ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

カシミアのブレザー&キャバリーツイルのコート

2010-03-20 04:00:00 | 白井さん




 今回はいきなり前回訂正から(笑)。但し、ご指摘をしてくださるのは白井さんではなく、なんとお客様!信濃屋さんの長年の顧客のお一人で兵庫県宝塚市在住のO様からお電話で(信濃屋の牧島さん経由)、前回ご紹介した、私がネットオークションで落札した信濃屋オリジナル・チャーチのコンビネーションの作製時期(80年代)は第1回目ではなく2回目です、とのご指摘をいただいたとのこと。決め手はラストの違いで、1回目は#73(白井さんのお話では“チェットウィンド”“ディプロマット”などに使っていたラストとのこと)、2回目が#84だったとのことで、なんとO様はこの両方のコンビネーションを所有(もちろん箱付き)されてるので間違いありません(笑)。

 信濃屋顧客列伝中のお一人O様はチャーチに限らず、『Oさんは持って無いモノはないんじゃない(笑)』と、白井さんも思わず笑ってしまわれるほど実に数多くの名品をお持ちで、それ以上に、白井さんが『メディアに一切惑わされること無く、御自身の感性に従って良いと思ったものは迷わずお買いになるその“買い方”が素晴らしい方』と常日頃から賞賛される方。この日のお電話では白井さんと更なる服飾談義に花を咲かせていらっしゃったそうですが、このブログをご愛読してくださっているO様から『もっと古の名品逸品の小物の類を取り上げて!』とのリクエストがあったそうです(笑)。もしかしたらいっそのこと私がO様を訪ねて、O様が所有されている名品の数々について伺った方が良いのかもしれません(O様申し訳ありません。冗談です笑。いつもご愛読ありがとうございます。この場をお借りしてお礼申し上げます。)。

 この日はまだ風邪気味の白井さんでしたが、『そうだな~もっと色々話さないとね・・・よし!じゃあ今日はボタンの話だな。』と張り切っておられました(笑)。という訳ですので、今日はこのままスタートです!

  

 カッコいいですね~!私見ですが“ブレザーといえば白井さん”“白井さんといえばブレザー”というくらいよくお似合いだなぁ~と思います。私は、信濃屋さんのHP(『信濃屋オリジナルブレザー』)で白井さんがブレザーのいろんな着こなしをご披露されているのを、それこそ画像のブレザーが擦り切れるんじゃないかっていうくらいしょっちゅう観ていたので、パブロフの犬なみに“白井さん=ブレザー”というふうに刷り込まれているのかもしれません(汗)。また、いつもお馴染み銀座天神山のIさんもブレザーがお好きでかなりの頻度で着用されていて、そしてまたよくお似合いです。Iさんの説では“好きな服とそれを着る人の関係”には『好き→よく着る→着こなす→よく似合う→更に好きになる』という好循環があるそうです。『白井さんもブレザーは好きで年間を通して10着は持っているよ。』とIさんは御自身のブログ上でも過去に2回(“今日の着こなし”『春のフランネル』『サマーカシミアのブレザー』)、白井さんのブレザーの着こなしをご紹介されています。斯く云う私も“白井流”の影響で当然ブレザー大好き人間となっており、現在は3着も(10着中なのに・汗)所有しています!

 この日確認したところ、白井さんご自身は『夏物で“柄”ってあんまり持ってないんだよね。だからこれからの季節は自然とブレザーばっかりになるんだよ。』と仰っていました。ということは、これからは白井さんのブレザーの着こなしを数多く拝見できるということ。私としては俄然胸が躍ります。暖かくなるにつれ身につけるアイテム数が減り、その分着こなし術の差が如実に顕れてくるこれからの季節、“永遠の定番中の定番”“紳士の必需品”“着こなしの基本アイテム”であるブレザーの着こなしは“白井流”を志す私としては絶対に押えなければいけない“必須科目”です。因みに今日のブレザーは20年程前のルチアーノ・バルベラ(伊)のカシミア。白井さんも絶賛の打ち込みのしっかりとした分厚いカシミア生地を使用した逸品です。

 濃いめのブルーのストライプシャツ、紺とイエローゴールド、2色使いの幅広めのレジメンタルストライプのレップタイ、それに近い色のポケット・カチーフ。紐靴ではない靴は初登場ですね、スウェードのモンクストラップ・シューズもルチアーノ・バルベラ。白井さん曰く『昔はうちでもやってたんだよ。』とのこと。

       

 写真のボタンはThe London Budge & Button Companyのシルバー925。

 白井さん、『純銀のボタン付けたブレザー着ている人なんて滅多にいないもの。服なんてどうでも良くて、こういう小物使いで違いが出てくるんだよ。昔はそういう本当のお洒落ができる人がいっぱいいたなぁ。純銀のプレーンなボタンにモノグラム(2ないし3、稀にそれ以上の文字や書記素を、単に並べただではなく、組み合わせた記号。個人や団体の頭文字で作られ、ロゴタイプとして使われることが多い。ニューヨーク・ヤンキースや読売ジャイアンツなどの野球帽に付いてるマークがその一例)を彫らせてたお洒落なお客様がいたりしたものだよ。そうそう、昔、元町に“刀彫り(とうぼり)”の細工職人がいてね。その技術を持っている職人は日本で、横浜、長崎、神戸に一人ずつの計3人しかいなかったんだよ。元々は代々山手の外国人相手に商ってたと思うんだけど、小さな鋼の刀を使って銀食器やなんか模様を彫るから手が硬くなっちゃっててさ。うちでも何度かお願いしたことがあって時間は掛かるんだけどそれはそれは見事な腕前でね、彫りの角がキッと起っていて・・・昔の元町は色んな職人がいて色んな店があって面白い街だったよね。』

 私、   『なるほど、でも白井さん、どうして小物が大事なのですか?』
 
 白井さん、『小物が大事というのもそうだけど“どういう組み合わせにしているか”ということが凄く大事。本当にお洒落な人は擦り切れたコートを着ていようが国産のヨレヨレのコットンスーツを着ていようが、長年の経験で磨きをかけた着こなしでそれなりにさまになるものなんだよ。なんと云うかそういう人はもうそういう風に人間ができちゃっているんだよね。基礎がしっかりしている。』

 私、   『では白井さん、基礎をしっかりさせるためにはどうすれば良いのですか?』

 ここで少し話が逸れますが、このブログのカテゴリー“白井さん”は白井さんの着こなしに兎に角多く接したいという私の個人的な希望から始めましたが、今は少し使命感のようなものも伴い始めました。それは、私のような服飾経験が浅い人や、私よりももっともっと若い人にこのブログを読んで欲しいというものです。もちろん服飾関係の方や、名うての洒落者の方々、服飾愛好家の皆さんに読んでいただいていることも嬉しいことではあるのですが、そういう方でしたら写真を見れば一発で白井さんの着こなし術の巧みさは伝わると思います。もちろん白井さんが常日頃仰っているように、やれ何処そこのメーカーだとかなんだとかといった、そんなことはどうでもいいような文字情報中心のカタログのようなブログにするつもりは更々ありません。私のような素人のブログなればこそ、むしろその目線を活かして文章を書きたいと思っています。

 以前、作家の故司馬遼太郎氏のエッセーで読んだ事があるのですが、氏は小説執筆にあたり未知の知識を勉強する必要があるときは、まずその分野で小中学生用に出版されているごくごく初級レベルの本を読むところから始めるそうです。何故そうするかというと、そういう本ほどその分野の当代髄一の学者さんが知恵を絞って誰にでも解るように書かれてあるので内容に間違いが無く、入門編としてこれほど確実な方法は他に無いからなのだそうです。私如きが歴史小説の巨人・司馬遼太郎氏を引き合いに出すなど驚天動地の厚顔ぶりですが、このブログもまた当代随一の洒落物である白井さんに登場していただいているのですから、私も“司馬流”を見習って出来るだけ多くの人の、それも願わくばより若い方の役に立てるようこのブログの作製に臨みたいと思っています。

 今回は私のそんな思いを白井さんにお伝えした上で、白井さんのお話の中で度々登場する“基礎の大切さ”をどう学べば良いのか?という上記の質問をぶつけてみたところ、

 『セパレートを着ることだね。これは晴生(この方も当代きっての洒落者といって間違いないと思います、白井さんも認める着こなしの達人・シップスの鈴木晴生さんのことです)も同じこと言ってたよ。』

 と、白井さんは即答されました。

 『スーツはネクタイさえ間違えなければそれなりに見えるものだけど、セパレート、今で言うジャケット&パンツは組み合わせの良い練習になるよね。組み合わせの変化を学ぶためには服ばっかりとか、靴ばっかりとか、何か一つにばかり凝ってそればかり揃えるんじゃなくて、色んな小物も含めて万遍無く投資することが大切。そうして徐々に揃えていって毎日組み合わせを変化させる練習を繰り返せば、まあ生まれ持った感性の差はある程度は仕方ないけれども、着こなしの基礎が自然と養われていくものだよ。』

  

 

 コート無しで帽子姿を撮影することは白井流では“ご法度”なのですが、余りに後姿の景色が良かったので一枚掲載させていただきました。今日もお帰りは『この時期は専らコレ』と仰るキャバリーツイルのコート。帽子は分厚いフェルトが今では希少な40年以上前の白井さん特注ボルサリーノ(伊)。

 本当はこの日はもっともっとご紹介したいお話、少年時代の白井さんのお洒落心に影響を与えた叔母様やシアーズ・ローバックのカタログのお話、ボブ・ホープや“バッテン棒”や『底抜け落下傘部隊』について、ラジオ番組“グランド・オール・オープリー”、ハンク・ウィリアムス、ジョニー・キャッシュ、ジュン・カーター、エルビス・プレスリー、映画『ウォーク・ザ・ライン』、カントリー&ウェスタンやロックンロール草創期の巨星たちについてのお話、などなどたくさんのお話を白井さんから伺いました。そういう服飾とは関係ないお話も、白井さんの着こなしを語る上では実はすごく大切で是非是非ご紹介したいのですが、残念ながら今日は私に許された時間に限りがあるので、それらについてはまたの機会に必ず書きたいと思います。今日はその中から、白井さんが最も好きなミュージシャンの一人“ハンク・ウィリアムス”の動画をリンクさせておきます。

 『当時のアメリカのカントリーミュージシャンは本当にカッコ良くて憧れの存在。現代のカントリーミュージシャンは全然ダメだけどね。』

 これを観れば、一昨年のクリスマスパーティーでの白井さんの着こなしが極めてクラシックな装いだったことが頷けるはずです。