※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※
仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら
49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら
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『ガラスの仮面』文庫版第17巻 ※第11章(途中から)(途中まで)
第11章 紫の影
『ふたりの王女』は大成功のうちに千秋楽を迎えた。
雑誌や新聞の記事、どれをとっても姫川亜弓の新境地を称賛する言葉が並び、
まさに亜弓の為の舞台だったといってもいい。
一方のマヤも、亜弓に対して引けを取らない演技で舞台をひっぱったことに
改めて実力の程を世間に再評価させた。
さらにあの大都芸能の速水真澄からとびっきり大きな花が贈られたことも、
演劇界においてのマヤの地位回復に一役買ったといっていい。
早速次の舞台のオファーが矢継ぎ早に舞い込んでくる。
しかし、月影千草が指定した期限まであと約1年。
アカデミー芸術祭への参加は秋の公演までということを考えると、実質次の出演作が
全てを決めると言って過言ではない。
最後の公演を終え、人けのない劇場でアルディスのセリフを語るマヤ、
そこへ亜弓が現れた。
「自分の中にオリゲルドがいた。オリゲルドとして生きたあの感覚、信じられない
まったく別の人格をもった人間に身も心もなりきれるなんて、はじめてだったわ」
高揚感とともに語る亜弓に、マヤは不思議そうな顔で答えた。
「亜弓さんがそんなこというなんて。私はいつも、そうだから・・・」
その言葉に亜弓の顔は凍りつく。
そうだ、自分が苦労に苦労を重ねてやっと手に入れた役と一体になるこの感覚、
マヤは、マヤという子はそれをいとも簡単に体得し、役になりきる女優だ。
改めて見えない底力を痛感させられる、たとえこの勝利に酔いしれる瞬間でさえも。
亜弓は必ず賞を獲得し、紅天女の舞台を共に競い合う事をマヤに強く訴えた。
劇団つきかげそして一角獣の仲間たちが白百合荘に集まって
マヤの熱演を慰労してくれた。笑い声が外まで響き渡る。
そんな白百合荘の前には不釣り合いな黒塗りの車が停車している。
そのそばに立つ長身の男は、ただ黙って明るく漏れる一室の明かりを
見上げていた。
“なんてざまだ真澄、これがおれか・・・、こんな所にたたずんで、じっと動く事もできずにいるとは・・・”
あの日、義父英介から渡されたお見合い写真。
その相手は、大都グループとしてはあまりに大きな意味を持つ相手。
見合い話を受けることそれはすなわちビジネスパートナーとしての政略結婚へと
明確な道筋を描く事は間違いない。
“仕事において申し分のない相手を選ぶ、コンピューターにかけてでも”
かつて自分がそういったのとは裏腹に、真澄はマヤを思う自分の心を持て余し、
この申し分のない見合い話に足を踏み出せずにいた。
『ふたりの王女』の舞台を終えたマヤは、ずっと支えてくれている紫のバラの人に
お礼の手紙を送った。
プレゼントのひざ掛けに添えて。
年配の男性を想定していると思われるそのプレゼントを受け取った真澄は、
もしマヤが、紫のバラの人の正体を知ったら、いったいどう思うだろうかと憂いた。
そんなある日、マヤのもとに演劇の招待券が届く。
紫のバラは添えられておらず、差出人が誰かは分からない。
『アンナ・カレーニナ』
演劇に招待されたマヤが断るはずもなく、とりあえずマヤは招待券に従って劇場に向かう。
隣の席は空席のままだ。
いったい誰が来るのだろう。誰の招待なんだろう。
落ち着かないマヤの隣に、開演間際に一人の男性が腰かけた。
「速水・・・真澄!!」
あわてて立ち上がろうとするマヤの手をつかみ、逃げないように必死で抑える真澄。
握られた手は熱く、マヤの胸も高鳴る。
「手を離してください、速水さん」
「君がこのあとおれに付き合ってくれると約束するなら、この手を離す」
君に嫌な思いはさせない、そういう真澄の顔はいつになく真剣で、悲壮感すら漂わせている。
とりあえずマヤは、分かったからと言い、その手を離してもらった。
観劇が終わり、ヒロインの気持ちに共感して涙を流すマヤを、真澄はカフェに連れていった。
ここぞとばかりに大量のケーキを注文するマヤを穏やかな目で見つめる真澄。
やはりいつもの真澄らしくない。
大都芸能の車を帰し、二人で散歩をしようという真澄、
マヤの元に提示された、たくさんの出演オファーについて語らう。
悲劇の美少女オフィーリアまで舞い込んだとは、美少女づいているなとからかう真澄に、
地でやれますかと応酬すると、負けたよチビちゃんと真澄は大笑いした。
その時、区立文化会館を見つけた真澄は、星を見ないかとマヤを誘う。
ここの五階にプラネタリウムがあるのだ。
なんでもここは真澄が少年時代によく通った場所のようで、
受付のおじさんは久しぶりに見る真澄の事もよく覚えていた。
すでに投映の始まっているドームに静かに入った瞬間、
一面に広がる満天の星空に圧倒され、よろめくマヤの背中を真澄は優しく支える。
そして、子供のころ、ここによく来て、星を見るのが好きだったと語る。
ここに来ると自分がどんなにちっぽけな存在か思い知らされる。
どんな悲しみや悩みも、考えているのがばからしいほど小さなものに思われてくる。
ここへくれば心が大きく軽くなった。どんなことにでも耐えられそうだった・・・
輝く星空はどこまでも広く、まるで宇宙空間に浮かんでいるようで、
マヤは圧倒されていた。
投映が終わり明るくなったドーム内、ふと見上げた真澄の顔はまるで少年のように
きらきらと輝いていた。
「思い出につきあってくれてありがとう」
真澄が席を外している間にプラネタリウムのおじさんと話をするマヤ。
少年時代の真澄はよくここに来ていた事。
何があったかは分からないが、ある時は全身あざだらけで歯を食いしばりながら
くやし涙を必死でこらえていたこともあった。
そして母親が亡くなった時も、ここへきて、隅で声を殺して泣いていた。
マヤは、想像もできない真澄の少年時代、そして星を愛する真澄の心の中を図りきれずにいた。
都会の空は、光も弱く、あれだけの星がこの空にあるとはとても思えない。
スモッグや地上の灯りで見えないだけ、本当は今も満天の星が輝いているのに。
夕食にまではまだ時間がある、ちょうど近くの神社で縁日がひらかれていることを思い出した真澄は、
マヤをそこに連れて行く。
いろんなものを買い与えられ、まるで子供のように祭りを満喫するマヤ。
迷子の男の子を見つけると、おもむろに肩車をした真澄が、お母さん探しを手伝う。
その様子に、やんちゃでガキ大将だった真澄の少年時代を想像するマヤ。
大都芸能の冷血漢、ときどきあなたが分からなくなる。
もしかしたら本当はとてもあたたかい人なんじゃないかって・・・・。
マヤが口にしていた吹き戻しをふいっと取ると、そのまま口に付けて吹き始めた真澄。
その動作一つひとつがマヤをどぎまぎさせる。
“いったいなぜ、私を誘ったんですか?速水さん・・・・”
まるでデートのような一日を過ごしたマヤと真澄、夕食にとやってきたレストランでは
二人の間に思い沈黙が流れていた。
真澄はこの時も自分が何をしようとしているのか、何故、それができずにいるのか
冷静になれずにいた。
おれはマヤに真実を伝えることで、拒絶されることを恐れている。
マヤは、真澄の本当の心が知りたいと思っていた。
自分がマヤを誘い出した理由を言おうとしたまさにその時、
そこへ、真澄宛ての電話が入る。
そしてその電話で、月影千草が療養していたアクターズスタジオから出て行ったことを知る。
行先は不明・・・・。
あわてて白百合荘に戻ったマヤと真澄、そこへさやかが千草が残したという置手紙をもって現れた。
そこには、自分は付き人源造と共に地方へ療養にいくこと、
大丈夫だから心配しないようにと、そしてマヤにどんなことがあってもくじけないようにと書かれていた。
千草は『ふたりの王女』出演後、体力が弱まって休養がが必要な状態だった。
千草の事は何でも逐次報告すると約束していたのに、そんなに体調を崩していたとは知らなかったマヤ、
また、自分に黙っていたのかと激しく真澄を責める。
きっと探し出してやる、という真澄に、その言葉を信じていいのかと震える声で問うマヤ。
「先生がわたしの母さんみたいなことになったらわたし、あなたを一生許さないから・・・!!」
その叫び声が、真澄の体を真っ二つに引き裂く。
そうだ、この子はいつになっても、自分を決して許しはしない。
自分はかつて、彼女にどれほどのことをしてきたのか。
真澄はマヤに今日は一日付き合ってくれてありがとうと告げると、何も言わずに去って行った。
「今日君を誘い出したのは・・・・ただ・・・」
マヤが大人になるのを待とうと思っていた。
いつかその時が来ると思っていた。
しかし、待っていることで何が変わる?これ以上どうなるというのか。
自分の犯した罪は決して消せるものではない。
彼女の中の自分への憎しみの火は決して消えることはない。
“真実がみえない・・・速水さん・・・”
マヤもまた、真澄の表情に今までとは違う何かを感じていた。
真澄は例の見合い話を受けることを義父に報告した。
おれは一生影でいるしかない・・・影でいるしか・・・!
**
鬼才・黒沼龍三は、演劇界ではよくも悪くも有名な人物だった。
演劇にかける情熱は誰よりも強く、独創的な舞台演出は高く評価される一方、
その一切の妥協を許さない演出方針に現場でのバトルも日常茶飯事。
どんなベテラン俳優でも、気に入らなければすぐに降板させる。
その無骨で容赦のないやりかたに、周囲との摩擦が絶えず5年間ものブランクを余儀なくされた。
そんな黒沼の久々の復帰作、それは
『忘れられた荒野』
狼に育てられた少女が主役の演劇である。
制作の大沢演劇事務所では、主役を演じる女優を巡って黒沼と事務所社長との間で
今日も終わりのない口論が続く。
興業的な成功のため、事務所のトップタレント美森ジュンを起用したい社長側と、
狼少女という難しい役をやるには、圧倒的な実力があるものでなければだめだと取り合わない黒沼。
一向に意見を曲げない黒沼は、ありとあらゆる演劇ビデオを取り寄せ、視聴室にこもって
自らのメガネにかなう女優を探し求めた。
狼少女に化けられる、どんな色にも自由に染まる女優・・・
反射神経が鋭く、打てば響くような勘の持ち主。
目に強い光を持つ少女。
そして黒沼は、つい先日まで演劇界の話題を独占していた『ふたりの王女』のVTRに出会う。
「これだ、この少女だ・・・・!俺が探し求めていたのは・・・!」
アテネ座でおこなわれた劇団つきかげ+一角獣の舞台も、超満員の大盛況のうちに
幕を下ろしていた。
観劇に訪れていたマヤ、するとそこに、一人の演出家がマヤに会いにやってきた。
黒沼龍三ーーーー
小柄なマヤは背丈もぴったり、役よりも実年齢は高いが見た目は十分。
なにより、この少女は化けられる。
美しく光りかがやく春の王女、アルディスとは全く反対の狼少女であろうと。
黒沼に渡された台本を読むマヤ、狼少女ジェーンのセリフ、体にどんどん入ってくる。
「わたし・・・・演りたい、この役を!」
マヤは狼少女ジェーンに「紅天女」への運命を賭けた。
ジェーン役を受けることを告げにきたマヤに、黒沼は早速狼の演技をするように指示する。
放り投げられた雑巾は餌となる肉。
マヤは黒沼の激しいしごきを受けながらも身軽な動きで狼になりきり、
餌である雑巾を咥えた。
千草の厳しい演技指導に慣れているマヤにとっては、こんな鬼のしごきも朝飯前のことだった。
次に実際の狼を記録した映像を見せる黒沼。
映像は古く、劣化したフィルムはほとんどその姿を映さない。
そんな中、マヤは響き渡る狼の哀しい遠吠えが耳に残って離れない。
本格的な稽古開始まで3ヶ月、黒沼はそれまで狼の演技を研究しておくこと、
次は狼の喜怒哀楽を演じてもらうことをマヤに告げた。
そこでマヤは、日常生活もすべて狼として生活してみようと、四つん這いになった。
ご飯を食べる時も、階段を下りる時も。
普段は食い入るように見ているテレビにも興味を示さず、ひたすらティッシュ箱で遊び続ける。
そんなマヤに協力するため、劇団つきかげ+一角獣の仲間たちも、狼になって
一緒に稽古を開始した。
ある日街を歩いていたマヤは、真澄がきれいな女性と一緒にいる姿を目撃する。
優しいまなざしでその女性を見つめる真澄は、今まで見たことのない表情をしていた。
同行していた水城にその女性が真澄の見合い相手だと聞いたマヤは
全身を貫かれたような衝撃を受ける。
あの速水さんが、見合い・・・、結婚するかも・・知れない。
何故だかわからないが、マヤの心の中は突然空洞になったような、そら寒い感覚に
支配された。
それはなぜだかわからないけれどーーーーー。
**
大沢演劇事務所公演『忘れられた荒野』顔合わせ、
狼少女ジェーン役:北島マヤ、そして
ジェーンを人間として教育することに情熱をかける青年学者スチュワート役に現れたのは、
桜小路優だった。
あの、気まずい別れから数年経つ。
次に会うときはいいライバルとして、その言葉通り、桜小路は相手役として
マヤの前に現れた。
どんな距離感で接したらいいのか戸惑うマヤだったが、前と変わらぬ優しい笑顔で
声をかけてくれた桜小路に、以前と変わらない優しさを感じ安心する。
しかしそんな桜小路とマヤの様子を、桜小路の彼女、麻生舞は
穏やかでない気持ちで見つめていた。
狼少女としての稽古がスタートしたある日、マヤは
真澄の見合い話の報道を目にする。
その記事を読んだマヤは、いいようのない心のざわめきを感じていた。
まさか、あの人が見合いだなんて・・・
あの人が本気で恋人をつくったり、結婚したりするはずがないと、
必死で思い込もうとするマヤ。
いつも自分をからかっていじめてばかりの真澄、そんな彼の交際報道が
何故こんなに気になって苛立たしいのか、マヤ自身分からなかったが、
居てもたってもいられず、マヤは大都芸能に電話をかける。
しかしいざ真澄の声を聞くと、
月影先生の行方についてきいたり、今度狼少女を演じることを報告して、
肝心の質問が出来ない。
「どうかお幸せにっ!!」
という謎の捨てセリフを吐いて電話を切ってしまった。
狼少女としての動きを必死でつかもうとするが、まだまだ自分が
本物の狼になれていないことはマヤ自身が一番よくわかっていた。
そこで黒沼はマヤを部屋に一人残し、マヤを捕まえに来た荒くれ者達と
対峙させた。
そして次に、マヤを見世物小屋で金儲けの道具として扱う主人、
マヤの心の中で人間への恐怖心が高まっていく。
そして次に部屋に入ってきたのは、スチュワート。
警戒心を見せて近づこうとしないマヤ。
最後にたくさんの人間がマヤを囲み、檻の中を物珍しそうに観察していると、
マヤの心の中の人間への恐怖心は振り切れ、体の震えと絞り出すような鳴き声が
止まらない。
マヤはジェーンとして扱われるうちに、その感情をつかんでしまった。
やはり黒沼の見込んだ通り、大した才能の持ち主だ。
**
演劇界の大立者が集まるパーティー。
黒沼龍三は、大沢社長と共にいやいやながら出席していた。
秋の芸術祭に参加を予定している大沢事務所としては、このパーティーで
少しでも審査員たちと親しくしておきたい所だが、
黒沼はそういった席は得意ではない。
そこへ、大都芸能の速水が現れると、場の雰囲気は一気に華やぐ。
話題はやはり真澄のの交際報道、しかしその話題をふられた真澄の顔は冴えない。
そんな真澄の耳に、狼少女という言葉が聞こえてきた。
そういえば、マヤがこの前電話で言っていた・・・。
黒沼に近づいた真澄は、少し話をしませんかと黒沼を外に連れ出した。
黒沼から稽古の様子を聞いた真澄、まだ始まったばかりだが、
北島マヤは、黒沼がやっとの思いで探し出した楽器、なかなかの名器だ。
ハードな事で有名なおれの稽古にけろりとしてついてくる、不思議な子だ。
そう語る黒沼に、よく知っていますと真澄は答えた。
初めて話したが、あんた思ったより悪い奴じゃないな、と軽口をたたくと、
黒沼は機嫌よくその場を後にした。
見合いをし、恋の噂が囁かれていてもなお、心の中の紫のバラが生き続けている真澄に、
水城はこのままでもいいのかと尋ねた。
君には関係ない、冷たく答える真澄に水城は
いつまでも信号は赤ではありませんわよ、と告げた。
真澄の見合い相手はとても優しく、気遣いのある美しい女性。
女性らしい趣味もたしなみ、クラシックや絵画にも造詣が深い。
特に植物を愛し、庭や温室で育てた花を真澄に贈ってくれる、思いやり深き女性。
優しく控えめながら芯はしっかりとしている、結婚相手として申し分のない、そんな人・・・。
**
マヤと桜小路、二人での稽古が続く。
徐々に距離感が近くなっていく演技を、毎日のように続ける二人。
最初こそぎこちなさが残っていたマヤと桜小路だったが、
ジェーンとスチュワートがそうであったように、
マヤと桜小路の間も少しずつ、かつてのような親しさを取り戻していった。
そんな二人の様子に、周囲の噂も広がる。
桜小路の恋人、舞は気が気ではなく、稽古終わりの桜小路を待つ。
周囲の好奇の目や、舞の不安な気持ちとは裏腹に、
マヤは自分あてに届いた紫のバラの人からの化粧ケースを
受け取ると、舞に気付いて桜小路の元に案内し、胸に紫のバラを抱えて
元気に稽古場を後にした。
紫のバラの人への感謝の思いいっぱいに。
そんなマヤを、思いつめた目で見つめる桜小路。
その目に宿る意味を察し、凍りつく舞。
豪華なメイクセットをもらったお礼にと、
マヤは聖を介して、自分のこれまでの舞台写真をまとめたアルバムを紫のバラの人に
渡そうと思いたった。
聖にアルバムを手渡した後、聖から何か大沢演劇事務所で変わった動きはないか?と聞かれる。
大沢事務所と言えば、マヤが出演する『忘れられた荒野』の制作会社だ。
特に思い当ることはないというマヤに挨拶をすると、聖は去って行った。
しかしマヤは、挟んでいた手紙が落ちているのに気づき、聖を追いかける。
聖はビルのエレベーターにのって上の階に上がって行ってしまった。
仕方なくエレベーターの前で待っていると、降りてきた箱の中から出てきたのはなんと真澄だった。
真澄はエレベーター内で聖から受け取ったマヤのアルバムをこっそり隠すと、
何でもないかのようにマヤに話しかける。
そして先ほどの聖と同じように、大沢事務所の事を尋ねてきた。
何故速水さんも、聖さんと同じことを・・・・。
不思議に思うマヤだったが、月影千草の事に話が移る。
真澄も四方を探しているがまだ身元ははっきりしないという。
残るはあとひとつ、もしかしたらと、
真澄は千草が、尾崎一蓮が昔過ごしたという「紅天女」の故郷にいるかもしれないと語った。
分かったら一番にマヤに知らせると言う真澄に対し、
マヤは例の見合い話の事を思い出し、気が気ではない。
冷血漢とつきあえるなんて、いったいどんな女性かしら、と悪態をつくマヤに、
「忍耐強くてとても優しい人だよ」と答える真澄。
その言葉に動揺したマヤはまたもや
「どうかお幸せに!!」
と叫んでその場を走り去る。
マヤの言葉の意味が分からない真澄だったが、もしやマヤが自分に嫉妬しているのでないかと
思い当り、驚愕する。
自宅に戻り、マヤにもらったアルバムを手に、マヤの事を思う真澄。
まさか、あの子が俺に嫉妬、そんな馬鹿な。
しかし真澄の耳には、依然水城から言われた言葉が今更のように響きわたる。
“いつまでも信号は赤ではありませんわよ”
速水真澄、母をころした敵、あんなやつ大っ嫌いなんだから!!
マヤは心に浮かぶ真澄への複雑な気持ちを振り払うかのように、
必死で恨みの気持ちを呼び起こそうとしていた。
そして何とか稽古に集中しようとするマヤ、
しかしジェーンを抱きしめるスチュワートのその力強さに、
マヤは桜小路の今までとは違う熱い思いを感じ取る・・・・。
第18巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
ここから先は紫織さん出てくるし、正直
紫織さんエスコートしてる真澄さん気持ち悪いからちょっと
薄めにまとめることになりそうです。
『忘れられた荒野』で狼少女をつかむマヤメインにしようかな。
でもマヤも、“女の人にあんな優しい顔する速水さん、初めて見た”
とかいってぶるぶるしますけど、あんたいっつも
“なんでこの人時々こんなにやさしい顔をするんだろう?”
って言ってたよね!と思う。
まさか自分を女として見ているなんて思ってないから仕方ないか・・・・。
あなたを見る目の方がよっぽど優しいですよ、と教えてあげたい。
今回のメモポイントは、やはり水城さんの
「いつまでも信号は赤ではありませんわよ」キリッ でしょ!
紫織さんだけでなく桜小路君もいろいろ出てくるし、
これからますますブルーやわ~~(笑)
「野良犬ジェーン!!」もあるし・・・・。
早く青いスカーフ事件までたどり着いて、マヤの気持ちをまとめたい!!
今は切なすぎるよ、真澄さん。
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※
仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら
49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら
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『ガラスの仮面』文庫版第17巻 ※第11章(途中から)(途中まで)
第11章 紫の影
『ふたりの王女』は大成功のうちに千秋楽を迎えた。
雑誌や新聞の記事、どれをとっても姫川亜弓の新境地を称賛する言葉が並び、
まさに亜弓の為の舞台だったといってもいい。
一方のマヤも、亜弓に対して引けを取らない演技で舞台をひっぱったことに
改めて実力の程を世間に再評価させた。
さらにあの大都芸能の速水真澄からとびっきり大きな花が贈られたことも、
演劇界においてのマヤの地位回復に一役買ったといっていい。
早速次の舞台のオファーが矢継ぎ早に舞い込んでくる。
しかし、月影千草が指定した期限まであと約1年。
アカデミー芸術祭への参加は秋の公演までということを考えると、実質次の出演作が
全てを決めると言って過言ではない。
最後の公演を終え、人けのない劇場でアルディスのセリフを語るマヤ、
そこへ亜弓が現れた。
「自分の中にオリゲルドがいた。オリゲルドとして生きたあの感覚、信じられない
まったく別の人格をもった人間に身も心もなりきれるなんて、はじめてだったわ」
高揚感とともに語る亜弓に、マヤは不思議そうな顔で答えた。
「亜弓さんがそんなこというなんて。私はいつも、そうだから・・・」
その言葉に亜弓の顔は凍りつく。
そうだ、自分が苦労に苦労を重ねてやっと手に入れた役と一体になるこの感覚、
マヤは、マヤという子はそれをいとも簡単に体得し、役になりきる女優だ。
改めて見えない底力を痛感させられる、たとえこの勝利に酔いしれる瞬間でさえも。
亜弓は必ず賞を獲得し、紅天女の舞台を共に競い合う事をマヤに強く訴えた。
劇団つきかげそして一角獣の仲間たちが白百合荘に集まって
マヤの熱演を慰労してくれた。笑い声が外まで響き渡る。
そんな白百合荘の前には不釣り合いな黒塗りの車が停車している。
そのそばに立つ長身の男は、ただ黙って明るく漏れる一室の明かりを
見上げていた。
“なんてざまだ真澄、これがおれか・・・、こんな所にたたずんで、じっと動く事もできずにいるとは・・・”
あの日、義父英介から渡されたお見合い写真。
その相手は、大都グループとしてはあまりに大きな意味を持つ相手。
見合い話を受けることそれはすなわちビジネスパートナーとしての政略結婚へと
明確な道筋を描く事は間違いない。
“仕事において申し分のない相手を選ぶ、コンピューターにかけてでも”
かつて自分がそういったのとは裏腹に、真澄はマヤを思う自分の心を持て余し、
この申し分のない見合い話に足を踏み出せずにいた。
『ふたりの王女』の舞台を終えたマヤは、ずっと支えてくれている紫のバラの人に
お礼の手紙を送った。
プレゼントのひざ掛けに添えて。
年配の男性を想定していると思われるそのプレゼントを受け取った真澄は、
もしマヤが、紫のバラの人の正体を知ったら、いったいどう思うだろうかと憂いた。
そんなある日、マヤのもとに演劇の招待券が届く。
紫のバラは添えられておらず、差出人が誰かは分からない。
『アンナ・カレーニナ』
演劇に招待されたマヤが断るはずもなく、とりあえずマヤは招待券に従って劇場に向かう。
隣の席は空席のままだ。
いったい誰が来るのだろう。誰の招待なんだろう。
落ち着かないマヤの隣に、開演間際に一人の男性が腰かけた。
「速水・・・真澄!!」
あわてて立ち上がろうとするマヤの手をつかみ、逃げないように必死で抑える真澄。
握られた手は熱く、マヤの胸も高鳴る。
「手を離してください、速水さん」
「君がこのあとおれに付き合ってくれると約束するなら、この手を離す」
君に嫌な思いはさせない、そういう真澄の顔はいつになく真剣で、悲壮感すら漂わせている。
とりあえずマヤは、分かったからと言い、その手を離してもらった。
観劇が終わり、ヒロインの気持ちに共感して涙を流すマヤを、真澄はカフェに連れていった。
ここぞとばかりに大量のケーキを注文するマヤを穏やかな目で見つめる真澄。
やはりいつもの真澄らしくない。
大都芸能の車を帰し、二人で散歩をしようという真澄、
マヤの元に提示された、たくさんの出演オファーについて語らう。
悲劇の美少女オフィーリアまで舞い込んだとは、美少女づいているなとからかう真澄に、
地でやれますかと応酬すると、負けたよチビちゃんと真澄は大笑いした。
その時、区立文化会館を見つけた真澄は、星を見ないかとマヤを誘う。
ここの五階にプラネタリウムがあるのだ。
なんでもここは真澄が少年時代によく通った場所のようで、
受付のおじさんは久しぶりに見る真澄の事もよく覚えていた。
すでに投映の始まっているドームに静かに入った瞬間、
一面に広がる満天の星空に圧倒され、よろめくマヤの背中を真澄は優しく支える。
そして、子供のころ、ここによく来て、星を見るのが好きだったと語る。
ここに来ると自分がどんなにちっぽけな存在か思い知らされる。
どんな悲しみや悩みも、考えているのがばからしいほど小さなものに思われてくる。
ここへくれば心が大きく軽くなった。どんなことにでも耐えられそうだった・・・
輝く星空はどこまでも広く、まるで宇宙空間に浮かんでいるようで、
マヤは圧倒されていた。
投映が終わり明るくなったドーム内、ふと見上げた真澄の顔はまるで少年のように
きらきらと輝いていた。
「思い出につきあってくれてありがとう」
真澄が席を外している間にプラネタリウムのおじさんと話をするマヤ。
少年時代の真澄はよくここに来ていた事。
何があったかは分からないが、ある時は全身あざだらけで歯を食いしばりながら
くやし涙を必死でこらえていたこともあった。
そして母親が亡くなった時も、ここへきて、隅で声を殺して泣いていた。
マヤは、想像もできない真澄の少年時代、そして星を愛する真澄の心の中を図りきれずにいた。
都会の空は、光も弱く、あれだけの星がこの空にあるとはとても思えない。
スモッグや地上の灯りで見えないだけ、本当は今も満天の星が輝いているのに。
夕食にまではまだ時間がある、ちょうど近くの神社で縁日がひらかれていることを思い出した真澄は、
マヤをそこに連れて行く。
いろんなものを買い与えられ、まるで子供のように祭りを満喫するマヤ。
迷子の男の子を見つけると、おもむろに肩車をした真澄が、お母さん探しを手伝う。
その様子に、やんちゃでガキ大将だった真澄の少年時代を想像するマヤ。
大都芸能の冷血漢、ときどきあなたが分からなくなる。
もしかしたら本当はとてもあたたかい人なんじゃないかって・・・・。
マヤが口にしていた吹き戻しをふいっと取ると、そのまま口に付けて吹き始めた真澄。
その動作一つひとつがマヤをどぎまぎさせる。
“いったいなぜ、私を誘ったんですか?速水さん・・・・”
まるでデートのような一日を過ごしたマヤと真澄、夕食にとやってきたレストランでは
二人の間に思い沈黙が流れていた。
真澄はこの時も自分が何をしようとしているのか、何故、それができずにいるのか
冷静になれずにいた。
おれはマヤに真実を伝えることで、拒絶されることを恐れている。
マヤは、真澄の本当の心が知りたいと思っていた。
自分がマヤを誘い出した理由を言おうとしたまさにその時、
そこへ、真澄宛ての電話が入る。
そしてその電話で、月影千草が療養していたアクターズスタジオから出て行ったことを知る。
行先は不明・・・・。
あわてて白百合荘に戻ったマヤと真澄、そこへさやかが千草が残したという置手紙をもって現れた。
そこには、自分は付き人源造と共に地方へ療養にいくこと、
大丈夫だから心配しないようにと、そしてマヤにどんなことがあってもくじけないようにと書かれていた。
千草は『ふたりの王女』出演後、体力が弱まって休養がが必要な状態だった。
千草の事は何でも逐次報告すると約束していたのに、そんなに体調を崩していたとは知らなかったマヤ、
また、自分に黙っていたのかと激しく真澄を責める。
きっと探し出してやる、という真澄に、その言葉を信じていいのかと震える声で問うマヤ。
「先生がわたしの母さんみたいなことになったらわたし、あなたを一生許さないから・・・!!」
その叫び声が、真澄の体を真っ二つに引き裂く。
そうだ、この子はいつになっても、自分を決して許しはしない。
自分はかつて、彼女にどれほどのことをしてきたのか。
真澄はマヤに今日は一日付き合ってくれてありがとうと告げると、何も言わずに去って行った。
「今日君を誘い出したのは・・・・ただ・・・」
マヤが大人になるのを待とうと思っていた。
いつかその時が来ると思っていた。
しかし、待っていることで何が変わる?これ以上どうなるというのか。
自分の犯した罪は決して消せるものではない。
彼女の中の自分への憎しみの火は決して消えることはない。
“真実がみえない・・・速水さん・・・”
マヤもまた、真澄の表情に今までとは違う何かを感じていた。
真澄は例の見合い話を受けることを義父に報告した。
おれは一生影でいるしかない・・・影でいるしか・・・!
**
鬼才・黒沼龍三は、演劇界ではよくも悪くも有名な人物だった。
演劇にかける情熱は誰よりも強く、独創的な舞台演出は高く評価される一方、
その一切の妥協を許さない演出方針に現場でのバトルも日常茶飯事。
どんなベテラン俳優でも、気に入らなければすぐに降板させる。
その無骨で容赦のないやりかたに、周囲との摩擦が絶えず5年間ものブランクを余儀なくされた。
そんな黒沼の久々の復帰作、それは
『忘れられた荒野』
狼に育てられた少女が主役の演劇である。
制作の大沢演劇事務所では、主役を演じる女優を巡って黒沼と事務所社長との間で
今日も終わりのない口論が続く。
興業的な成功のため、事務所のトップタレント美森ジュンを起用したい社長側と、
狼少女という難しい役をやるには、圧倒的な実力があるものでなければだめだと取り合わない黒沼。
一向に意見を曲げない黒沼は、ありとあらゆる演劇ビデオを取り寄せ、視聴室にこもって
自らのメガネにかなう女優を探し求めた。
狼少女に化けられる、どんな色にも自由に染まる女優・・・
反射神経が鋭く、打てば響くような勘の持ち主。
目に強い光を持つ少女。
そして黒沼は、つい先日まで演劇界の話題を独占していた『ふたりの王女』のVTRに出会う。
「これだ、この少女だ・・・・!俺が探し求めていたのは・・・!」
アテネ座でおこなわれた劇団つきかげ+一角獣の舞台も、超満員の大盛況のうちに
幕を下ろしていた。
観劇に訪れていたマヤ、するとそこに、一人の演出家がマヤに会いにやってきた。
黒沼龍三ーーーー
小柄なマヤは背丈もぴったり、役よりも実年齢は高いが見た目は十分。
なにより、この少女は化けられる。
美しく光りかがやく春の王女、アルディスとは全く反対の狼少女であろうと。
黒沼に渡された台本を読むマヤ、狼少女ジェーンのセリフ、体にどんどん入ってくる。
「わたし・・・・演りたい、この役を!」
マヤは狼少女ジェーンに「紅天女」への運命を賭けた。
ジェーン役を受けることを告げにきたマヤに、黒沼は早速狼の演技をするように指示する。
放り投げられた雑巾は餌となる肉。
マヤは黒沼の激しいしごきを受けながらも身軽な動きで狼になりきり、
餌である雑巾を咥えた。
千草の厳しい演技指導に慣れているマヤにとっては、こんな鬼のしごきも朝飯前のことだった。
次に実際の狼を記録した映像を見せる黒沼。
映像は古く、劣化したフィルムはほとんどその姿を映さない。
そんな中、マヤは響き渡る狼の哀しい遠吠えが耳に残って離れない。
本格的な稽古開始まで3ヶ月、黒沼はそれまで狼の演技を研究しておくこと、
次は狼の喜怒哀楽を演じてもらうことをマヤに告げた。
そこでマヤは、日常生活もすべて狼として生活してみようと、四つん這いになった。
ご飯を食べる時も、階段を下りる時も。
普段は食い入るように見ているテレビにも興味を示さず、ひたすらティッシュ箱で遊び続ける。
そんなマヤに協力するため、劇団つきかげ+一角獣の仲間たちも、狼になって
一緒に稽古を開始した。
ある日街を歩いていたマヤは、真澄がきれいな女性と一緒にいる姿を目撃する。
優しいまなざしでその女性を見つめる真澄は、今まで見たことのない表情をしていた。
同行していた水城にその女性が真澄の見合い相手だと聞いたマヤは
全身を貫かれたような衝撃を受ける。
あの速水さんが、見合い・・・、結婚するかも・・知れない。
何故だかわからないが、マヤの心の中は突然空洞になったような、そら寒い感覚に
支配された。
それはなぜだかわからないけれどーーーーー。
**
大沢演劇事務所公演『忘れられた荒野』顔合わせ、
狼少女ジェーン役:北島マヤ、そして
ジェーンを人間として教育することに情熱をかける青年学者スチュワート役に現れたのは、
桜小路優だった。
あの、気まずい別れから数年経つ。
次に会うときはいいライバルとして、その言葉通り、桜小路は相手役として
マヤの前に現れた。
どんな距離感で接したらいいのか戸惑うマヤだったが、前と変わらぬ優しい笑顔で
声をかけてくれた桜小路に、以前と変わらない優しさを感じ安心する。
しかしそんな桜小路とマヤの様子を、桜小路の彼女、麻生舞は
穏やかでない気持ちで見つめていた。
狼少女としての稽古がスタートしたある日、マヤは
真澄の見合い話の報道を目にする。
その記事を読んだマヤは、いいようのない心のざわめきを感じていた。
まさか、あの人が見合いだなんて・・・
あの人が本気で恋人をつくったり、結婚したりするはずがないと、
必死で思い込もうとするマヤ。
いつも自分をからかっていじめてばかりの真澄、そんな彼の交際報道が
何故こんなに気になって苛立たしいのか、マヤ自身分からなかったが、
居てもたってもいられず、マヤは大都芸能に電話をかける。
しかしいざ真澄の声を聞くと、
月影先生の行方についてきいたり、今度狼少女を演じることを報告して、
肝心の質問が出来ない。
「どうかお幸せにっ!!」
という謎の捨てセリフを吐いて電話を切ってしまった。
狼少女としての動きを必死でつかもうとするが、まだまだ自分が
本物の狼になれていないことはマヤ自身が一番よくわかっていた。
そこで黒沼はマヤを部屋に一人残し、マヤを捕まえに来た荒くれ者達と
対峙させた。
そして次に、マヤを見世物小屋で金儲けの道具として扱う主人、
マヤの心の中で人間への恐怖心が高まっていく。
そして次に部屋に入ってきたのは、スチュワート。
警戒心を見せて近づこうとしないマヤ。
最後にたくさんの人間がマヤを囲み、檻の中を物珍しそうに観察していると、
マヤの心の中の人間への恐怖心は振り切れ、体の震えと絞り出すような鳴き声が
止まらない。
マヤはジェーンとして扱われるうちに、その感情をつかんでしまった。
やはり黒沼の見込んだ通り、大した才能の持ち主だ。
**
演劇界の大立者が集まるパーティー。
黒沼龍三は、大沢社長と共にいやいやながら出席していた。
秋の芸術祭に参加を予定している大沢事務所としては、このパーティーで
少しでも審査員たちと親しくしておきたい所だが、
黒沼はそういった席は得意ではない。
そこへ、大都芸能の速水が現れると、場の雰囲気は一気に華やぐ。
話題はやはり真澄のの交際報道、しかしその話題をふられた真澄の顔は冴えない。
そんな真澄の耳に、狼少女という言葉が聞こえてきた。
そういえば、マヤがこの前電話で言っていた・・・。
黒沼に近づいた真澄は、少し話をしませんかと黒沼を外に連れ出した。
黒沼から稽古の様子を聞いた真澄、まだ始まったばかりだが、
北島マヤは、黒沼がやっとの思いで探し出した楽器、なかなかの名器だ。
ハードな事で有名なおれの稽古にけろりとしてついてくる、不思議な子だ。
そう語る黒沼に、よく知っていますと真澄は答えた。
初めて話したが、あんた思ったより悪い奴じゃないな、と軽口をたたくと、
黒沼は機嫌よくその場を後にした。
見合いをし、恋の噂が囁かれていてもなお、心の中の紫のバラが生き続けている真澄に、
水城はこのままでもいいのかと尋ねた。
君には関係ない、冷たく答える真澄に水城は
いつまでも信号は赤ではありませんわよ、と告げた。
真澄の見合い相手はとても優しく、気遣いのある美しい女性。
女性らしい趣味もたしなみ、クラシックや絵画にも造詣が深い。
特に植物を愛し、庭や温室で育てた花を真澄に贈ってくれる、思いやり深き女性。
優しく控えめながら芯はしっかりとしている、結婚相手として申し分のない、そんな人・・・。
**
マヤと桜小路、二人での稽古が続く。
徐々に距離感が近くなっていく演技を、毎日のように続ける二人。
最初こそぎこちなさが残っていたマヤと桜小路だったが、
ジェーンとスチュワートがそうであったように、
マヤと桜小路の間も少しずつ、かつてのような親しさを取り戻していった。
そんな二人の様子に、周囲の噂も広がる。
桜小路の恋人、舞は気が気ではなく、稽古終わりの桜小路を待つ。
周囲の好奇の目や、舞の不安な気持ちとは裏腹に、
マヤは自分あてに届いた紫のバラの人からの化粧ケースを
受け取ると、舞に気付いて桜小路の元に案内し、胸に紫のバラを抱えて
元気に稽古場を後にした。
紫のバラの人への感謝の思いいっぱいに。
そんなマヤを、思いつめた目で見つめる桜小路。
その目に宿る意味を察し、凍りつく舞。
豪華なメイクセットをもらったお礼にと、
マヤは聖を介して、自分のこれまでの舞台写真をまとめたアルバムを紫のバラの人に
渡そうと思いたった。
聖にアルバムを手渡した後、聖から何か大沢演劇事務所で変わった動きはないか?と聞かれる。
大沢事務所と言えば、マヤが出演する『忘れられた荒野』の制作会社だ。
特に思い当ることはないというマヤに挨拶をすると、聖は去って行った。
しかしマヤは、挟んでいた手紙が落ちているのに気づき、聖を追いかける。
聖はビルのエレベーターにのって上の階に上がって行ってしまった。
仕方なくエレベーターの前で待っていると、降りてきた箱の中から出てきたのはなんと真澄だった。
真澄はエレベーター内で聖から受け取ったマヤのアルバムをこっそり隠すと、
何でもないかのようにマヤに話しかける。
そして先ほどの聖と同じように、大沢事務所の事を尋ねてきた。
何故速水さんも、聖さんと同じことを・・・・。
不思議に思うマヤだったが、月影千草の事に話が移る。
真澄も四方を探しているがまだ身元ははっきりしないという。
残るはあとひとつ、もしかしたらと、
真澄は千草が、尾崎一蓮が昔過ごしたという「紅天女」の故郷にいるかもしれないと語った。
分かったら一番にマヤに知らせると言う真澄に対し、
マヤは例の見合い話の事を思い出し、気が気ではない。
冷血漢とつきあえるなんて、いったいどんな女性かしら、と悪態をつくマヤに、
「忍耐強くてとても優しい人だよ」と答える真澄。
その言葉に動揺したマヤはまたもや
「どうかお幸せに!!」
と叫んでその場を走り去る。
マヤの言葉の意味が分からない真澄だったが、もしやマヤが自分に嫉妬しているのでないかと
思い当り、驚愕する。
自宅に戻り、マヤにもらったアルバムを手に、マヤの事を思う真澄。
まさか、あの子が俺に嫉妬、そんな馬鹿な。
しかし真澄の耳には、依然水城から言われた言葉が今更のように響きわたる。
“いつまでも信号は赤ではありませんわよ”
速水真澄、母をころした敵、あんなやつ大っ嫌いなんだから!!
マヤは心に浮かぶ真澄への複雑な気持ちを振り払うかのように、
必死で恨みの気持ちを呼び起こそうとしていた。
そして何とか稽古に集中しようとするマヤ、
しかしジェーンを抱きしめるスチュワートのその力強さに、
マヤは桜小路の今までとは違う熱い思いを感じ取る・・・・。
第18巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
ここから先は紫織さん出てくるし、正直
紫織さんエスコートしてる真澄さん気持ち悪いからちょっと
薄めにまとめることになりそうです。
『忘れられた荒野』で狼少女をつかむマヤメインにしようかな。
でもマヤも、“女の人にあんな優しい顔する速水さん、初めて見た”
とかいってぶるぶるしますけど、あんたいっつも
“なんでこの人時々こんなにやさしい顔をするんだろう?”
って言ってたよね!と思う。
まさか自分を女として見ているなんて思ってないから仕方ないか・・・・。
あなたを見る目の方がよっぽど優しいですよ、と教えてあげたい。
今回のメモポイントは、やはり水城さんの
「いつまでも信号は赤ではありませんわよ」キリッ でしょ!
紫織さんだけでなく桜小路君もいろいろ出てくるし、
これからますますブルーやわ~~(笑)
「野良犬ジェーン!!」もあるし・・・・。
早く青いスカーフ事件までたどり着いて、マヤの気持ちをまとめたい!!
今は切なすぎるよ、真澄さん。
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