デヴィッド・フィンチャーやスパイク・ジョーンズなんかと比べても、
「好き!」と公言しづらいターセムことTarsem Singh。
しかし、『落下の王国』ではいよいよ彼の作家性が芸術的高みへ導かれ、
いよいよ彼らと同様、脱(単なる)ヴィジュアリスト宣言が聞かれた気がしたが・・・。
観る前から不安で仕方なかった本作。
ターセムとの蜜月も終焉か!?と不安で臨んだ観賞だったが・・・
許す!(笑)
ターセムはもうフィンチャーとかジョーンズとかみたいに、
哲学やら風刺やらを凝縮した高尚な物語の領域に踏み入れんで好い!
あんたはこのまま、あくまで魅せることだけ考えれば好い!
そしていつまでも石岡瑛子とコラボってくれ!
内容無視の様式美で突っ走れ!
そういう覚悟で観続ける!
以上!!
というわけで、開始数分で腹を括れてしまったら、
あとはもう「眼」だけで楽しみ、「眼」だけが喜ぶ絵巻の時間。
日頃は物語重視で、そうした核がスカスカだったりするとすぐに難癖つけるくせに、
何ら物語ってないとすら思える本作なのにワクワクしどおしな自分に戸惑う始末。
性格最悪で、頭悪くて、態度とかムカつきまくるのに、顔は好み・・・
みたいな心地よい(んかい!?)自己矛盾な恍惚感。
そうした「無条件降伏」とは恐ろしく、ツッコミどころがむしろ愛おしい。
ダサくなるほど、カッコいい。イタくなるほど、アガってしまう。
そんな感覚にはもってこいの、間違いだらけの邦題事件。
国語辞典ですら「イモータル」なのに、なにゆえ中学男子の下ネタレベル?
おまけにタイトルの「IMMORTALS」の中心は、そもそも「神々」のみではないのでは?
ラストのあの昇天も指すだろうが、自らの生の足跡が不滅であれと願う想いも指すだろう。
勿論、神々の存在と重ね合わせてもいるだろうが、それでも軸足は地上にあるんでない?
まぁ、そうは言っても確かに『イモータルズ』だと内容もイメージも想像し難いしね。
いっそのこと『聖闘士テセウス-正義の復讐-』とかでも好かったんじゃね?(冗談)
ターセムの映像は、とにかく「遠景」として捉えられた自然や物や人の配置や関係に、
ドギツイほどの「人工感」が充満してて、それが堪らぬ者ならば、全てを許して拝んでしまう。
今回のように、あまりにも安っぽくて丸わかりなCGだって、そうしたターセム・コーティングなら
観客側にも(人によって大いに異なるだろうが)幾分許容の準備も整うってものかもしれぬ。
ただ、デジタル上映だとCGの作り物感が強調されてしまうのが残念。これは今後の課題?
(映画館で観ると気にならない「それ」は、これまでフィルムの雰囲気に拠ってたんだね。)
神々の衣装(というか甲冑)がいちいち魅惑すぎ。もっと堪能したかった。
しかし、腹八分ゆえの満足かもしれず、コンパクトだけど定期的な挿入はジャストかも。
人間の方の衣裳はそこそこ「地に足の着いた」ものでありながら、微妙な凝りにしびれたり。
ハイペリオン(ミッキー・ローク・・・もうこんな役回り専門になってきてるよな)の甲冑も、
ダサかっこいいというより、かっこいいダサさで貫く感じがキャラ相応。
テセウス(ヘンリー・カヴィル)のスカート(?)の丈の長さ、絶妙!
巷じゃ巫女衣裳の評判こそ好いみたいだけれど、個人的には
『トリシュナ』想起でそれほど惹かれず。
意外なほど本作にノレてしまった自分を分析してみれば(?)、
我々世代特有の好物、「大映ドラマ」ノリと「戦隊シリーズ」なパフォーマンスゆえかもしれず。
それらもよくよく考えりゃ、物語なんてどうでも好かった歌舞伎な(?)出し物。
そのくせ、あんだけアドレナリン過剰分泌な通路での突撃場面には、
肝心な激突直前に怯んで後ずさりする奴がいたりもしてて。
気まぐれなこだわり仕事に、ニヤリな気分。
次回作『Mirror, Mirror』も来年3月アメリカ公開ということで、
神話の次は寓話でやりたい放題してくれそうだ。
◆本作の公開日は11年11月11日ということで、
予告なんかでは、神々が地上に降りてくるところの光跡で記せばよかったのに・・・
◆ミッキー・ロークとスティーヴン・ドーフが共演とは、
近年のヴェネチア金獅子受賞作の主演男優競演ですな。
◆これにて今年のフリーダ・ピント祭りも終了。
作品的には『猿の惑星:創世記』がダントツ素晴らしく、
フリーダ堪能度は(本作と)僅差で『トリシュナ』かな。
『ミラル』はエリック・ゴーティエによる映像楽しみに観に行ったのに、
まさかのユーロの裏切り(サイトにも告知なしでブルーレイ上映へ変更)に失望し、
内容の微妙さに更に落胆した夏の終わり・・・。
◆神様の紹介テロップって必要だったのだろうか?
アポロなんて死ぬ間際に出されても・・・
◆テセウスの息子のキャスティングは、なにゆえ手抜き?
ヘンリー・カヴィルとフリーダ・ピントの息子の突然変異ぶりにはちょっぴりがっかり。
凛々しく闘う姿を観客に嘱望させるような「端整さ」が欲しかったな・・・。
もしくは『グラディエーター』(例えが微妙に古い・・・)のラッセル・クロウの息子
(『ライフ・イズ・ビューティフル』の子役)みたいな、「いじらしさ」が欲しかった。