■風邪をひいて寢てゐる春のすぐ隣り
■臟器みなたとへに語る腎臟は下水處理場こはれて無殘
■ふくろふと人とを分かつ要もなし
■種に始まり種に終はれる花ばなの種の違ひの去年と今年
■冬銀河地球はたれにも見えぬ星
■冬の星映してくらき海原の底ひに宇宙しづみてあるらし
■冬帽のを思想としてかぶる
■宇宙などいつはりごとにほかならず鳥に壁なす堅き空
■冬はみな袋にしまふ耳手足
■虛數とはわれのことなりとりあへず生きてはをれどわれはいづこに
■兎うさぎむかしは耳で飛びしとや
■公園に鳥と人とがつどひきて空と地表へ憎みつつ別る
■水ぶくれさらに著ぶくれ透析へ
■人に媚賣りつつ生くる方法を犬を見ながら考へてをり
■沼涸れてかならず死者の二三人