■死んでみて六十年でたいくつし次はしばらく生きてみるかな ■生きてみて六十年でたいくつし次はしばらく死んでみるかな
■除夜にゐて命はすでに引き算に
■いつの日かともに化石とならむため爬蟲の友と骨までからむ
■透析の膜にへだたる去年今年
■耐へがたきときあり不意に身の内に冷たき風が吹きつのるなり
■ゆく年の地球に七十億の人
■かまいたち目に見えざればその鎌のあなおそろしきはるか山國
■冬至せめてこの美しきバスクリン
■枯野より出できて道を訊く人に枯野の道を指して示しつ
■數へ日の半分やはり透析に
■傍觀といへるさびしき姿勢にて波立つ冬の海を見てをり
■空つぽになる幸せや日向ぼこ
■ポストへと投函したる手紙には赤き切手と捨てたる昨日