レッスンの日々。
しかしここでもマヤの演技は周囲とは違い浮いてしまう。
釘を踏んづけた演技、
皆が一斉に痛がる中、マヤだけはゆっくりと足を上げるだけ。
笑いの演技、
皆が一斉に大笑いをする中、マヤは静かに微笑みを浮かべる。
周囲が奨学生であるマヤの実力を嘲笑する中、
千草が一つの課題を提案する。

「はい」
「いいえ」
「ありがとう」
「すみません」

使える言葉はこの4つのみ。

マヤはこの課題に取り組む中で、言葉がアクセントの違いで
さまざまな意味を生み出すことを感じ取っていく。
言葉に対する本能的な勘、マヤの持つ才能に周囲のメンバーは
徐々に気づき、恐れ始める。

日曜日の公園売店アルバイト先に、また桜小路が来てくれた。
今度大都劇場である『白ばら夫人』に出演するため、大都芸能の稽古場に
こもっているという亜弓の様子を聞いたマヤは桜小路にぜひ稽古の様子を
見学させてほしいとお願いし、稽古場へ向かう。
ちょうど入れ違いに大都芸能から出てきた真澄と、マヤはまたしてもぶつかってしまった。

速水真澄ーーー
社長の息子といって甘やかされることもなく、小学生のころから
社長のそばについて帝王学をたたきこまれた逸材。
まだ24歳、名目上は社長秘書ながら社長代理として堂々と会社を仕切っているその姿に
一分の隙もない。

さっきぶつかった少女が、『白ばら夫人』の稽古を見学に来たことを知った真澄は、
予定を変更し、同じく稽古を見学することにした。

目の前に次々に現れる有名人にマヤは大興奮。
しかしやはりマヤの目は、抜群の演劇センスで光を放つ亜弓の演技に
釘づけとなるのだった。

休憩に入り、マヤに気付いた亜弓。
マヤが現在月影千草の創立した劇団に所属していることを知った亜弓は、
マヤも自分と同様未来の『紅天女』候補となりうることに高笑う。
幻の『紅天女』の再来、消息不明だった往年の名女優月影千草の様子・・・
その場にいた記者たちが一斉にマヤに質問を投げかける。
その圧力に戸惑い震えるマヤを、真澄はさりげなく助け、外へ連れ出した。


月影千草の4つの言葉のエチュード
自信満々で臨む劇団員が次々と失敗し落胆しながら舞台を降りていくさなか、
亜弓がその様子を見学に訪れた。
そして亜弓がこのエチュードの相手役をしたいと申し出る。
姫川亜弓の、劇団つきかげへの挑戦状
千草は相手にマヤを指名した。

無駄のないスムーズな演技で引っ張る亜弓、
しかしマヤも必死にたった4文字を使い分けながら応戦する。
はい・いいえで答えられない質問には首を振って答えを逃れ、
どのレコードが好きかと聞かれれば、パントマイムで選ぶ動作をしたのち、
「はい」
と1枚のレコードを差し出した。

すぐに決着すると思われたこの勝負は、結局時間切れで終了。
亜弓は余裕のある態度を崩さずにいたものの、
マヤがどんどん自分のもとに近づいてくる気配を感じていた。

夏休みに入り、亜弓が母歌子との競演で話題の『白ばら夫人』は連日満員の大盛況。
マヤは桜小路に頼み、そのチケットを手配してもらう。
屈託のない笑顔で演劇に夢中のマヤに、桜小路はほのかな恋心を感じる。
しかし観劇中、隣にいる桜小路の事をすっかり忘れたように舞台に夢中になるマヤに、
桜小路は寂しさを感じたのだった。

**

劇団つきかげが秋に発表会を開催することが決まった。
『若草物語』
Aクラスのメンバーがほぼ配役される中、重要な4姉妹の一人、
べス役にマヤがただ一人Cクラスから選ばれた。

AクラスやBクラスを差し置いて選ばれたこの選考に
劇団員からの視線がマヤに突き刺さる。
中でも同じ寄宿生の水無月さやかは、自分こそがベスにふさわしいと
心の中で惑い悩む。

『若草物語』のベスーーー
おとなしくて内気で病弱、はずかしがりやだが心優しい少女

マヤは役柄をつかめずにいた。
そして密かに、ベスの役作りをさやかも進めていたのだった。

大都芸能の速水真澄が劇団つきかげに訪れた。
目的は、劇団つきかげを裏で操る青柳プロについて、千草に進言をするため。
青柳プロは名ばかり経営者として千草を利用している、手を引いたほうがいい。
言外に見える大都芸能としての圧力に、千草は一歩も引かず応戦する構えを見せた。
その時・・・・・
寄宿部屋で『若草物語』稽古をしていたマヤが派手に転倒する音が響いてきた。

思わず笑いをこぼす真澄にベス役を励まされたマヤ、
マヤはまだ、周囲が言うほどの冷酷さを真澄に感じることができずにいた。

一方真澄も、マヤの苦労を感じさせない屈託のない笑顔を思い出し、
自らの幸せについて想いを馳せていた。

稽古が進んでいく一方、マヤは相変わらずベスの動きをつかみきれずにいた。
その様子を見ていた千草は、マヤに一週間の特別訓練を課した。
その間にベス役をつかめなければ役をおろすという条件で。

そうしてマヤは一週間、ベスの衣装を着、ベスとして毎日を過ごすことになった。
学校へも行かず、ほとんど誰にも会わず、
ただ自分だけの世界の中で家族を愛しながら・・・。

はじめに気持ちがあって 言葉と動きがある・・・・!

~~~出演以外の登場作品~~~~~~~~~~~~~~~~
(映画)伊豆の踊子 主演:桜田(覗き見)
(映画)雪の祭り 主演:姫川歌子(覗き見)
(演劇)椿姫 主演:姫川歌子 @大都劇場:A27番
(演劇)白ばら夫人 主演:姫川歌子 出演:姫川亜弓 @大都劇場
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

第02巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
あらすじというより文章書き起こしみたいになってしまいました。。
最初なので、登場人物とか、人間関係とか説明あったほうが、とか
思ってたらこんなことに。。。

真澄さんがまだまだ若々しい爽やかキャラだったり、
亜弓さんが若干高飛車キャラだったりしてますが、
マヤは比較的今とあんま変わってない気がします。
桜小路くんもそんなにまだうざくないし。

文庫第1巻ではまだ、紫のバラは登場しませんでした。
かわりにまだ、マヤと真澄の関係もそんなに悪くないです。

あとやっぱり一番重要なのは、マヤの母の描かれ方。
正直愛情を感じる要素がなくて、後にあんなに
マヤと真澄の関係をこじらせるファクターに
なってしまうことが、なんだかやるせない気になります。


コメント
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