ヒジュラ暦1426年シャッワル(10月)20日 ヤウム・ル・アルビアーィ(水曜日) |
昨日のブログで触れた『コーラン入門』を読み始めた。
興味深い部分は多々あるが、最初の方に出てくる、第30章:ビザンチン章の解釈については考えさせられた。
1.غُلِبَتِ الرُّومُ
2.فِىَ أَدْنَى الأَرْضِ وَ هُم مِّن بَعْدِ غَلَبِهِمْ سَيَغْلِبُونَ
1.グリバティ・ッルーム
2.フィーーー・アドゥナ・ル・アルディ・ワ・フム・ミン・バアディ・ガラビヒム・サヤグリブーナ
一般的な訳(今回は井筒版)だと、
1.ギリシア人は打ち負かされた。
2.この国の近くで。だが一度は負けても、またきっと勝つ。
ところが、ベルの解釈だと、
1.ローマは勝利した。
2.すぐ近くの土地で。だが勝利の後、彼らは敗北するであろう。
ということになる。
「ギリシア人(ローマ人)」とは、章名にもなっているビザンチン帝国(東ローマ帝国)のことだが、「ビザンチンが最終的に勝利して喜ぶ理由がムスリムには無い」というのがベルの主張。
確かに、629年のムータの戦いではムスリム軍はビザンチンに敗れているし、その後のイスラームとビザンチンの関係を見ても、1453年のオスマン帝国によるコンスタンティノープル陥落・ビザンチン帝国滅亡まで対立は続いていく。
しかし、
غُلِبَتِ (غُلِبَتْ) 〔グリバティ〕
だと、
غَلَبَ 〔ガラバ〕「打ち勝つ、征服する」
の受動態三人称女性単数形で「打ち負かされた」となり、一般的な訳の方がふさわしい。
『コーラン入門』には詳しい説明は書いていないが、ベルは、母音記号の打ち方自体に疑問を持っているのだろうか?
ベルの解釈なら、
غَلَبَتِ(غُلِبَتْ) 〔ガラバティ〕「打ち勝つ」
という、能動態三人称女性複数形になると思うんだけど。
クルアーンの成立過程の中で、母音の振り方が確立していったとしたら、どこかで本来の意味から変わった可能性はあるのかもしれない。
同様に第3節も、
سَيَغْلِبُونَ 〔サヤグリブーナ〕「勝つだろう」
という能動態直説法三人称男性複数形ではなく
سَيُغْلِبُونَ 〔サユグリブーナ〕「打ち負かされるだろう」
という受動態直説法三人称男性複数形になるのではないだろうか?
第2節では、ローマが国名だから女性単数形を使い、第3節では国民全体ということで、男性複数形を使っているのかな?
中途半端な知識であれこれ考えてみたけど、クルアーンを解釈する上で、文章の外形からいろいろ考えてみるというのも有効だし、なかなか面白いと思った。暗記の手助けにもなりそう。
それは信仰的な見方というより歴史的な見方かもしれないが、いろいろと頭を使った後で最後は信仰に戻ればOKなんじゃないかと勝手に納得している。
(アラビア文字、読み方、文法など間違えている部分があったら指摘してください。)