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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第13巻【ネタバレばれ】

2015-02-10 23:07:48 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第13巻 ※第9章(途中から)(最後まで)

第9章 100万の虹

劇団つきかげ+一角獣の『フランケンシュタインの恋』は大成功を収めた。
フランケンシュタインを演じた堀田と恋の相手役美奈との関係も
いい方向に進んでいるようだ。
これをいい機会に、そろそろもう一回り大きな公演にチャレンジしたい、
そう宣言した堀田に、劇団員一同もろ手を挙げて賛成した。
いつまでも地下劇場で、常連のお客さん相手に演劇を続けていても、
世間知らずになってしまう。
堀田は候補地として、オープン2年目の500シートの劇場、アテネ座をあげた。

さっそくアテネ座に出演交渉をする堀田をはじめ団員達だったが、
いくら知る人ぞ知る実力の劇団とはいえ一般知名度は皆無に等しい。
けんもほろろに突き返されてしまう。
話題性がなければ難しい、意気消沈のまま劇場近くの公園に向かうメンバー。
ボートに乗りながら、麗はマヤに、次の公演はシェイクスピアの『真夏の夜の夢』あることを伝える。
四人の恋する若者に、妖精の王や女王、そしていたずら者の小妖精パック・・・
「あたしも舞台に出たい・・・」
マヤに残された時間はあと2年。高校を卒業してから、演じる事も出来ず過ごす日々は
マヤにとって拷問に等しいものだった。
麗を中心に、みんなでマヤの出演を千草に許してもらうことを採択し、さっそく配役発表が始まった。
マヤが演じるのは、いたずら者の小妖精パックーーー
表だっての主役ではないが、一番の芸達者が演じるといわれる影の主役・・・
マヤは早くもパックになれる喜びに浸っていた。
そして、公園内にあった野外ステージに目をつけると、
ここで演じられるのではないかと提案する。
公演時期は夏、周囲は木々もいっぱい、ステージそれ自体が舞台になる。
駅も近いし周辺は繁華街、宣伝すればきっと人が集まってくれるはず・・・
さっそく堀田が管理局に掛け合って、特別に夜の使用許可を取ることができた。

真夏の夜の夢が、始まる。

マヤの演じるパックはいたずら好きで陽気なすばしっこい妖精
言葉も体もポンポンと飛び跳ねるようでひと時もじっとしていない。
ジャンプをしながらセリフを言うと、言葉が震える、
なかなか身軽な動きが出来なマヤに千草が一つの特訓を与える。
マヤを中心に周囲を囲んだ人間が次から次へとマヤにボールを投げつける。
マヤはボールにぶつからないようによけなければならない。
パックの動きの基本は反射神経。マヤは千草の意図も把握しきれないまま、
なぜかずっと流されているロックミュージックの音の中、ボールよけを始める。
しかしさまざまな方向から投げつけられる3つのボールをよけることは難しく、
片時もじっとしていられない。
この動きをこれから公演まで毎日1時間ずつ、パックの動きの基本が掴めるまで続けること。
「本物のパックなら今の球を全部かわしたでしょうねぇ」
マヤは、パックの動きをつかむことを誓う。

マヤをはじめ劇団員の稽古は激しさを増す。
そしていつしか、マヤのボールをよける身のこなしも軽く、余裕が出てきた。
BGMとしてかけられていた音楽にあわせ、体が知らず知らずの間にリズムを刻んでいる。
千草は、マヤにリズムのある動きを身につけさせようとしていたのだ。
徐々にパックらしさが出てきている気配はあるが、いまだ掴み切れない中途半端な演技。
それを見ていた千草はマヤに何度もパックのセリフを言わせる。
「よしきた!おいきた!それごらんの通り!ダッタン人の矢よりも早く!」
何度繰り返しても、パックらしい動きができていないことは、マヤ自身が一番よく分かっていた。
そしてまた繰り返しーーー
「よしきた!おいきた!・・・」
そこへ突然背中へ向かって投げつけられるボール・・・
とっさにそのボールを振り返りざまに避けるマヤ。
無意識のうちに後ろから球が飛んでくる気配を感じたのだ。
これが、パックの反射神経!!
マヤはパックの呼吸を体得した。
更に千草は、ありあわせの衣装でマヤにパックの扮装をするよう指示し、その恰好で
いつものボールよけの特訓をするよう命じた。
鏡に映る自分の姿は、妖精パック・・・
私は、パック

今までに見せたことのない自由な動きで、マヤは次から次へと球をかわす。
まるで投げる側をからかっているかのようだ。
不意に顔面に向かって飛んできた球、
マヤは手でバチンとは打ち返した。
今までとは違うゆとりすら感じられるまさにパックの動きだった。
わたし・・・・パックを演れる!!
その様子を見届けると千草は、苦しい胸をおさえながらこっそりと稽古場を後にした。

**
とあるパーティー、劇団オンディーヌの小野寺理事は
もはや紅天女は亜弓に決まったも同然と、鼻高々な様子で亜弓のご機嫌をとっていた。
しかし亜弓はもちろん、マヤがこのまま黙って引き下がるとは思っていない。
1%の可能性に全てを賭けて向かってくる相手・・・・。
同じパーティーには、桜小路優の姿もあった。
劇団オンディーヌ期待の新星、今度明和劇場で『椿姫』のアルマン役に抜擢され、
これからの活躍が期待される役者に成長していた。
そこへ、かつての恋のライバル里美茂が姿を現す。
桜小路は里美の所へちかづくと、なぜマヤと別れたのか尋ねた。
そんなに簡単に別れてしまえるほど、いい加減な気持ちだったのかと。
その言葉に反論する里美。
里美自身、マヤの事をどれほど大切に思っていたか。
しかし例のあの一件があって以降、事の真相も分からないまま強引に別れさせられ、
どんなに電話をかけても通じない。そして何も言わず交際解消に同意したと聞き、
失意のまま里美は仕事で半年間アメリカに発っていた。
断られたのは自分のほうだ。
アメリカでの生活は、気持ちをリセットするにはいい環境だった・・・。
里美ならばとマヤをあきらめていた桜小路は、その言葉を聞き、
自分だったらそんなことではあきらめなかっただろうと告げ、里美の元を去って行った。
「僕はいつかあなた以上の役者になりたいと思っています。あなたの2倍も3倍も大きな役者に・・・」

**
聖から、マヤが今度野外ステージで『真夏の夜の夢』を演ることを聞いた真澄は、
何か思案していた。

そんな折、野外ステージで稽古を続ける劇団つきかげ+一角獣の元に
アテネ座の支配人がやってきた。
およそ演劇の稽古とは思えないようなアクロバティックな動きを続ける姿に、
支配人は驚きつつも、まるで大道芸だと冷やかした。
そんな支配人に、アテネ座でやるよりずっと有意義な舞台だと宣言した堀田団長、
するとアテネ座支配人は、それなら3日間の間、アテネ座の席数よりも多くの観客を集めてみせたら、
お前たちの実力を認めてやろうと挑発する。
では、もし集められれば、アテネ座へ出演させてくれるのか、というマヤの問いに、
出来るはずもないと高をくくる支配人はその約束を飲んだ。

「わたしがその約束の証人になろう」

泣く子も黙る大都芸能の速水真澄の突然の登場にアテネ座支配人は動揺する。
支配人に対し、半ば脅しのように真澄が先ほどの約束を確約させると、更に堀田に料金面でのアドバイスをした。
自分たちの才能を安売りするな、料金はちゃんと取れ。
赤字を覚悟というのなら、はじめからチャリティー公演にして、集まったお金は
福祉団体に寄付しちまえ。
観客に前もってチャリティーの事を宣伝し、料金は観客の自由意思に任せる。
芝居がおもしろければ料金をはずんでくれるはずだ、と。

真澄のアドバイスが本当に自分たちの事を思っての物であることを理解した堀田は、
素直にその意見を受け入れ、『真夏の夜の夢』はチャリティー公演として開催されることとなった。
真澄は密かに、この公演を記者に取材させるように命じる。

真澄の行動が不可解ながらも下心がないことは分かる、だからこそ余計に
不思議に思うマヤを、真澄は強引にボートに誘う。
いやいやながらも、千草の容態を伝えると言われては断れない。
結局千草の容態が急変したということはなく、まんまと真澄のペースに乗せられた形になった。
ボートの上で真澄は、マヤが本気でこの二年の間に賞獲得を目指しているのかを尋ねた。
もし、かなわないとあきらめているのなら棄権してほしいと、その代り大都芸能として
演劇界に復帰できる手助けをしようと提案した。
しかしマヤははっきりと拒絶する。
誰もが無理だと思っている中、ただ一人、亜弓だけは自分を信じて待ってくれている。
ここで棄権なんがしたら、亜弓さんに軽蔑される。
どんなことがあっても、亜弓さんにだけは軽蔑されたくない。それなら死んだほうがまし。
賞を取る自信はないが、可能性がある限りあきらめたくないというマヤ。
真澄は満足のいく答えが返ってきたというように笑い、励ました。
そして、マヤに大学進学はしないのかと尋ねた。
紫のバラの人にもそういってもらったが、演劇に集中したいからと辞退したのだというマヤは、
いつか、大劇場に出られることになったら、最上の席を紫のバラの人にプレゼントしたいと
瞳を輝かせた。そしていつか、会ってみたいと。
「もし、その人がきみにとってとても嫌な人間だったら?大嫌いな人間だったら?」
真澄の問いにマヤは反論する。
「たとえその人がどんな人だって、あたしきっと好きになれる。ギャングのボスだって、ヤクザの大親分だって」
世界中に憎まれる人だって、きっと好きになれると震えるマヤに
もしも・・と口を開きかけた真澄だったが、そのあとに言葉は続かなかった。
真澄と二人、ボートに揺られながら浴びる陽射しはとてもまぶしくて、
マヤは改めて真澄との不思議な関係に思いをはせていた。
時々この人がわからなくなる・・・
劇団つきかげをつぶし、私の母を死へ追いやったかたきなのに、こうして一緒にいると、
およそそんな人物とは思えない・・・。
「野外ステージでの成功は、きみの演劇界復帰への足掛かりになるかもしれない、しっかりやるんだな」
そう言い残して、真澄は公園を後にした。

いよいよ『真夏の夜の夢』公演が近づいてきた。
駅前の繁華街でチラシを配るも、通行人は見向きもしない。
その様子をアテネ座の支配人が冷やかしにやってきた。
大道芸人らしくサンドイッチマンにでもなればいいというという言葉に
それならそれらしくやるまでと、マヤは即席の扮装で妖精パックになりきると、
軽妙な動きでたちまち見る人の注目を集めた。
一旦目を引きさえすれば実力者たちのやること、人々は徐々に足を止め、
7月10・11・12日の3日間、I公園野外ステージで開催される
劇団つきかげ+一角獣『真夏の夜の夢』の宣伝は成功した。
その様子を取材した記事が新聞にも載り、更に口コミで噂が広がった。

そしていよいよ公演当日。
皆が今回の舞台に並々ならぬ気合を入れ、肩に力が入る中、
マヤは穏やかに公園の風を感じ、草の匂いをかぎ、こんな自然の中で芝居ができる事、
パックになれることを心から嬉しく思っていた。
それは演じる上で最も重要な、舞台の本質。
とにかく舞台を楽しむ、今までやってきたことを最高の環境の中でできる限り発揮する。
アテネ座との約束は気にせず、とにかく最高の舞台を作り出そうと、団員一丸となってその時を迎えた。
そしてそんなマヤの元に、聖から紫のバラが届けられた。
座席数350程度の野外ステージには、立見を含めて1400人あまりの観客が集まった。

日も暮れかけた夏の夜。
ステージに現れたのは、マヤの演じる妖精パック。
簡単な演目紹介と、今回の公演がチャリティーであることをパックらしく説明すると、
最後に、今日届けられた紫のバラを一輪、観客席に投げ入れた。
紫のバラの人、見ていてください!!
有名な劇作家、日向英治を伴って会場に来ていた真澄は、マヤからの紫のバラの人への
思いを受け取り、静かにかたずをのんだ。

野外ステージの端から端、さらには天井や木々といったものまでも使い、
魅力的な役者たちが所狭しと自由自在に駆け巡る舞台は、まさにあっという間の真夏の夜の夢。
観客は一気にその世界観に魅了されていた。
終演後募金箱を手に、お代を預かっていくマヤ、この中に紫のバラの人はいるのだろうか、
声をかけてくれないだろうか・・・。
しかし期待は期待のまま、紫のバラの人を名乗る人は現れなかった。
心寂しく思うマヤの前に真澄が現れた。
「よくやったな」
公演料金というにはあまりにも多額の寄付にマヤはあわてるが、真澄は意に介さない。
「生き生きとしたとてもいいパックだった。上達したな、チビちゃん」
少しばかり話題になっているとはいえ小さな野外ステージのチャリティー公演に
大都芸能の速水真澄が下心なしで現れるはずがない。
取材記者たちの声にきっとそうだと思いながらも、マヤは真澄にかけられた言葉に
紫のバラの人のイメージを重ね合わせていた。

公演は話題を呼び、2日目は2000名、そして3日目はとうとう2500名と
観客数はさらに膨れ上がり、結局3日間で500万円を超す寄付金が集まった。
”下心なく動くはずはない・・・”
しかし真澄のアドバイスに従ったことで新聞・雑誌でも紹介され、
こんなに観客も集めることができた。
そして、例のあの約束も・・・。
大都芸能の速水真澄を証人に約束した手前、反故にすることはできない。
アテネ座支配人は、見事アテネ座の席数を上回る集客を見せた劇団つきかげ+一角獣の
アテネ座での公演を申し込んだ。
しかし、実際に劇場での公演となると、莫大な初期費用が掛かる。
とても貧乏劇団が出せる額ではない。
せっかくアテネ座での公演が許されても、資金不足という現実問題が立ちふさがった。
そこへ、大都芸能が声をかけてきた。
アテネ座で、劇作家日向英治による舞台を劇団つきかげ+一角獣の公演を制作したいとーーーー。
渡りに船のこの提案に、なにか裏があるのではないか、何か企んでいるのではないかと勘ぐったマヤは、
大都芸能前で真澄をつかまえ、その真意を問う。
「速水さん、何か企んでいるんじゃないでしょうね!
劇団のみんなをおとしいれるようなことしたら、許さないから!!」
真澄相手にこんなに直球勝負してくる人間、他にはいない。
面喰いつつも感嘆した真澄は、下心などない、望んでいるのは仕事の成功だけだとはっきり告げる。
しかし、もう二度と大都芸能のもとでは仕事をしないと決めていたというマヤに、
真澄は冷たく、マヤは今回の企画からははずされていると告げる。
また真澄に仲間との関係を引き裂かれると感じたマヤは激しく抵抗するが、
真澄は、今回のアテネ座での公演はきっとその仲間たちが大きく伸びるよう、大都芸能が絶対成功させる、
仲間の事を思うのなら、反対などするなと釘をさす。

そしてマヤに、次の舞台で亜弓と千草が共演することが決まったと知らせた。
まさか千草が亜弓と共演するなど信じられないというマヤに、
それならば日帝劇場に行って、自分の目で確かめろとけしかける真澄。
偶然通りかかった劇団オンディーヌの小野寺から、
出る劇場もないのにどうやって芸術大賞をとるのかと馬鹿にされ、
結局真澄も小野寺もマヤの存在を疎ましく、その活動を妨害しようとしているのだと受け取ったマヤは、
真澄の事を少しでもいい人なんじゃないかと思っていたことを後悔し、
真澄の頬をしたたかに打つと、日帝劇場に向かった。
「あなたのこと、ちょっとでもいい人だと思ってたのに・・・」

マヤをけしかけ、日帝劇場に向かわせたのには真澄の意図があった。
あえてマヤを劇団の仲間たちから引き離し、怒りのエネルギーを燃え上がらせ、日帝劇場へ向かわせる。
今、ある問題で揺れている日帝劇場、そのことを知ったらマヤはきっと・・・・。
目論見通りに事を運んだ真澄だったが、マヤとの関係が、実は少しだけ近づいていたことに気付かず、
またこうして対局に立って憎まれる関係に戻ってしまったことを少し後悔していた。

**
いったい亜弓がどんな舞台で千草と共演するのか、マヤは不安な気持ちを抑えきれず
日帝劇場へ足を運んだ。
そこで見たものは・・・

「ふたりの王女」姫川亜弓相手役オーディション

当初亜弓と共に王女役をやることになっていた北園ゆかりが土壇場で役を降りてしまったという。
急きょ代わりの役者をオーディションで探していると知ったマヤは、
オーディションを受けさせてくれとその場で無謀にも頼み込む。
各劇団生え抜きの実力者ばかりが顔をそろえるこのオーディションに、そうやすやすと参加できるはずもない。
あの亜弓さんに舞台で対等に張り合えるのかと聞く事務員にマヤははっきりと、
「やってみなければわからないとおもいます」
と答えた。
ダメでもともと。自分の運命の扉を開くことができるのは、自分のこの手だけ・・・。
制作主任の兼平が戻ってくるのをロビーでひたすら待つうちに眠ってしまったマヤ。
その姿を見た兼平は、その子が北島マヤであることに気付く。
姫川亜弓がライバルと認める、ただ一人の少女・・・・。
芸能界では思わぬスキャンダルに巻き込まれたマヤだが、知る人はマヤの実力をちゃんと知っていた。
『ふたりの王女』は、王位継承権をめぐって対立する2人の王女の対照的な生き方を描く舞台、
決して亜弓に見劣りすることなく、王女としての役柄にふさわしい人物でなくてはならない。
きみはそれだけの自身があるのか、という兼平の問いに、
「実力では、負けないつもりです・・・」
と闘志をみなぎらせた。
こうしてマヤは、ふたりの王女のオーディションを受けることを認められた。

大都芸能には、さっそく北島マヤが姫川亜弓の相手役オーディションを受けるというニュースが伝えられ、
水城がそのことを真澄に告げた。
水城の報告にも動じない真澄に、こうなることを予期していたのかと尋ねると
「多少はな・・」とうそぶく。
すべて真澄が仕組んだこと。
マヤを劇団つきかげや一角獣の仲間から引き離したのは、マヤが長くあの中で生きるタイプの
役者ではないと見抜いていたから。
そして、アテネ座に出演できなくなったマヤが、日帝劇場でオーディションをやっていると知れば
飛びつくに違いない。ましてや真澄に挑発されたとなれば意地でも出演したいと思うだろう、
亜弓に対して失いかけた気持ちも奮い立たせて・・・。
そう指摘する水城の言葉を否定するでもなく、静かに沈黙する真澄。
「おれはただ、今のチャンスをあの子に気付かせたに過ぎない。
それを手に入れるかどうかはあの子の実力次第だ・・・」

9月第3日曜日
『ふたりの王女』オーディションが始まるーーーーー

第14巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
みんな大好き『真夏の夜の夢』編。今回も劇中劇が長いのであらすじは短め。
聖さんの登場により、真澄さんのマヤいじめ・・もといマヤ挑発が過激化の一途です。
今までは、たまたまの流れを利用してマヤに有益になる道をこっそり用意していたと思うんですが、
腹心の部下、聖をマヤ関係に使用することができるようになってより能動的になったというか、
野外ステージ成功するように手を回したり、マヤを怒らせて二人の王女に向かわせたり・・・。
相手がまだまだチビちゃんなので、かろうじて理性は保ったままですが。

それにしても、久しぶりに水城さんの真澄心情推理タイムが出てきましたが、
真澄がそこまでマヤの為になる事を仕掛けるのか、理解不能だとは、かつて
「愛していらっしゃるのね・・・」とおっしゃた水城さんらしくないではないですか。

超ロング章、『100万の虹』もとうとう終了、次はみんな大好き「毒・・・っ!!」の話だよ。

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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第12巻【ネタバレばれ】

2015-02-09 01:57:44 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第12巻 ※第9章(途中から)(途中まで)

第9章 100万の虹

『通り雨』@一ツ星学園体育倉庫 開演

会場には前回の演劇でファンになった生徒や、噂を聞いて駆け付けた教師達など
これまで以上の観客がマヤの演技観たさに集まっていた。
その中には、危機感を抱いて偵察に訪れた演劇部のメンバーもいる。
期待と羨望、そして妬みの渦巻く中、舞台は始まる

今回は美術部と工作部の協力も得て、以前より照明やカーテンなど、専門的な器具が
揃ってはいたが、反対に舞台上にはセットと言えるものはなにもない。
『通り雨』は、全編にわたってマヤのパントマイムによって描き出される
女子高生佐藤ひろみの日常生活劇なのだ。
なんということのない普通の女の子の普通の毎日
しかしマヤが演じればそれは非日常になる。
朝起きてドアを開けるしぐさ、顔を洗ってタオルでふく動作、
家族そろって朝食を食べる風景、
マヤしかいない舞台に、マヤ以外の景色が見える。
ビアンカと比べてあまりに淡々としたストーリーであるにもかかわらず、
観客は一気にマヤの演じるひろみに感情移入し、飽きることなく舞台上のマヤの動きを追い続けた。
『通り雨』というタイトル通り、演じる場面に応じて降る雨の印象が変わり、
時に切なく、時に激しく、ひろみの体を心をうつ。
そしてその心象風景が、リアルに観客たちにも伝わって行く。
家族を思い、家族の幸せを守る為に必死になる、主人公ひろみ、
舞台の上でなら自分にもこんな家族がいる、虹の中の自分の家族に会える!
ひと時の間の幸せな家族と幸せな少女の余韻に浸りながら、
マヤの一人舞台は大成功を収めた。
そしてそんなマヤに、観劇していた演劇部部長から思いもよらない提案を受ける。
「演劇部の芝居に、客演として出演!?」
一つの舞台が、また次の舞台への道を切り開くーーー

**
劇団つきかげの基礎練習にだけ参加させてもらっているマヤ。
いつものように地下劇場で発声練習をしているところに、全国修業から戻ってきた
劇団一角獣のメンバーが顔を出した。
久しぶりの再会に尽きる事のない話。
また、合同公演をやろうという提案で、さっそく暖められていた台本が出される。
『フランケンシュタインの恋』
フランケンシュタインはやはり一角獣の堀田団長、そしてその恋人役に立候補した
つきかげの美奈、二人の何とも初々しい雰囲気に周囲のメンバーもどぎまぎしていた。
そんな仲間同士和気あいあいと過ごしている所に、大都芸能の水城がマヤを訪ねてきた。
水城は真澄の指示でマヤに千草の容態についてと今後の対応策を説明にきたのだ。
以前千草が倒れたときに電話で真澄に頼んだことを、ちゃんと果たしてくれたことに
マヤは驚きと戸惑いを感じていた。
そもそもあんなに重要なことを、なぜあの速水真澄に頼んだのか、自分でもいまだに
理解できないのだ。しかし真澄は自分との約束を守ってくれた。
母親のかたき、あいつにだけはもう騙されない、そう強く思っているのに、
マヤは千草の事を真澄に頼んで、そしてそれが良かったのだということに複雑な気持ちを抱いていた。
劇団つきかげ+一角獣の稽古の手伝いをするだけの日々。
雪降る中買い出しに出ていたマヤは、地下劇場に戻る途中偶然真澄と遭遇する。
真澄はロイヤルプラザホテルで開催されるパーティーに向かっていたのだが、
車が故障して立ち往生していたのだ。
傘も持たずたたずむ真澄にとっさにマヤは自分の傘を差し出し、二人はマヤの小さなイチゴ柄の傘に
収まって雪降る街を歩くことになる。

タキシード姿で長身、スタイルも決まっている真澄と小さな女の子が相合傘で歩く姿は
かなり目立っていたが、二人にとってはそんな視線は全く気にならないくらいかたやひと時のやすらぎを、
かたやどんな顔をしたらいいかわからないくらいの緊張感でいっぱいだった。
降り続く雪を見上げながら、「雪は好きだ」と物思いに語る真澄の横顔を見ていると、
マヤはやはりこの冷血漢の仕事虫の事がわからなくなるのだった。
途中、酔っ払いに絡まれて真澄の恋人扱いをされたマヤは激高して思わずその場を駆けだそうとするが、
赤信号を渡ろうとして真澄に危うく引き止められる。
抱きしめられた真澄の腕の中は温かく、しかし真澄の腕の中をそう思ってしまう自分に戸惑い、
慌てて雪降る街を真澄から逃げるように去って行った。
「あなたのこと、いい人だなんて思ってやしませんからね!!」
真澄はマヤが去って行った横断歩道をいつまでも見ていた。
”いつも赤信号だな、あの子とおれの間の道路は いつまでたっても渡れない”
手にはマヤが残したイチゴ柄の傘が残されていた。

**
マヤは亜弓が主演する一人芝居『ジュリエット』の劇場の前を通りかかった。
前評判の高いその舞台は、客席に数多くの演劇関係者が勢ぞろいし、さらに英国大使館夫妻や
歌舞伎の大物俳優など、層々たる顔ぶれである。
千草や真澄の姿も見えた。そしてマヤはその中に、桜小路の姿を見つけるのだった。
かつてほろ苦い別れのあの日以来、久しぶりに見るその顔は少し大人びていた。
亜弓の演じるジュリエット、いったいどんな舞台なのか、自分は亜弓に追いつけるのか・・・・。
翌日の新聞・テレビでは亜弓の演技は称賛の嵐、アカデミー芸術祭芸術大賞に推薦されたことを知る。
芸術大賞といえば、演劇界最高の賞、相当なベテランでもめったにとれないというその賞を
亜弓がとればもちろん史上最年少受賞となる。
どんどん広がる亜弓との距離、しかしマヤはまずは一歩ずつ自分に挑戦していくしかないのだと
改めて奮起する。
まず自分が超えるべきなのは、昨日までの自分。
私が今、やるべきなのは、演劇部での客演公演。

『わが作品No.707 愛しのオランピア』
一ツ星学園文化部発表会で演劇部がやる舞台の演目、マヤはこの舞台でお手伝いロボット・ルル役を演じる。
出番は決して多くないが、ロボットとしての機械的な動きやセリフの言い回しで、
芝居の緊張をやわらげ、観客の笑いを誘う重要なポジションだ。
マヤは早速、かつて『石の微笑』で演じた人形役の呼吸を思い出しながら、役作りに取り掛かる。

発表会当日、
マヤの客演を聞きつけて、これまでにない観客数が集まった公民会館。
舞台上でのマヤの演技は冴えわたっていた。
ロボットとしての動きが一つ一つピタリとはまり、観客を舞台を盛り上げる。
演劇部の公演は、これまでにないほど盛大な拍手と歓声で大成功を収めた。
昨日の敵は今日の友、もはや演劇部内にマヤを否定するものなど誰もおらず、
観客もまた、かつてマヤが芸能界を失脚したことなどなかったかのように、マヤの演技を称賛し、
これからの活躍を期待していた。
自らの困難を、マヤは自らの力で切り開いて乗り越えていったのだ。
昔は昔、今は今・・・
マヤは改めて自分には演劇しかないこと、そして演劇だけが自分を生かしてくれるものであることを痛感する。
そこへ、紫のバラが届けられた。
あの忌まわしい『シャングリラ』舞台初日前日に届いて以来の紫のバラ・・・・
先ほど届いたばかりだというその花束を抱えて、マヤはその人の後を追う。
そしてとうとう、マヤは駐車場でその送り主の姿をとらえた。

「あなたですね、あなたなんですね、紫のバラの人」

ゆっくりと振り返った青年に矢継ぎ早にこれまでのお礼を伝えるマヤ。
しかしその青年は静かに、自分は紫のバラの送り主ではないと告げる。
贈り主の代理に花束を持ってきたというその人物に、マヤは紫のバラの人がいったいどんな人なのか尋ねた。
とても素晴らしい方で、たいへんなマヤのファンであること、
これまでそんな風に誰かのファンになることなどなかった方、
あの方の望みはマヤが一日も早く女優として大成すること、
そしてそのためのどんな支援も惜しまないと思っていること
その人物は淡々とそのことをマヤに語った。

決して名前も年も職業も教えることができないという紫のバラの人、
ずっと応援してくれているその人に、これからの舞台の事、そして
いつか大劇場でお芝居できるようになった時はまっさきに招待したい、
だからせめてあなたの名前を連絡先を教えてほしいと泣いてすがるマヤに、
とうとうその人は自らの連絡先を渡した。
ーーー聖 唐人ーーー
聖は影の部下として、速水大社長、そして真澄に仕える腹心の部下である。
亡き聖の父も同様に速水家に仕えてきた。
聖には戸籍がない。20年前、まだ子供だった頃破産に追い込まれた父親が
一家心中を図ろうとしていた所を速水英介に助けられた。
その際母と妹を失い、父と共に新たな名を与えられ、速水家の影として生きることになったのだ。
一度は死んだこの身、真澄のためならいつでも命を捨てる覚悟がある、
真澄にとって聖は誰よりも信頼できる部下であり親友であった。

地下劇場に、マヤに以前借りた傘を返す名目で現れた真澄は
お礼にとマヤを亜弓の一人芝居『ジュリエット』へ誘う。
演劇界の話題を集める亜弓の舞台、もはやプラチナチケットと化したその舞台は、さすがの真澄でも
当日立見席を手に入れるのがやっとという盛況ぶりだった。
そんな亜弓の見事な舞台を直視する勇気の持てないマヤはその誘いを拒む。
しかし真澄は、マヤの心の中の亜弓への恐怖心を見抜くと、わざとマヤに喧嘩を売るようにけしかけ、
マヤの負けず嫌いの性格を利用して観劇へと連れて行った。
その様子を黙って見守り、真澄にマヤを託した麗。
麗には、真澄が自ら憎まれ役を買いながらもマヤに舞台を見せようとしていた真意を見抜いていたのだ。
姫川亜弓の舞台を見ることは、マヤにとってためになると分かって・・・・それで・・・・。
速水真澄、あの人は本気でマヤの事を思ってくれている、冷淡な言葉の裏に優しさを隠して・・・
なぜだかはわからないが・・・。

開演ギリギリに間に合った真澄とマヤは、なんとか立見席を確保する。
舞台上の亜弓はどこまでも優雅で美しく、ジュリエットの少女から大人の女へと変わっていく
心情を余すところなく表現していた。
そのあまりの美しさと表現力に、マヤは一人で立っていることができず、
真澄の腕にしがみつきながらも食い入るように舞台を見続けた。
あまりにも自分と離れた所にいるライバルの、完璧な演技。
観たくない、観ていられない、だけど観ずにはいられない・・・・。
亜弓の一人舞台は圧巻の一言、マヤは自分の一人芝居と比べてもその段違いの
演技力と表現力にただただ圧倒され、涙を流しながらそれでも舞台を観続けていた。

鳴り止まない拍手にジュリエットコール
いつしか誰もいなくなった劇場には真澄と、その左腕にしがみつくマヤの姿だけが残されていた。
フラフラになりながらもマヤは真澄に、千草の元へ連れて行ってほしいと志願する。
マヤは亜弓の演技に打ちのめされ、どうしていいかわからず千草に助けを求めに来たのだ。
アクターズスタジオで、マヤは千草に亜弓のジュリエットによって失った自信と、
自分のこれからの演劇活動への不安を素直に吐露した。
演技がうまくなるためには、自分の人生に自信を持つにはどうすればいいか、
教えてください、月影先生!!
亜弓を超えたいというマヤの言葉を聞いて、千草はマヤに稽古をつけることを承諾する。
そして今ここで、先ほど見た亜弓のジュリエットを再現するよう命じた。
観てきたように、亜弓の演じたジュリエットを・・・
しかしマヤの表現力と身体能力では、およそ優雅で美しい亜弓のジュリエットを表現することはできなかった。
ぐらついてしりもちをつくマヤに、千草は追い打ちをかけるように亜弓の演技を称賛する。
亜弓の洗練された動き、優雅さ、身につけた高度なテクニックと何より舞台上でのあの華、
ジュリエットが自分の手の中から飛んでいってしまったひばりに
自分自身の姿を見る演技は特に素晴らしかった・・・
その言葉を聞いたマヤは、立ちあがると、亜弓とは全く違う表現でそのシーンを演じた。
亜弓が両手を開いてその手のひらを見つめていたシーンを、マヤは反対に後ろ手に組んで表現した。
理由を問われたマヤは、自由に飛んでいけるひばりが、とてもうらやましくなって、
気がついたら後ろに組んでいたと告げる。
その様子を、千草に呼ばれてアクターズスタジオに来ていた亜弓が見ていた。
自分のつたない演技が亜弓にすべて見られていたことを知り、恥ずかしさで涙が止まらないマヤ、
一方亜弓も、ひばりをうらやましいと思うマヤの本能に畏怖の念を感じるのだった。

マヤと亜弓が帰った後のアクターズスタジオでは、千草と真澄が対峙していた。
亜弓が来ると分かっていてマヤに亜弓の演技をさせた真意を問う真澄に、
千草は、マヤに今の自分の実力を思い知らせるためだったと語る。
今の自分の位置を、そして亜弓との距離をはっきり知る事、そしてそれを亜弓に知られてしまったと
気付くこと。
亜弓にあってマヤにないもの、それは自信と闘争心
今のままではマヤはとても亜弓に勝てない。亜弓の紅天女はさぞかし美しいことだろう。
そして、マヤには荒療治が必要だと明言する。
その言葉の意味を図りかねる真澄。
北島マヤの才能をどう思っているのかと問う真澄に千草は高笑いで答える。
「北島マヤ、あの子は天才よ・・・!」

**
北島マヤ
成績ーイマイチ
容姿ー人並み
不器用で運動も音楽も一言で言ってヘターー
何もかも自分の対極にいる、亜弓さん、あんな人が自分のライバルなんて信じられない。

ある日マヤは校長室に呼ばれた。
そこに居たのは聖、紫のバラの人の代理で来たという聖は、マヤに大学進学について打診する。
そのもったいないくらいの申し出に感謝しつつも、マヤは高校に行けただけでも十分であること、
卒業後は女優として、演劇の道を真剣に進んでいきたいことを告げる。
そんなマヤの真摯な態度を、必ず主に伝えることを約束し、部屋を出ようとする聖に、
マヤは卒業式にもう一度会ってほしいと告げる。
紫のバラの人に、渡したいものがある・・・・。

ある日地下劇場に、千草の使いの者という黒服の男がマヤを訪ねてきた。
その日はアカデミー芸術祭発表の日
予想通り亜弓がアカデミー芸術大賞を受賞し、そしてその受賞会場で千草が
『紅天女』に関する重大発表をするため、マヤを呼んでいるという。
慌てて駆けつけたアカデミー芸術祭受賞発表会場では、
報道陣達の注目が、史上最年少で大賞を受賞した姫川亜弓に集中していた。
立っているだけで絵になる、光り輝く生まれながらのヒロインーーー
そこに到着したマヤの姿はあまりにも素朴で、まさに光と影だった。
役者の揃った会場、千草は大勢の人々の前で発表した。

「紅天女の後継者は、姫川亜弓に決めたいと思います」
湧き上がる歓声、しかし千草の言葉は続く。
ーーマヤに最後のチャンスを与える
今から二年以内に芸術大賞か、もしくはそれに匹敵する全日本演劇協会の最優秀演技賞を受賞した場合
亜弓と互角とみなして二人に「紅天女」を競わせたのち、どちらか一方に決める
もし二年の間に千草の身に何かあった場合、そして
マヤがもし棄権した場合は、
紅天女は姫川亜弓のものになるーー

これが以前千草が言っていた荒療治の内容であることを悟る真澄、
そんな真澄に、おろおろとしながら近づいたマヤは、真澄の目をじっと見て、
どうすれば芸術大賞や最優秀演技賞をとれるのかを尋ねた。
よもやマヤにそんなことができるはずもないと笑い転げる周囲の人々を気にもせず、
真澄は真っすぐな目をマヤに返し、受賞条件を伝えた。
そして放心状態の中会場を後にしようとしたマヤに、亜弓は駆けより、
二年の間に絶対資格を獲得すること、棄権など絶対しないことを約束させた。
「二年後にあなたがわたしの前から消えていたらわたし、一生あなたを許さなくてよ・・・!」

今のマヤには賞どころか出る舞台すらない・・・・・

**
一ツ星学園高等部 卒業式
卒業証書を手にしたマヤは、そこに聖の姿を見つけると駆け寄った。
そしてその卒業証書を聖に手渡し、クラスの記念写真など、学園生活で撮った写真の詰まった
アルバムと共に紫のバラの人に渡してほしいと託す。
高校に通えたのも、こうして無事に卒業できたのも、すべて紫のバラの人のお陰だから、
この卒業証書はあの人に受け取っていただきたい・・・。
あまりにも重いマヤの気持ちに戸惑う真澄、こんな大事なものを受け取るわけにはいかないと
返却しようとするが、聖にマヤがどれほどの想いでこれを紫のバラの人に渡すことを
決めたかを説得され、改めてマヤへの想いを痛感する。

卒業式が終わり、懐かしい体育倉庫を覗いていたマヤ。
ここでお芝居の楽しさや、自分が舞台の上でならどんな人生も演じることもできることへの喜びを
取り戻していったことを思い出す。
そんなマヤを囲むように、たくさんの在校生や同じ卒業生が見送りに集まっていた。
みんな過去の事など全く気にしていない。
マヤの演技に魅了され、ファンとなって応援する仲間たちが、卒業後のマヤの活躍を信じて疑っていない。
そんなみんなのあたたかい笑顔に励まされ、マヤは改めて演劇がやりたい、もっともっとうまくなりたいという
思いを強くする。
どうすれば賞を取ることができる・・・二年以内に・・・
どうすれば亜弓に追いつくことができる・・・そして
どうすれば『紅天女』への道が開ける・・・


第13巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
この巻で重要な事と言ったらやっぱり、
イチゴ柄の傘で相合傘 → 「真澄とマヤの間はいつでも赤信号」
聖唐人初登場 → 七変化はまだまだ!
マヤ、紫のバラの人に卒業証書を渡す → これのちに大変重要アイテムになります!!
ですかね。

真澄が本格的にマヤに喧嘩を売って憎まれ役を買って出だすのもこの巻からです。
マヤの反発心を巧みに利用して、有益になる事を与えてあげるという手段。
マヤ本人は気付いていませんが、麗は早くも敏感に真澄の真意を見抜いているご様子。
マヤと会うとけんかばかり、だけどあんな真澄さまの笑い声、聞いたことない云々のくだりが
定番になるのもこの頃から。

第8章「華やかな迷路」マヤ芸能界編、母の死去、芸能界失脚
第9章「100万の虹」マヤ高校生活での演劇活動復帰への足掛かり 一人芝居~野外公演
高校を卒業したマヤが演劇への情熱を取り戻しながら再び紅天女争いの舞台に返り咲くまでの過程が
第9章そして10章で描かれています。
「華やかな迷路」がつらすぎるだけに、「100万の虹」はとにかく演じるマヤが見ていて楽しいな~~と
思います。長いけどね。
真澄とマヤの関係が進む話もいいけれど、やっぱり演じているマヤ、演技に悩むマヤが
読んでいて面白いです。『ガラスの仮面』が一番ガラスの仮面らしい時じゃないかな・・・。
次の巻に行く前に、番外編の亜弓幼少期編が第12巻には収録されているので、
それは別にまとめることにします。
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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第11巻【ネタバレばれ】

2015-02-08 22:39:04 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

--------------------------------------------------
『ガラスの仮面』文庫版第11巻 ※第9章(最初から)(途中まで)

第9章 100万の虹

舞台上でトキとして演じたマヤの心の中には、忘れていた演劇への情熱が再び熱く燃え上がっていた。
真澄に何とか泥まんじゅうを吐き出させられたマヤは、
このまま演劇の道を離れたくない、もう一度お芝居がしたいという思いがどんどん強くなる。
しかし今、自分が立てる舞台はどこにもない。

そんなマヤに近づいてきた亜弓は一言
「まってるわよ」
と言い、マヤの手をぐっと握った。
誰からも見放されていた自分を、亜弓だけは信じて待っていてくれた!
亜弓だけは分かってくれていた、自分が演劇の中でしか生きられないことを。
迎えの車に乗る亜弓を追いかけ、いつか必ず亜弓に追いつく事を誓うマヤ。
周囲の誰も信じてくれなくても、亜弓だけは分かってくれる、
そのために私はがんばる。
もう一人、ずっとマヤを信じ続けていた真澄は、
最後にもう一度大都芸能としてサポートしたいと告げるが、
マヤは約束通り契約解消を求め、それがまさに予想通りと言わんばかりに
真澄は、マヤをかつて暮らしていた白百合荘に送り届けた。
白百合荘には水城によってマヤの荷物がすでに届けられており、
マヤへの誤解を解いていたつきかげの仲間達が、今か今かとマヤの帰りを待ちわびていた。
すべてはこの、速水真澄が根回ししてくれたこと。
マヤは戸惑いながらも真澄に送ってくれたお礼をそしてなにより今日の
舞台に出してくれて、また自分に忘れていた演劇への情熱を
思い出させてくれた事を感謝した。
そんなマヤに真澄は今まで見せたことのないような優しい笑顔をみせ、
金輪際さようなら!と叫ぶマヤに
「じゃあまた」
と澄ました顔で告げ去って行った。
マヤの心はまたしても戸惑う。
大都芸能の仕事の鬼、冷血漢。
世間で噂されるとおりの冷たい人間なのか、ときどきわからなくなる。
本当はいいひとなのか、やさしいひとなのか・・・。

**
久々の再会を果たした仲間達は、これまでのすれ違いの穴を埋めるように
たくさんの話をした。
麗は相変わらず昼間は喫茶店のウェイトレスをしながら演劇をつづけていること
来月はじめには地下劇場で10日間公演をやること
劇団メンバーが5人も増えたこと
月影先生は今もアクターズスタジオで特別講師をやっているが、
空いた時間には必ず稽古をつけにきてくれていること
そして劇団一角獣のメンバーはまた全国修業中だということなど
やっと戻ってこれた懐かしくあたたかい場所に、マヤはしみじみと
幸せをかみしめていた。

地下劇場でのつきかげの稽古に同行していたマヤのもとに
月影千草が姿を現した。
そしてマヤに自分がなぜマヤを大都芸能にいれたのか、その理由を伝えた。
マヤに外の世界を見てもらいたかった、そして役者としてひとまわりもふたまわりも大きく成長して欲しかった。
マヤはいつまでもつきかげにいるべき人間ではない。
つきかげの舞台出たいのであれば、まず自分自身で自らの汚名を返上しなさい。

今のマヤには演劇をする環境などどこにもない。
でもきっと道はどこかにある。
その道を探して、マヤはひとりでだってできることはあると大きな声で河原での発声練習から再出発するのだった。

**
一ツ星学園に復帰したマヤを見る目は相変わらず冷たい。
だれもが芸能界で失脚したことを知り、後ろ指を指す。
しかし今のマヤは母を亡くし落ち込んで空っぽになっていたあの頃とは違う。
さらし者になるのは覚悟の上、学校に来たのだから。
扉を叩いた演劇部では、芸能活動をしていた者の入部は禁じられていると断られる。
それでもマヤはあきらめない。どうやれば、演劇ができる?
図書委員の草木広子と出会ったのは、そんな時だった。
彼女が手にしていた本「女海賊ビアンカ」
元大貴族の女海賊ビアンカの、恋あり陰謀あり冒険ありの波乱万丈物語。
いつかこんなのを舞台でやれたら、夢の膨らむマヤは、今日も一人で稽古を続ける。
河原でみかけた子供たち相手に、パントマイムゲームをしながら。

一ツ星学園では学園祭の準備が進められていた。
草木広子に「女海賊ビアンカ」の本を借りたマヤは、もう何年も使われてない体育倉庫を見つけ
ここでこの芝居をすることに決める。
この倉庫にあるもの、全部使って、お芝居ができる。
それは一人芝居。
さっそく草木に相談し、この本を一人芝居用の脚本にしてくれる助っ人を求める。
草木はその突飛な発想に驚きながらも、文芸部の吉沢を紹介してくれた。
草木、吉沢そしてマヤと三人だけで、学園祭での発表を目指した舞台へ挑む。
今まで、与えれた台本を演じる経験しかなかったマヤは、芝居を一から作り出す経験によって
さまざまなことを得ていた。
一人芝居だから、より観客に分かりやすい言葉にするにはどうすればいいか、
部屋の中で観客一人ひとりに伝わるには、どのようにセットを組めばいいか、
芝居を作っているのは役者だけでないということをマヤは痛切に感じていた。
こうして、古く小さな体育倉庫は、ありあわせのマットや跳び箱をくみ上げただけの
舞台として整えられた。
およそかつてテレビドラマに映画にと活躍していた女優がやるべき場所ではない、みすぼらしい物置小屋。
いったいそんなところでどれほどの事ができるのか、
周囲の目は冷ややかに、それでいてそこはかとない期待感、そして底知れない恐れを抱いていた。
出演者はマヤ一人、セットも小道具も最小限。その他ほとんど全てをパントマイムで表現せねばならない。
看板も宣伝もすべて自分たちの手作り。
一から舞台を作り上げていくことの達成感、そして何より演じられることの喜びをかみしめながら、
マヤの舞台の幕はいよいよ上がるーーー
自分を待っていてくれる亜弓に追いつくための、これが第一歩。

マヤが学園で一人舞台に挑戦しているという噂は、亜弓の元にも届いていた。
亜弓の周囲では、物置小屋でのわびしい舞台とマヤをあざ笑うものが大半である。
しかし亜弓は、ようやくマヤが本格的に自分に向かって活動を始めたことを感じ、
気を引き締めていた。
美しく聡明で天才女優と呼ばれ、周囲にほめそやされる亜弓、しかし亜弓は
育ちも境遇も全く異なるマヤに、演技者として同じ情熱を感じ、
誰よりも近くにいるような気がしていた。
マヤがまた、この場所へ戻ってくることを信じているーーー

**
一ツ星学園学園祭
『女海賊ビアンカ』@体育倉庫

かつて大河ドラマにも出演していた女優がいったいこんな小さな
物置小屋でどれほどの演技をするのだろう、
観客として集まった人々は、純粋にマヤの演技を楽しみにしているというよりは
冷やかし半分、興味本位の者がほとんどだった。
もしこんな観客を前に、魅力的な演技ができなければ、観客はすぐに立ち去ってしまうだろう。
しかし反対に、この場所で最高の演技ができれば、それは何よりマヤを成長させる。
劇団つきかげの麗やさやか、そして月影千草も観劇に駆けつけ、
マヤの一人舞台はスタートした。

始まるや否や、マヤは観客を一気に舞台の世界に引き込んだ。
跳び箱やマットがそのまま置かれただけの舞台、しかしそこにマヤが飛び乗り、
動き回るだけで、時には船の甲板、時には貴族の屋敷の出窓と自由に舞台は
印象を変える。
マヤが差し出す手をピタと止める、ただそれだけでその手を支える別の人間の
見えない姿が見えてくる。
跳び箱の1段目をひっくり返しただけの箱に揺られているマヤが、
いつしかゴンドラに乗って進むように、そして倉庫はフィレンツェへと向かう川の流れに
見えてくる。

途中途中で場の雰囲気を壊すような観客の声も、マヤとっさに舞台の一場面として
活用する。
天性の舞台勘が、観客の集中力を切らさないように、舞台の雰囲気が壊れる事のないように
働く。
舞台が終わった時、観客は圧倒的な拍手と賛辞の言葉を惜しみなくマヤにかけていた。
それはこれまでマヤを転落女優としてさげすんでいた視線とは真反対のあたたかく
好意的なものだった。
そして、観客の圧倒的な支持により、マヤの一人舞台は異例の再演が決定したーーー

**
海外の大物アーティストとの独占契約を獲得した大都芸能の速水真澄、
これでますます大都芸能は安泰、速水大社長も立派な後継者がいて安心だろうと
記念パーティーで周囲から声をかけられる。後は大会社の社長令嬢を嫁にでも貰えば・・・。
しかし真澄ははっきりと言い切る。
結婚など考えていない、『紅天女』を上演するまではーーー

速水大社長が『紅天女』にご執心というのはすでに経済界でも有名な話
周囲は父の志を継ぎ、積年の夢を果たそうとしているように映っていた。
「ほかの誰にも取られたくない、『紅天女』も、『紅天女』の役者も」
水城は真澄のその言葉が、決して大社長の意志を代弁したものではないことに気付いていた。
「お待ちになるんですか?あの子を、あの子が大人になるのを・・・・」
「もしそうだとしたら・・・?」
余裕のある雰囲気を崩さない真澄だったが、
マヤの大人になる姿など想像できないな、と最後は笑ってその場をはぐらかした。
真澄の真意は・・・。

ある日真澄は、アクターズスタジオでマヤの姿を見かける。
最後に会ったのは『夜叉姫物語』終演後、マヤを白百合荘に送って行って以来だった。
とりあえず芸能界のしきたりと、苦虫をかみつぶしたように表情をかしこまらせながら
真澄に丁寧なあいさつをするマヤ。
「泥まんじゅうを食べたわりにはかわりもなくなによりです」
「は、ありがとうございます」
マヤの態度に笑いを隠せない真澄。普段見慣れない真澄の笑い声に周囲のスタッフは驚く。
一ツ星学園に多額の寄付をしている真澄の立場として、マヤが一人芝居に挑戦したことは
すでに耳に入っていたが、マヤによると熱烈な観客の後押しで再演が決まったことを知り驚く。
たかが学校の一イベントで再演などこれまで聞いたことがない。
自分をずっと励ましてくれていた紫のバラの人に知らせたいのに・・・と落ち込むマヤを、
きっとその人は知っているよと励ます真澄。
後から現れた千草と入れ替わるように部屋を後にした。
「がんばりたまえチビちゃん きみのファンのためにも ではまた」
颯爽と去っていく真澄にあっかんべーをしながら、マヤは千草に改めて、
学園での一人舞台が再演になったことを報告し、アドバイスを受けた。
長台詞での息つぎ、無駄な動きの排除、間を意識した演技
短い時間でも、やはり千草の指導は何よりも的確かつ有益であり
以前のようにまた、直接指導をしてほしいと訴えるマヤだったが、
千草は厳しく突き放す。
”自分に必要なものは全部自分で考えて手に入れなさい
もうそうしていい時期です”
その言葉をマヤは胸に刻む。

再演された『女海賊ビアンカ』は、初演を上回る好評を得、
ますますマヤの舞台を望む声は高まった。
その期待に応えるべく、マヤは新たな作品に挑むことを決める。
さまざなシナリオ、原作の中からマヤが選んだのは、
『通り雨』
それは、ごくごく普通の女子高生が主人公の、ある日の日常生活を淡々と追うだけの
シンプルなものだった

**
『通り雨』
主人公佐藤ひろみは高校2年生
大学生の兄貴に中3の妹、優しいお母さんとお父さん
遅刻しがちだが、学校ではけっこう人気者
手芸部に所属し、サッカー部のキャプテン島本君にあこがれる普通の少女
この演劇では、そんなどこにでもいる普通の女の子の日常を描くだけである。
『女海賊ビアンカ』以上にセットもなにもない、日常の動きを全てパントマイムで
表現しなければならない。
佐藤ひろみという、ごくごく普通の女子高生だが、マヤにとってはそんな普通の女の子の
日常生活を演じることが楽しくてならなかった。
ひろみだったらどう考える?どんなことをして過ごす?
どんな会話を友達としている?
今までの自分ならしたことのないような、学校帰りに友達とケーキ屋に寄ってみたり、
あこがれの島本先輩を想像して、サッカー部のキャプテンに会ってみたり、
可愛い髪飾りをショッピングしたり、
まるで稽古も何もせず当たり前の毎日を送っているようなマヤだったが、
その一つ一つが『通り雨』につながっていた。

ひろみの1日を全てパントマイムで表現しよう。
たった一人での稽古は夜遅くまで続く。しかし稽古を重ねるごとにマヤは、
今自分が行っている演技が果たして正しいのか、このまま続けていていいのか不安だった。
そこで劇団つきかげに千草が稽古を見に来ると聞き、マヤは千草の出待ちをして
自分のパントマイムを見てほしいと直訴した。
マヤが観客の事を考えた演技を目指していることを知った千草は満足げにマヤの稽古をつける。
そしてパントマイムで一番大事な事は観る側も自分たちの記憶によって観ているということだと
アドバイスする。
そもそもその動作を知らない人が見ても、決して何をしているのかは分からない。
心の演技を大事にすること、後は自分で考えなさい
そういうと千草は地下劇場を後にした。
しかしその時、千草の心臓は発作を起こし苦しくうずくまった。
あわてて助けようとするマヤを突き飛ばし、強引に一人タクシーに乗り去って行った千草。
しかしマヤは千草の容態が気がかりでならない。
そして気がつくとマヤは真澄のいる大都芸能に電話をかけていた。

マヤから千草の状態を聞いた真澄は、すぐに医者を手配すること、今後は千草の行動について
もっと注意を払うよう周囲の者に指示しておくこと、経過は必ず報告する事を約束した。
その言葉にようやく安堵の気持ちを抱くマヤ。
「ありがとうございます」
マヤは心からの感謝の言葉を真澄に伝えた。
マヤにお礼を言われたのは、2度目。
「なぜおれに電話をかけてきた?」
マヤにとってとても大切な千草の命が危ういときに、助けになる人としてとっさに浮かんだのは
真澄の顔だった。
「思い出してくれてありがとう」
例え憎まれていようとも、いざという時にマヤが自分を頼りにしてくれたことを真澄は嬉しく思う。
反対にマヤは、こんな大事な事を、なぜあんな冷血漢の仕事の鬼に頼んでしまったのだろうと
自分の気持ちが理解できずにいた。
あんなやつが自分の頼みを聞いてくれる保証など、どこにもなかったのにーーー

真澄の迅速な手配で、大事は取り留めた千草の病室を真澄が訪ねてきた。
『紅天女』を上演するまでは、何があっても死なない、そう宣言する千草。
千草にとって紅天女は、亡き尾崎一蓮とのたった一つの大切な絆だった。
一方真澄も紅天女を誰の手にも渡したくないと一方ならぬ思い入れを隠さない。
もし上演権がほかの誰かにわたるようなことがあれば、どんな手段を使ってでももぎとってみせる。
しかし、今それをしないのは、相手が千草だから、
紅天女である千草だからだと告げた。

『通り雨』上演の日が近づいてくるにつれて、マヤの演技もますます磨きがかかる。
パントマイムはより研ぎ澄まされ、まるでそこに壁が、冷蔵庫が、家族がいるかのように
佐藤家が色鮮やかに浮かび上がる。
そしてマヤ自身にも、佐藤ひろみとしての人格が存在するかのように、
言葉づかいや、髪をいじるクセが出てきたりと、隣にいる草木広子ですら、
マヤではない別人の存在を感じて恐れるほどだった。

こうしていよいよマヤの一人舞台『通り雨』の幕が上がる
そしてその頃、亜弓はシェイクスピアの名作『ロミオとジュリエット』をジュリエットだけで演じる
一人芝居『ジュリエット』に取り組んでいた。
二人の紅天女候補が、それぞれの場所で更なる高みを目指してステップを踏んでいる。
今は離れた所でも、二人は間違いなく今、戦いの真っ只中にいる。
いつか来る紅天女を演じるその日まで・・・・

第12巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
辛かった、大変辛かった 芸能界編「華やかな迷路」がようやく終わり、
いよいよみんな大好き一人芝居、「100万の虹」編スタートです。ヤターーーー
土壇場で演劇への情熱を取り戻したマヤ、真澄はすでにマヤへの愛を自覚して
達観したのか、冷静真澄に戻りました。
ここ2巻くらい、ずっと「まさか俺が、あの子を・・・愛しているだと・・・・」
を堂々巡りに繰り返していた人と同一人物とは思えないくらいの落ち着きようで・・・。

まあなんといってもこの巻は、マヤの一人芝居が面白いので、それメインで楽しむで
いい気がします。『女海賊ビアンカ』の描写は例のごとくあんまりまとめてませんけど。
次の巻の『通り雨』も結構好き。

久々に真澄&マヤLOVEバロメーター
芸能界失脚~一人芝居 あたり
真澄 27~28歳
 ~マヤへの感情を水城に「愛」だと指摘されて動揺する。そんなはずはないと必死に
  否定できる証拠を求めるが、反対にマヤの初恋宣言に動揺MAX、それでもなんとか
  いつもの冷血漢な仕事ぶりを崩さずにいようと動くが裏目にでてマヤの母を見殺しに。
  人生で一番後悔したし、さらにそれが原因でどんどんマヤが転落の一途をたどる姿を
  目の当りにしてとうとう自分の気持ちを自覚する。
  マヤを愛しているだけでなく、マヤにとって何より大切な演劇への情熱を取り戻してほしい
  そのためなら自分はいくらでも待つし、どんな憎まれ役だって買って出る。
  一生マヤ、応援宣言!
マヤ 16~17歳(高2~高3)
 ~自らの母を見殺しにした真澄、許せないはずなのになぜか真澄の態度を見ていると
  強く非難できなくなる。
  一番ショックを受けていた時は、心が空っぽでそれどころじゃなかったから、よく覚えていないことも
  多いけど、とにかく劇団つきかげの敵で、母親を殺した相手だから、絶対に許せない。
  許せない、だけど本当に冷たい人なのか、本当は優しい人なんじゃないか、そんな気もする。
  困った時、なぜ頼りにしてしまったのか、自分でもわからない・・・・

真澄はマヤの事が好きであることを自覚しました。同時にマヤの演劇への情熱も愛していますので、
自分の事はさておき、今後はマヤの演劇界への復帰を何よりも目標に裏で動くよ~~~。
マヤはマヤで、自分の心の中に起こる真澄への不思議な感情がなんなのか、理解できないでいるくらいまで
進歩(?)しました。
表面上は嫌っていても、心の奥底では真澄を頼りにしている気持ちがあること、
真澄の評判が実際の姿と異なっているような気がすることを本能的に感じています。
読み返すと、ちゃんとマヤもこの頃から真澄の事好きだったんだな・・・・と思ってなんか安心。
真澄=紫のバラの人 って露程も疑っていない頃ですからね。なんせ。

余裕真澄も、例の見合い話浮上によって一気に消え去るわけですが、とりあえず今は、
チビちゃん大人になるのを・・・待つ!!
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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第10巻【ネタバレばれ】

2015-02-07 16:47:50 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第10巻 ※第8章(途中から)(最後まで)

第8章 華やかな迷路

大都劇場『シャングリラ』初日前日 舞台稽古
相変わらず膝の上に母の遺骨を抱えたまま、マヤは心ここに非ずの様子で涙を流し続けていた。

”母さんごめんね 家出なんかしてしまって かわりにあたしが死んじゃえばよかったんだわ”

真澄が密かに自分の母親を監禁し、会わないように工作していたことを知らないマヤは、
母が亡くなった事を全て自分の責任だと思い、落ち込んでいた。
そんなマヤの様子を見かねた水城が、無理やりマヤから遺骨を引き離すと、客席にそれを置き、
母親が見ているのだからしっかり演じるようにと励ます。
そんなマヤの元に紫のバラが届けられる。
私をずっと支えてくれる大切なファン、そして母さんのため、私は巫子リーラを演じる!
しかし水城は、マヤが励まされたまさにそのバラの送り主が、
マヤをそして母親を不幸に陥れた張本人であることを思い、震える想いを必死に取り繕う。

マヤの周囲にぴったりとくっついて付きまとっていた少女、乙部のりえ
田舎娘の仮面の下には絶世の美女が隠れていた。
そして誰よりも上昇志向の強いのりえは、密かにマヤにとって代わる事をもくろんでいた。
隙だらけの今がまさにその時。
マヤの母を死に追いやったのが、大都芸能の速水であるという情報を得たのりえは、
マヤを陥れる作戦を実行に移す。
「お母さんは 速水真澄に殺されたとよ!!」
そして初日前夜、マヤは行方不明となる。

**
マヤは真澄への恨みを抱いたまま暴走族に一晩中連れまわされた。
無理やり飲まされたコークハイには睡眠薬が混ぜられ、意識を失ったまま
三浦海岸に放置される。
そしてそのまま目を覚ますことなく、マヤは主演舞台の初日に穴をあけた。

マヤの足取りを追ううちに、母親の死の原因が自分であることをマヤに知られたことに気付いた
真澄は、それでも何とか無事にマヤを助け出したい一心で必死の捜索を続ける。
その様子に、水城は改めて真澄がマヤを深く愛していることを悟るのであった。
「今頃は殺したいほどの気分だろう、おれを・・・ さぞかし憎んでいることだろう」
マヤが窮地に陥った時、真澄はいつもの冷静な自身を見失い、
おかしなくらい取り乱す。
それはもうずっと昔から、長い間・・・・。
舞台初日に穴をあける主演女優など、本来ならば叱責罵倒に値するにもかかわらず、
今、真澄の心にはひたすらにマヤの身を案じ、不安と心配の気持ちしか湧き起こらなかった。
仕事のためならどんな非情な事も平気なこの俺が、
まさかあんな小さな少女の安否が気になって何も手につかなくなるなんて・・・・!

マヤが空けた舞台の穴は、乙部のりえが見事に埋めた。
マヤの心をズタズタに切り裂き、暴走族を利用してマヤを転落の道に陥れる。
全てはこの乙部のりえが仕組んだことだった。

そしてその頃、ようやく見つけ出したマヤを真澄は優しく抱きかかえていた。
「今はただ眠れ、目覚めればおそらく地獄が待っている・・・」

**
翌日病院のベッドで目を覚ましたマヤは、自分が舞台に穴をあけたことを知る。
そして乙部のりえが見事に代役として演じたことも。
目を覚ましたマヤを取材しようと、たくさんの記者が集まっていた。
真澄はその記者達の目の前でマヤの頬を激しく打つと、大声でこれ見よがしにマヤを叱責した。
失踪は故意ではなく、母親の死の悲しみでつい見ず知らずの人に連れられこんなことに巻き込まれたという
ストーリーを巧みに織り交ぜながら。
真澄に促され、泣きながら舞台に穴をあけたことを詫びるマヤの姿に、
コキおろそうと意気込んでいた記者たちのペン先も鈍る。
なによりあの大都芸能の速水真澄があれほど激怒して女優の頬をひっぱたいたのだ。
これ以上の処遇はない、誰もがそう思いながら病院を後にした。

残された真澄とマヤ。
マヤがコークハイと共に大量の睡眠薬を飲まされていたことを知った真澄は
裏に計画的な匂いを感じる。
しかしそれらもすべて、自分自身が犯した罪が最大の原因であることに変わりはない。
「冷血漢!あなたなんて大っ嫌いよ、世界中で一番嫌い、一生恨んでやるんだから、一生許さないんだから!」
泣きながら真澄を罵倒するマヤに、真澄は何も言わずただ、体を預けた。
「なぐるなり蹴るなりと好きにしろ、きみの気のすむようにしたまえ、おれは謝り方を知らん・・・・!」
そういって無防備に体を差し出す真澄に、マヤはなぜか怒りをぶつけることがためらわれた。
それまで自分にみせていたからかいや命令をしてくる大都芸能の鬼と恐れられている人間の
姿はそこにはなかったからだ。

芸能界で、今回のマヤの起こした問題はあまりにも大きく、
マヤは舞台『シャングリラ』を降板、沙都子役も降ろされ、スケジュールは全て白紙になった。
女優生命は一夜にして、絶たれたのだった。

女優としての活動ができないマヤだったが、大都芸能との契約は続いていると言われ、
自由の身になることもできない。
里美茂の事務所からも一方的に絶縁を宣告されるが、それに抵抗するにはあまりにもマヤの
心は空洞になっていた。
マヤは涙を見せることもなく黙ってそれを承知した。

せめてもなぜ、自分を大都芸能に入れたのかを知りたくて、千草の勤める
アクターズスタジオを訪ねるが、千草はマヤとの面会を拒否した。
今のマヤに必要なのは、なぐさめではない。
千草はそれに気づいていた。
もちろん千草は分かっていた。マヤが巷で噂さるような暴走族との関係、未成年飲酒、そして
主演舞台をすっぽかすような人間ではないことを。
何者かの罠にかかり、芸能界という恐ろしい世界で一人孤独に闘っていたマヤ、
そして今、大きな壁にぶち当たり苦悩している。
千草がマヤを大都芸能に入れて目的は3つあった。
一つ目は自分からマヤを引き離す事。
二つ目は今までマヤの知らなかった世界を教える事
そして三つ目は、
マヤの胸の奥底の情熱を呼び起こす事。演劇への熱い思いをたぎらせ、自ら未来の道を切り開くエネルギーを、
そして、それが『紅天女』につながることを。

今、マヤが三番目の目的を果たすための試練の只中にいた。

仕事を失ったマヤに、真澄はそれでも仕事を与える。
『黄金の実』@アテナ劇場
主演ではないが大事な役、マージはお転婆でちゃっかりした13歳の少女役だった。
スキャンダル女優マヤの出現に周囲は容赦なく冷たい視線とこれ見よがしな噂話をする。
それでも何とかマージとして必死に舞台を務めようとするマヤだったが、
再び乙部のりえの差し金により、舞台上で演技ができない状態に陥る。
自分にただ一つ残されていたはずの演じるということさえできなかった・・・。
マヤは完全に生きる希望を失った。
”演劇を、やめる・・・?”

舞台上で演技ができなかったことを知った真澄は、マヤを社長室に呼びだした。
あえてマヤを激しく叱責し、演劇への情熱そして『紅天女』への夢を呼び戻そうとする真澄だったが、
マヤはかたくなに演技をそして大都芸能・速水真澄を拒否する。
それでも無理やりにでも真澄はマヤに次の舞台に立たせようとする。
何としてもマヤを立ち直らせたい、もう一度舞台上で輝かせたいーー
そのためなら、自分は恨まれても構わないーーー全てはマヤの為にーーー
「なんのために、大都芸能のためですか?」
真澄に母を殺された、その恨みの感情だけが激しく湧き起こるマヤに
真澄は自分の真意など伝わるはずもないと、契約書を盾に強引に仕事を与えた。
「契約書があるかぎり、きみは大都芸能のものだ、おれのものだ」

しかしマヤはまたしてもその舞台
『天人菊の里』の菊乃の仮面をかぶることができなかった。
まったく演技のできなかったマヤは完全に自信を喪失し、大嵐の中姿を消した。
「演劇をやめる」と水城に電話を寄越したまま・・・

**
マヤにとって代わって一躍時の人となった乙部のりえ、
まるでマヤをそのままコピーしたかのような沙都子の演技、そして何よりその美貌に
スタッフはじめ視聴者は一気に惹きつけられた。
しかし姫川亜弓は冷静に見抜いていた。この二番煎じの女優の実力では、早晩飽きられる。
亜弓は、北島マヤにまつわる一連の報道をまったく信じていなかった。
マヤが演劇をないがしろにすることなどあり得ないのだ。
そして亜弓はとうとう真実を知る。
全てはこの乙部のりえが仕組んだ下劣な罠だったのだと。
”許せない、演劇を冒涜し、北島マヤを陥れたこの女だけは”

『カーミラの肖像』@プラザ劇場

乙部のりえが初めて、マヤの代役としてではなく自分自身の名前で主演する舞台、
今回ばかりは親の七光りを最大限に活用して、その舞台に出演をした亜弓は、
主役である乙部のりえ演じるマリアを舞台上で完全にかすませ、
はかなくも悲しく美しい女吸血鬼カーミラを見事に演じ
この舞台の主役は姫川亜弓であると観客に知らしめた。
それは、亜弓が舞台で、そして演技によって示したマヤの無念を晴らす復讐。
実力の差をまざまざと見せつけられ、完全敗北した乙部のりえ
天才・姫川亜弓の名はだてではなかった。
そして、その亜弓が唯一認めるライバル、それが北島マヤ、その人物を自分は・・・。
のりえは今更ながら自分の犯した罪の重さを感じるのだった。
そして大衆もまた、一人の偉大な女優を失ったことに遅まきながら気付いていくのだった。

**
あてもなく雨の中、街をさまようマヤ。
かつて会いに行ったときに冷たく追い払われた劇団つきかげのメンバーの元には帰れない。
一人雨に濡れながら公園のブランコに座り込むマヤを見つけ出したのは、
やはり、真澄だった。

演技ができない自分など、大都芸能にはなんの役にも立たない、ましてや
母を殺した真澄の顔など見たくもないと真澄を拒絶するマヤだったが、
長時間雨にうたれ続けた体はもう限界を超え、そのまま倒れこんでしまう。
慌ててマヤを自身の屋敷に運び込む真澄。
もう少し雨にうたれ続けていれば、肺炎を起こしかけていたというその体は、
真澄の屋敷で医師の治療を受け、眠っている。
真澄のパジャマを身にまとい、穏やかに寝入っているその顔を見つめながら、
真澄は心の中で葛藤していた。
俺のせいで、マヤの母親は死に、マヤの女優としての歯車は狂い始めた。
今まで自分のしてきたどんな後ろ暗い仕事にも、後悔したことなどなかった。
冷血漢と呼ばれるにふさわしい生き方をしてきた真澄にはしかし、今このとき
マヤを救いたいという思いしかなかった。
目の前で眠る小さな小さな女の子、この子に陰ながら紫のバラを贈り続けたのは、
舞台上でひたむきに燃える情熱にひかれていたからに他ならない。
そうとも、今こそ認めようおれはおまえを愛している、マヤ・・・
大都芸能一の堅物、仕事の鬼、冷血漢、これまで本気で誰かを愛したことなどなかった
自分自身が、これほどまでに一人の女性を、女優を、商品としてでなく思う気持ちが
あることなど、気付きたくはなかった。
しかしもう、後にひくことはできない。
どんなことがあっても、マヤを立ち直らせる。
マヤに、生きがいをすべて取り戻させる。
例えその結果自分がどんなに憎まれようともーーー

真澄は枕元の水薬を口に含むと、静かにマヤの唇に寄せ、
口移しでそれを飲ませた。

翌朝目を覚ましたマヤは、なぜか自分が速水真澄の屋敷にいる事、
そして真澄のパジャマを着ていることに驚く。
あんな奴の世話になっているだなんて、最低!
しかしマヤはそこで屋敷の使用人から真澄の意外な生い立ちを聞く。
真澄は 大都芸能社長・速水英介とは血が繋がっておらず義理の親子であるということ。
もともと速水邸のお手伝いだった母親は、早くに夫を亡くしずっと母ひとり子ひとりで
育てられたこと。
長年独身だった速水英介が、周囲の反対を押し切って突然真澄の母を妻にし、
真澄を自身の後継者として幼い頃から徹底教育を施していたこと。
そして、真澄の母親は真澄が中学生の時に亡くなったこと。
冷血漢と言われる、真澄の心の中をマヤは思う・・・。

仕事を終えて深夜に帰宅した真澄に、マヤはすぐにこの家を出ると告げるが、
真澄は話を取り合わず、次なる舞台の仕事を与えた。
『三色すみれ』のオーディションを受けさせようというのだ。
真澄に「似合ってる」と言われて慌てて着ていた真澄のパジャマを脱ぎ捨て踏んづけるマヤ。
帰宅する真澄を、憎んでいるはずなのについ「おかりなさい」と出迎えてしまうマヤ。
いまいち真澄への憎しみの気持ちが燃えていないことに、マヤ自身自分の心が掴み切れずにいる。
演じることが怖い、演じられなかった自分自身にかけられた心無い言葉が
耳に残って離れない。
もう自分は演劇をやめるんだ、大都芸能もやめるんだ、だからオーディションも受けたくない、
そういうマヤの意見を、しかし真澄は当然聞き入れない。
今回の仕事ができなくても、次の仕事を持ってくる、それでもだめならまた次だ。
全てはマヤに演劇への情熱を取り戻させるためだったが、マヤには真澄が大都芸能として
損失をを補てんするためにマヤを使おうとしているとしか映らない。
とうとうマヤは塀を乗り越え、速水邸から逃げ出した。

行く当てもなくただ遠くへと電車を乗り継ぎたどりついたのは、とある保育園。
マヤはそこで住み込みのお手伝いをさせてもらえることになった。
さくら保育園での日々は、これまでになかった穏やかな幸せに満ち溢れていた。
演劇などなくても、生きていける。ここで子供たちの笑顔に囲まれて・・・。
子供たちをあやすため、即興の一人芝居を始めたマヤは、
その久しぶりの感覚にも穏やかに向き合えていた。
日常のささやかな幸せ、これだけでいい、もう私には華やかな世界は必要ない・・・。
そうして少しずつ、やわらかな笑顔を取り戻していったマヤ、しかし
その目の前にまたしても速水真澄が姿を現す。
無理やり連れ帰った真澄だったが、食事も摂らず無言の抵抗を続けるマヤに
もはやなす術を持たなかった。
そして最後に一つだけ、急きょ穴が開いてしまった舞台の端役の代役に出演すれば、
大都芸能との契約を解消してやると告げ、マヤはただ「はい」とだけうなずいた。
舞台は『夜叉姫物語』、そして主演は姫川亜弓
マヤの役は亜弓演じる夜叉姫に助けられる乞食の娘トキ

**
大都劇場ーー
この舞台さえ終われば、私は女優としての人生は終わる。
これが最後の舞台。

スキャンダルにより失脚し、演劇を辞めたと噂されるマヤの出演に、
共演者・スタッフ達も色めき立つ。
そしてマヤにいやがらせをしようと画策する者も・・・。

舞台袖で出番を待つマヤに、真澄は最後の言葉をかける。
結局自分はこの子に何もしてやれなかった。
せめて君の最後の虹の舞台、見届けてやるーーー
隠された真澄のその手には一輪の紫のバラが握られていた。

「さようなら」
真澄に冷たくそう告げてマヤは最後の舞台に向かう。
舞台上には夜叉姫を演じる姫川亜弓の姿もある。
これが終われば、自分はただの女の子に戻るだけ。
しかし舞台上で、自分が食べる予定のまんじゅうが泥まんじゅうにすり替えられていた。
これを食べなければ、話が先に進まない。
トキは・・・トキなら・・・・
マヤはためらうことなくその泥まんじゅうを口にした。
「おらこんなうめえものくったなァはじめてだ・・・」
それが泥でできているとはとても思えないくらい、
マヤはむしゃむしゃとまんじゅうを食べ、演技を続けた
「おら トキだ おらあ トキだ!」

第11巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
あんまりつらいシリーズなので、正直さくっとまとめたかったのですが、
読み進めるうちに実はこの巻にすごく重要な心の動きが示唆されていることに
気付き、これはちゃんとしなければと思い直しました。
真澄の口移し事件に気を取られがちですが、
真澄はこの巻で、マヤをどんなに憎まれても構わないから守り続けることを決心するし、
人生で初めて人を愛することを自覚しました。
ま、それはこの後も(しつこいくらい)自問自答するからわかってはいるんですが、
マヤもマヤで、失脚のかなり最初のタイミングから、真澄に対して
憎み切れない感情を感じているんですね。
母を見殺しにした憎むべき相手だから、嫌わなきゃいけない!と思おうとしているというか。
真澄がマヤに対してだけ比較的素直に感情を見せるせいなのかもしれませんが、
マヤは瞳の奥の優しさに、表面上の真澄の姿とのギャップを敏感に察知しています。

劇中劇なので、ほとんどあらすじにまとめませんでしたが、
亜弓の敵討ちシーンは大大大人気、私も大大大好きな名場面です。
侍なんだよな~~~亜弓さん。
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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第09巻【ネタバレばれ】

2015-02-05 22:17:28 | ガラスの・・・あらすじ

※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第09巻 ※第8章(途中から)(途中まで)

第8章 華やかな迷路


誰かが故意に仕込んだガラス片によって、マヤは舌と歯ぐきを切ってしまう。
幸いにも傷は浅く、止血すれば大事には至らない程度で済んだ。
しかしもしガラス片を飲み込んでいたら・・・・。
いったい誰がこんなことを。
しかし今、マヤの周りにいる人間は、誰がやってもおかしくない、
そんな不穏な環境の中にマヤはいるのだ。
負けるもんですかっ!
味方は誰もいない、そんなスタジオに突然一人の少女が現れた。
田舎から出てきたばかりで熊本弁丸出しの素朴なあか抜けない娘、
乙部のりえはそんな少女だった・・・。

『天の輝き』が放映開始されると、マヤの周囲はさらに活気づく。
かくゆうマヤ自身、テレビの中の沙都子が自分であるとは信じられないくらいだ。

活躍を喜ぶ、つきかげの仲間たち、
いつの間にか白百合荘を出たまま、何の連絡もしてくれないことを寂しく思う桜小路、
そして、水城に指摘された11歳も年下の少女への愛に戸惑う真澄、

虹の世界で輝くマヤを、それぞれがそれぞれの場所で思いを巡らせながら見つめる。

日向電機のCM効果もあり、マヤの知名度はぐんぐんと上昇していた。
しかし一方で、撮影中のマヤへの嫌がらせもなくならない。
衣装の首筋に仕込まれた剃刀の刃、ズタズタに切り裂かれたマヤのポスター、
それでもマヤはそんな困難に臆することなく、満面の笑みを浮かべて今日も元気よくスタジオに入る。
どんな邪魔にあっても私は負けない、演技を辞めたくない、そしてそのためにも、
ーーー私の里美さんへの恋心は絶対知られちゃいけない!ーーー

その時、マヤが昇っていたマストがぐらりと揺らぎ、
マヤの体は宙吊りの状態に陥った。
このままでは落下してしまう、あわててクレーンを用意しようとした時、スタジオ内が停電し、暗闇に包まれる。
マヤの周辺で起こる不穏な動きを警戒して視察に来ていた真澄、そしてマヤの様子が気になってスタジオ見学に
訪れていた桜小路も、鍵がかかって開かないスタジオの中でマヤがどうなっているかも分からず焦る。
そして再びライトが点いた時、
マヤは里美茂の胸にしっかりと抱きかかえられていた。
何とか無事に救出されたマヤの手をしっかりと握りしめた里美はしばらくの間その手を放そうとしなかった。

先ほどの事件はやはり何者かによって故意に仕掛けられたものである可能性が高い。
リハ直前までしっかりと固定されていたマストは直前でボルトが一つ引き抜かれており、
停電も意図的に仕組まれたと思われる。
スタッフに心当たりについて話を聞いている真澄と水城、なにしろ動機を持っている者が多すぎる・・・。
内密に済ませる旨を伝えているところを、こっそり盗み聞きしている人影に気付いた真澄が声を上げると、
それは、この前からマヤの周りでにぎやかにしていた田舎娘、乙部のりえだった。

のりえは聞いた内容をさっそくマヤに告げ口に向かう。
何者かによって仕掛けられた罠、お願いだから私の演劇への思いをじゃましないでと、
マヤは祈るしかなかった。
しかし、その後もマヤへのいやがらせは続く。

人力車から降りるシーンで、踏み板が抜けやすく細工されていたり、
乱れた髪をくしでとくシーンで、くしに接着剤が仕込まれていたり、
雨に濡れた体を拭くシーンでは、タオルにこしょうが仕掛けられ、くしゃみが止まらなくなる。
最後には頭からバケツの水がかけられ、全身びしょ濡れになってしまった。
ずぶ濡れのマヤを、周囲の人間の笑い声が包み込む。
これではもう、撮影は続行できない。
スタッフが撮影中止を宣言しようとしたその時
「まってください。演らせてください、この恰好のままで」

そしてマヤは、ずぶ濡れの自らの体を最大限に生かし、あたかも大雨の中傘も差さず
使命を果たす為に急ぎ駆けつけた誇りたかき伯爵令嬢、沙都子を完璧に演じきった。

沙都子が妹のようにかわいがっていた女中の娘の死を弔い、
お手玉をしながらよく歌ったわらべ歌を口ずさむシーン。
お手玉の糸が抜かれ、使い物にならなくなると、マヤはそのままそばにあったミカンを手に取り、
それをお手玉のように涙を流して見事に悲しみを演じた。

誰もがあきらめるはずのハードルを軽やかに飛び越え、マヤの演劇への情熱は空を駆ける。
その底知れないパワーと才能に、いやがらせを企てていた者も畏怖の念を禁じ得ない。
こうしてマヤは自らの実力と努力で、敵をひとりまたひとりと納得させていったのだった。

里美に接近するマヤをいぶかしく思う里美茂の親衛隊たちは、
桜小路がマヤに好意を寄せていることに気付き、マヤを誘惑するようお膳立てをする。
久しぶりに二人で会ったマヤと桜小路。
ずっと好きだったと告げる桜小路に、マヤは応えることができなかった。
「さようなら、マヤちゃん」
最後にマヤをぎゅっと抱きしめた後、桜小路はマヤの元を去って行った。

**

放映回を重ねるにしたがって、巷のマヤ人気はどんどん上昇の一途だった。
マヤが来るというイベントには観客が殺到し、テレビ局にはマヤの出番をもっと増やせと
投書が山のように届く。
また沙都子だけでなく、初主演映画『白いジャングル』では、ドジでそそっかしくてでも明るく勇敢な少女未央を
可愛く演じ、さらに魅力を開花させる。
テレビドラマと映画撮影、休みなどないハードスケジュールも、
演じることが生きるすべてのマヤにとって苦ではない。
自分が演技によってさまざまな人生を生きることができる事の喜びのほうが大きかった。
しかしそんな毎日の中で、マネージャーを務める水城は、
最近とみにマヤに付きまとい、なれなれしく接してくる乙部のりえが気になり始めていた。

『白いジャングル』完成披露試写会
相変わらず慣れないパーティーだったが、今やマヤの周囲には自然と多くの人が集まり、
次から次へと称賛と羨望の言葉をかけられる。
そして見事マヤの売り出しに成功した真澄の手腕を改めて思い知らされるのだった。

ぎこちなさしかない張り付いた笑顔で真澄とむりやり挨拶を交わしたマヤだったが、
届けられた紫のバラの花束を胸に抱え、喜びの表情を浮かべる。
その様子を穏やかに見つめていた真澄は、会場に山崎竜子の姿を見つけると彼女近づき、
新たな仕事のオファーを持ち寄って、巧みに山崎のマヤへの攻撃をかわすことに成功した。

全ては順調かと思われた、まさにその時・・・・
会場に里美茂が姿を現した。
里美自身も別の映画撮影があり多忙にもかかわらず、終わるや否や駆けつけたことに興味を抱く記者。
そして里美は大勢の人の前で堂々と宣言した。
「ぼくは彼女が好きです。」
芸能人なら、ファンの事を考え、恋はご法度、そう水城に厳しく指導されていたマヤだったが、
「・・・・好きです」
気持ちを隠すことはできなかった。
そして里美とマヤは堂々と初恋宣言をしたのだった。

その様子を見ていた真澄は思わずシャンパングラスを握りつぶしてしまう。
マヤの売り出しへの懸念や、今後の対策など考える余裕はなく、真澄はただ、
自分が嫉妬をしていることにショックを隠せずにいるのだった。

里美は早速マヤを海へドライブデートに連れて行く。
多忙な二人の束の間の休息。波打ち際で戯れる二人の距離は急速に近づく。
『天の輝き』の撮影中も仲良く会話をする二人、
さわやかカップルとおおむね好意的に受け取られた熱愛ニュースではあったが、
このままでは里美のファンや高校生であるマヤに対して
PTAからの反感が高まってしまい、マイナスになる。
更にますますなれなれしく付きまとう乙部のりえといい、
水城の頭を悩ませる問題は尽きない。

『白いジャングル』劇場公開
大入り超満員で大ヒットとなり、マヤの知名度は今までのそれとはくらべものにもならない。
水城はこれがスターというものだと言う、しかし今までの自分と何が違うのだろう、
私はただお芝居が好きで、演技がしたい。
そしていつか『紅天女』を演じることができたら・・・!

そんなマヤを、里美茂の親衛隊が襲撃する。
手荒く殴られ蹴られ、大事な顔に傷をつけられそうになるまさにその窮地を救ったのは・・・
速水真澄だった。

真澄はあっという間に親衛隊を打ち負かすと、二度とマヤに手を出さないようにきつく釘を刺し、
汚れたマヤの顔を濡らした自らのハンカチでぬぐった。
そこへ慌てて駆けつけた里美にマヤを託すと、真澄は腹立ち気にその場を後にした。
「今後きみのせいでこの子がかすり傷でも負うようなことがあれば、おれはきみを許さんぞ!」

**

マヤの活躍がうれしくも、まったく連絡も寄越してこず、ましてや突然の里美との交際宣言など、
別世界に向かっているような寂しさを感じていた劇団つきかげのメンバー。
マヤに送った手紙は水城の手によって破り捨てられ、マヤの手元には届いていないのだが、
そんな事を知る由もないかつての仲間たちは
「マヤは変わってしまった、自分たちの知っているあの子ではない」と
マヤとの心の距離がどんどん離れていく。

スターの道と引き換えに失っていく大切な思い出や仲間たち、
寂しさが募ると思い出されるのは母の面影。
マヤはただひたすら母に会いたいと願うのだった。

その頃真澄は、ひた隠しにしてきたマヤの母を、今秋大都劇場で上演される舞台『シャングリラ』の
初日に大々的に発表する段取りを組んでいた。
”行方不明の母発見! 盲目の身で療養中”
”『シャングリラ』初日舞台で涙の母娘対面!”
マヤのそして舞台にとってもこれ以上の宣伝効果はないだろう。
ただひと目、母に会いたいと願うマヤの心を利用して・・・・
仕事に情けは無用、真澄は自らの心に湧き上がらるためらいの感情に蓋をした。

病院に軟禁状態でテレビも雑誌の情報も何も与えられない状況に
マヤの母、春は疑惑の念を抱き始めていた。
部屋には鍵をかけられ、外に出られないように監視されているような。
そしてとうとう、院長が大都芸能の人間と話している会話を耳にしてしまう。
マヤが、いまや一躍時の人となり、女優としてドラマに映画にと大活躍している事をーーー。

マヤに会いたい一心で、春は大嵐の中病院を抜け出した。
何としても東京へ、そしてマヤに会いにいくために。
しかし目も見えない状態で一人手探り足探りで長野から東京に向かうのはあまりに無謀な事だった。
途中親切なトラック運転手に助けてもらい、車に乗せてもらうが、
長い間雨にうたれていたせいでどんどん体調は悪化していく。
見かねた運転手が春を病院へ連れて行こうとするが、また療養所に連れ戻されることを懸念し、
春はそのままトラックを後にまた歩いて東京へ向かっていく。
車にぶつかり大けがを負いながらなんとかたどり着いたのはとある映画館。
『白いジャングル』で久しぶりに聞くマヤの声を感じながら、
春は永遠の眠りについた。
まるでマヤの演技を見ていたかのように、穏やかな微笑みを浮かべたまま・・・・。

久しぶりの再会が、物言わぬ冷たい姿となるとは、マヤは予想すらしていなかった。
ただ、目の前の事が嘘であったらいい。
横たわる母に家を飛び出してからの自分の事をずっと語り続けるマヤ、
片時も離れたくないとしがみつくマヤに、強引に沙都子の感情を呼び起こし、何とか
撮影に復帰させる水城だったが、
母の遺影を抱え、雨にうたれ続けるマヤにかける言葉もなかった。
そして葬儀が終わった後も遺骨を抱えたまま食事も摂らず、ずっと母の事を思って座り込むマヤは、
里美と話すことも拒絶し、ただからっぽのままになっていた。

遺骨を抱えてただ母の事を思うマヤの姿を見た真澄は、
自らの犯した罪の大きさに、生まれて初めて罪悪感というものを覚えた。
そしてこれまで築いてきた自分自身の鉄壁の心が大きく崩れていくのを感じていた。

舞台『シャングリラ』初日まであと一週間ーーーーー

第10巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
つらいよー、つらいよー、まとめるのつらいよー。
確かにすごく重要なエピソード満載なんですよ。

マヤ、里美茂と初恋宣言!
真澄、マヤの母を死に追いやったことを一生の十字架とする
マヤ、真澄は自分の母を殺した生涯の敵!になる

後々まで、というか今もってずっと引きずる問題ではありますが、
やっぱつらいのよ~、読み返すのは。

それでもなんとか一生懸命読み返して得られたのは、
真澄が一応この時まではいつもの冷血漢的に仕事に取り組んでいたのだということが分かったくらい
ですかね。

つらいつらい言いすぎましたが、次はいよいよみんな大好き、今こそ認めようの巻なので、
頑張って更新します☆
コメント
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