■時に名を付けつつ時計は刻刻と人の未來をむしばみゆけり
■時の日のこころの時を漏刻で
■砂時計つのる思ひのさらさらに時のかたちは崩れてやまず
*6月13日 ■生も死も同じこころに櫻桃忌
■日時計に月かげさせば時はいま時にあらざる夜のあやかし
■とりどりに雨に色ある花菖蒲
■時計屋の時計それぞれみづからの時を信じて人に關はらず
■透析の除水けだるく梅雨に入る
■虹の弧の見えぬ半ばを尋ねむと地下ゆく電車の切符を買へり
■蟻よりも小さくなりて地下の街
■棘などを護身のすべと信じゐる愚かな薔薇を摘み呆けたり
■かたつむり病やしなふ身に似たり
■絶望を眞似て蝸牛の殼の渦たどれば消ゆる一點のあり