2018年1月28日(日)
モズが旧知の仲か何のように偉そうに書いたが、実は野鳥のことなどまるで知らない。たぶんモズではないかと思っていた鳥が正しくモズだと分かって、大いに嬉しかったのが正月の真相である。
今朝は海浜幕張のコンビニ前でツイツイと歩き回り、人を恐れる風のない小鳥に出会ってしばし考え、「セキレイというものではないか」と根拠なく結論した。これがまた正解らしく、なぜ他ならぬ「セキレイ」の名を思い浮かべたか、謎のままに驚き喜んでいる。黒にグレーにオフホワイト、シックなモノトーンに長い尾が洒落ている。
セキレイは日本神話の中で、ちょっとした大役を担っている。
「遂に合交(みあはせ)せむとす。しかもその術を知らず。時に鶺鴒(にはくなぶり)有りて、飛び来たりてその首尾(かしらを)を揺(うごか)す。二(ふたはしら)の神、見そなはして学(なら)ひて、即ち交(とつぎ)の道を得つ。」(日本書紀 巻第一、岩波文庫版 P.30-32による)
つまり、尾の振り方によって交合のしかたをイザナギ・イザナミに教授したというのだね。鶺鴒と当て字された「にはくなぶり」は、「には(=「俄か」の語幹)+くな(=お尻)+ぶり(=振り)」だそうで高速に尾を振り動かす鳥を意味し、セキレイのことと解されている。英語でセキレイを意味する wagtail も同じ語源という。国産みがすべての始まりなんだから、それを指導したセキレイは国の大恩人ということになる。
それにしてもおおらかなものだ。国産みから降って神武東征、めでたく即位した初代天皇は国土を見渡し、「あなにや、国を獲つること。内木綿(うつふゆ)の真迮き国と雖も、猶し蜻蛉(あきづ)の臀呫(となめ)の如くにあるかな」(上掲書 P.242)と賞嘆した。蜻蛉(あきづ)の臀呫(となめ)とはトンボが交合のためにつながった形で、秋津島という日本国の別名はこれに由来する。下の写真のような図と思われるが、日本の国土のどこをどう見てこれを連想したのだろう?
いずれにせよこの国の伝統の中で、繁栄は常に生殖のイメージの延長上にあった。その意味でも今は転機かも知れない。
(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1295320797 より拝借)
なお、僕の見たのは正確にはハクセキレイという種のようである。かつては北海道や東北地方など北国だけで観察されていたが、20世紀後半に入って繁殖地を関東・中部へ拡げ、現在は東日本でも普通種になっているとある。温暖化に伴って動物が北漸するなら分かるが、逆に南へ広がっているのは不思議である。これについては「本種が他種よりも都市や埋立地など人工的な環境に適応しており、例えば建築物へ塒(ねぐら)を取る個体数が他種より多いことなどから、都市的環境への適応能力の差によるものと考えられている」のだそうだ。(Wiki:ハクセキレイより)
海浜公園のこの群れも、その一例ということですか(写真ヘタクソ!)。記紀の時代のヤマト地域にどんなセキレイがどれほどいたのか、気になるところではある。
Ω