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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第18巻【ネタバレばれ】

2015-02-14 18:46:56 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第18巻 ※第11章(途中から)(途中まで)

第11章 紫の影

大沢演劇事務所は、『忘れられた荒野』から数人の役者を引き抜き、
この秋もう1本舞台を手掛けることになった。
本格的な演劇で勝負したい黒沼と、興業的に話題となり、できれば賞もとれるものをと画策する
大沢社長との間の亀裂は広がっていた。
主演は星歌劇団の大スター円城寺まどか、そして演出はベテランの藤本夜彦、
円城寺まどか退団後初の舞台として話題を呼びそうな芝居である。
マヤはこれが、以前聖がそして真澄が言っていた大沢事務所の変わった動きの正体であることに気付く。
裸足の天才舞踊手イサドラ・ダンカンの生涯を描いた舞台、『イサドラ!』
黒沼組は『イサドラ!』に譲る形で、現在の稽古場を後にし、
パチンコ屋の上、そばには電車が轟音で走り抜ける劣悪な稽古場に移動した。
環境が変わっても、やることは同じ・・・
マヤは大声で発声練習を始める。
そしてその声に背中を押されるように、桜小路が他の出演者が、声を張り上げた。

**
千草の行方を真澄が知っているという情報を亜弓から聞いたマヤは、
分かったらすぐに教えてくれると言っていたのに、と真澄は大都芸能社長室に駆け込む。
アポもなく突然現れたマヤを、大都芸能の社員が冷たく追い払い、
マヤは会議室前で突き飛ばされてしりもちをつく、その時、
「女の子あいてに乱暴はおやめなさい!」
マヤの頭上から、女性の声が響いた。
見上げたその先にいたのは、黒髪の美しい女性。
そう、週刊誌に真澄と一緒に載っていた、真澄のお見合い相手・・・・。
「何事だ、そうぞうしい」
会議室から真澄が出てきた。
そしてマヤの姿を見つけると、マヤを応接室に案内するよう水城に命じる。
豆大風の直撃を受けるのはなれているよ、といつもの軽口で笑い声をあげる。
そのそばで、例の女性も穏やかに微笑んでいる。
“きれいな人・・・”
応接室でマヤは水城に真澄の見合い相手の事を聞く。

鷹宮紫織ーーー
世界でも1、2を争う大手広告代理店鷹通、
その他に輸入・鉄道・デパート・ホテル・運輸・建築・食品と
鷹通グループの経営する企業は多彩。
中央テレビや中央新聞も鷹通の系列に入る、それら関連企業の
全てをひっくるめて鷹通グループと呼ばれている。
そんな鷹通グループの総長 鷹宮会長は鷹宮天皇とあだ名され、
政財界の黒幕とも言われている大物。
紫織はそんな鷹宮会長の孫娘であり、紫織の父親は中央テレビの社長でもある。
以前から真澄の義父である速水会長は鷹宮会長に恩義があり、
頼まれればこの話を断ることはできない、もとよりもしこの結婚が成立すれば
大都にとってこれ以上強力なことはない。
速水会長も大乗り気だという水城に、マヤは真澄の考えを聞いた。
「大都芸能にとってプラスになるひとを選ぶと以前からおっしゃっていたわ」
水城はそう答えた。
やっぱり、仕事のためならなんだってやる冷血漢・・・。
そこへいつもののりで現れた真澄、先ほどまでの威勢を一気に回復したマヤは、
真澄に千草の行方について食って掛かる。
真澄の話によると、千草は現在紅天女の故郷にいるという。
具体的なことは今はまだ言えないが、と前置きして
かなり山深い所だがその分空気はよく、
体の養生にはもってこいの場所だという。
源造が千草の面倒をみながら、心臓発作を起こすこともなく毎日元気で暮らしていると聞き、
マヤは少し落ち着く。
紅天女の故郷、そこは
紅天女の脚本を書いた尾崎一蓮が子供のころ一時期を過ごした場所で、
2月が盛りのはずの梅が5月の終わりごろまで咲いているという不思議な所。
野生の梅が咲き乱れ、谷間を紅く染めるほどだという。
居場所は公表しないでほしい、もし知られればまたどこか別の場所へ行ってしまう可能性がある。
そしてマヤにも居場所を知らせるなと言っていたという千草、来年の春までは・・・。
来年の春ーーー
その言葉の意味を、マヤははっきりと理解していた。
自分が賞を獲得するまで、そして「紅天女」への道を切り開くまで・・・
次の『忘れられた荒野』ですべてが決まる。
「きみを信じているよ」
そう語る真澄の言葉に、真実の心を見た気がして戸惑うマヤ。

真澄とマヤ、漫才のように言葉の応酬を続けながら二人でエレベーターに乗り込む。
階下に降りる箱の中、二人は紅天女の故郷の事を思い描いていた。
空気が紅に染まるほどの梅の花、夜は降るように星がみえるという。
いつか二人で観たプラネタリウムの星空を、二人はそれぞれの心の中で
思い出していた。
いつか、紅天女の故郷に行ってみたい。本物の満天に輝く星空を、見てみたい・・・。
エントランスロビーでは、鷹宮紫織が真澄の事を待っていた。
体が弱いという彼女を優しく支える真澄の姿に耐えられず、
思わずその場から逃げるように駆け出す。
その背中に真澄は、
「プラネタリウムで星を見るのは君と一緒に行ったあれが最後だ、
もう行くことはないだろう、おそらく永久に・・・」
と声をかけた。

**
『イサドラ!』は、円城寺まどか主演、さらに有名な舞台美術家の古原猛、
国際的な舞踊家であり振付師の立花ミレイに、
ブロードウェー作品も多く手掛けている照明家、
ラッセルといった層々たるスタッフ陣が集結し、大都劇場で上演することが決定したという。
大都劇場ということはすなわち、速水真澄が『イサドラ!』に商業価値を見出したことに
他ならない。
かたや『忘れられた荒野』は定員450人の錦友ホール、しかしその錦友ホールでさえ、
使用ができなくなったという一報が入る。
『忘れられた荒野』にかける予算はない・・・・、上演日も劇場も決まらない中、
黒沼は、辞めたい奴はやめて構わないと告げた。
そして稽古場には、マヤと桜小路のほか数人が残るだけとなった。
しかし黒沼の演劇への情熱はより一層高まり、何が何でも『忘れられた荒野』をやってやると、
一般オーディションで役者を集めることに決める。
人数が減った分、情熱を持つ者だけが残った黒沼チーム。
マヤは黒沼の演劇に対する熱い思いに共感し、ますます稽古に熱が入る。

そんな中、『イサドラ!』は円城寺まどかの相手役として、桜小路を引き抜こうとしていた。
そのことを知ったマヤは、雨の中桜小路の元に駆けより、ジェーンを一人にしないで、と
桜小路に泣いて懇願する。
「あたし 桜小路君が、スチュワートが必要なの、必要なの・・・」
マヤの心の叫びに、桜小路は芝居上の事だと分かっていながらも、
マヤへの感情を揺さぶられる。
桜小路は、『イサドラ!』を断っていたのだ。円城寺まどかではなく、マヤを相手役として選んで。

円城寺まどかを中心に、大都芸能と大沢演劇事務所の食事会で、
その話題が出る。
桜小路が、北島マヤのほうを選ぶなんて侮辱的だという円城寺に、真澄は淡々と
北島マヤという女優の経歴を語る。
「侮辱ではないかもしれませんよ」
幻の名作『紅天女』の候補
天才・姫川亜弓が唯一認めるライバル
かつてその亜弓を抑えてアカデミー芸術祭助演女優賞を獲得
先だっての『ふたりの王女』オーディションでは、他を圧倒する演技力で、
予定されていた3次審査は必要なしと判断、その場で彼女に決定した
一度観た舞台はそのセリフから役者の細かな演技まで丸暗記
シナリオは1度か2度で完璧に覚えこむ
以前公園の野外ステージで演じた『真夏の夜の夢』、
3日間で集まった客の数が約6000
桜小路が選んだのはそういう相手・・・。

一般オーディションを開催し、8人の素人の起用を決めた黒沼、
しかし大沢事務所の反発は強く、上演危機に陥る。
上演承諾の条件として、『イサドラ!』のメンバーが『忘れられた荒野』の稽古を
観に来ることになった。
まだ稽古も道半ば、しかもそこに素人が加わったばかり、
そんな状態で、マヤはジェーンの役に取り掛かる。
マヤの演じる狼少女、その演技に円城寺まどかをはじめ観ていた者はみな
息を飲む。

結局、大沢演劇事務所のアカデミー芸術祭参加作品は『イサドラ!』に決定、
『忘れられた荒野』は条件付きの上演となった。
その条件ーー
アカデミー芸術祭一般参加部門での参加が認められること。
芸術祭は一劇団一作品の参加が通例、すなわち実質参加は現実的ではない。
とりあえず上演劇場は、雨月会館に決まった。
雨漏りや床の底抜けもひどいぼろぼろの雨月会館、
しかしそこで黒沼の指導の元、素人たちもどんどん持ち味を発揮し、
芝居の息もあっていく。
例え大沢事務所を出ることになっても、この舞台はやり遂げるーーーー
その熱意とは裏腹に、悪い知らせが届けられる・・・。

雨月会館を訪れた大沢、円城寺、そして速水真澄。
『忘れられた荒野』のアカデミー芸術祭参加が認められなかったことを告げる。
しかしすでに想定内の事、黒沼は大沢事務所を出て
ここで芝居を続けることを宣言した。
本物の芝居をするために・・・。
「芸術祭に参加できなくても賞は競えますよ」
真澄の声が響いた。
全日本演劇協会では、アカデミー芸術祭主催者から贈られる賞とは別に
演劇部門にのみ賞を与えることになっている。
芸術祭期間中上演された芝居の中で、演劇協会員の認める最も優秀な舞台、
最も優秀な役者にそれぞれ賞を贈呈する、それが全日本演劇協会賞
なかでも最優秀演技賞は役者に与えられる最高の賞である
全日本演劇協会賞は、芸術祭参加作品だけを対象とするという規約はない、
しかし通例で参加作品以外の芝居が対象になったことはない。
「どうだチビちゃん、紅天女をこれに賭けるか?」
真澄の問いにマヤは即座に答える
「ええ、速水さん、1%の可能性があるのなら!」

真澄はさらに、『忘れられた荒野』の初日に『イサドラ!』チームを招待すること、
反対に『イサドラ!』の初日に黒沼達を招待することを確約させた。
「おれは君が招待してくれんだったな、チビちゃん」
そう語る真澄に、紫織の分も一緒に2枚贈ると告げたマヤを振り返った真澄の表情は
今まで見たことのないような険しく虚ろなものだった。
まるで感情を全て失ったかのような・・・・。

後日、紫のバラの人の手筈で、ボロボロの雨月会館が立派な劇場として改修された。

**
真澄と紫織の束の間のデート。
これまで男性とのつきあいをしたことのないという紫織は、
真澄によって開かれた楽しい世界に、なにより美しい真澄の姿に完全に魅了されていた。
病弱で体育はいつも見学だったという紫織に、激しい運動ではないからと、
ダンスに誘う真澄。
美男美女のカップルは周囲の注目を一身に浴びる。
恥ずかしがる紫織を優しくエスコートする真澄
「転んでしまったらどうしましょう」
「あなたを抱きかかえていますよ」
「周りの方たちが・・・」
「音楽だけをきいていなさい」
「でもみんながみていますわ」
「ではぼくだけをみていなさい」
紫織は短い逢瀬を重ねるうちに、すっかり真澄のとりこになっていた。

その様子を水城は忸怩たる思いで見ていた。
真澄がこのまま紫の影でいようとしていることに、
それがどれほどマヤにとって残酷な事であるか気付いていないのか、
マヤが、まだ見ぬ紫のバラの人に愛情さえ感じていることに・・・

雨月会館の改修のお礼にと、聖に頼んでメッセージを吹き込んだマヤ
その声を聞いた真澄の表情は曇っていた。
いつか会いたい、そう語るマヤに、今更正体を知らせてどうなると
拒絶する真澄。憎むべき相手が正体だったと知ったら・・・。
しかし聖は気付いていた。
紫のバラの正体を明かせないのは、マヤを苦しめたくないからではない。
正体を知ったマヤが自分を拒絶することを、真澄はなにより恐れているのだ。
そのことを指摘された真澄は静かにうなずく。
今まで人を愛したことのないおれが、初めて人の心が気になり、
人の心をおそれている。
11も年下の少女に、拒絶されることを恐れて身動きが取れずにいる・・・

全日本演劇協会賞、マヤが受賞するにはまず審査員達を注目させなければならない。
注目させるにはきっかけが必要、チャンスはある、しかし一度だけ・・・。
真澄の心の中にはある計画があった。
しかしそのチャンスはきっと、マヤがさらに真澄を憎む結果を生むだろう。
真澄の心の中の海は広すぎて、聖には見えなかった・・・

**
『忘れられた荒野』の稽古が続くマヤ。
狼の野性を表現しきれずに悩んでいた。
そんなマヤの背中を追う、黒い影。

ある日駅のホームでマヤは一人の足の悪い高齢の男性と知り合う。
芝居の事で話が弾み、盛り上がる二人。
話の中で、マヤはその男性がかつて『紅天女』の舞台を観たことがあると聞き驚く。
そして自分もいつか、紅天女になりたい・・と熱く語った。

その男性ーー速水英介は、紅天女の候補者であり、真澄が異常なまでに執着している
北島マヤという女優に興味をもって近づいたのだ。
昔の千草になんとなく似ている、そう語った英介は
「わしもあの子に賭けることにするぞ真澄!」
と快活に笑った。

その頃マヤは、都会でつかみきれない野性の心をつかみ取る為に、
ありったけのお金で切符を買うと、電車で山へと向かっていた。
着いた場所は雲斬山の天狗岳
持参したわずかばかりの非常食を抱え、普段着のまま山へ入り込むマヤ。
途中大雨に見舞われながらも、岩場でしのぐ。
すぐそばに落ちた落雷の音は、いままで聞いたこともないような爆音、
耳がマヒしてよく聞こえない。
岩場で一夜を過ごしたマヤの体はバキバキに痛み、食料も底をつく。
おまけに川に流され、靴を失う。
目的もなくひたすら森をさまよううち、マヤは自分が自然の中にいることに
今更ながら気付く。
とりのさえずり、生き物の声、
木々と草と土のむせるような匂い、乾いた日射し、流れる水
この中で、ジェーンは生きていた。
これが、ジェーンの世界。

いつしか広がる満天の星
寝転がって見上げたその空はまるで夜空が光っているよう、
宇宙空間に漂っているような感覚におちいる。
そんな星空を見ているうちに、ふとマヤは真澄の事を思いだし、
そんな自分に戸惑うのだった。

山で過ごす3日目の朝、マヤの頭の中は食べ物の事しかなかった。
おなかがすいた おなかがすいた
ひたすら食べ物を求めてさまようマヤは、足を滑らせ崖を滑り落ちる。
しばらく気を失っていたマヤ。目覚めて日射しを感じた時、
生きていることを実感し、そして乾いた喉を潤す為に口をつけた川の水、
その水面に映る自分の顔に驚愕した。
その、なにもない表情に・・・・。

これが、狼少女ジェーンの表情!!

**
『イサドラ!』@大都劇場 初日
注目を集める舞台の初日には、大勢の演劇関係者が集結していた。
芸術祭主催者である藤美食品会長に社長、
全日本演劇協会理事長に会長、その他主だった幹部達。
姫川亜弓母娘の姿や、大都芸能の速水真澄は紫織を伴って現れた。
そんな中、例の約束を受け、黒沼はじめマヤや桜小路も
招待客として、その場にいた。

舞台終了後にロビーで開催される初日を祝う会に必ず参加するようにと
マヤに告げて去る真澄、そして『イサドラ!』の幕は上がった
前評判通りの円城寺まどか圧巻の演技に、マヤは魅了される。
激しくもつらい、イサドラ・ダンカンの波乱万丈の生涯
大熱狂のうちに初日は成功を収めたかに見える。
マヤの体の中には、イサドラの熱い生涯がしっかりと残っていた。
終演後の祝う会、円城寺まどかへの称賛の声がやまない中、
真澄がマヤにイサドラの演技を語らせる。
体内に残るイサドラの余韻を集約させ、虚空を見つめるマヤの表情に、
周囲の人々の注目が一気に集まった。
マヤが演じる、イサドラの最後のシーン。
「死ぬときは悲しいかしら こわいかしら 苦しいかしら
それとも少しばかりは幸福なのかしら?」
死・・・・
「どうやって踊ればいいのかしら・・・?」
最後にマヤが見せた表情は、円城寺まどかが演じたものとは異なっていた。
自分がイサドラだったら、と語るマヤに、即興でやった芝居とは思えない
本格性を感じ称賛する演劇協会理事長。
これにより、一気にマヤへの注目が集まる。
紅天女を目指す、北島マヤ。
次の舞台は『忘れられた荒野』での狼少女・・・・

しかし、真澄の口撃はさらに続く。
「ここで、狼少女をやってみろっ・・・」

第19巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
くぅ~~~~~つらい。
あんまり語りたくない。。
なにが悲しくて、真澄が紫織を口説くところ文字起こしせにゃならんのじゃ。
(好きでやってますけど)

心の海が広すぎるよ~~~真澄さん



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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第17巻【ネタバレばれ】

2015-02-14 16:37:39 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第17巻 ※第11章(途中から)(途中まで)

第11章 紫の影

『ふたりの王女』は大成功のうちに千秋楽を迎えた。
雑誌や新聞の記事、どれをとっても姫川亜弓の新境地を称賛する言葉が並び、
まさに亜弓の為の舞台だったといってもいい。
一方のマヤも、亜弓に対して引けを取らない演技で舞台をひっぱったことに
改めて実力の程を世間に再評価させた。
さらにあの大都芸能の速水真澄からとびっきり大きな花が贈られたことも、
演劇界においてのマヤの地位回復に一役買ったといっていい。
早速次の舞台のオファーが矢継ぎ早に舞い込んでくる。
しかし、月影千草が指定した期限まであと約1年。
アカデミー芸術祭への参加は秋の公演までということを考えると、実質次の出演作が
全てを決めると言って過言ではない。

最後の公演を終え、人けのない劇場でアルディスのセリフを語るマヤ、
そこへ亜弓が現れた。
「自分の中にオリゲルドがいた。オリゲルドとして生きたあの感覚、信じられない
まったく別の人格をもった人間に身も心もなりきれるなんて、はじめてだったわ」
高揚感とともに語る亜弓に、マヤは不思議そうな顔で答えた。
「亜弓さんがそんなこというなんて。私はいつも、そうだから・・・」
その言葉に亜弓の顔は凍りつく。
そうだ、自分が苦労に苦労を重ねてやっと手に入れた役と一体になるこの感覚、
マヤは、マヤという子はそれをいとも簡単に体得し、役になりきる女優だ。
改めて見えない底力を痛感させられる、たとえこの勝利に酔いしれる瞬間でさえも。
亜弓は必ず賞を獲得し、紅天女の舞台を共に競い合う事をマヤに強く訴えた。

劇団つきかげそして一角獣の仲間たちが白百合荘に集まって
マヤの熱演を慰労してくれた。笑い声が外まで響き渡る。
そんな白百合荘の前には不釣り合いな黒塗りの車が停車している。
そのそばに立つ長身の男は、ただ黙って明るく漏れる一室の明かりを
見上げていた。
“なんてざまだ真澄、これがおれか・・・、こんな所にたたずんで、じっと動く事もできずにいるとは・・・”
あの日、義父英介から渡されたお見合い写真。
その相手は、大都グループとしてはあまりに大きな意味を持つ相手。
見合い話を受けることそれはすなわちビジネスパートナーとしての政略結婚へと
明確な道筋を描く事は間違いない。
“仕事において申し分のない相手を選ぶ、コンピューターにかけてでも”
かつて自分がそういったのとは裏腹に、真澄はマヤを思う自分の心を持て余し、
この申し分のない見合い話に足を踏み出せずにいた。

『ふたりの王女』の舞台を終えたマヤは、ずっと支えてくれている紫のバラの人に
お礼の手紙を送った。
プレゼントのひざ掛けに添えて。
年配の男性を想定していると思われるそのプレゼントを受け取った真澄は、
もしマヤが、紫のバラの人の正体を知ったら、いったいどう思うだろうかと憂いた。

そんなある日、マヤのもとに演劇の招待券が届く。
紫のバラは添えられておらず、差出人が誰かは分からない。
『アンナ・カレーニナ』
演劇に招待されたマヤが断るはずもなく、とりあえずマヤは招待券に従って劇場に向かう。
隣の席は空席のままだ。
いったい誰が来るのだろう。誰の招待なんだろう。
落ち着かないマヤの隣に、開演間際に一人の男性が腰かけた。
「速水・・・真澄!!」
あわてて立ち上がろうとするマヤの手をつかみ、逃げないように必死で抑える真澄。
握られた手は熱く、マヤの胸も高鳴る。
「手を離してください、速水さん」
「君がこのあとおれに付き合ってくれると約束するなら、この手を離す」
君に嫌な思いはさせない、そういう真澄の顔はいつになく真剣で、悲壮感すら漂わせている。
とりあえずマヤは、分かったからと言い、その手を離してもらった。

観劇が終わり、ヒロインの気持ちに共感して涙を流すマヤを、真澄はカフェに連れていった。
ここぞとばかりに大量のケーキを注文するマヤを穏やかな目で見つめる真澄。
やはりいつもの真澄らしくない。
大都芸能の車を帰し、二人で散歩をしようという真澄、
マヤの元に提示された、たくさんの出演オファーについて語らう。
悲劇の美少女オフィーリアまで舞い込んだとは、美少女づいているなとからかう真澄に、
地でやれますかと応酬すると、負けたよチビちゃんと真澄は大笑いした。
その時、区立文化会館を見つけた真澄は、星を見ないかとマヤを誘う。
ここの五階にプラネタリウムがあるのだ。
なんでもここは真澄が少年時代によく通った場所のようで、
受付のおじさんは久しぶりに見る真澄の事もよく覚えていた。
すでに投映の始まっているドームに静かに入った瞬間、
一面に広がる満天の星空に圧倒され、よろめくマヤの背中を真澄は優しく支える。
そして、子供のころ、ここによく来て、星を見るのが好きだったと語る。
ここに来ると自分がどんなにちっぽけな存在か思い知らされる。
どんな悲しみや悩みも、考えているのがばからしいほど小さなものに思われてくる。
ここへくれば心が大きく軽くなった。どんなことにでも耐えられそうだった・・・

輝く星空はどこまでも広く、まるで宇宙空間に浮かんでいるようで、
マヤは圧倒されていた。
投映が終わり明るくなったドーム内、ふと見上げた真澄の顔はまるで少年のように
きらきらと輝いていた。
「思い出につきあってくれてありがとう」

真澄が席を外している間にプラネタリウムのおじさんと話をするマヤ。
少年時代の真澄はよくここに来ていた事。
何があったかは分からないが、ある時は全身あざだらけで歯を食いしばりながら
くやし涙を必死でこらえていたこともあった。
そして母親が亡くなった時も、ここへきて、隅で声を殺して泣いていた。
マヤは、想像もできない真澄の少年時代、そして星を愛する真澄の心の中を図りきれずにいた。
都会の空は、光も弱く、あれだけの星がこの空にあるとはとても思えない。
スモッグや地上の灯りで見えないだけ、本当は今も満天の星が輝いているのに。

夕食にまではまだ時間がある、ちょうど近くの神社で縁日がひらかれていることを思い出した真澄は、
マヤをそこに連れて行く。
いろんなものを買い与えられ、まるで子供のように祭りを満喫するマヤ。
迷子の男の子を見つけると、おもむろに肩車をした真澄が、お母さん探しを手伝う。
その様子に、やんちゃでガキ大将だった真澄の少年時代を想像するマヤ。
大都芸能の冷血漢、ときどきあなたが分からなくなる。
もしかしたら本当はとてもあたたかい人なんじゃないかって・・・・。
マヤが口にしていた吹き戻しをふいっと取ると、そのまま口に付けて吹き始めた真澄。
その動作一つひとつがマヤをどぎまぎさせる。
“いったいなぜ、私を誘ったんですか?速水さん・・・・”

まるでデートのような一日を過ごしたマヤと真澄、夕食にとやってきたレストランでは
二人の間に思い沈黙が流れていた。
真澄はこの時も自分が何をしようとしているのか、何故、それができずにいるのか
冷静になれずにいた。
おれはマヤに真実を伝えることで、拒絶されることを恐れている。
マヤは、真澄の本当の心が知りたいと思っていた。
自分がマヤを誘い出した理由を言おうとしたまさにその時、
そこへ、真澄宛ての電話が入る。
そしてその電話で、月影千草が療養していたアクターズスタジオから出て行ったことを知る。
行先は不明・・・・。
あわてて白百合荘に戻ったマヤと真澄、そこへさやかが千草が残したという置手紙をもって現れた。
そこには、自分は付き人源造と共に地方へ療養にいくこと、
大丈夫だから心配しないようにと、そしてマヤにどんなことがあってもくじけないようにと書かれていた。
千草は『ふたりの王女』出演後、体力が弱まって休養がが必要な状態だった。
千草の事は何でも逐次報告すると約束していたのに、そんなに体調を崩していたとは知らなかったマヤ、
また、自分に黙っていたのかと激しく真澄を責める。
きっと探し出してやる、という真澄に、その言葉を信じていいのかと震える声で問うマヤ。
「先生がわたしの母さんみたいなことになったらわたし、あなたを一生許さないから・・・!!」
その叫び声が、真澄の体を真っ二つに引き裂く。
そうだ、この子はいつになっても、自分を決して許しはしない。
自分はかつて、彼女にどれほどのことをしてきたのか。
真澄はマヤに今日は一日付き合ってくれてありがとうと告げると、何も言わずに去って行った。
「今日君を誘い出したのは・・・・ただ・・・」

マヤが大人になるのを待とうと思っていた。
いつかその時が来ると思っていた。
しかし、待っていることで何が変わる?これ以上どうなるというのか。
自分の犯した罪は決して消せるものではない。
彼女の中の自分への憎しみの火は決して消えることはない。

“真実がみえない・・・速水さん・・・”
マヤもまた、真澄の表情に今までとは違う何かを感じていた。

真澄は例の見合い話を受けることを義父に報告した。
おれは一生影でいるしかない・・・影でいるしか・・・!

**
鬼才・黒沼龍三は、演劇界ではよくも悪くも有名な人物だった。
演劇にかける情熱は誰よりも強く、独創的な舞台演出は高く評価される一方、
その一切の妥協を許さない演出方針に現場でのバトルも日常茶飯事。
どんなベテラン俳優でも、気に入らなければすぐに降板させる。
その無骨で容赦のないやりかたに、周囲との摩擦が絶えず5年間ものブランクを余儀なくされた。
そんな黒沼の久々の復帰作、それは
『忘れられた荒野』
狼に育てられた少女が主役の演劇である。
制作の大沢演劇事務所では、主役を演じる女優を巡って黒沼と事務所社長との間で
今日も終わりのない口論が続く。
興業的な成功のため、事務所のトップタレント美森ジュンを起用したい社長側と、
狼少女という難しい役をやるには、圧倒的な実力があるものでなければだめだと取り合わない黒沼。
一向に意見を曲げない黒沼は、ありとあらゆる演劇ビデオを取り寄せ、視聴室にこもって
自らのメガネにかなう女優を探し求めた。
狼少女に化けられる、どんな色にも自由に染まる女優・・・
反射神経が鋭く、打てば響くような勘の持ち主。
目に強い光を持つ少女。
そして黒沼は、つい先日まで演劇界の話題を独占していた『ふたりの王女』のVTRに出会う。
「これだ、この少女だ・・・・!俺が探し求めていたのは・・・!」

アテネ座でおこなわれた劇団つきかげ+一角獣の舞台も、超満員の大盛況のうちに
幕を下ろしていた。
観劇に訪れていたマヤ、するとそこに、一人の演出家がマヤに会いにやってきた。
黒沼龍三ーーーー
小柄なマヤは背丈もぴったり、役よりも実年齢は高いが見た目は十分。
なにより、この少女は化けられる。
美しく光りかがやく春の王女、アルディスとは全く反対の狼少女であろうと。
黒沼に渡された台本を読むマヤ、狼少女ジェーンのセリフ、体にどんどん入ってくる。
「わたし・・・・演りたい、この役を!」
マヤは狼少女ジェーンに「紅天女」への運命を賭けた。

ジェーン役を受けることを告げにきたマヤに、黒沼は早速狼の演技をするように指示する。
放り投げられた雑巾は餌となる肉。
マヤは黒沼の激しいしごきを受けながらも身軽な動きで狼になりきり、
餌である雑巾を咥えた。
千草の厳しい演技指導に慣れているマヤにとっては、こんな鬼のしごきも朝飯前のことだった。
次に実際の狼を記録した映像を見せる黒沼。
映像は古く、劣化したフィルムはほとんどその姿を映さない。
そんな中、マヤは響き渡る狼の哀しい遠吠えが耳に残って離れない。
本格的な稽古開始まで3ヶ月、黒沼はそれまで狼の演技を研究しておくこと、
次は狼の喜怒哀楽を演じてもらうことをマヤに告げた。
そこでマヤは、日常生活もすべて狼として生活してみようと、四つん這いになった。
ご飯を食べる時も、階段を下りる時も。
普段は食い入るように見ているテレビにも興味を示さず、ひたすらティッシュ箱で遊び続ける。
そんなマヤに協力するため、劇団つきかげ+一角獣の仲間たちも、狼になって
一緒に稽古を開始した。

ある日街を歩いていたマヤは、真澄がきれいな女性と一緒にいる姿を目撃する。
優しいまなざしでその女性を見つめる真澄は、今まで見たことのない表情をしていた。
同行していた水城にその女性が真澄の見合い相手だと聞いたマヤは
全身を貫かれたような衝撃を受ける。
あの速水さんが、見合い・・・、結婚するかも・・知れない。
何故だかわからないが、マヤの心の中は突然空洞になったような、そら寒い感覚に
支配された。
それはなぜだかわからないけれどーーーーー。

**
大沢演劇事務所公演『忘れられた荒野』顔合わせ、
狼少女ジェーン役:北島マヤ、そして
ジェーンを人間として教育することに情熱をかける青年学者スチュワート役に現れたのは、
桜小路優だった。
あの、気まずい別れから数年経つ。
次に会うときはいいライバルとして、その言葉通り、桜小路は相手役として
マヤの前に現れた。
どんな距離感で接したらいいのか戸惑うマヤだったが、前と変わらぬ優しい笑顔で
声をかけてくれた桜小路に、以前と変わらない優しさを感じ安心する。
しかしそんな桜小路とマヤの様子を、桜小路の彼女、麻生舞は
穏やかでない気持ちで見つめていた。

狼少女としての稽古がスタートしたある日、マヤは
真澄の見合い話の報道を目にする。
その記事を読んだマヤは、いいようのない心のざわめきを感じていた。
まさか、あの人が見合いだなんて・・・
あの人が本気で恋人をつくったり、結婚したりするはずがないと、
必死で思い込もうとするマヤ。
いつも自分をからかっていじめてばかりの真澄、そんな彼の交際報道が
何故こんなに気になって苛立たしいのか、マヤ自身分からなかったが、
居てもたってもいられず、マヤは大都芸能に電話をかける。
しかしいざ真澄の声を聞くと、
月影先生の行方についてきいたり、今度狼少女を演じることを報告して、
肝心の質問が出来ない。
「どうかお幸せにっ!!」
という謎の捨てセリフを吐いて電話を切ってしまった。

狼少女としての動きを必死でつかもうとするが、まだまだ自分が
本物の狼になれていないことはマヤ自身が一番よくわかっていた。
そこで黒沼はマヤを部屋に一人残し、マヤを捕まえに来た荒くれ者達と
対峙させた。
そして次に、マヤを見世物小屋で金儲けの道具として扱う主人、
マヤの心の中で人間への恐怖心が高まっていく。
そして次に部屋に入ってきたのは、スチュワート。
警戒心を見せて近づこうとしないマヤ。
最後にたくさんの人間がマヤを囲み、檻の中を物珍しそうに観察していると、
マヤの心の中の人間への恐怖心は振り切れ、体の震えと絞り出すような鳴き声が
止まらない。
マヤはジェーンとして扱われるうちに、その感情をつかんでしまった。
やはり黒沼の見込んだ通り、大した才能の持ち主だ。


**
演劇界の大立者が集まるパーティー。
黒沼龍三は、大沢社長と共にいやいやながら出席していた。
秋の芸術祭に参加を予定している大沢事務所としては、このパーティーで
少しでも審査員たちと親しくしておきたい所だが、
黒沼はそういった席は得意ではない。
そこへ、大都芸能の速水が現れると、場の雰囲気は一気に華やぐ。
話題はやはり真澄のの交際報道、しかしその話題をふられた真澄の顔は冴えない。
そんな真澄の耳に、狼少女という言葉が聞こえてきた。
そういえば、マヤがこの前電話で言っていた・・・。
黒沼に近づいた真澄は、少し話をしませんかと黒沼を外に連れ出した。

黒沼から稽古の様子を聞いた真澄、まだ始まったばかりだが、
北島マヤは、黒沼がやっとの思いで探し出した楽器、なかなかの名器だ。
ハードな事で有名なおれの稽古にけろりとしてついてくる、不思議な子だ。
そう語る黒沼に、よく知っていますと真澄は答えた。
初めて話したが、あんた思ったより悪い奴じゃないな、と軽口をたたくと、
黒沼は機嫌よくその場を後にした。
見合いをし、恋の噂が囁かれていてもなお、心の中の紫のバラが生き続けている真澄に、
水城はこのままでもいいのかと尋ねた。
君には関係ない、冷たく答える真澄に水城は
いつまでも信号は赤ではありませんわよ、と告げた。

真澄の見合い相手はとても優しく、気遣いのある美しい女性。
女性らしい趣味もたしなみ、クラシックや絵画にも造詣が深い。
特に植物を愛し、庭や温室で育てた花を真澄に贈ってくれる、思いやり深き女性。
優しく控えめながら芯はしっかりとしている、結婚相手として申し分のない、そんな人・・・。

**
マヤと桜小路、二人での稽古が続く。
徐々に距離感が近くなっていく演技を、毎日のように続ける二人。
最初こそぎこちなさが残っていたマヤと桜小路だったが、
ジェーンとスチュワートがそうであったように、
マヤと桜小路の間も少しずつ、かつてのような親しさを取り戻していった。
そんな二人の様子に、周囲の噂も広がる。
桜小路の恋人、舞は気が気ではなく、稽古終わりの桜小路を待つ。
周囲の好奇の目や、舞の不安な気持ちとは裏腹に、
マヤは自分あてに届いた紫のバラの人からの化粧ケースを
受け取ると、舞に気付いて桜小路の元に案内し、胸に紫のバラを抱えて
元気に稽古場を後にした。
紫のバラの人への感謝の思いいっぱいに。
そんなマヤを、思いつめた目で見つめる桜小路。
その目に宿る意味を察し、凍りつく舞。

豪華なメイクセットをもらったお礼にと、
マヤは聖を介して、自分のこれまでの舞台写真をまとめたアルバムを紫のバラの人に
渡そうと思いたった。
聖にアルバムを手渡した後、聖から何か大沢演劇事務所で変わった動きはないか?と聞かれる。
大沢事務所と言えば、マヤが出演する『忘れられた荒野』の制作会社だ。
特に思い当ることはないというマヤに挨拶をすると、聖は去って行った。
しかしマヤは、挟んでいた手紙が落ちているのに気づき、聖を追いかける。
聖はビルのエレベーターにのって上の階に上がって行ってしまった。
仕方なくエレベーターの前で待っていると、降りてきた箱の中から出てきたのはなんと真澄だった。
真澄はエレベーター内で聖から受け取ったマヤのアルバムをこっそり隠すと、
何でもないかのようにマヤに話しかける。
そして先ほどの聖と同じように、大沢事務所の事を尋ねてきた。
何故速水さんも、聖さんと同じことを・・・・。
不思議に思うマヤだったが、月影千草の事に話が移る。
真澄も四方を探しているがまだ身元ははっきりしないという。
残るはあとひとつ、もしかしたらと、
真澄は千草が、尾崎一蓮が昔過ごしたという「紅天女」の故郷にいるかもしれないと語った。
分かったら一番にマヤに知らせると言う真澄に対し、
マヤは例の見合い話の事を思い出し、気が気ではない。
冷血漢とつきあえるなんて、いったいどんな女性かしら、と悪態をつくマヤに、
「忍耐強くてとても優しい人だよ」と答える真澄。
その言葉に動揺したマヤはまたもや
「どうかお幸せに!!」
と叫んでその場を走り去る。
マヤの言葉の意味が分からない真澄だったが、もしやマヤが自分に嫉妬しているのでないかと
思い当り、驚愕する。

自宅に戻り、マヤにもらったアルバムを手に、マヤの事を思う真澄。
まさか、あの子が俺に嫉妬、そんな馬鹿な。
しかし真澄の耳には、依然水城から言われた言葉が今更のように響きわたる。
“いつまでも信号は赤ではありませんわよ”

速水真澄、母をころした敵、あんなやつ大っ嫌いなんだから!!
マヤは心に浮かぶ真澄への複雑な気持ちを振り払うかのように、
必死で恨みの気持ちを呼び起こそうとしていた。
そして何とか稽古に集中しようとするマヤ、
しかしジェーンを抱きしめるスチュワートのその力強さに、
マヤは桜小路の今までとは違う熱い思いを感じ取る・・・・。

第18巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
ここから先は紫織さん出てくるし、正直
紫織さんエスコートしてる真澄さん気持ち悪いからちょっと
薄めにまとめることになりそうです。
『忘れられた荒野』で狼少女をつかむマヤメインにしようかな。
でもマヤも、“女の人にあんな優しい顔する速水さん、初めて見た”
とかいってぶるぶるしますけど、あんたいっつも
“なんでこの人時々こんなにやさしい顔をするんだろう?”
って言ってたよね!と思う。
まさか自分を女として見ているなんて思ってないから仕方ないか・・・・。
あなたを見る目の方がよっぽど優しいですよ、と教えてあげたい。

今回のメモポイントは、やはり水城さんの
「いつまでも信号は赤ではありませんわよ」キリッ でしょ!

紫織さんだけでなく桜小路君もいろいろ出てくるし、
これからますますブルーやわ~~(笑)
「野良犬ジェーン!!」もあるし・・・・。
早く青いスカーフ事件までたどり着いて、マヤの気持ちをまとめたい!!
今は切なすぎるよ、真澄さん。
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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第16巻【ネタバレばれ】

2015-02-13 00:57:12 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

--------------------------------------------------
『ガラスの仮面』文庫版第16巻 ※第10章(途中から)※第11章(途中まで)

第10章 冬の星座

『ふたりの王女』開演
舞台上にまず現れたのは、マヤ演じるアルディス・・・
それは、いつものマヤを知っている者のほうがむしろ信じられないと思うであろう、
美しく可憐で輝くような温かさを醸し出す、天使のような王女だった。
マヤは舞台の上でこそ、本能が目覚める・・・。

そしてオリゲルドの登場。
出てきた瞬間に劇場全体が凍りつくような寒さに包まれる。
身も心も閉ざされた冬の王女がそこに居た。

オリゲルドの印象は圧倒的で、舞台を一気にオリゲルドの世界に染める。
そこへアルディスが登場、生のオーラで包み込む。
ふたりの戦いは始まったばかりだ。

アルディスは浮浪者であふれる街中に初めて足を踏み入れる。
これまで豪勢な屋敷の中で美しいものに囲まれて暮らしてきたアルディス姫、
初めて接する物乞いの手を、思わず振り払ってしまう。
そんな自分に戸惑いショックを受けるアルディス。
マヤはその、天使の姫が初めて感じた嫌悪の感情、そのあとに浮かぶ罪悪感を
自然に演じていた。
全身でアルディスになっている。
マヤは舞台上でどんどん光の王女に育っていった。

オリゲルドが登場すると、舞台は緊張感で包まれる。
陰のオーラを身にまといつつも光り輝く亜弓の演技、
観客の印象は一気にオリゲルドに釘づけとなる。

王族に反旗を翻す国民の前に姿を現し、今こそ一致団結をと民衆に説くアルディスのシーン。
姿を見せたマヤはこの世の者とは思えない、慈愛に満ちた愛くるしい微笑み、
その笑顔にすべての観客が、まるでラストニアの民であるような錯覚を感じ、
アルディスの言葉と態度に説得されていた。

**
幕間の休憩時間、
真澄は桜小路と遭遇する。
かつてマヤと一緒にいたころと比べても身長も伸び、すっかり青年に成長していた。
いつの間にか大人に、そう、チビちゃん、君もいつの間にか・・・・。
真澄は舞台上でマヤが見せる成長した姿に、これまで以上に心を奪われていた。

舞台裏でマヤは届けられた紫のバラを抱きしめながら、
この劇場のどこかにきっといる紫のバラの人に見てもらえることを
喜びに感じていた。

果たして北島マヤは姫川亜弓を越えられるのか、
超えられないまでも同等の力量を示せば、演劇界の扉が大きく開くことになる、
取材記者たちも興奮を抑えきれない

**
話が進むにつれ、オリゲルドの激しさはどんどん加速度的に増し、
観客をひきつけてやまない。
その残酷なまでの冷徹さ、人を人とも思わない猜疑心の塊。
亜弓が演じるオリゲルドは背筋も凍るような冬の王女そのものだった。

そしていよいよアルディスとオリゲルドの直接対決の場面。
これまで憎悪と野心のかたまりだったオリゲルドがはじめてその弱みをさらけ出す
天使のようだったアルディスがはじめて憎しみと殺意をみせる

オリゲルドがこれまで背負ってきた圧倒的な孤独と不遇によって育てられた氷の心。
観客はオリゲルドに同情し、まさにこの舞台の主役の輝きを放つ。
やっぱり姫川亜弓、クライマックスで観客の心を全て自身に集めてしまった。

しかし、どんなに影が濃くても光がなければ影はできない・・・
泣き崩れるオリゲルドを優しく包み込むアルディスの慈愛に満ちた表情は
まるで聖母マリア。
会場は、そのやわらかな光に癒されていった。

舞台終了

割れんばかりのカーテンコールはいつまでもつづき、『ふたりの王女』は大成功を収めた。
やはり圧巻だったのは亜弓演じるオリゲルド。
その天才といわれる姫川亜弓の圧倒的な演技に、
観客の印象は全て持って行かれたといっても過言ではない。
しかし、マヤのアルディスも人気が高く、一気にファンになったものも多い。
さすがに実力のほどを見せつけられた、しかしマヤは穏やかな表情を浮かべながら、
亜弓に拍手を送る。
その笑顔に負け惜しみの心はみじんもなかった。

亜弓もまた、この舞台で今までにない感覚を感じていた。
舞台の上で別の人格が自分を支配しているような、
身も心も別な人間になりきる、体の隅々にまで充実した思いが広がっていく、
私は舞台の上でオリゲルドとして生きていた。

終演後の舞台裏では、亜弓に取材陣が殺到していた。
続いてマヤを探す記者たち、しかしアルディスの仮面をはずしたマヤはいつもの通りの
地味で目立たないマヤ、その落差に記者も戸惑う。
演劇界復帰第1作の感想を聞かれたマヤは幸せでしたと答える。
なぜかと聞かれて戸惑うマヤに、
「アルディスが幸せな少女だったからだろう」
と真澄が声をかけた。
「まったくよく化けたもんだ、あのアルディスがこのチビちゃんと同一人物とは・・
さすがのおれもだまされる所だった」
真澄の嫌味をとりあえずほめ言葉だと受け取ったマヤだったが、
最後まで席を立たなかったことに、賭けには勝ったのだと知る。
「きみのアルディスはよかったよ、予想以上だ」
そう真澄に言われたマヤは、柄にもなく顔を真っ赤に染めてしまう。
約束通り君に花を贈ろうと言い残して真澄は去って行った。
周囲で聞いていた人々が、あの速水真澄からマヤへの花とは、たいへんな宣伝になると
話をしているのを聞き、
みんなが自分に注目するように花を贈ってくれるのかと、真澄の真意を想像するが、
にわかには信じがたい。

とにもかくにも、マヤはこの舞台によって、また表舞台へと本格的に足を踏み出した。


第11章 紫の影


休日の速水邸、真澄は義父、英介と『ふたりの王女』について話をしていた。
やはり注目は姫川亜弓が圧倒的、ドラマそのものを亜弓のオリゲルドが支えているといっていい。
演技術の点でいけば北島マヤはまだ姫川亜弓の敵ではない。
そう語る真澄に、英介はやはり紅天女は姫川亜弓が有力かと尋ねた。
真澄は、今回マヤが今までにない役柄を演じ、その自分とは全く正反対の人間を、
舞台上でごく自然に演じていた点を高く評価し、
さらにその技量でオリゲルドと二分する人気を得ていることを報告する。
今度の舞台によって道が開けたマヤ、あとはこの道をどうやって彼女自身が紅天女に
つないでいくか・・・。
千草の設定した期限まであと約1年、以前道は険しい。
しかし北島マヤは、1%の可能性に賭ける少女だ。

紅天女をなんとしても大都で上演することを真澄に厳命した英介は、
真澄に今好きな人いるのかと尋ねた。
いないと答えた真澄に、英介は見合い話を持ち出す。
これまでに何度となく話は出されているが、真澄はいつも、まだ結婚する気などないと
今回も写真を見もせず断ろうとした。
しかし、今回の縁談はこれまでとは違う。
仕方なしに写真に手を伸ばした真澄は、その見合い相手に驚きを隠せない。
「見合いをしろ真澄 これはわしの命令だ!」

第17巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
ほらー、ほぼ全編『ふたりの王女』だから短くなっちゃった・・・。
そしてあっという間に第10章が終わってしまい、いよいよ次巻からは・・・紫の影!
真澄がマヤマヤ挙動不審に堕ちていく過程が哀しくも切ない。
そしてとうとう、あの方登場・・・ふ、筆が鈍る。。

長くなるわ~~~たぶん次は。
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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第15巻【ネタバレばれ】

2015-02-13 00:04:57 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第15巻 ※第10章(途中から)(途中まで)

第10章 冬の星座

生活を交換したマヤと亜弓。
亜弓の家はまさにアルディスの部屋といってもいい豪華さと高級感に満ち溢れていた。
ばあやをはじめとする使用人も優しくマヤの世話をしてくれ、自分でやることなど何もない。
亜弓から毎日送らてくる美しい花に囲まれて、マヤはここでアルディスの心をつかむことができるのか。

一方亜弓は、冷たく暗い地下劇場で、固い床の上にわずかばかりの敷物ををしきながら
生活をしていた。
まさに、オリゲルドの過ごした牢獄。
誰からも見放された、光の差さないこの部屋で、亜弓は少しずつ周囲との交流を絶ち、
自分だけの世界を研ぎ澄ませていく。

稽古場でのふたりの王女稽古。
マヤも亜弓もそつなくそれぞれの王女役をこなしているように見えたが、
皇太后ハルドラ役の千草は、二人が全く心理をつかんでいないことを見抜いていた。
二人にそれぞれの王女として、自分からお茶を受け取るエチュードをさせた千草、
亜弓のオリゲルドはただの気品ある貴族の娘、
マヤのアルディスは愛するおばあさまを前にしているにしては
あまりに緊張感のある臣下のような演技、
千草は二人とも失格だと告げた。

マヤが高貴なお姫様の役作りに苦戦していることを知った真澄は、
亜弓の家へマヤの様子をうかがいに来た。
部屋のピアノをゆっくりと奏でる真澄。
その優しい音色に、マヤはまた、真澄の意外な一面を見た気がした。
「トロイメライ・・・今はこれしか弾けない・・。」
静かに語る真澄だったが、マヤが愛らしく可愛く美しいお姫様を
まだ全然つかめていないと茶化す。
真澄だけには馬鹿にされたくないマヤは、
絶対こいつの鼻をあかしてやるんだと気色ばむ。
「いまにみてらっしゃい!あなたがびっくりするくらいの
華麗で美しい王女になってやるから!」
「そういう奇跡にはやくお目にかかりたいもんだ」
帰りの車中、本気で怒るマヤの顔を思い出しただけで
真澄の笑いは止まらない。

日帝劇場での稽古は続くが、マヤはいまだにアルディスをつかみ切れていなかった。
一方亜弓は日に日に近寄りがたい雰囲気が高まり、暗く陰気で無口になっていった。
冷たく突き刺さるようなオリゲルドの視線。
マヤはいつか真澄に言われたように、このままではオリゲルドが主役になってしまうと焦る。
今回の配役は千草の提案によるものだと知ったマヤは、なぜ自分をアルディスにしたのか尋ねた。
アルディスのようにきれいでも華やかでも上品でもない、
亜弓のほうがよっぽどアルディスにふさわしい、なのに。
そんなマヤにそして亜弓に、千草は亜弓はオリゲルドをやるにふさわしい才能を、そして
マヤはアルディスをやるにふさわしい才能を持っている、
自分たちの表面にごまかされて気付いていないだけだと語った。
マヤに、華麗で光輝く美しい王女アルディスを演る才能が、
亜弓に、野心を抱き復讐心を抱いて生き抜く激しい少女オリゲルドを演るに
ふさわしい才能が・・・。

そんなマヤのもとに紫のバラの人から素敵なドレスが届き、さらに食事への招待を受けた。
とうとう紫のバラの人に会える!!
贈られたドレスやアクセサリーを身にまとい、緊張しながら指定されたレストランに着いたマヤ。
そこで会ったのは・・・・・宿敵・速水真澄だった。

偶然別の席で接待をしていたという真澄、まさかこの冷血漢が紫のバラの人であるわけがないと
納得するマヤだったが、自分をじっとみつめ、優しそうな目でドレスがよく似合っているという真澄に
また、戸惑いの感情を抱く。
その時、もう一人穏やかな年配の女性が現れた。
紫のバラの招待状を受け、ここへやってきたという北白川藤子、
彼女はオペラ歌手としてかつて『ふたりの王女』のアルディス役を演じたことがあるという。
真澄は手早く自分の席もテーブルに用意させると、
真澄・マヤ・北白川といった不思議なメンバーでの食事がスタートした。
北白川との会食、きっとあなたの役にたってくれるでしょうと書かれた紫のバラの人からの
メッセージを受け取ったマヤは、ここに紫のバラの人は現れないのだと知り、涙を流す。

光り輝くうまれながらの王女、アルディス。
自分と正反対の美しく愛らしいアルディスの役がつかめないというマヤに、
北白川は穏やかな微笑を浮かべた。
自分が初演時の年齢は31歳、しかもいわゆる美人とはいいがたい、
かわいらしいほのぼのとした雰囲気の北白川は、
それでも自分はアルディスだと信じて舞台に立っていた、とかつてを語る。
そしてマヤに、飾られてあったバラを持たせ、「なんてきれいなバラ」と演じさせる。
バラは本当に美しく、マヤは自然に「なんてきれいなバラ」と言うことができる。
次に北白川はそのバラを手で握り潰し、同じセリフをマヤに言わせた。
「なんてきれいなバラ」
手にしたボロボロのバラを見ながらのマヤのセリフを「そのセリフは、嘘ね」と言い、
次に花を折って、茎だけになったバラを持たせ、
舞台に立っているつもりで、とまたセリフを言わせた。
頭の中に、美しく咲くバラを思い浮かべたマヤは、
まるでその茎の先に花が咲いているかのように
「なんてきれいなバラ」
と輝く笑顔で言った。
それを北白川は“感覚の再現”だという。
自分の中のアルディスの気持ちを、再現する。自分はアルディスだと信じる。
そのことに、実際の見た目やこれまでの生活環境は関係ない。
王女の心をもってふるまえばどんな動きもそれらしく見えるもの。
マヤは、少しずつ、自分の中のアルディスを探し求める。

**
稽古場で、二人の王女の演技は少しずつ進んでいるように見える。
しかしそれを見ていた千草は、中途半端な演技は見苦しいと一喝する。
そして二人に対し、アルディスとして、オリゲルドとして、
皇太后ハルドラと会話をする芝居を行わせる。
二人はいったいどんな生き方をし、どんな考えを持っているのか、
何が好きで、こんな時何と答える、内面をどんどん掘り下げる会話の応酬に、
二人は自分たちがいかにアルディスを、オリゲルドを表面的にしか
捉えられていなかったのかを痛感する。
そして会話を通して初めて自分のなかからあふれ出るアルディスの、
そしてオリゲルドの思いや考え方、感じ方を初めて体感していた。

更に千草は、二人を精肉卸店に連れ出す。
「二人の演技には、気温がない」
『ふたりの王女』の舞台となる北欧ラストニア国は、冬ともなればマイナス30度を超す
冷気に覆われた凍てつく国。
二人を冷凍庫に閉じ込めた千草は、
今の二人の演技には、刺すような寒さや、待ち焦がれる春のぬくもりもが
全く感じられないと指摘する。
身も凍る寒さに、徐々に体の動きを奪われるマヤと亜弓。
必死に二人でおしくらまんじゅうをして暖を取ろうとするが、すぐに気管に冷気が入り、
息をするのも苦しくなる。
その時、扉の向こうから千草の声がした。
「オリゲルド、セリフを!!」
今居るここは、ラストニアと同じ冬の温度・・
「ラストニア・・わたしの国、一年の半分は冬将軍の支配するこの国
吹雪の音がきこえる わたしの耳にはたえず吹雪のうなり声がまとわりついて離れない
わたしの心も氷の刃と雪のよろいでかたまってしまった・・・
わたしは王女オリゲルド!わたしの心に永遠に春のくることはない!」
文字通り氷の張りつく気温の中で魂を絞り出すような亜弓のオリゲルドは、
まさにこの世の冬を全て集めたような冷たく、突き刺さるものだった。

ようやく冷凍庫から出された二人。
外気の暖かさが体をゆっくりと包み込む。そして静かに体内の氷を溶かしていく。
そこで千草は、マヤにアルディスのセリフを言わせた。
「ラストニア わたしの国!一年の半分は雪と氷にとざされた冬将軍の治めるこの国
わたしは王女アルディス けれどわたしはしっている
春の女神のほほえみが冬将軍の剣よりも強いということを
冬将軍の治めるこの国のすべての民にとって わたしは春の女神の娘でありたい」
冬の後には春がある。皆を包み込むような温かい春の日差しを思わせるマヤのアルディスは、
厳しく長い冬の冷たさを乗り越えてこそ感じられる、真の暖かさだった。

この感覚を、再現する。

千草は、一週間後にそれぞれにテストをすると告げた。
テストの内容は、千草演じる皇太后ハルドラの大切にしているロザリオを手に入れる。
アルディスとして、オリゲルドとして。

冷凍庫から脱出したマヤと亜弓は、帰りに二人でパフェを食べながら、
取り留めもない会話をする。
生まれも育ちも、容姿も頭の出来も全く違う二人、だけど二人は演劇という一つの情熱に対して
全く同じ立場だった。
お互いがお互いをライバルとして尊敬し、畏怖し、そして憧れる。
全く対照的な二人が対照的な役を演じる過程で、二人の心は
反対にどんどん引き付けられていくようだった。

明日からは、またライバル。
素晴らしきライバル。

稽古以外の時間は、美術館に通ったり、素敵な香水を探したり、
北白川が指導しているという讃美歌を聞きに
教会に行ったりと、稽古とはかけ離れたような日常を過ごしていた。
美しく響きわたる讃美歌、そして北白川の歌う力強いアルディスの歌声、
マヤの心の中は、この世にあるすべての美しきもの、尊ぶべきもの、
優しく包み込むものに満たされていき、
いつしか、マヤは亜弓の家の使用人からも、まるで亜弓がいるかのようだと思われるような、
優雅な生活を自然に送るようになっていた。

一方亜弓は、周囲にさげすまれ、猜疑心と反骨心の塊であるオリゲルドの心情をつかむため、
顔に醜いあざのメイクを施して夜な夜な場末の繁華街へ向かう。
その辛気臭い顔は裏街道でも異質で、強盗まがいの恐喝に絡まれたり、
女だからと露骨に下心をもって近づく男たちをあしらいながら、
亜弓はどんどん自分だけの閉ざされた世界に引きこもっていく・・・
まるでオリゲルドのように。

一週間後、
千草からの課題である、ロザリオを受け取る試験に取り組む二人。
まずはマヤのアルディスから。
当初優しいおばあさまに甘えてロザリオをもらおうと思っていたマヤだったが、
千草演じるハルドラから、そのロザリオにまつわる思い出を聞かされたマヤは、
ロザリオに込められた重みに、どうしてもおねだりする気になれなくなってしまった。
おばあさまがそんなに大切にしているものを、私がもらっちゃいけない・・・。
素直にアルディスとしての心情を語ったマヤに、千草はアルディスならそう思うでしょうねと言い、
そのまま演技を続けさせた。
そんなに大切な物をおねだりしようとしてごめんなさい、そういって謝るアルディスにハルドラは、
その可愛く汚れのないアルディス、あなたならきっと大切にしてくれるでしょうとロザリオを渡した。
大好きなおばあさまから譲り受けたロザリオ、大事に大事にしようと握りしめたアルディスに、
亜弓のオリゲルドが近づく。
アルディスのおばあさま、自分にとってもおばあさま、そんなに大切な物を譲り渡してくれるなんて、
あなたは本当に愛されているのね、私とは違って・・・とオリゲルドは悲しい目を向ける。
もし、それを私がもらえるのなら、おばあさまの愛が自分にもあるんだと思って私はきっと強く生きられる、
そう語るオリゲルドの言葉に、アルディスはお姉さまのためにとそのロザリオを手渡す。
その時の二人の心情ーーー
アルディス:
オリゲルドお姉さま、あんなに喜んでくださってよかった・・。きっとおばあさまもゆるして下さるはず・・
オリゲルド:
馬鹿なアルディス、まんまと私に騙されて、こんな大事なものを私に渡した。
これさえあれば女王ハロルドの威光を利用できる・・・

マヤも亜弓も、千草の試験に合格した。

**
いよいよ『ふたりの王女』公演初日
約束通り舞台中央前より7列目、最上級の席を用意して真澄を招待したマヤ。
自分の挑戦をうけてたった。
きっと自分の期待を超える演技をしてくれる、そしてそれがマヤの演劇界での復活の足掛かり、
紅天女への細く険しい道のりへの第一歩となる・・・・真澄は信じていた。
日帝劇場の観客席には、劇団つきかげや一角獣の仲間たち、そして桜小路の姿も見える。
観客たちのほとんどがミスキャストと言ってはばからないマヤのアルディス、
そして亜弓はいったいどんなオリゲルドを演じるのか・・・・。

期待と不安渦まく中、いよいよ舞台の幕が上がるーーー
舞台上にまず現れるのは、マヤ演じるアルディス・・・


第16巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
ふたりの王女の役作り編は、いろいろ重要だとは思うのですが、
話として停滞する部分も多く、パラパラ読みしちゃう部分もあったり・・・。
ひさびさのスパルタ指導としては、冷凍庫稽古もありましたが、
役作り以外のエピソードとしては、やっぱり真澄さんのトロイメライですよね。
引出が多すぎです、真澄さん。

15巻の後半から『ふたりの王女』本編がスタートしてますが、切が悪いので
その辺もあわせて次の巻まとめにいれちゃいます。
次は本編がほぼずっと続くので、短くなりそう。。
どーまとめたらいいのやら。。でも目指せ!真澄からバラの花束ゲットだぜ!


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【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第14巻【ネタバレばれ】

2015-02-12 01:49:29 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

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『ガラスの仮面』文庫版第14巻 ※第10章(最初から)(途中まで)

第10章 冬の星座

日帝劇場で、『ふたりの王女』オーディションがスタートした。
姫川亜弓の相手役ということで、それ相応の実力が伴わなければ
舞台として成立し得ない。
審査方法は、
第1次審査~第3次審査まであり、
今日の1次審査を通過したものだけが3日後の2次審査に進むことができる。
そして2次審査を通過したものが、最終3次審査を受けることができる脱落形式。
今日の第1次審査を受ける者は、

草加みどり 劇団自由人所属
古城由紀 すずき事務所所属
植草葉子 ドリームプロ所属
江川ルリ 太宝プロ所属
藤川令美 劇団ジェッツ所属
雪村みちる 劇団女神座所属
そしてマヤを含む計7名だ。

審査には今回の舞台の関係者があたる。
演出家 風魔鬼平
脚本家 瀬戸哲也
舞台美術 大友静香
制作主任 兼平良介
演技指導 藤倉栄

~~課題1「毒」~~

わたしがこの毒を手にいれたことを知る者は誰もいない
誰の運命をどうすることもすべて思いのまま
あのひと これから先のあのひとの人生 運命 命
それがすべてわたしのこの手の中にある
もう思い通りになんてさせやしないわ
裏切り ごうまん あなたはいつだって身勝手に生きてきた
わたしの心をずたずたに切りさいて
血がふきでるのをあなたは楽しんでいる
笑ってらっしゃい これはわたしの切り札よ
ポーカーフェイスをよそおってあなたの前でいつも通りの
表情をみせてあげる
これが体にはいり 消化されるにしたがって しだいに毒がまわって
4時間後には心臓マヒと同じ症状で死ぬ
毒は体に残らない
これをほんのひとたらしふたたらし
あなたはそれをほんのひと口ふた口
それですべてが終わる
わたしは苦しみの鎖からとき放たれる
わたしの切り札
~~~~~~~~~~~

このセリフを30分で覚え演じる。
こういったエチュードは稽古でよく取り組んでいるせいか、
候補者は誰も皆比較的落ち着いた様子でセリフ覚えに取り掛かるが、
マヤは一人この課題の難しさを感じていた。
この人物はいったいどんな人物なのだろう。
「わたし」が殺そうとしている「あのひと」はいったいどんな関係の人なのか。
なぜ、殺したいほど憎んでいるのか。
毒はどんな容器に入っているのか・・・。
ここには何も記されていない。

速水真澄は、久しぶりに日曜日を自宅で過ごしていた。
そろそろオーディションの始まる時間。
オーディション会場に記者としてもぐりこんだ聖から電話で報告を受ける。
想像通り審査はかなり厳しいものであった。
なにかすることはあるかと問われた真澄は何もせず、ただ経過だけ報告してくれと伝えた。
これからはあの子の実力だけが勝負。
ただ、あの子を見守ってやっていてくれ。
「あなたのかわりにですね」
そう問う聖に真澄は穏やかな笑みを浮かべ
「そうだ・・・」と答えた。

第1次審査がスタートした。
それぞれさすがの実力者ぞろいとあって、そつのない演技が続く。
ある人が震える心の葛藤を演じたかと思えば、
別の人物はそれを高笑いで表現する。
セリフ回しもうまく、感情のこめ方もなかなかいい。
しかしそれは、なんとなく演技が上すべりしているような印象もぬぐえない。
そして最後に、マヤが審査会場に登場した。
おもむろに向こうを向いて立ちすくんだマヤは、ゆっくりと審査員のほうへ顔を向けた。
それはそれは恐ろしい表情で・・・・
ここにいるのは審査員という名の観客

マヤはパントマイムで、台所での炊事作業を演じた。
蛇口をひねる動作、鍋を火にかける動作、
まな板で野菜を切り刻み、調理を始める
そして上の戸棚を開いてそこから取り出した小さな小瓶・・・・
「・・・・毒!!」
マヤの表情は台所の向こう、リビングにいる何者かに対する
恐ろしいまでの殺意を表現していた。
鍋に向かって、今にもその瓶から毒を流し込む寸前、手が震える。
マヤはそのまま毒を元の棚に仕舞い込んだ。
「わたしの・・・切り札!」

審査員は皆、審査を忘れただの観客となっていた。

~~課題2「音楽」~~
ヴィーナスの「キッスは目にして」の曲に合わせて何かをする
曲は2分30秒、ベートーベンの「エリーゼのために」を軽快で
リズム感あふれるメロディーにアレンジした流行曲である。
その曲に合わせて歌ってもよし、踊ってもよし、何をやっても自由である。
~~~~~~~~~~~
候補者がそれぞれ得意のダンスで勝負をかけるなか、マヤは
「この曲にあわせて体を動かす」
と言った。
どうすれば審査員という名の観客を楽しませることができる?
観客に興味を持ってもらえる?
マヤにとってはこのオーディションも一人芝居のひとつだった。

ズボンのすそをまくり、ハンカチを頭にかぶり、
事務室で借りた靴墨を顔に服にぬりたくり、マヤは審査会場に現れた。
「塀にペンキを塗ります」

手にはペンキの缶、もう片方の手には刷毛をもったパントマイムで、
曲はスタートした。
軽快な曲に合わせペンキを混ぜ、リズムに乗せて壁にペンキを塗っていく。
右から左へ、上から下へ
曲の抑揚がそのまま刷毛の動きにリンクする。
ノリノリでペンキ塗りを続けるマヤ、しかし調子に乗りすぎて、
横にとめてあった車にまでペンキを塗ってしまう
あわててタオルでこすりとる、それでもとれない。
うっかり塗りたての壁に手をついてしまう。
張り付いてしまうからだ、必死にはがそうとするがうまく動かない。
その一連の動きが時にリズミカルに、時にコミカルに、
緩急織り交ぜ一時たりとも見ている者を飽きさせない。
「あまりダンスってやったことないから、これなら観る人に楽しんでもらえると思って」
終了後、マヤはそういって会場を後にした。

1次審査終了後、通過者が発表された。
北島マヤ
草加みどり
植草葉子
江川ルリ
雪村みちる

1次審査終了後、週刊セブンジャーナルの記者松本を名乗る聖が
マヤの所にやってきた。
ファンのためになにか一言と、マイクを渡されたマヤは、
紫のバラの人へのメッセージをカセットに吹き込んだ。
その声は、そのまま真澄に届けられた。

~~第2次審査「感動を生む」~~
仮設舞台には、レストランを思わせるテーブルセット、そしてそこに
上手からレストランのマスターが現れる。
途中、鏡を見て身なりを整えたり、テーブルの上の花をかいだりしながら
ゆっくりといくつか並べられた丸テーブルの周りを歩いて周り、
最後に腕時計を確認し右手を挙げると音楽が流れだす。
マスターはそのままゆっくりと下手へさがっていく。
ただそれだけの演技。
このマスターの動きはそのままに、それぞれが何らかの感動を生む芝居を
組み込む、それが第2次審査の課題である。
マスターの動き以外に何の設定条件もない。
季節も場所も時間も、営業中なのか閉店後なのかもなにも決まっていない。
自由な想像力で演じることができる。
今回の課題は自由審査、できる人から挙手して挑戦する形式である。
なんの変哲もない芝居に変化をつけて感動を生む。
参加者が難題に戸惑う中、マヤ一人満面の笑みで
「よかった!こういうのだったらいくらでも演れるわ!」
と言って周囲を驚かせた。
さっそくマヤが挑戦するため手を挙げようとしたその時、
負けたくないと強く思った江川ルリが先に手を挙げた。

江川ルリの演技が始まる。
椅子に腰かけた江川は、待てど暮らせど現れない恋人との別れの夜を
うまく演じた。
去り際に、来なかった彼への「さようなら」の言葉が
失恋した女の哀しさ切なさをうまく表現していた。

そして次はマヤの番。
会場に聖の姿を見つけていたマヤは、紫のバラの人の為にもと
さっそく課題に取り掛かる。
自分の動きだけで笑いや怒りや哀しさを生み出せるなんて、なんて楽しいんだろう。
やってみよう、自分の思い通りに!
マヤの目はきらきらと輝いていた。

マヤは一つのテーブルの下に隠れると、かくれんぼのように
「もういいかい?」「まだだよ」と大声を上げてスタートした。
ここはホテルのレストラン。
親戚の結婚式に参加した男の子だったが、飽きてしまい従弟とかくれんぼを
始めたのだ。
もぐりこんだのは、開店前のレストラン。
テーブルクロスの下に潜り込んだ少年は、自分の事を探している男がいることに気付く。
さっきロビーでぶつかった黒い背広の男だ。
そういえばぶつかった時、何かを落としていた、そう、確かあれは本物そっくりのピストル・・・・。
あいつがレストランに入ってきた!
一つ一つテーブルの下をのぞいて僕を探している!
もしかしたら、あいつらはギャングか、殺し屋・・・!
レストランのマスターはあいつらの事に気付いていない。
どうしよう、助けを求めようか。でも、子供の言う事なんて信じてもらえないかも・・・。
どうしよう、あいつらが近づいてくる。このままでは、つかまる。
逃げなきゃ・・!その時・・・
音楽が鳴った、開店だ!!
あいつらボーイに呼び止められてる、慌てて出て行ったぞ!!
助かった!
よし、今のうちに警察に話にいこう、見たことを全て伝えるんだ。
このホテルで何事も起きないうちに・・・。
あの男たちに見つからないように、ホテルを出なきゃ。大丈夫、僕はかくれんぼの名人だもの。
「もうーーいいかい?」
「まあーだだよ」

およそ誰も思いつかないようなシチュエーション。
最後の「もういいかい?」の声が印象的に演技を締める。
なんであんなセリフをいったのか?と尋ねられたマヤは
「なんとなく、あそこでああ言った方がいいような気がしたので」
と答えた。
理屈でなく本能で、芝居を知っている少女 それがマヤだった。

大都芸能で相変わらずの辣腕をふるう真澄、
女子社員からも熱烈な視線を浴びるが、仕事に一途な堅物は、
どんな美人相手にも興味を示さないともっぱらの評判だ。
そんな真澄が、最近物思いにふけることが多い、もしかしたら恋をしているのでは
ないかと噂されていた。
にわかには信じがたいその真相。
移動の車中でも仕事の書類に目を通す真澄だったが、
ふと時間を見ると、ちょうどマヤが2次審査を受けているころだと気付く。
マヤはちゃんとやっているだろうか・・・
手にした企画書をそのままに、宙を見つめる真澄は、まさに恋をしている目をしていた。

マヤの舞台に圧倒され、ほかに手を挙げる人が現れない中、
「はい!」
と声を響かせたのはまたしてもマヤだった。
さっきとは別の演技ができるという・・・。
もし、ほかに誰もやれる人がいなければ、またマヤに演ってもらうという声に、
負けられないと慌てて手を挙げたのは雪村みちるだった。

雪村はレストランの中央に立つと、清水健太郎の「失恋レストラン」を歌いだした。
そこへ現れるマスター。ひたすら歌い続ける雪村。
2人の動きはちぐはぐで、観ている者ものってこない。
しまいには、舞台上で音楽が流れ始め、歌とかぶってしまい、完全に失敗に終わった。

残る草加みどりと植草葉子はまだ考えたいというので、マヤが2度目の演技を始めることになった。
課題に取り組むマヤは、足元から自信がみなぎってくるのを感じていた。
私は演れる。
次の設定はマスターの影、マスタ―の後ろについて、同じ動きをする。
タイミングも絶妙、しかし微妙に行動が違う。
かぐわしい花の香りは、鼻につく匂いに、
マスターが整えた椅子を、わざとずらしたり、
きれいに張ったテーブルクロスを、ぐちゃぐちゃにしたり、
その一つ一つの動きが絶妙の間で、観客に笑いを生む。
最後にマスターと反対側に回り込んだマヤは、いつしかマスターの先を歩く位置に収まり、
影が本体と入れ替わってしまった。
1度目とは全く異なる演技で、マヤは見事新たな感動を生んだ。

オーディション会場に顔をだした月影千草に、スタッフがマヤはこの課題を2度もやったと
驚きながら伝えたが、それを聞いた千草は静かに笑った。
そして、マヤがさらに3度目の挑戦をしようと手を挙げている姿を見ると、
あの子なら、10回でも20回でも、1日中でも違う演技をやりつづけるでしょう、と言った。
「なにしろあの子は千の仮面をもっているのだから」

もうあとは見る必要はない、そういって会場を後にした千草。
結局オーディションは第3次審査まで行くことはなく、
2次審査を7通りもの違った芝居を演じたマヤの圧倒的勝利で彼女に決まった。
オーディションで争った他の候補者たちも、マヤの演技に圧倒され、競争心はいまや
マヤを応援する気持ちに変わっていた。
さっきまでの敵を味方にしてしまう、マヤの不思議な魅力。
マヤは聖にかけより、紫のバラの人への思いをまたカセットに吹き込んだ。

**
『ふたりの王女』
王女アルディスとオリゲルドはとある北欧の小国の異母姉妹である。
かたや宮殿の中で蝶よ花よと大事に育てられ、生まれながらの王女として気品を備えたアルディス、
人を疑うことを知らない、天使のような笑顔と王女らしいわがままさ、無邪気さ、
立ち振る舞いはあでやかな花ようだとみんなから愛され、幸福に包まれて育った少女

かたやオリゲルドは同じ国王の娘でありながら謀反者の娘として牢獄で育てられる。
国王の謀反を企む者の罠にかかり、無実の罪で謀反者の汚名を着せられ、
母と共に暗く冷たい牢獄の中、疑惑と孤独と復讐心を育てながら生きてきた。
アルディスと対照的な暗い顔立ちの少女

渡された台本を読みながら、マヤはマヤは思う。
オリゲルド・・・私演れそう。

相手役がマヤに決まったと聞いて、いよいよマヤが出てきたことに震える喜びを感じた亜弓。
アルディス・・・・私はアルディスを演れる。

しかし、後日日帝劇場で行われた配役発表では、
アルディスを北島マヤが
オリゲルドを姫川亜弓が演じることが発表された。
あまりにもイメージの違う二人の王女、ミスキャストを騒ぐ記者、そして何より演じる二人。
しかしその配役を推奨したのは、ほかならぬ千草だった。
きっと私にとっては難しい役だと思うけど、私は王女アルディスの仮面をかぶりたい
そして舞台の上で生きてみたい
マヤの体からにじみ出る、これまでなかった自信を感じ取った亜弓は、
これでこそ私のただ一人のライバルと、心を震わせる。
2人で健闘をたたえ合って手を握り合う亜弓とマヤ、
マヤはただ一人、自分を待つと言ってくれた亜弓に恥じないような、軽蔑されないような演技を
することをその背中に誓った。

劇団つきかげ+一角獣も、アテネ座での舞台が決まり、みんなで
それぞれの明るい未来へ向かって決起パーティーを開いた。
そしてマヤは、赤坂クリスタルホテルで開催されていた新作映画発表会場に真澄を訪ねると、
『ふたりの王女』に出演が決まったことを告げに来た。
アテネ座に出られないように仕組んだ相手に、あいにくと日帝劇場に出ることに決まったと言い、
あなたの思い通りにはならないと気色ばむマヤ。
あなたにどんなに邪魔されようと、私はきっと舞台でいい演技をして見せる。
そしてまた、次の舞台に立ってみせる!!
いつかあなたなんかみかえしてやるんだから、と意気込むマヤに、シャンパングラスを渡すと、
「『ふたりの王女』出演決定おめでとう、きみの舞台の成功を祈って」
と乾杯をする真澄。
そして自分を舞台の初日に招待するようにマヤに頼んだ。
おれを見返しててやりたいと思うのならば、おれを招待しろ。
もしきみがヘタな演技をすれば、おれは途中で席を立つ。
もしきみが納得のいく演技をすれば、おれは惜しみない拍手を君に送ろう。
もしきみがおれを感動させたなら、君に望むだけバラの花を贈ろう。

大都芸能の速水真澄が花を贈る、これがどれほどの意味を持つか、そうすればきみは、
次の舞台に立ちやすくなる・・・。
そう言う真澄の真剣な目に気おされて、マヤは何が何でも花を贈らせてやるんだと意気込む。
そんなマヤに、
「色は紫がいいか?」
と意味ありげな言葉を残して、真澄はその場を去って行った。

「ファンとはバカなものだな」
そういって一人、バーで静かにグラスを傾ける真澄。
今度の舞台はマヤにとって失敗の許されない大事な舞台。
成功すれば次の舞台への足掛かりとなり、演劇界復帰のきっかけとなる。
真澄はわざわざ憎まれ役をかって、マヤの闘争心をあおった。
真澄を招待するとなれば、死にものぐるいで頑張るに違いない。
天性の才能に闘争心が加われば、ふつうの2倍も3倍も上達が早くなる。
それほどまでにマヤの事を思っている、密かにマヤとのやり取りを見ていた水城は
そんな真澄の姿に、その思いの深さを改めて感じた。

『椿姫』@明和劇場
招待状を受け取ったマヤは、桜小路がアルマンを演じるその舞台を観劇に訪れた。
あんな別れ方をしたのに、変わらず優しい桜小路君。
桜小路が自分の事を忘れずにいてくれたことに感謝していた。
大人の青年に成長した桜小路の演技はずっと上達し、素敵なアルマンだった。
直接会う勇気の持てないマヤは、”すてきなアルマンでした”とメッセージをつけた
花束を舞台上に残し、そのまま劇場を後にした。
それを受け取った桜小路は、それがマヤからのものと気付き、マヤへ思いをはせる。

**
『ふたりの王女』の稽古がスタートした。
光り輝く王女アルディス
冷たく猜疑心に満たされた王女オリゲルド
マヤも亜弓も、必死に役作りに取り組むが、それぞれその感覚をつかめずにいた。
ある日一緒に帰宅の途についた二人。
会話の中で、マヤの環境が人間を作るという言葉に、亜弓はそれぞれの生活を入れ替えることを
提案する。
亜弓は早速マヤを自宅に連れて行くと、
ここにある物は自由に使っていいので、しばらくここで生活して欲しいと申し出る。
そしてその代り、亜弓はマヤたちの地下劇場で生活させてもらうことになった。
ちょうどつきかげや一角獣のメンバーは、アテネ座の稽古場へ移っていて、今はだれも使用していない。
亜弓の家で、高級家具や多くの使用人に囲まれてアルディスの心をつかむマヤ
地下劇場で、冷たい牢獄で暮らし、人を信じず、嘘・猜疑心・恐怖と復讐心に燃えるアルディスをつかむ亜弓

ふたりの少女の、それぞれの戦いが始まる。

第15巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
ふたりの王女のオーディションは、楽しいですよね。
ついつい細かく描写しちゃいましたが。
これから長い長いふたりの王女がスタートです。
いろいろ言いたいことはあるが、まとめづらい章だ・・・。

真澄が壁ドンしながらマヤに特上の席をおねだりするくだりは、
どきどきものでした。
マヤの事、大切で大切でたまらないんですね。真澄様!!
今巻でも水城さんがもはやストーカーのように、真澄の心情を解説してくれています。
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