■ゆく春のこころ殘りの夕暮れに卑彌呼も見きや影のふたかみ
■むらさきの眠りぐすりに春の夢
■眠らむとたましひ假に花として赤きインクの壺に插しおく
■人間も文字ものどかに欠かな
■夢一夜旅人たらむと重き荷を背負へどつひに旅は始まらず
■氣がつけばきのふの蝶を待つてをり
■すきとほる水もかすかに色づくをただすきとほる命の色は
■凧と人つながる絲の見えぬまま
■珠なれば壞れやすきはたんぽぽの絮と地球と同じことわり
■病みてよりひとつ朧として步む
■ますぐなる莖のいただき金色にたんぽぽ登る蟻に幸あれ
■何もかも捨てて土筆のごとくゐる