■いとなみのひとつに地下を掘りすすむ人は故を目指しはしない
■朝霧を脱いで車中の人となる
■わが歸る部屋には誰もをらぬこと確かめたくてノックしてみる
■春のごとしと霧の中をゆく
■母戀しと嵐の海に旅立てるわれを見送るあれが母なのか
■蘆刈や河内平野はかつて湖
■さういへば耳よなんぢは何とまあをかしな穴よ腦を覗ける
■病めば命するどく燈下親しめり
■積み上げて倒れさうなるダンボール不安は箱の中身なれども
■禁煙のパイプにほしき花たばこ
■郵便をこよなく愛するわれなればふるさと戀しと額に切手
■秋風の中に身をおく無用者
■進化樹の枝の尖端それぞれに勝ち殘りたるものの孤獨を
■誰か呼ぶその聲さへも秋の聲
■いくつもの圓を描けどたのしまず人は死ぬまで生きゆくものを