■透析は死ぬまでつづく夏の果て
■異議ありと聲あげざれば少年の時朽ちやすくはやも晩夏光
■ぬばたまの闇を身ぬちに夏瘦せぬ
■見えぬ背に羽もがれたる傷跡のありと信じてすでに逝く夏
■辭書的に出あへり蛇と蛇いちご
■リモコンのみどりのボタンつれづれに押してみるなり何か變はれと
■トマト喰ふ喜怒哀樂はどれも赤
■一鉢の土に芽生えて枯れゆけりわれは見たりき汝が一生を
■夜光蟲光れぬ蟲はどう生きる
■蟲たちの晩餐たれよ土葬にて食物聯鎖の環は閉ぢむとす
■浮きそこねたる浮草ぞかなしかる
■壁にあるドアが畫に見えもうどこにも行けぬ囚人の夕暮なりき
■うきくさとして生きたくて死にたくて