投石日記

日野樹男
つながれて機械をめぐる血の流れ生は死の影死は生の影

2010年08月31日(火)

2010年08月31日 | 記錄
◎私は例年それほど目立つて夏瘦せしないたちなのだが、今年はその點でも異常な夏になつた。7月末のあの猛暑が始まるまでは自業自得とはいへ透析毎の除水の負擔に苦しんでゐたのに、8月になつた途端に體重が全くえずむしろ急激に減り始めた。夏は透析患者にとつては惱ましい季節で、熱中症の豫防のためには水分の補給が重要だが、かといつて飮み過ぎればそれが體内に溜まつてたちまち水ぶくれの體となり透析の負擔が大きくなる。飮み過ぎは禁物なのだ。しかし今年はいくら水を飮んでもすべて汗で出て體重は加しなかつた。しかも通つてゐるクリニックの移轉が9月に迫る中クリニック全體が何となく慌ただしく浮足立つてゐて、そこへ運惡く私のゐる透析室の空調設備の不調が重なつてしまつた。いくらエアコン嫌ひとはいつてもかういふ建物は最初から空調設備込みの設計で個人の家とは意味が違ふ。それに家でなら自由に動けて冷たいタオルで體を冷やしたりシャワーを浴びたりいくらでも對策はあるのだが、4時間機械に繫がれてゐる透析中はただ我慢する以外にない。エアコンの不調とはいつても實際には家にゐるよりも室温は低かつたものの、心理的な負擔感では透析中の方がはるかに辛かつた。最初は今風のカタカナ名前の送風機が這入り、次に家庭用のエアコンが窓に付いて對策は進んだが、私は早い目に諦めてただひたすら眠るだけで4時間をやり過ごすことに決めた。それでも耐へきれず最後には透析時間を無理やり短くしてもらつた。このブログの更新を止めた時點では、家では暑くて何も出來ないにしても透析中はこれまで通り俳句や短歌を作れるだらうと思つてゐたのが完全に當てが外れて、結局1箇月間を無爲に過ごしたことになる。家では飮んだ水分以上の汗を流して體重が減り、透析中には寢汗を搔いて除水もしてゐないのにさらに體重が減りの繰り返しで、8月中はつひに1度も透析前の體重測定でドライウェイトを上まはらず全く除水をしない異例の透析となつた。もちろん水分だけの問題ではなく、がぶがぶ水ばかり飮んでゐたので食欲が失せてしまつて肉が落ちたといふことも大きい。夏瘦せは涼しくなつてからが恐いらしいのでどんなことが起こるのか今から戰戰兢兢といふところ。
◎上の圖は面グラフをふたつ重ねたもので、奧が透析前、手前が透析後の體重。したがつてその差のい部分が透析時の除水量になる。8月になつてそのい部分が消えた。わづかに出てゐるところも機械の除水ではなく透析中の汗によるもの。ただしこのグラフは視覺的にやや誇張されて見えるやうになつてゐて、去年の1月以降のこの期間の最高體重は77.5キロ程度なのだが、それはあくまでも透析前の體内に溜まつた水分込みの體重。その時期のドライウェイト、つまり除水量を導き出すための基本體重として設定してゐたのは74.0キロで、現在の體重は大體72キロ前後だから瘦せたといつても實質2キロだけの話。涼しくなつて食欲が出てくれば簡單に元に戾る數字だと樂觀的に考へられなくもない。そして冬になればまた水ぶくれでえた體重をどう減らすか惡戰苦鬪の日日がやつて來ることになる、のかも知れない。

2010年08月31日(火)

2010年08月31日 | 記錄
◎最惡の8月もやつと終はる。今年は實際に命の危險を感じるやうな暑さが續いた。もともと以前から毎年8月中頃には1週間程度扇風機が熱風機になつてしまふ日はあつたが、その1週間以外は扇風機だけでも暑いなりに快適に過ごせた。しかしここのところ年を追ふごとにどんどん夏が暑くさらに長くなつてしまつて、そんな扇風機りの生活に限界が見えてきてゐる。それでもやはりエアコンには抵抗がある。始まりは小學生の頃で、寒い冬のある日同級生の大きな家に遊びにいくと部屋の中がモワッとして異樣に暖かい。具體的に何をどうしてゐたのか記憶になく當時のことで家庭用のエアコンでなかつたのは確かだが、とにかく眞冬に汗を搔きながらゲームで遊んでゐるその異常な暖房が強烈に印象に殘つた。まるで昔話の田舍長者が冬を夏に、夏を冬に變へて得意がつてゐるやうだつた。私の育つた家では暑いときには暑い暑い、寒いときには寒い寒いと言ひながら、それでも特別なことは何もせずに扇風機やストーヴで滿足して暮らしてゐたのだ。小學生の時のその體驗をもとに以後ずつとエネルギーの非效率な使用法に異議申し立てを行なつてきたわけではもちろんないにしても、家庭内の部屋單位での冷暖房にはもつと節度があるべきだとは思ひ續けてきたし實行もしてきた。特にエアコンの室外機のあの非社會的な存在は、例へば信號待ちの間に灰皿の吸ひ殼を窓から捨ててそのまま走り去つていく恥知らずな運轉者の利己主義をもろに聯想させる。自分の身の廻りさへよければ他はどうなつてもいいといふことなのだ。今年はNHKテレビのニュース番組でもエアコンを一晩中消さないことを推獎してゐた。このくそ暑い中で長袖の服にネクタイまでも締めて涼しい顏で暑い暑いと言ひながらのおススメだから、もうこれからは地球温暖化の話などは一切しないことに決めたのだらう。暑さのせゐなのか私は今年の夏はずつと不機嫌で、もし同居人がゐれば毎日喧嘩ばかりだつたかもしれない。大阪はまだしばらくは猛烈な殘暑が續く豫想で、不機嫌なままうつかり驛や電車の中で若い連中ともめ事を起こしたりしたら毆り倒されて救急車で運ばれるやうなことにもなりかねない。熱中症の患者の搬送らしく毎日何度も何度も救急車のサイレンの音を耳にしてきたが、ただでさへ忙しい人たちに迷惑を掛けないやうにせめて頭の中だけは冷靜に保つて嚴しい殘暑を無事に乘り切りたいと思つてゐる。