■透析にゆかむと今朝のわがうれひ生きて何する何のいのちと
■さても暑し腎臟買ひに來たる街
■被害者がゐて加害者がゐるほかに第三者といふわがゐる立場
■七月のどこへゆくにも登り坂
■手を銃に擊てば落ちくる鳥もあらむ人の生きゆく惡のあかしに
■禾偏のわれをり麥の秋のなか
■咲きほこる薔薇の花びらひとひらも創れぬわれは憎みて剪りぬ
■人生を要約すればいととんぼ
■一脚の椅子にすがたをかへてより待ちつづけゐる君とその脚
■老いたるは涸れて無用に噴水も
■眠るのに顏など要らぬ闇の中假面は朝まで壁に掛けおく
■この地球はだしで步くしあはせを
■おほぜいの他人とともに闇にゐる映畫とはある意味不氣味
■いぼいぼの胡瓜と世間嚙みくだく
■ちぢみゆく老いの身のみが希望なり人口論の闇のかなたに