■てぶくろの中に老いゆく十指かな
■ねぢれつつ乘りし電車の人臭く奴隷市場へ急ぐしづけさ
■なかなかに猫は行火に化けてくれず
■卷尺ではかるたくらみにんげんの存在理由を數字に換へて
■また一へまた一月へ生き返る
■地下街にゐて氣付かざり雪は降りつもらぬままにすでにやみきと
■人日に人めく猫とともにゐる
■生きゆくはさびしきことと膽嚢にいくつかの石育てつつをり
■笑ひ滴りよそほひやつと山眠る
■鏡中のわれとはこのごろ疎遠にて見知らぬふうに髭など剃りぬ
■一といふ字のいさぎよき一月へ
■この冬はねぢにならうと約束しまはるまはるよ地球もわれも
■元旦のにはかに尖端恐怖症