遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

シェックマン博士のセック・ミュータント

2013-10-07 23:44:51 | BIONEWS
3 Win Joint Nobel Prize in Medicine (THE NEW YORK TIMES)
Nobel Medicine Prize Winners Announced (TIME)
米ロスマン氏らにノーベル賞=細胞内輸送の仕組み解明、医学生理学(時事通信) - goo ニュース
小胞輸送が受賞しました。自食作用(autophagy)発見の大隅先生の受賞を期待してたんですけど、小泡輸送が先に受賞しないと順番的によくないですよね・・・。
Rothman博士やSchekman博士の仕事は若いとき勉強しましたよ。細胞内の輸送となると彼らの論文を読まないとしょうがないんですな。Schekman博士は特にバリバリの酵母遺伝学者だから『神』のように思ってました。分泌は英語で"secretion"ですから、採られた分泌不能変異は"sec"と名付けられました。
sec1とsec2は地道に分泌酵素インベルターゼと酸性ホスファターゼが細胞外に出てこない条件致死変異として採ったんですが、2回目からはもう一工夫しました。細胞内の輸送が滞ると細胞内にタンパク質等が溜まって、細胞が大きく重くなるんじゃないかという予想を立てて、変異処理した細胞を密度勾配かけて沈降の違いで分けたのです。それから条件致死でインベルターゼと酸性ホスファターゼが細胞表面に出てこないのを選んだ。突然変異のスクリーニングでは、第1スクリーニングがポイントです。そこでざっくり効率よく候補を絞り込めると第2、第3のスクリーニングが精密にできます。これで新しいsec変異細胞を20匹以上採りました。こんだけ採れば、しばらくメシが食えます。他の研究者は簡単に追随できません。スクリーニングのアイデアと細胞をみる確かな目で勝負できた古き良き時代のお仕事やね。院生時代、どうやったら面白くて重要な遺伝子の突然変異が採れるか、同僚とアイデア出して話したもんです。

文中、2つの分泌酵素が登場します。これくらい知ってるだろうと思ってたら全く知られてないので、補足しておきましょう。インベルターゼという酵素は酵母が蔗糖(スクロース)を代謝する時に必要な酵素で、蔗糖を果糖(フルクトース)とブドウ糖(グルコース)に加水分解します。この酵素で糖を「転化」させると同量の砂糖(スクロース)よりも甘くなります(転化糖ってやつね)。酸性ホスファターゼは培地中の有機リン酸からリン酸を切り出す酵素です。誘導条件で非常に活性が高く検出が容易です。

本日のお酒:KIRIN 一番搾り STOUT
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あつあつゆれゆれ | トップ | 今年はダントツ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

BIONEWS」カテゴリの最新記事