“荒れる春場所”とは大相撲の世界での慣用句。番付下位の力士が上位の力士を破る所謂“番狂わせ”が多いのが、この3月に行われる大阪場所の傾向なんだそうですが、その原因の一つが、三寒四温、花粉症といったこの時期特有の自然現象群による体調不良。春は如何な屈強な力士達でも自己管理が難しい、故に“荒れる春場所”となるのだとか。今期からロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイムに移籍した松井秀喜選手も確か花粉症で、例年この時期はあまり調子が良くなかったような記憶があります。因みに私も花粉症持ちですが、昨年から職場の先輩に教えていただいた“フルナーゼ”という点鼻薬を愛用しているお陰でかなりストレスが軽減されています。まだご存じない方はお近くの耳鼻科で処方されてみてはいかがでしょうか。お薦めです(笑)。
服飾好きの我らが“大横綱にして不動の4番バッター”白井さんも、先日の出張で体調を崩されたそうで、この日は風邪気味。『2件くらい寒い所があってね・・・ゴホッゴホッ』と、この撮影中もみるみるうちに声が変わっていってしまいお辛そうでした。こうして改めて写真を見てもいつもよりお顔の色が優れません。白井さんは一旦お風邪を召されると長引くことが多いそうなので心配です。次回の“白井さんチェック”の負担が増えないように今回は努めてテンポ良く手短に参りたいと思います。
まずは前回の訂正ですが、Solt&Pepperはスペル間違いでSalt。それから前回お召しのスーツについて白井さんから『あれは“ツイード調の”軽い生地でダニガルツイードじゃないよ。本物のダニガルはもっと分厚くてゴリゴリしてるからね。』とご指摘をいただきました。我ながらとんでもない間違いをしたものだと今回も反省しきりです。この場をお借りして訂正とお詫びにかえさせていただきます。
またこの日の信濃屋馬車道店では“マエストロ”こと赤峰幸生氏が主宰されている『AKAMINE ROYAL COLLECTION』のオーダー会が催されていました。赤峰さん、撮影にご協力いただきありがとうございました。翌日、早速スカモルツァとパルミジャーノ・リゾットを美味しくいただきました(←これは赤峰さんと私の秘密の会話です笑)。
下の写真は真面目にお仕事中の白井さんを隠し撮りした写真と、隠し撮りに気づいて驚くふり(怒ってません)をしておどける白井さんです。
久しぶりの登場となったグレンチェックのスーツは白黒に赤いペインが入ったカルロ・バルベラ(伊)の生地を使用した信濃屋オリジナル(天神山)製。2本の赤いピンストライプが入ったシャツはFRAY(伊)。赤とシャンパンゴールドの細かいチェック柄ネクタイはルチアーノ・バルベラ(伊)で、かなり古いものらしく“お気に入りの一本”という感じでしたが、いかんせん体調不良のため白井さんの主張もやや弱め(汗)。
ですが、この日一番のお顔をされたのはこの靴について触れられた時でした。『だいぶ古くなって革も切れてきちゃったけど、何しろ形が大好き!』(白井さん談)とこれまででも最上級のお気に入りっぷりの靴は、漸くにして初登場!ジョンストン&マーフィー(米)の黒いキャップトウです。6アイレッツ、小さめのトウキャップ、角度のあるベベルトウェスト、白井流靴哲学の源流を成すと云えそうな非常にクラシックなアメリカ靴については、私もいつもお馴染み銀座・天神山のIさんからよく聞かせていただいていました。そんな伝説の銘靴をこの度やっと拝見できたことには私も感慨深く、また、よく見ると靴の表情が何だかちょっと不思議と白井さんに似ているような気がしてくるから不思議です(笑)。
今日はお早めに帰宅なさって下さい! この時期一番活躍するやや軽めのコート、キャバリーツイルのラグランコート(ビエラ・コレッツォー二伊)です。襟の形、ゆったりした身頃とがっしり太めの袖幅は白井さんも殊にお気に入りのご様子です。こういうカジュアルな表情のコートは肩にゆとりがあって全体もゆったりとしたシルエットの方が良いですね。先日、私もお気に入りの天神山製のポッサムのポロコートを、購入から2年目にして初めてニットの上から直接着てみたところ、ジャケットの上から着たときよりも肩線がナチュラルになって柔らかい表情を見せてくれたのは新たな発見でした。
今日の合わせは、フランコ・バッシ(伊)の赤白ストライプ柄のシルクマフラー、毛足の長いライトグレーのファーラビットはボルサリーノ(伊)、ラバリーニ(伊)のステッキ。ストライプのマフラーもこれくらいの細い縞だと上品な感じになるんですね。白井さん曰く『小物は凄く大切。なるべく色んな種類のものを多く揃えて組み合わせの妙を味わうのが着こなしの醍醐味。』なのだそうです。
風邪気味でも普段と全く変らない白井さんの素晴らしい着こなしには驚嘆を禁じえませんでした。また律儀な白井さんは赤峰さんを最後まできちっと見送られ、その際『帽子被らないの?』と“マエストロ”と呼ばれる赤峰さんにも私や他のお客様に仰るのと変らない調子で“ご提案”されていたのが可笑しかったです(笑)。今日は手短になりましたが、白井さんが早く全癒されることを心から願います。
余談・・・先日アップしたチャーチのコンビネーションを早速白井さんにも見ていただいたところ、80年代に都合2回作製したコンビネーションの一回目だろうということでした。今から約30年前にご自身が製作に携われた靴がほぼ完璧なコンディションで、廻りまわって私の足元に収まっている不思議さには白井さんもちょっぴり驚かれていました。『普段の心がけかね(笑)。』と思いがけずお褒めの言葉も頂き、私も喜び一入でした。元来、ネットオークションには余り関心をお持ちでは無い白井さんですが、『良いものならいいんだよ。』とこの靴にはお墨付きを頂けました。これで晴れてこの靴が私にとっては正真正銘掛け値なしの“宝もの”となり感慨無量です。