忘備録の泉

思いついたら吉日。O/PすることでI/Pできる。

幸福論(14)

2017-12-07 14:55:57 | Library
次は「疲れ」である。

④「疲れ」
疲れが不幸の原因になるであろうことは容易に推測できる。
ラッセルは特に神経の疲れを重視した。
身体の疲れは休めば回復するし、適度な運動による疲れはむしろ心地よさを感ずる。
しかし心配からくる疲れは、人を不幸にする元凶である。
何も打つべき手がないのにあれこれ考え思い悩むことがある。
心配事をベッドまで持ち込み、夜も眠れずにそのことを考え続ける。
その結果、翌日もその疲れを引きずり、判断力が鈍り、イライラして不機嫌になる。
ラッセルはその疲れはお金持ちに多く、思考をコントロールする能力に欠けているからだと指摘する。

「解決策」
疲れという不幸の原因に対しては、悩みを宇宙規模で考えるという解決策をラッセルは提示している。
宇宙の大きさに比べれば大したことはないのでは、と物事を相対的に考えるのである。
これもまた思考をコントロールする方法のひとつだ。
心配からくる疲れが不幸の原因であることは述べたが、それはきちんとした精神を養うことで解決できる。
そのためにはまず、考えるべきことと、そうでないことを選別する必要がある。
考えることを考え、ひとたび決断を下したら、新しい事実が出てきた場合を除き、その決断を修正してはいけない。
優柔不断が心身を疲れさせるからだ。
また悩みの原因がいかにつまらないかを悟れば、心配事を減らすことができる。
そこで持ち出されるのが宇宙だ。
宇宙の大きさに比べれば、たいていの悩みは小さく思える。

(つづく)

幸福論(13)

2017-12-05 15:48:08 | Library
不幸になる原因の3つ目は、「退屈と興奮」であった。

③「退屈と興奮」
人間は現在の状況と想像上のもっと快適な状況とを対比することで、退屈を感じてしまう生き物だ。
だから退屈を感じた人は、刺激ある興奮を求める。
しかし興奮を求めすぎるときりがない。
どこまでいっても満足できず、幸せになれない。

「解決策」
退屈だから人は興奮を求める。
しかしラッセルは言う。
「退屈に耐える力をある程度持っていることは、幸福な生活にとって不可欠であり、若い人たちに教えるべき事柄のひとつである」と。
私たちは偉大な人の人生は華々しいものだと思いがちだが、人生は決してそれだけではない。
基本的にはほとんど退屈な時間だから、その部分に耐えられないと幸せにはなれない。
ラッセルはここで「退屈に耐える」と言っているが、我慢して耐えるというよりも、「退屈を楽しむ」「退屈を味わう」というポジティブな心持ちを持てということだ。
刺激がない生活を「退屈」だと否定的にとらえてしまうのは、おそらく私たちが退屈に対して先入観を持っているからだろう。
ちょっと思考を変えて、退屈に対する観念を転換すれば、退屈というものが幸福につながってくるであろう。

(つづく)

幸福論(12)

2017-12-04 10:14:31 | Library
②「競争」
資本主義経済の根本にあるのは競争原理だ。
だから皆、競争して勝つことが成功だと思っている。
それはある一点までは正しいが、行き過ぎた競争は不幸を招く。
それが現代の日本社会に色濃く表れている。
なにごともバランスが大事である。

成功は幸福のひとつの要素でしかない。
競争して勝つことだけを考えて、他のすべての要素を犠牲にしてしまったら、決して幸福にはなれない。

いい会社に入るためにいい大学に進学する。
猛烈に勉強していい大学からいい会社に入れたとする。
しかしいい人間関係をつくれずに悩む人も多い。

仕事仕事で、健康や家庭を顧みずに崩壊した人も多い。
過ぎたる競争は不幸を招く。

「解決策」
競争に勝つことが成功だと思い、他のことを犠牲にするのが不幸の原因だった。
競争のために仕事中毒になっている人は、墓場だけがゴールのレースをしているようなものだ。
ラッセルは次のように人生のバランスをとることを勧める。
「人生の主要目的として競争をかかげるのは、あまりにも冷酷で、あまりにも執拗で、あまりにも肩ひじはった生き様だ。
競争は絶えず加速されるに決まっているので、その当然の結末は、薬物に頼り、健康を害することになるだろう。
これに対する治療法は、バランスのとれた人生の理想の中に、健全で、静かな楽しみの果たす役割を認めることにある。」

こうしたバランスをとるためには、思考のコントロールが不可欠だ。
競争に明け暮れるだけの人生が、どんな結果をもたらすのかよく考える必要がある。

(つづく)