散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
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枝おろしサルトリウスに仔細あり

2016-05-02 09:59:05 | 日記

2016年4月29日(金)

 昨・今日は晴天に恵まれ、しかも気温が低めなので野良仕事には最高のコンディションである。せっせと草を刈り、ついでに昨年からずっと気になっていた庭の喬木の枝おろしをする。プロが見たら絶望の声を挙げそうな無茶な乱伐りだが、東京あたりで街路樹の始末を見ていると、とにかくいったん素っ裸に伐ってしまっている(ように見える)。その際、尖端に残したわずかな小枝が、数週間のうちに立派な樹冠に成長する。その年はそれを楽しみ、次の年にはまたすっかり伐って仕切り直しさせるのが心得のように見え、それを真似しているわけだ。

 

 ↑ ギンモクセイ

 

 ↑ 中央のヤマモモ

 

 ↑ これは名前が分からない

 庭が明るくなったと汗をふきふき戻ってきたら、T夫人からメールをいただいた。4月26日のブログを見てくださったとある。「サルトリウス」が「申酉臼」になっちゃった例の話である。『パラダイム・ロスト』の翻訳の仕上げに夢中で取り組んでいたのはちょうど一年前、それよりずっと前の準備段階の話だと思うが、

 「Norman Sartorius について、ウェブサイトの「ここを翻訳」を試してみたら、「ノルマンディーの縫工筋」という訳があらわれました。どこかの筋肉の名前でしょうか。これは超直訳それとも誤訳?」

 「ノルマンディーの縫工筋」 ~ こいつは傑作だ。なるのど Norman は「ノルマンディーの」の意味だし、Musuclus Sartorius は、なるほど「縫工筋」である。翻訳ソフトでなければ想到し得ない超直訳の迷訳というべきか。サルトリウス博士自身は、こういう言葉遊びを楽しんだことがあるだろうか?そういえば・・・

 縫工筋はちょっと面白い筋肉で、骨盤の前外側から大腿前面を斜めに横切って(って、変か、斜め切って?)膝の内側に入り込み、下腿の筋膜に接続する。分厚く逞しい大腿前面の筋群に、大きくタスキをかけたような走行である。解剖学の授業で教わって以来印象に残っているが、名前の由来を考えたことはなかった。縫工筋というからには、縫工(仕立屋?)に関する何かの経緯が隠れているんだろう。解剖学用語であることからも語尾の形からも、ラテン語と相場が決まっている。

 帰省中のことで手許に辞書などなく、ここはインターネットで「縫工筋 ラテン語 意味」と打ち込んでみたら、すぐにヒットした。

「縫工筋という名前は、ラテン語のsartoriusを訳したもので、「仕立屋」を意味するラテン語のsartorに由来します。あぐらをかいて仕事をする仕立て屋で、この筋肉が盛り上がって見えるので、この名前がつけられました。」

 hanamaru park さんに感謝(http://hanamaru-main.jugem.jp/?eid=957)、ついでに引用

「縫工筋は、筋繊維が平行に走っていて、あまり強い力を出すことができません。また股関節と膝関節の両方をまたいでいるので、少し複雑な働きをします。あぐらをかいたり、片足を膝の上に乗せたりして、足の裏を上に向けるような動きをするのに役立ちます。」

「縫工筋はまた、筋肉が長くて、筋線維が平行に走っているために、筋線維の長さが40~50cmもあって、筋線維がいちばん長い筋肉として有名です。1本の筋線維は、1つの筋細胞からできています。そのため縫工筋の筋細胞は、長さが40~50cmもある巨大な細胞です。背中には最長筋というのがありますが、これは筋肉全体の形は長いのですが、椎骨からつぎつぎと起こる筋が集まっているので、一つ一つの筋線維は短いのです。」

 ははあ、勉強になりました。右脚の縫工筋は僕にとってひとつの急所かも知れない。それにしても、hanamaru park の席亭さんはどこのどちらさま?解剖学の先生かとも思われるが、臨床についても書いておられる。最近の更新がないのが残念だ。きっと庭の手入れでお忙しいのに違いない。

Ω