ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

ダイヤゴナルのカシミアジャケット&キャバリーツイルのコート

2010-03-06 04:00:00 | 白井さん




 “三寒四温”~日替わりで上下する気温と近づきつつある春を端的に捉えた写実的且つ詩的な素晴らしい日本語です。

 今日の白井さんは“洗練された大人のカントリースタイル”。ダイヤゴナルのカシミアジャケット&キャバリーツイルのコートです。



   

 今日はA・カラチェニ(伊)で90年代半頃に誂えられたというジャケット。うっすらとした橙(茶?)のペインが入ったダイヤゴナル柄のカシミア生地はカルロ・バルベラ(伊)製。素人の私ではちょっと言葉で表現するのが困難なほどの微妙な色合い、質感はしっとりと柔らかく、『(イタリーでの何かの席上で)隣に座ってたアントニオ・パニコが“良いなぁ~”と言って触ってたっけ(笑)。』(白井さん談)と同国の同業者も唸らせる、英国的カントリーテイストを得意とする同社の真骨頂といえる逸品。『生地なんてどうでもいいんだよ。』と白井さんにまた怒られそうですが(汗)。

 『生地なんてどうでもいいんだよ。』というのは白井さんの口癖。生地に限らず服や靴、小物に至るまで全ての品についても同様にそう仰います。一番大事なことは、その品を最初に見た時に感じる、色、触感、着てみたときの全体の雰囲気など、それら感覚に訴えてくる“一次情報”を通して自分がその品を気に入るかどうか。生産国、メーカーやブランド、価格、付随する薀蓄などは飽くまでも“二次的な文字情報”に過ぎず、それのみで物の良し悪しを判断してはいけないよ・・・私はそう教えていただいていると思っています。

 また今日のジャケットは私にとって個人的に曰くつきの品(その想いは先日アップしたこちらの記事に認めましたのでお暇があればご覧下さい)。昨年末、今日のジャケットを白井さんがお召しになっている写真を拝見し、私は銀座・天神山のIさんがお薦めしてくださっていたダイヤゴナルのジャケット購入を直感で決めました。今日こうして“本物”を拝見し、私は“ああ~やはりあのジャケットを買ってよかった!”と確信することができました。

   

 コーディネートは白のオックスフォードBDシャツに、白井さんには珍しい無地のネクタイは『“チャコールブルー”勝手にそう呼んでるんだよ、ふふ(笑)』と仰るイザイア(伊)のもの。今日の着こなしのアクセントになっているのはトラッドの必需品・タッターソールのベスト、と思いきや『今日は選んだパンツがサスペンダーくっついたままだったから着てきただけで他意はないよ。ちょっと(合わせの部分が)波打っちゃってるけど(苦笑)、ベストは向こうの映画なんか観てても皆ピタッと着ているよね。』とのこと。これは私見ですが、今日の白井さんの装いは、後で登場するコートもそうなんですが、ある程度年齢を重ねた方でないとなかなかさまにならない、という品ばかり取り揃えているという感じです。それらを“ひょい”っと選んで着こなされてしまうのですから“ぅ~ん”と驚くばかりです。

   

 この日の天気は雨模様だったので雨靴“シルヴァーノ・ラッタンツィ(伊)”のス・ミズーラ。ノルベジェーゼ・フレックスのタコキューゾです。タコキューゾとは“タコ(踵)がキューゾ(お休み)”つまり“ステッチが踵までは入っていません(お休み)よ”という意味だそうです。ここでいきなり前回訂正(というか前々回・汗)ですが、白井さんは私が“昔の靴はよくタンニンなめしがされていたので丈夫だった”といったことを書いていたのを思い出されて、『タンニンなめしは“底革”だけだよ。全部じゃないからね。』と仰っていました。それから“雨でも革底の靴が良い”と仰っていた白井さんにもう少し詳しくその理由を伺ったところ、ゴム底に比べると革のほうが“水分を発散して蒸れない”から、ということでした。

 また、この日同席させていただいた信濃屋さんの顧客のお一人、ラヴァツォーロ(伊、もちろん信濃屋別注の品)の茶の千鳥格子のスーツをスマートに着こなされた穏やかな紳士で、以前このブログにもコメントを下さったことがある“Lechner”さんは『コバをよく磨くと雨水が滲みにくくなりますね。』と仰っていて、白井さんも同感といったかんじで頷かれていました。ふむふむ、“Lechner”さん貴重な情報をありがとうございました!



   

 お帰りのコートはビエラ・コレッツォー二(伊)。オーナーのジャンニ・バスタ氏からの贈り物だそうです。襟の形が今まで登場したコートとはちょっと違っていてややカジュアルな印象です。これまた『生地の名前なんてどうでもいいんだよ。』と白井さんに窘められそうですが、編集の都合上“コート”だけでは締まらないので、信濃屋さんのY木さんにフォローしていただき“キャバリーツイル”とい織りの生地を使ったコートだということが判りました。元々乗馬用のパンツに使われたりする丈夫な生地だそうですから、今日のコートの雰囲気にもマッチした素材ですね。マフラーはエトロ(伊)のシルク&ウール。軽く柔らかな素材は今の季節や秋口などの“間”の時期に重宝しそうですね。

 帽子は前回と同じですが、今日のコートに一番色が合っているので敢えてこちらにしたそうです。ここでまたもや突然の前回訂正です。今回はアップの画像をご用意しましたのでご覧下さい。帽子のリボンの辺りに巻きついている紐、この紐について前回“顎紐”などと書いてしまいましたが違います!この紐は“風が吹いても帽子が飛ばないように服のボタンなんかに引っ掛けておくための紐”。クラウンに巻きついている紐を外し、画像にある黒い丸い部分を中心に輪っかを小さく絞ると自動的に紐の長さが延びてきて服まで届き、例えばシャツのボタンなどに小さくなった輪っかを引っ掛けておく→風が吹いても安心、という手の込んだ便利機能付きの帽子なのでした。

 繰り返しになりますがこの日は雨模様。ですが基本手ぶら主義の白井さんは『少々の雨なら傘は差さないよ。』とこの日はノーアンブレラ!ちょっと残念でしたが、前回のシルク張りのブリッグの傘についてもう一つ貴重な追加情報をいただきました。『確かにシルク張りはナイロン張りに比べて見た目も良いのだけれど、それ以上に良いのは“音”。雨が当たったときの音がまるで違うんだよ。』とのこと。私は、流石ブリッグ、ナイロン張りでも充分良い音だと思っていたのですが、更にその上の“音”とは・・・恐るべし紳士服飾の世界!

 さて、以下は余談ですが、いつも白井さんとの撮影では服飾のお話がだんだん逸れて行って最後には全く関係の無い話題で盛り上がることがしばしばあります(笑)。この日も『赤いギンガムチェックのスーツを着こなすには』、『ウールギャバディンと日本そば』、『“西部の男”と“西部の王者”』とだんだん逸れていき(これらの話題も追々ご紹介できると思います)、最後は白井さんの子供時代の遊びについての話題に(笑)。

 白井さん『においガラスって知ってる?』 

 私   『え!?何ですかそれ?』 

 白井さん『え、知らないの?だめだなぁ~(笑)。厚いガラスの破片をさ、こ~うやって教室でこするんだよ。で匂いを嗅ぐとすごくいいニオイがするんだよ!』

 私   『え!?それって何のためにするんですか??』

 白井さん『知らない。でさ、そのガラス何のガラスだと思う?戦闘機のコックピット
のフロントガラスなんだよ(笑)。子供ってどっかから変なもの拾ってくるよな~(笑)。じゃあさ、ホンチ知ってる?』

 私   『え!?何ですかそれ?』

 白井さん『ええ~!?知らないの!?横浜来ちゃだめだよ~(笑)。クモだよ蜘蛛、オスは“ホンチ”で雌は“ババ”、ハチマキ締めたのが“カンタ”。カンタまで知っている奴はそうはいないぞ!!(笑)。で、そいつらをマッチ箱でもなんでもいいから中に入れて、教室で戦わせるんだよ。』

 私   『え!?それって何のためにするんですか??』

 白井  『知らない。箱の下から“ほれ!ほれ!”って突っつくとこ~うやって戦うんだよ。』

 と蜘蛛が戦う様子を身振り手振りで真似をする白井さんの真剣な表情は、こんなに笑っては腸捻転になるのではと本気で我が身を案じたくらい可笑しかったです。普段から些かリアクションが大きい私ですが、それにしてもあんなに大笑いしたのはもう何年ぶりか!というくらいの大笑いでした。

 そんな白井さんのパフォーマンスに応える為にネットでホンチが戦う動画を見つけました。白井さん懐かしいだろうな・・・(笑)