■不眠症かこつこの身はつひの日も眠れぬままに死ぬのかも知れず
■暮れ殘る思ひもあれど暮春かな
■時計にもいろいろありてわが好むときどきとまるやさしき時計
■きつといつか行方不明のさくら咲け
■腕ふたつそれぞれ五指をもちながらなすこともなく垂らしゐるのみ
■蛇穴をわれは地球を出たきころ
■日曜は蝶を處刑の日と決めて花のかんざし野をゆくわれは
■龍の字にかざり多くて朧かな
■ささやかに土地は區切られ家といふ罠のごときを組み立てゐたり
■いまだ來ぬ時を未來と春に待つ
■透きとほるやまひはつひにわれにおよび飛行船など見つつ淚す
■はうれん草媚藥はみどり色の壜
■アンテナに電波はとどく遠き地の人は飢ゑつつ殺しあひつつ