遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

DNAの構造解析法

2012-07-11 21:22:09 | BIONEWS
高速、安価なDNA解析に一歩=電流で短い塩基配列解読―大阪大(時事通信) - goo ニュース
まだまだこれからの技術ですが、全く新しい塩基配列決定法なので興味津々です。わたしゃ、化学修飾と部分的な分解法を組み合わせたMaxam-Gilbert法の時代からやってますからねー。今はDNA合成酵素とdideoxynucleotideを使ったSanger法を改変した方法が主流です。他にはパイロシークェンシング法なんてのもあります。これは光学的にDNA配列を読む方法。記事の方法はDNAの塩基を流れる電流の違いを利用ってことですから、全く電子物理学的。
昔々、DNA配列を決める方法を開発する熾烈な競争があって、多くの化学者は完全分解で決めちゃおうとしていたんだが、Gilbert博士の大学院生Allan Maxamは全くの畑違いの物理学から移って来たそうで、末端を放射線ラベルしたDNAをマイルドな条件で部分分解して分解産物の長さで配列を決めちゃう方法を考案した。んで、Gilbert博士ノーベル賞とっちゃったよ。素人の発想って大事なんですな。もちろんハーバード大学ですから、超高級素人です。素材が違う。w この方法は放射線ラベルがすごく低くなるし、DNAの調製はじめてから配列読めるようになるのに1週間くらいはかかるし、読めても200塩基対くらいで効率悪かったっす。爆発物のヒドラジン使うしねぇ(ロケットの液体燃料に使うやつっすよ)・・・放射線ラベルしたDNA溶液にヒドラジン混ぜる時は緊張するよん。
DNA配列の決定法って、化学→生物学→物理学ってな感じでぐるっと回って一周したような気がします。塩基を流れる電流の違いを利用なんて、普通の生物学者には思いつかないでござるよ。この方法ならメチル化シトシンや8-oxoguanineやチミン二量体まで決めれるようになるんじゃないかな。
てなわけで、昔はDNA配列の決定は放射性同位元素をバリバリ使ってやってました。メガベクレル単位でね。分子生物学者は皆そう。今は蛍光ラベルをレーザーで読む方式なんで、何の緊張感もないです。

あ、Maxamのエピソードはうろ覚えで自信ないです。責任は取りません。

「ヒ素利用細菌」発見を否定=リンで生存、地球外生命関係なし―欧米2チーム論文(時事通信) - goo ニュース
2010年12月3日のエントリーで紹介した記事ですが、間違いだったそうです。ごめん。信じ込んでたよ。恥ずかしい~。
細菌はヒ素濃度が高い環境でも生存できるだけで、DNAの構造構築にはリン酸を使っていて環境中の低濃度のリンを利用していたと考えられるそうです。酵母のリン酸取り込み酵素はヒ酸を間違って細胞内に入れてしまうんですが、この細菌GFAJ―1(←学名じゃないよね、これ・・・ラテン語になってないだろ)のリン酸取り込み系がどうなってるか興味あるなぁ。選択的に排出できるのかな?

本日のお酒:なし
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