■鳥居には扉のなくて二月盡
■孤獨死の後のことなりわが部屋に指紋さへなきさびしさなりき
■冬終はる無數のいのち終へてのち
■ある日ふとぷかりと浮かび出できたる腐爛屍體のごとき記憶や
■金色の脚ゆつくりと日脚伸ぶ
■たましひも吐息も口より出でゆきて殘るは蟲の棲みなすむくろ
■まんぢゆうが恐いそれから熱燗も
■腦について書かれし書物ひもとけどわが腦何やら納得できぬらし
■おほかみが季題にありし昔かな
■ひならし鳥やけものに人のまねさせてよろこぶ人にはならぬ
■要目貼こころにすき間多きゆゑ
■窓をとぢ窓の外なる風を見る見えざるものを見るはさびしき
■ひいふうと數へて七つ冬さうび