◆「ザリガニの鳴くところ」デューリア・オーエンズ
映画は、絵的にとても美しく癒しもあり、雰囲気はとても良かったのですが、
ミステリーなのか、恋愛ものなのか、社会問題を訴えているのか、要するに映画の焦点がぼやけているような感じがあってモヤモヤしたので、
原作を読んでみました。
読んでみると、原作は純粋に「ミステリー」だなと。
殺人事件を核に、作者の持論が展開されているもの、だと思いました。
作者の持論とは、人も自然の一部だ、ということ。
カマキリが交尾の済んだオスを食べてしまうことを、誰も罪だとは言わないでしょ、という。
理屈としてはわかるんだけど、共感はできませんでした。
罪悪感、というものを持つからこその人間、なのではないかと。
それこそが「ヒト」という種の特性なのではないかと。
でも、読んでみれば疑いもなくミステリーであるこの作品を、あそこまで詩的な映画に仕上げた監督の感性は素晴らしいと思いました。
◆「無人島のふたりー120日以上生きなくちゃ日記」山本文緒
昨年10月に亡くなられた作家山本文緒さんの日記。
突然、膵臓がんステージ4bを宣告され、抗がん剤治療を断念してから亡くなる直前までの日記です。
歳が近くて勝手に親近感を持っていた山本さんの突然の逝去は少なからずショックでした。
そして、そういう方が残された、余命宣告を受けた後の心理、というのを知りたいと思いました。
そのため、自分だったら・・・という思いを常に持ちながら読みました。
淡々とした文章から、辛くて悲しくて寂しい気持ちがにじみ出ているように感じました。
でもそういった気持ちを持ちながらも日々、やりたいこと、出来ることを探して実行し、興味のある本を購入して読み、そうした日常を
きちんと送っていること、そして、そのような日々の中で、常に人への感謝を忘れずに表現していることに、感服しました。
身近で献身的に動いてくれる夫さんがいらしたことが、どんなにか慰めに、そして最後の生きる力になったことだろうかと思いました。
まだまだ書きたいことがたくさんあったであろう作家人生が途中で絶たれたことに、心残りがなかったはずはないのですが、
未練がましいことは表に出さず、こうなったら人生をきっちりしっかり締めくくろう、という意志-気概と言っても過言では
ないのではないかと思えるーが伝わってくる日記でした。
還暦を過ぎて、仕事からもリタイアした今、自分のステージは「余命」の段階に入っていると感じることがあります。
具体的な終わりは見えていなくても、この先に必ずある終点を意識してそこまできちんと生きていけるように心がけて
いかねば、と心に刻んだ本でした。
◆「家 ごはんと野球」亜希
亜希さんとは、元プロ野球選手の清原和博氏の奥様だった亜希さん。
離婚した2014年から8年間のインスタ投稿を中心に、ところどころにコラムが挟まれて構成されてます。
この方もまた、強い女性。
でも、強く見せることで自分を鼓舞して生きて来られたんだろうな、と思います。
その原動力となったのは、まぎれもなく「母」という立場でしょう。
ここに見えてない部分がたくさんあって、そちらの方が本来の亜希さんで、
私のような一読者が、その部分を支えるほんの僅かな力になれてたらいいな、と思いました。
清原氏とはいろいろあったことでしょうが、いま亜希さんは清原氏の個人事務所の代表を務め、清原氏を含めて「うちの家族」と
表現される。
ここまで来られるまでの道のりの険しさを、離婚-復縁、を経験した私は少しわかってあげられる気がする。
野球選手の清原氏を私はずっとずっと応援してきています。
それは、彼の弱さや純粋さが見えるから。
だから、縁あって一度は夫婦になった二人が、今形を変えてまた繋がっていることが嬉しいです。
亜希さんにも、感謝の気持ちが大きいのです。
さて、今年はこれで読書納めかな・・・もう1冊ぐらい読めるかな・・・
来年に持ち越しの積読本はまだまだたくさんあるのでした
コメントいただいていたのに気づいていませんでした、すみません
そうそう、亜希さんの本はそのインスタ投稿が中心です。
まとめて読んでみると、あの事件後、こうやって自分を鼓舞しながら頑張って来られたんだなと、当時の彼女の孤独が伝わってくる気がしました。