散日拾遺

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悪妻の真実/山本山の海苔/単位認定試験事件

2015-10-21 07:41:51 | 日記

2015年10月20日(火)

 この秋は書かなければならない原稿がてんこ盛りにたまっている。いずれも書きたいものばかりだから、幸せはこの上もないが、思うように進まないのは非才の辛いところである。

 突然ですが、「悪妻」といえばクサンティッペ(ソクラテス)、コンスタンツェ(モーツァルト)、ソフィア(トルストイ)、もちろん話にされているだけで、実像がどうだったかは分からない。仮に事実彼女らが悪妻だったとして、それは夫らの驚くべき創造性とどういう関わりがあったのだろう?「にもかかわらず」なのか、「それゆえに」なのか。

 善意が善果を結ぶとは限らず、悪意の矢が思いがけない果報をもたらすことが珍しくない。さてさてどうなる?

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 ブログもほったらかしで朝から原稿いじっていたら、知人から贈り物が届いた。山本山の海苔!さっそくメールで御礼を書いたら(ぞんざいみたいだが、先方の挨拶状もメールだったから、これはこれで良いのだ)、「今でもお弁当だったら、合うかと思って」と嬉しい御配慮。

 御賢察通り、今でもお弁当である。これまでのところ、生涯にわたってほとんど切れ目なくお弁当をもたせてもらった。希有の幸せである。

 山本山の包装紙の裏面がしゃれていて、江戸の古地図に今の電車の線路や駅名を重ねている。膝を打つ思い、これが東京の正しい楽しみ方なのだ。う~ん、写真がちょっと苦しいな。何が何だか分からないよね。溜池山王あたりに実際に溜め池があったことも、よく見るとちゃんと分かるんだが。

 山本山の創業は元禄3年(1690年)とある。お見事!

   

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 午後になって卒研生からメールあり、毎日新聞に放送大学の単位認定試験の一件が大きく報道されているという。

 さっそくネットで見てみた。まあ予想通り、苦笑を禁じ得ないというところである。嘘(事実に積極的に反すること)は書いてないが、中立公平な報道を心がけているとは言えそうもない。多くの「事実」の中から、読み手が色めき立つであろうことを選択的に抜き出し、ある色合いのもとに配列している。嘘ではないから責任は問われない。まあ手練れ(てだれ)の技と拍手を送っておこう。

 書きたいこと、書けることはたくさんあるけれども、この件ばかりは「あとは沈黙」である。一教員の私的なコメントが暴走して、大学全体に迷惑をかけることがあってはいけない。「大学全体」という時に僕の念頭にあるのは、何よりもまず9万人の学生のことである。その多くは放送大学に所属することを誇りともし、名誉とも思っている。上記の卒研生も、ことが放送大学の名誉を損なうのではないかと心から案じて、急ぎ一報してきたのだ。愛知県在住の70代男性、精神障害者家族の立場から一念発起し、精神疾患の病名変更について見事な卒業研究を仕上げつつある。

 彼らのためにこそ、事態が適切・迅速に収拾されることを望みたい。そういう配慮を報道関係者にも少しは共有してもらいたいが、犬に吠えるなというようなもんだろうな。

 ついでながら某有名私大の名誉教授が、放送大学の姿勢に対して別のところで激烈な批判を述べている。これなどはまったくの事実誤認に基づいたもので、つくづく考えさせられる。これからしばらく、この件をめぐっていろいろ勉強できそうだ。人がいかに真実に関心をもたず、自分の言いたいことだけを言いつのるか、そうしたことの連鎖が雪だるま式にどれほどの愚行を生み出しうるか、そこから誰がどのような利益を得るか、そして「責任」という言葉がいかに空しいものであるか・・・気の重いことだ。

【記事】

<放送大学>政権批判の問題文削除 単位認定試験「不適切」

 今年7月に出された放送大学の単位認定試験問題を巡り、大学側が「現政権への批判が書かれていて不適切」として、試験後に学内サイトで問題を公開する際、該当部分を削除していたことが分かった。この部分は安全保障関連法案を念頭に置いたもので、当時は国会審議中だった。一般的に担当教員の裁量があるとされる単位認定試験に対し、今回の大学側の対応は論議を呼びそうだ。

(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151020-00000010-mai-soci)