ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

Cashmere blazer & Black watch pants

2010-12-15 04:00:00 | 白井さん


 誠に勝手ながら、今回はいつもより一日早い更新です。

 私は通常、“白井さん”撮影の前日にこのブログを書いているのですが、如何せん素人の哀しさでついつい執筆に手間取り寝不足になった挙句、肝心な翌日の撮影でボケ~っとしてしまうことが多々ありました。しかし、16日に迫った信濃屋さんのクリスマスパーティーでの撮影はいわばこのブログ“白井さん”を始めた一年前から待ちに待った“大舞台”!そのような大事な撮影日に寝不足の体で臨むわけには参りません。体調を整え万全を期すため今回はこのような運びとなりました(笑)。

 さて、今回の白井さんは久しぶりの“Blue blazer”。そして、今回は綺麗に撮れました(苦笑)“Black watch pants”を組み合わせての“ブレザースタイル”です。

 

 あれ?ボタンが??・・・。“もしかして、白井さん、寒いのかな?”と思われた方、私も同じことを考えました。

 『あれ?白井さん・・・ボタン3つ留まってますけど・・・(汗)。』

 『ん?いいじゃない、たまには(笑)。』

 ムムッ、どうやら寒さが原因ではないようです。

  

 実は、理由は今日のネクタイ。

 白井さんがこの日の組み合わせに選ばれた縞のネクタイはかなりの年代物とのことで、ブレザーのボタンを開けて見せていただいたそのネクタイは大剣のあたりに擦り切れがちらほら・・・この日の朝、締めた時にちょうどノットになる部分にも擦り切れが見えたので、結び目の位置を変えてやりかえしたそうです。ところが、そうすると大検より小剣の方が長くなってしまったので、今日は“3ボタン全部留め”という“遊び心”でネクタイをそっと包み隠された・・・というのが理由だったのです(笑)。このお話を伺ってピンっと来たのが、以前ネットで見た白井さんのインタビュー記事(以下抜粋)・・・。

 『色が好きだったりして愛着があるものは擦り切れてもしていますよ(笑)。』

 『ネクタイの締め方で肝心なのは、首もと(襟と結び目の間)にだらしない空きをつくらないことです。その急所さえおさえておけば、あとはそんなにピシッと決めなくても無造作でいいんじゃないですかね。僕も知らずに下(小剣)が出ていることだってあるし。ただ、こういう話をすると、それがイキとか言ってわざとやる人もいますけど(笑)。』

 横浜初物語 十二景 信濃屋シルクネクタイ・コレクション『白井俊夫のネクタイ考』より

 “ネクタイの小剣が出ちゃっても構わない”という発言も驚きなのですが、それ以上に驚く、というよりこの一年間もずっと思っていたことですが、白井さんはいつでも“言行一致”ですし、そしてその発言にも全く“ぶれ”がないですね。

  

 “ボタン好き”と自ら仰る白井さんは、今日のブレザーも、数あるコレクションの中から気に入られている“被せ”のメタル釦に付け替えられたそうです。“被せ”がお好きな一番の理由は“軽いから”とのこと。

 さて、今日のブレザーはカルロ・バルベラ(伊)のカシミアを使って製作した信濃屋オリジナル。

 ブレザーについて信濃屋さんのHPに掲載されている記事はいくつかあり、以前このブログでも一度引用させていただきましたが、今回もう一つご紹介させてください。少し長くなりますが、とても素敵な、私も大好きな一文です。

 『 オリジナルで初めてブレザーを製作したのは1967年頃のこと。M社で作ったものが初代となる。残念ながらディティールには少々不満があったと記憶する。先日ブレザーの修理を承った。それは今から40年前に製作したW社製オリジナルであった。そのお客様は当時、馬車道店のウインドーを眺め、20歳の記念に意を決して求められた思い入れのある商品とのことであった。これだけの年月を経てきたにも拘わらず、コンディションは良く、細かなところの修理のみで応対させていただいた。子供の代にまで伝えたい、今までもそしてこれからも大切にしていきたい一着と、少々照れくさそうに語っていた。(この時点で、もう一着35年前のR社製の3代目のブレザーも修理させていただいた。)

   ナチュラルショルダー、3つボタン上2つ掛け、7mmステッチ。ポケットは3パッチで腰はフラップ付き、センターフックドベント、ウエストは絞りの無い寸胴スタイル。英国Fox brothersのネイビーフラノ生地、裏地は海老茶色、ボタンはふっくらとしたメタルボタンと、当時にして米国BB社のものに勝るとも劣らない本格的なスタイル。この2代目にあたるブレザーには製作した信濃屋としても非常に思い入れのあるものだ。

 「当時住まいしていたアパートに、これに前後して交流の始まる赤峰幸生氏が大量の生地サンプルを持ち込み、一つ一つの生地を矯めつ眇めつ激論を交わし、こういったものを作ろう、ああいったものはどうかと時の経つのも忘れ、気がつけば朝になっていたことも一度や二度ではなかった。今思えば懐かしく、そしてとても楽しく貴重な時間であった。」当時を振り返り白井は語った。』(信濃屋HP“ORIGINAL BLAZER”2009・3・20掲載より

 

 文中に登場されている赤峰幸生氏は“マエストロ”の名で服飾好きな方なら知らない人はいない著名な紳士。そして先日、白井さんに伺って初めて知ったのですが、白井さんと赤峰さんは『桑沢デザイン研究所』の先輩後輩のご関係でもあるのだそうです。

 『当時の桑沢は今では考えられないくらい講師陣が豪華でね。亀倉雄策氏、田中一光氏、剣持勇氏、豊口克平氏、佐藤忠良氏、朝倉摂氏、浜口隆一氏、とまだまだ挙げればキリが無いくらいの錚錚たる顔ぶれだったよ。同級生にもいろんな奴がいて面白かったな。この前、当時の校舎の屋上で撮った集合写真を見たんだけど、背景に作りかけの東京タワーが写ってたよ(笑)。』

 と、白井さんから学生時代の思い出を伺ったこともありました。でも、

 『友達と遊んでばかりいてあまり真面目な学生じゃなかったね(苦笑)。』

 とのこと(笑)。作りかけの東京タワー、青春時代の白井さん、モノを作り出すエネルギーに満ち溢れた時代、良き師、良き友、そして信濃屋オリジナルのブレザー・・・何だか全てが一つに繋がるような気がするのは私だけでしょうか。



 この日の横浜はやや暖かいながらも朝から風が強く、白井さんは中折れとレインコートで凌がれたとのこと。忘れがちですが、“風”への防ぎは帽子とコートの大切な役目の一つなのですね。

 

 この日は『SHINANOYA SHOES COLLECTION』の初日とあって、多くのお客様が信濃屋さんの紳士フロアにお越しになっていました。そして、その方々の中には私にとって大切なお二人も・・・。

 まずは、『本格靴コレクター・おじおじの日記』のおじおじさん。

 おじおじさんには多くのコメントを頂いたり、また『“A SHOE SHINE MAN”』の回では、偶然にも“手”と“声”で動画にご出演してくださり(笑)、その余りのタイミングの良さとその回のシチュエーションにピッタリの絶妙の“キャスティング”には何ともいえないお可笑みがありました(笑)。おじおじさんには折に触れこのブログを盛り上げていただいたことに大変感謝しています。本当にありがとうございました。
 
 そして、もう一人。私と歳も近く、お互いまだまだ未熟ながら“真の着こなし”を学ぼうと切磋琢磨し合っている友人のT君。

 この日は“禁断の”ヤフーオークションで落札した信濃屋別注シルヴァーノ・ラッタンツィを履いて来店したT君。

 『良い色だね~それ、どうしたの?』

 と、白井さんに問われた時のT君の強張った顔。その後、白井さんにネクタイを選んでいただき、

 『10秒で決まりました(汗)。』

 と悦に入っていたT君の嬉しそうな顔。そのギャップはまさに“天国と地獄”といった観があり、傍らの私は笑いを堪えるのに必死でした。

 そんな忙しいT君。今だから言えますが、実は私にはたった一度だけ、このブログの連載を挫折しそうになっていた時がありました。そんな危機の時、私の心情を察してくれたT君は、信濃屋さんで“白井さん”撮影中の私を不意に訪ね、そっと励ましてくれたことがありました。

 もし、あの時のT君の行動が無ければ、もしかしたらこのブログは今日を迎えられなかったかもしれません。T君、本当に、本当にありがとう。

 白井さん、皆様、最後が些か内輪ネタになってしまい申し訳ありませんでした。ただ、お二人にはどこかのタイミングでどうしてもお礼を言っておきたかったのでお許し下さい。面と向っては恥ずかしいですから(笑)。

 さて次回、このブログはいよいよ“クライマックス”を迎えるでしょう。私が着ていく服は一年近く前からもう既に決まっていますので、後顧の憂い無く、“白井さん”撮影に集中できると思います。



Check tweed jacket

2010-12-11 04:00:00 | 白井さん


 今日は白井さんの着こなしについて触れる前に、信濃屋さんの紳士フロアを少しだけ覗いてみたいと思います(笑)。

                        

   

 遂に『 SHINANOYA SHOES COLLECTIN 』の準備が整ったようです。

 紳士フロアの一部屋をぐるりと取り囲んだ靴・靴・靴。白井さんご愛用の靴を筆頭に、古今東西の名靴が一同に会した様子は“圧巻”の一言!その総数なんと98足!それらを背景に写した白井さんのスナップはかなり“絵になる”一枚です(汗)。
 
 もちろん写真に写っている靴は一部のみ。ここでは詳細についてはご紹介いたしかねますので、写真で会場の雰囲気をお伝えするのみに留まりますが、密度の濃い空間に靴好きな方なら間違いなく興奮を覚えるでしょう。近くにお越しの際は信濃屋さんに立ち寄られて、その全容をご覧になってみては如何でしょうか。

  

 さて、今回の“白井さん”はリラッ~クス感漂うカントリースタイル。

 その代表的な素材“チェック柄のツイード”を使用したジャケットはルイジ・ボレリ(伊)。

 『これは見たこと無いでしょう~フフ(笑)。』

 と、ちょっと悪戯な微笑の白井さん。ご期待を裏切ってしまい申し訳ありませんでしたが、実は今日のジャケットは、私が信濃屋さんで白井さんと2回目にお会いした時に白井さんがお召しになっていた、私にとっては大変思い出深いジャケットなのです。

 “うわ~外国映画の田園風景に登場する人みたいだ~。”

 と、それまでの私の人生の中では見たことも無い着こなしに圧倒されたことを憶えています。因みに、初めてお会いした時は緊張の余り、白井さんが何を着ていらしたのかさっぱり憶えていません(汗)。

 『色が気に入ってね。良いでしょ(笑)。』

 と、白井さん。確かに、私の記憶に鮮明に残っていたほどですから、その色柄はまさしく“田園風景”を思わせる素晴らしい配色です。
 
 但し、私が憶えていたのは色と柄だけ(苦笑)。今回伺って初めて判りましたが、今日のジャケットは“一重仕立て”、そして“ピークラペル”という、この種の服としてはちょっと捻りの効いた一着。一重仕立てで内ポケットが無いため、普段はそこに収まっているご愛用のペンは胸のパッチポケットにお引越し。ポケットチーフまで挿すと“うるさくなる”ので今回は省略されたとのこと。

 当時はそこまで見たり伺ったりする余裕もありませんでしたから、今思えば隔世の感があります。

   
 

 それから、白井さんは3ボタンの下だけを留められています。以前、白井さんのお散歩お友達のKさんが同じように段返りのジャケットの一番下のボタンだけを留めてご来店されたことがあり、それを見た白井さんがすかさず、

 『ほら、Kさん一番下だけ留めてるよ。あの人も着こなしが上手だよね~。ああいうのを見ないとダメだよ(笑)。』

 と仰っていたことがありました。それを聴いた私が早速、

 『Kさん、一番下だけ留めてるんですね!』

 とKさんに伺うと、

 『あ、間違えちゃった(笑)。』

 と(もちろん“間違えちゃった”んじゃないんですが)、実に小粋に応えておられました。

 それ以来、私も密かに何度か真似していますが、私がやるとただの“お○○さん”になってしまうのでかなり危険です。やはり着こなしにはある程度の“熟練”が必要だということを痛感させられました。“雰囲気”という無言の説得力を身に纏った者のみに許される行為なのかもしれません。

 

 

 今日のお帰りはコリンズ(墺)のチロリアンハット。柔らかいカシミアガーゼ織りの深いグリーンのマフラーを襟元に、手にはご愛用の鞄、そして超肉厚ペッカリーのグローブ。当然人差し指の内側には革の継ぎ目の無いクラシックな作りの手袋です。白井さんが所有されているペッカリーの手袋は全て長年ご愛用されているものばかりで、経年変化で何ともいえない渋い色艶を放っています。

 白井さんのものとは革の質や厚みや作りが比べものになりませんが、私もペッカリーの手袋を2つ所有しており、最初に購入した黄色は今年で3年目を迎えています。指先がだいぶ汚れてきましたので、白井さんは手袋を洗われるのですか?と伺ったところ、

 『洗わないよ。一応“WASHABLE”ってなってるけどね。昔一度洗ったことがあるけど、やはり革がカサカサになっちゃったね。』

 とのこと。“やっぱり!”という感じです(笑)。

 『僕は不精だから。』

 と、白井さんはよく仰います。でも、その言葉は白井さん一流の“諧謔”で、白井さんに接すると白井さんは決して“無精者”ではないことがすぐに解ります。ただ、だからと云って“神経質”な方なのかといえばそれも全く当て嵌まりません。若輩者の私がこんなことを言うのは生意気なのですが、白井さんのモノとの付き合い方には独特な“メリハリ”があるような気がします。

 いつも感じるのは、経験第一主義。伝聞は鵜呑みにはされず、ご自身で経験して得た感覚を最も重視されます。

 それから、白井さんは所有されているもの全てをご自身の“支配下”に置かれている、“従えている”な、と感じます。“主従関係”がハッキリしているんです。その上で、手をかけるべきところには手間を惜しまず、でも決して“過保護”にはならない。モノが主と同じように歳を重ねるような、そんな“距離感の取り方”なような気がします。

 ちょっと抽象的でとりとめの無い筆になってしまいました。現在信濃屋さんで展示されている白井さんの靴を見て、なんとなくそんなことを考えてしまったものですから。
 


“白井さんならどうする”~9~ Build a basic wardrobe

2010-12-11 03:59:59 | “白井さんならどうする─後編─”
  

“How would Lubitsch have done it?”

 映画『昼下がりの情事』『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』などを手掛けたハリウッド・コメディーの巨匠ビリー・ワイルダー(監督・脚本家)の仕事場には、自身が尊敬する映画監督エルンスト・ルビッチへのオマージュを込めたこの一文が額に飾ってあったそうだ。曰く、“ルビッチならどうする?”

 そして私もまた、毎朝ワードローブの前で一人こう呟く・・・“白井さんならどうする?”と・・・

                                       

 今10回の更新で特筆すべきは、やはり“SHOE SHINE MAN”(連載85回目)。
 
 私がこの項“白井さん”を始めた当初、いえ、もっとそれ以前からずっと抱いていた“いつか白井さんの靴磨きを見せていただけたら”という想いが結実した感慨深い、そして生涯の思い出となる回でした。

 ただ、白井さんに靴磨きを、しかも動画での撮影をお願いするという暴挙に打って出るにはかなりの勇気を必要としました(苦笑)。

 夏が終わり、秋がだいぶ深まってきたある日、私は勇を鼓して白井さんにその旨をお願いしたのですが、白井さんはごくあっさりと“いいよ”とお許しくださり、またこんなことを書くと白井さんに怒られてしまいそうですが(苦笑)、早速、その日ご来店されていたお馴染みのお客様に、“今度、靴磨きの撮影するんだよ”とお話されていました・・・言葉にはされていませんでしたが、密かに白井さんもかなりノリノリだったと思われます(笑)。

 撮影当日、更に私を驚かせたのは、白井さんが本職の“SHOE SHINE MAN”さながらの靴磨きを実演してくださったことでした。

 『どうせやるんだったらちゃんとやらないと。』

 前かがみになった白井さんは大きな背中越しにそう仰っていました。

 自分が“楽しむ”こと、

 同時に“相手にも”楽しんでもらうこと、

 そして、やるからには“徹底して”こだわること。

 あの映像にはそんな白井さんの、上手く言えないんですけど、お人柄、というか、う~ん・・・“Entertainer”なところを収めることもできたような気がします。あ、そっか、それって今までの白井さんの全ての着こなしにだってちゃんと表現されていたんですよね!(笑)。

 That's SHIRAI STYLE !!

 

Chalk stripe gray flannel suit

2010-12-09 04:00:00 | 白井さん


 昨夜の雨が大気の塵を洗い流したせいでしょうか、私の職場の窓から見える遠くの山々が完璧な雪化粧をほどこし、背景の澄み渡る空にその稜線をくっきりと浮かび上がらている姿をはっきりと確認できました。昨日まで名残を惜しんでいた晩秋の空気は遂にその役目を終え、今朝、頬を撫でた微風の冷たさにはっきりと冬の到来を感じました。

 今日の“白井さん”は冴え渡る冬の空気にも似た凛としたスーツスタイル。チョークストライプのフランネルスーツの着こなしです。

   
 

 ライトグレーのフランネルを間隔の広いチョークストライプが走るダブルブレストの3ピース、きりりと締め上げたピンホールカラーと重厚なジャガードのタイ、スクエアに挿した白い麻のチーフ、髪はきつく撫でつけ、足元は黒のキャップトウで引き締める。今日の白井さんの着こなしは、ちょっと怖いくらいにシャープなビジネススタイル。もし、商談相手が今日の白井さんのような人だったら、私などは話す前から謝ってしまいそうです(汗)。

 

 さて、そんな強面(笑)な白井さんを慕われて、この日も多くの紳士諸兄が信濃屋さんを訪れて服飾談義に花を咲かせておられました。やはり皆さんの話題の中心は、来る12月16日に催される『SHINANOYA クリスマスパーティー』と、そのプレイベントとして12月11日~16日に信濃屋馬車道店紳士フロアに展示される『SHINANOYA SHOES COLLECTION』について。特に靴については皆さん一家言お持ちの方ばかりですから、お話は弥が上にも盛り上がります、といっても皆さんの語り口は、信濃屋さんを訪れる洒落者の方々の多くがそうですが、いつでも紳士的で物静かです(笑)。

 イギリス・アメリカ・イタリーを中心とした各国の靴の話を軸に、革の話、サイズの話、ソールの話、靴磨きの話、などなど・・・兎に角、皆さんのお話は全てご自身の“足”でご経験されてきた“本当のお話”ばかりで濃い内容のものばかり。

 『メモ取らなくていいの?』

 と、ちょっぴり白井さんにからかわれてしまいましたが(涙)、ここで私の乏しい見識と拙い筆でヨタヨタ危なっかしく書くよりも、興味のある方には是非信濃屋さんに足を運んでいただいて、今ではちょっとやそっとではお目にかかれない銘靴の数々を真近にご覧頂く方が確実だと思います(笑)。このブログでご紹介させていただいた白井さんの靴もいくつか展示されるとのことですし、何故白井さんが昔のアメリカの靴をこよなく愛されているのか、その理由も“本物”を見ることできっと伝わるのではないでしょうか。

 因みに、ちょっとフライングですが、下の写真の3枚目にチラッと写っているのは、コレクションに展示予定の古いアメリカの靴。白井さんのお話では“成牛”の革で作った靴だろう、とのこと。もの凄くごつくて迫力のあるぶ厚いグレインレザーを使ったブローギングシューズでしたが、人の手の温もり、とでもいいますか、その時代の“クラフトマンシップ”がどういうものだったのか、という部分もそこはかとなく感じられるたいへん魅力的な靴でした。

   

 その“アメリカ靴”にちょこんと乗っかっている黒帽子は、今日のお帰りの主役である“ホンブルク”。白井さんのお話では、すべり革が“白”というのが珍しくてなかなか洒落ているそうです。襟元も黒に白のドットのシルクマフラーで。白井さんは着こなしには滅多に“黒”を使われないので今日の写真はかなり貴重な一枚となります。また、更に裏返して言えば、“黒”はこのように使え!ということが解る貴重な一枚とも言えます。

 さて、いよいよ寒くなってきましたのでオーバーコートの出番が迫ってきましたが、ここ最近10回ほどの更新では晩秋の着こなし、特にコート無しでの、帽子、マフラー、手袋、といった小物の使い方・合わせ方の様々なヴァリエーションを見せていただいたことが大変勉強になりました。一年の中のほんの短い期間ですが、その時期にしかできない合わせ方を心掛けそれを上手に楽しむ。やっぱり白井さんは着こなしの“達人”なのだ、と今改めて感じています。

  



Camel colored cashmere jacket

2010-12-04 04:00:00 | 白井さん


 今回、白井さんが選ばれたのは“キャメル色のジャケット”。組み合わせのヴァリエーションが豊富で簡単そうなのに、真剣に考え始めると実は誤魔化しが効かないという意外と手強い“無地の上着”の着こなしです!今日は非常に無謀な試みですが、私が白井さんになったつもりで、今日の組み合わせの意図を考えてみたいと思います(笑)。

  

 この日の横浜は最高気温は17℃。この微妙な気温・・・。

 『やはり昔に比べるとコートを着始める時期が遅くなっているよね(苦笑)。』

 と、仰っていた白井さん。恐らく、今日の気温を考慮して、コートは未だ着れないから厚手のカシミアのジャケットあたりが妥当かな、とお考えになられたのではないかと推察します。但し、この日の白井さんの言葉では、

 『あ、最近これ着てないな・・・と思ってね。』

 とのこと。以前にも申し上げていますが、服にしろ、靴にしろ、小物にしろ、兎に角手持ちのアイテムは全て万遍無く使うのが“白井流”。白井さんは常々、

 『何しろワードローブは全部見えてないと嫌なんだよ。』

 と仰っています。ワードローブの品を“全て見える”ようにしておかなければ“万遍無く使う”ことはできません。因みに、もし仮に使わないものがあるとすれば、それが“箪笥の肥やし”になるくらいなら白井さんは躊躇無く他の人に差し上げてしまいます。

 『捨てることはまず無いね。』

 とも仰っています。実はこの“捨てない”ことも非常に大きな命題だと思っていますが、今日は触れないでおきます(苦笑)。

    

 次に選ばれたのは恐らく“ネクタイ”。ジャケットが無地ですので最初の選択肢は当然ながら“縞”や“格子”などの柄もののネクタイということになったのではないかと推察されます。

 白井さんはワードローブのネクタイは『縞』『ジャガード』『プリント』・・・といった具合に柄や素材別に、当然“全て見える”ように、分けて並べて管理されているそうです。この“ひと手間”によって毎朝のコーディネートは極めて効率的でロジカルな進行が可能になり、最終的な閃きを生むための時間と心のゆとりも作り出せるのだと思います。もちろん、白井さんは100を越える数のネクタイを所有されていますので“管理の必要上”ということがあるのは当然だとも思われますが、私などは以前このお話を伺ったときはまさに“目から鱗が落ちる”心境でした。

 ベージュから濃茶まで複数の“茶”で彩られたグレンチェックのネクタイはジャン二・カンパーニャ(伊)のもの。

 シャツにも茶の縞を使い、着こなしに更なる遊び心を加えて。オックスフォードBDはルチアーノ・バルベラ(伊)。今回、白井さんがバルベラのBDを気に入られている理由をもう一点伺いました。

 『見頃がたっぷりしているところが良いよね。襟腰も低くて襟の形も良い。特にBD(ボタンダウン)は襟腰が低くないとね。バルベラはアメリカにも進出しているから、やはりBD(ボタンダウン)はブルックス・ブラザースあたりを意識して作っているんだと思うよ。』

 とのことでした。

 

 胸元のチーフ、そして靴を決められたのはかなり最後の方ではないかな?と推察します。

 靴はジャケットの色との相性を重視して選ばれたとのこと。同じような明るい色のUティップも視野に入れたそうですが、ライトタンのキャップトウをほぼ瞬時に選ばれたようです。やはり、選ぶ靴は着る服との相性によって決まる部分が多い、と仰っていました。

 チーフについて白井さんは、

 『色が綺麗でしょ。ミラノのティンカーティで見つけたんだよ。“あ、これいいね”ってね(笑)。』

 と仰っていました。白井さんはチーフの選び方に関しては、挿し方もそうなんですが、

 『あ、こんなの適当だよ、適当。』

 と仰る場合が殆ど。そして私は、その言葉はほぼ額面通り受け取って良いと思っています。何故なら、“適当”という言葉を別の言い方に換えるならば“感覚”なのではないかな、と思っているからです。着こなしの最後を飾る“一花”=ポケットカチーフ、それすらもグズグズと考えあぐねるのは無粋の極み。感覚で挿せないなら寧ろ潔く“白”を選ぶかさもなくば何もしない方が余程マシ、と・・・こちらは白井さんがそう仰った訳ではないのですが、白井さんと接していると何となくそう感じるのです。

  

 今日の着こなしの最大のポイントはインナーにお召しになられた前開きのニットヴェストではないかな?と推察しています。柔らかい色合いの黄色いカシミアのヴェストはフェデリー(国名?)。

 『白井さんはまず人前で上着は脱がないね~“上着は人前で無闇に脱ぐもんじゃないんだよ”って(笑)。脱ぐのは別の服を試着する時とか、ボタンが取れちゃって、急いで繕ってもらわなきゃならない時に仕方なく、って時くらいじゃないかなぁ~。』と以前牧島さんが私に教えてくれました。

 そんな白井さんに、今日は上着を脱いでいただきヴェストを見せていただきました!

 昨年末にこのブログ“白井さん”を始めた当初の約3ヶ月の間、白井さんの着こなしで一番驚いたことの一つは、ジャケットスタイルの時のインナーにニットを多く用いられていて、それが何とも言えないくらいお洒落に見えたことでした。その全ては色鮮やかで、そしてそのすべてがカシミアのニットでした。

 私にとって高価なカシミアのニットは簡単には買えない品物ですが、昨冬の白井さんの着こなしが忘れられなくて、今年は安価でもなるべく色の綺麗なニットを何種類か揃えて日々のコーディネートに取り入れています。

 そんな折でもあったので、今シーズン初のニットヴェストの登場に私は余程興奮していたのでしょう、

 『ああ!ニットヴェスト撮らせて下さい!』

 と叫んでしまい、白井さんも思わずもろ肌を脱いでくださる容となりました。大変記念すべき一枚です(笑)。

 おっと!忘れてはいけません(笑)。黄色のホーズはもちろんヴェストに合わせて。靴下へのこだわりは“白井流”の大事なポイントの一つです。

   

 お帰りは濃茶のシルクマフラーで襟元を引き締めて。

 手袋は“ペッカリー”。

 『もっと黄色いのでもよかったんだけど、今日はこれ。』

 と、色を変えて数種類お持ちのペッカリーの中から今回はこちらをチョイスされたとのことでした。その手にはお馴染みのステッキを携えられて。

 ・・・いつものように完璧な着こなし~かっこいい・・・(溜息)。結局、最後の締めはいつものこの言葉になってしまいました(汗)。

 今日は私のようなド素人の意見などをダラダラと書いてしまい申し訳ありませんでした。明日また白井さんに怒られなければ良いのですが・・・(汗)。ただ、口幅ったい物言いですが、一年前では考えられないくらい、今では白井さんの着こなしから多くのことを感じられるようになったような気もして、ちょっぴり嬉しくもあるのです(笑)。