ハルカ、十二歳。中学一年生。
六月にはもう、クラスメイトには愛想を尽かし。部活動にも行かなくなった。
「ハルカ!そんな格好で学校行くの?」
ジーパンにTシャツ。規則に沿った服装なんだしさ。親のお仕着せでは服を着なくなったのはこの頃。私はやっと年中ズボンで過ごす自由を手に入れた。
昼休みも、持参のサッカーボールを持ち出して一人、グラウンドへ。仲のいい子もいないし。女の子の話って聞いてても面白くないし。運動部の集まってるところを避けて、開いているスペースへ。そこで一人、サッカーしてるんだ。蹴りだしたボールがまっすぐに飛んで、フェンスに突き刺さる。
地面に腰を下ろして、空を見上げると、じわっと滲んできた。
『アホ!答案どこやったんだ!』
中間テストが終わって、その結果のこと。お父さんお母さんにアザだらけになるまで殴られたんだ。中学に入ってから理由もなく殴られるようになったけど。
『あんたの成績見て、親もこのぐらい心引き裂かれたわ!』
ギャーーーー!お母さんにアニメ雑誌を、真っ二つに破られたんだ。
教室で笑い声を上げているクラスメイトに異常なほど腹が立つ。私には意地悪ばっかり言うくせに。
『アニメが好き?気持ち悪い!』
『男の子に興味あるなんて、かなりおかしくない?』
あんたらだって、男の子のアイドルグループに夢中になってるくせに!
個性なんてものはないの。中学生は制服でないと。悪いことした時にどこの子かわらかないでしょ?女の子はスカートをはくものって決まってるの。常に皆と一緒にいさせて、監視しあわさないと。一人になったらシンナー吸うとか、ろくなことしない。一年中、部活部活でいっぱいに詰め込むぐらいでちょうどいいのよ、中学生は。自由にさせたら何をするかわからない。非行の始まり!非行の始まり!非行の始まり!非行の始まり!
夏休み。保護者面談。
「ハルカの母です。お世話になっております。」
「いえいえ。どうぞ。」
成績資料を提示しながら。
「残念ながら、今学期のハルカさんの順位はここになります。」
「はい・・・本当に、私も主人も、私学のシステムを知りませんでして。本人ももう一つ、中学校での過ごし方がわからないようで・・・あの、先生。親として心配してるんですが、うちの子は知能が低いんでしょうか?」
「いいえ。四月の知能検査では、IQは百三十を超えています。」
知能の問題では、ない?それより、
「成績はまだ努力で挽回できますが、ハルカさんは孤立してますね。休み時間も一人でサッカーやってますし。そういう男の子みたいなことはやめていただきたいんです。クラスの子も怖がるんです。皆、女の子ですので。」
「申し訳ありません。下の子が男の子なので、その影響もあるかと・・・」
一呼吸ついて担任が。
「部活は、マンガ部でしたね?・・・音楽の先生がですね、ハルカさん、物凄く歌が上手だっておっしゃっています。これは才能ですって。合唱部ありますし、そちらにも入部されませんか?部活の掛け持ちは学校としても許可していますし。」
六月にはもう、クラスメイトには愛想を尽かし。部活動にも行かなくなった。
「ハルカ!そんな格好で学校行くの?」
ジーパンにTシャツ。規則に沿った服装なんだしさ。親のお仕着せでは服を着なくなったのはこの頃。私はやっと年中ズボンで過ごす自由を手に入れた。
昼休みも、持参のサッカーボールを持ち出して一人、グラウンドへ。仲のいい子もいないし。女の子の話って聞いてても面白くないし。運動部の集まってるところを避けて、開いているスペースへ。そこで一人、サッカーしてるんだ。蹴りだしたボールがまっすぐに飛んで、フェンスに突き刺さる。
地面に腰を下ろして、空を見上げると、じわっと滲んできた。
『アホ!答案どこやったんだ!』
中間テストが終わって、その結果のこと。お父さんお母さんにアザだらけになるまで殴られたんだ。中学に入ってから理由もなく殴られるようになったけど。
『あんたの成績見て、親もこのぐらい心引き裂かれたわ!』
ギャーーーー!お母さんにアニメ雑誌を、真っ二つに破られたんだ。
教室で笑い声を上げているクラスメイトに異常なほど腹が立つ。私には意地悪ばっかり言うくせに。
『アニメが好き?気持ち悪い!』
『男の子に興味あるなんて、かなりおかしくない?』
あんたらだって、男の子のアイドルグループに夢中になってるくせに!
個性なんてものはないの。中学生は制服でないと。悪いことした時にどこの子かわらかないでしょ?女の子はスカートをはくものって決まってるの。常に皆と一緒にいさせて、監視しあわさないと。一人になったらシンナー吸うとか、ろくなことしない。一年中、部活部活でいっぱいに詰め込むぐらいでちょうどいいのよ、中学生は。自由にさせたら何をするかわからない。非行の始まり!非行の始まり!非行の始まり!非行の始まり!
夏休み。保護者面談。
「ハルカの母です。お世話になっております。」
「いえいえ。どうぞ。」
成績資料を提示しながら。
「残念ながら、今学期のハルカさんの順位はここになります。」
「はい・・・本当に、私も主人も、私学のシステムを知りませんでして。本人ももう一つ、中学校での過ごし方がわからないようで・・・あの、先生。親として心配してるんですが、うちの子は知能が低いんでしょうか?」
「いいえ。四月の知能検査では、IQは百三十を超えています。」
知能の問題では、ない?それより、
「成績はまだ努力で挽回できますが、ハルカさんは孤立してますね。休み時間も一人でサッカーやってますし。そういう男の子みたいなことはやめていただきたいんです。クラスの子も怖がるんです。皆、女の子ですので。」
「申し訳ありません。下の子が男の子なので、その影響もあるかと・・・」
一呼吸ついて担任が。
「部活は、マンガ部でしたね?・・・音楽の先生がですね、ハルカさん、物凄く歌が上手だっておっしゃっています。これは才能ですって。合唱部ありますし、そちらにも入部されませんか?部活の掛け持ちは学校としても許可していますし。」