遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

表現形質が顕在化しているから顕性

2017-09-06 23:59:31 | BIONEWS
雨がしとしと降って、秋雨らしかったです。
6日 広く秋雨 太平洋側で不安定
雨の県内、涼しく(北國新聞)
あす前線活発化 非常に激しい雨の恐れ (tenki.jp)
気温も適度に下がりましたが、明日はもっと涼しいみたいです。そろそろネクタイ復活させないと。
雨の方は、午前中本降りのようです。

ちょっとうちの科学者クラスタで話題になってます。
遺伝の「優性」「劣性」使うのやめます 学会が用語改訂(朝日新聞)
「優性」を「顕性」、「劣性」を「潜性」と言い換えるそうです。まあ、ずいぶん前に聞いたことあるんで、僕には驚きはないんですけど・・・普段遺伝学に触れない人には驚きなのかな。まあ、簡単には定着しないと思うよ。だって、今は伝統的な遺伝学を研究で使う機会がぐっと減ってますから。僕みたいな時代遅れのヘンタイ遺伝学者でもご無沙汰だ。今日ちょうど、Ran/GSP1に導入した変異が優性・・・いや・・・顕性かもと思って、酵母ちゃんを形質転換したところなんだけどな。結果が良ければ、その言葉使・・・つ、使い・・・たぶん使うとおも・・・います。
あと、「変異」を「多様性」に変更するそうな。これにはちょっと異論があって、こちらが人為的に入れたものは「変異」のままでいい。きちんと表現できていると思う。ただ、自然にあるバリエーションとしての遺伝的違いを「変異」とはいわずに「多様性」というのは有り・・・というよりこっちの方が適切でしょう。例えば、お酒の強い弱いはADH(アルコール脱水素酵素)の配列の違いが反映されていますが、どちらが変異というわけではないでしょう。たぶん強い方を正常だと思いたいというのが人情でしょうが、実はヒトを含む類人猿は基本的に弱いADHを持っていて、4倍に活性が上がるラッキーなDNA配列の変化がヒトのみに起こったそうです。人類学者によっては、これがヒトを他の類人猿と分つ原因となったいう人もおるらしい(ハッキリとは知らんよ)・・・・つまり、これによって食料を貯蔵したら美味くなるってことをヒトは覚えてしまった。これが文明の始まり?!(ちょっと暴走気味に適当に書いたのですぐに忘れてくらさイ)

そもそも正当なる野生型配列があるというのは幻想だし、それと違えば「変異」だというのは妄想なのです。

正直言って、遺伝学の用語が日本語でどう変わろうと気になりません。論文は英語で書かれるものだからです。日本語の専門用語は学生か一般向けですから、そういう層の人たちに受け入れやすいかどうかだけが問題でしょう。それより、化学の世界で「アルデヒド基」を「ホルミル基」と呼ぼうっていう方が僕には気がかりです。これは生化学の講義でめんどくさくなる。

ところでこの記事で驚いたのは、学会長の小林武彦東京大教授という一節。
知ってる人やった。Q大関口睦夫先生門下の流れでして、わたしゃその隅っこで4年ほど修行したんで知り合いです。遺伝学会長になってはるとは・・・ほんで、所属を調べてみると、東大分生研。

分生研といえば・・・
米サイエンス誌、東大が不正認定の論文1本撤回
渦中の人渡辺嘉典先生は、はい、存じ上げております。昔、3Rシンポジウムでポスター出した時に厳しいコメントをいただきました。

分生研というのは「分子細胞生物学研究所」の略でして、昔は応微研「応用微生物学研究所」でした。戦争で絶えてしまった沖縄の黒麹菌Aspergillus awamoriが奇跡的にストックされていたという、九州の酒飲みには足を向けて眠れない研究所なのです。w 応微研のままにしとけばよかったんに。日本人は簡単に看板を変えすぎると思う。

本日のお酒:KIRIN 秋味 + 立山 特別本醸造
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