ジャカルタから南方面に車で2時間ほど行った、チアンジュール県のチボダスというところにある、Gunung Gede(グデ山)に登ってきた。
インドネシア入り後初めての登山、トラブルに始まりトラブルに終わった。
アパート出発は午前4時半。
グヌン会(山の会)のS井さんの車で、私とお向かいのS部さん、それから近くに住むK原さんがピックアップしてもらう手筈となっていた。
が、朝4時過ぎにS井さんから入った一報は、「運転手が来ない。連絡もつかない。」だった。
出たよ、インドネシア人。
さて、どうするか。
急きょレンタカーを借りるにしても、午前4時過ぎでは当然電話もつながらない。
レンタカー会社が営業を始めてから手配していては、ジャカルタの道路が大渋滞するので、登山するには間に合わなくなる。
今回の案内役であるY田君に相談すると、「○○バスターミナルからチボダス行きのバスが出ている」とのこと。
バスかぁ…。
日帰り登山ぐらいならバスでもいいけど、泊まりの登山なのでテントやら食料やら荷物がとにかく多い。
この状態でバスに乗り込んでチボダスまで行ってたら、現地到着前に体力を使い果たしそうだ…。
K原さんもタクシーでうちのアパートまでやってきた。
話し合いの結果、「とりあえずバスをトライするしかないね。」ということになった。
S井さんにはバスターミナルへ向かってもらい、我々もタクシーを呼んでバスターミナルを目指した。
タクシーの中で運転手さんと話していると、なんと「このタクシーでチボダスまで行ってもいいよ」と言ってくれた!
すごい!普通はそんな長距離、タクシーは行ってくれない。
余談だが、こっちの運転手は、お客を乗せている途中でも、「もう家に帰りたいから降りてくれ。」とか平気で言う。
あと、「渋滞してるから嫌だ。そこへは行きたくない。」とか、ジャカルタでタクシー運転手をしている者にあるまじき発言をしたりもする。
そんな運転手が多い中、この運転手さんは遠くはるばるチボダスまで乗っけてくれるというのだ!
まさに渡りに船。
早速S井さんにも連絡。
先にバスターミナルに到着して待っていたS井さんをピックアップし、大人4人と荷物でぎゅうぎゅうになったタクシーでチボダスへと向かった。
こんな早朝の暗いうちからジャカルタの道路は結構な交通量があったが、渋滞はしていなかったため、スイスイ走って2時間ほどで無事にチボダスへ到着。
予定時刻より30分遅れただけで済んだ。
タクシー代も、高速料金やらチップやら色々入れても3,000~4,000円で済んだので、みんなで割れば大した金額ではなかった。
チボダスへ入ったころにようやくS井さんが自分の運転手と連絡がつき、「なぜ4時に来なかったんだ?」と聞くと、「午後の4時かと思っていました。」という、予想通りの答えが返ってきた。
S井さんは温厚な方なので怒りもせず、「ああ、そうか。」と言ってたが、私とS部さんは「絶対寝坊だよね。最初からその言い訳考えてたよね。」という意見で合意した。
それはさておき、現地ではグデ・パンランゴ国立公園勤務のY田君が待ち構えており、もう1人の参加者S谷さんもやってきた。
出発前にブブール・アヤム(鶏のお粥)とお茶の朝食を。
両方で70円ぐらい。
この辺りは登山客用にお土産物屋さんやら、食べ物屋さんやらがずらりと並んでいる。
腹ごしらえのあと、水を買いにコンビニへ。
実はバスで移動かもしれないと分かった時に、少しでも荷物を軽くするために半分水は置いてきたのだ。
個人用の水と料理用の水を購入し、いざ登山口へ。
ガタガタ道を車でしばし進み、ようやく到着。
ガイド1名、ポーター3名を雇ってあるので、ポーターに預ける水、テント、食料などと自分で持つ物を分ける。
そこから少し上ると入山登録をする小屋がある。
登山前にトイレに行くと、1個しかないので長蛇の列。
思わぬ時間ロスだった。
緑が綺麗で景色がいい。
すでに標高が高いので、ジャカルタより断然涼しく、肌寒いくらいだ。
でも日差しは強い。
しばらくはネギ畑やニンジン畑のわきを通る。
花が綺麗だ。
が、グデ登山は想像以上に過酷だった。
標高は2,958m。
登り始めの頃は中途半端に整備された階段状の道が続き、それが終わると木の根や石がゴロゴロしていて足場が悪く、急な傾斜の道が延々と続く。
インドネシアに来てからほとんど歩く機会もなく、予想以上に足が弱っており、もう辛いのなんのって…。
しかも標高が高いのですぐに息が切れる。
最初の計画では1時間に1回休憩を取る予定だったが、私がバテバテなので15~30分に1回休憩を取ることに。
それでも息絶え絶え。
私以外のメンバーは山の会の人たちなので全員達者。
ついには、「ガイドさんにリュック持ってもらった方がいいよ。」と言われてしまった。
いや、でも…。
「本当にバテると動けなくなるから、バテる前に持ってもらった方がいい。」とのプロからのアドバイスにより、ガイドのおじさんに荷物をお任せした。
本来、ガイドはガイドであって荷物持ちではないが、ポーターはテントを張る場所を確保するために先に登ってしまっているし、ガイドさんがとてもいい人だったので快く引き受けてくれた。
そんなわけで私だけ手ぶらで登山再開。
荷物がない分、ずいぶんと楽にはなったが、やはりしんどいことには変わりない。
もう無理じゃないだろうかと思った時、鬼のような傾斜が終わり、ようやく平地に出た!
そこはエーデルワイスが咲き乱れるアルン・アルン(高原)。
…の、はずが、霧で見えん
ちなみにこれがエーデルワイスの木。
まだ2分咲きぐらい。
インドネシアのエーデルワイスは、我々が持っている、ヨーロッパの山に咲く可憐なイメージとは裏腹に、「木」である。
少し霧が晴れてきて、周りが見渡せるようになると、エーデルワイスの木が羊の群れのように見える。
ところで先に行ったポーターたちは、「いい場所を確保してテント張っとけ」と指示したにも関わらず、「雨が降っていたから」と言って、全く場所の確保もテント張りもしていなかった…。
思い通りにならない、インドネシア。
とりあえずテント張りをし、一服するためにお茶を沸かす。
明日の朝ごはん用の食材はよけておく。
まわりには木いちごらしきものが生っていたが、食べてみるとちょっと酸味が強すぎた。
テントを張った後、S部さんと私はしばし昼寝。
その他男性陣は散策へ出かけた。
時折雨が降ったり止んだり、雷が鳴ったり。
夕方になり、夕飯準備を開始。
今日の夕飯メニューはY田君のリクエストによるキムチ鍋。
S部さんと私であらかじめ切って持ってきていた野菜やお肉などを鍋に投入。
だんだん野菜に火が通ってきた。
最後の〆はうどん。
6人ですっかり綺麗に平らげた。
夜は特にすることもないので、7時ごろには就寝。
明日はまた午前4時半出発で頂上をめざし、ご来光を拝む。
疲れているからぐっすり眠れるだろうと思いきや、周りでテントを張っているインドネシア人たちが大声で騒いでうるさい。
すぐ近くにテントを張っているガイドさんとポーターさんたちも、一晩中おしゃべりしたり、トランプなどをしているようだ。
う~ん、他人を思いやるマナーというのは、まだインドネシアでは根づいていない。
聞くところによると、インドネシア人の中には昼間の暑さを避けるため、日が暮れてから登り始める人たちもいるらしい。
真っ暗な中の登山、大変危険だと思うが、そんなことお構いなし。
夜通し歩いて、疲れたらその辺で寝るという、かなり野生児的な行動を取っているようだ。
だから夜中に高原に到着してワイワイ騒ぐ人もいるし、そもそも寝不足になることなど気にせずテント内で大騒ぎしている若者も多い。
そんなわけでほとんど眠れないまま3時半起床。
テントを畳んで、真っ暗な中ヘッドランプをつけて頂上を目指す。
お天気は悪い。
頂上に着いた時はまだ真っ暗だったが、
少しずつ日が差し始めた。
薄明るくなってくると、温泉の煙が立ち上っているのが見える。
あたりは硫黄のにおいに満ちている。
結構すごいよ、火口。
朝ごはんはサンドイッチ。
レタス、チーズ、ハムを各自挟む。
ところでイスラム教徒の女の子は、登山の時もジルバッブをかぶり、ロングスカートだった。
山はところどころ紅葉しているように見える。
正体はこの木。
葉っぱが赤くなっている。
たまに黄色い矢印を見つけると、カミーノが思い出される。
様々な角度から火口を眺める。
空が美しい。
さあ、ここからは長い長い下山開始。
苔むした、屋久島のような風景に出合う。
こちら、「絞め殺しの木」と呼ばれているそうだ。
ツタが木を絞め殺しているらしい。
これはランの一種。
こういう白い花もところどころに咲いていた。
時折滝などにも出合う。
少し行くと、温泉の水が滝となり川となっている場所に出た。
中で体を洗っている人などもいる。
湯気がもうもうと立ち込めるなか、この温泉の川を下っていく。
湯気でよく見えない上に、足元は非常に滑りやすく、張ってあるロープに捕まり慎重に降りていく。
いや~、なかなかいいよ、グデ山!
しかし、上り同様に下りも非常にきつい。
とにかく足場が悪く、足首や膝に負担がかかる。
自然の山だからしょうがないけど、あまりに過酷だ。
(富士山の下りの砂走りもしんどかったなあ…。)
途中まで降りたところで、なんとツワモノのS井さんは我らと別れ、ガイドさん1人を連れて別ルートで隣のパンランゴ山へと登って行った。
ちなみにパンランゴの標高は3,019m。
あり得ない…。
S部さんはじめ、他のメンバーも1回の登山でグデとパンランゴ両方に登ったことがあるそうだが、それはそれは過酷だったらしい。(そりゃそうだ。)
S井さんを見送り、我らは下へ下へと降りていく。
途中から大雨も降り始め、もう何も考えられないぐらい、辛い。
ようやくほぼ下りきったところで、「チボダスの滝」を見に寄り道。
こんな雰囲気のある遊歩道が作られているが、
メンテはほとんどできてない。
入場料4万2,000ルピアのうちの2,000ルピアは保険料らしいが、たった20円の掛け金で得られる保険などたかが知れている。
Y田君によると、観光客が死亡した場合は、800万ルピアの保障が出るとのこと。
…。死んでもたったの8万円しかもらえない…。
途上国では死にたくない。
チボダスの滝は見事だった。
ここから見えるだけで3本あった。
ちなみにこのエリアは軽装の観光客でにぎわっており、若者のデートスポットともなっているようだ。
あと、中東から来た人たちが滝の近くでお祈りをしており、それをなぜか同じイスラム教徒のインドネシア人が珍しげに写真を撮っている光景に出くわした。
余談だが、中東から来てしばらく滞在する人たちが地元の女の子たちを宿に連れ込むことが多く、景色の良さとは裏腹にこの辺りの風紀はあまりよくないらしい。
滝でマイナスイオンを補給したあとも、延々と石畳を下る。
わざわざこんなとこ石畳にしなくても、自然の道の方がよっぽど足には優しいのに…。
フラフラになって下っていると、背後から「追いついたぞ~」という声が。
まさかと思って振り返ると、パンランゴ登頂も済ませたS井氏の姿が!
まままさか追いつかれるとは!
そしてそのまま笑顔でS井氏は我らを抜き去って行った。
ま、まさか追い抜かれるとは…。
あの人、人間じゃない。
もう疲労もピークの頃、ようやく下山が終了した。
夕方4時ぐらい。
そのあと、「塩気のあるものが食べたい」というメンバーの意見が一致し、ミー・バクソ(鶏肉団子が入ったラーメン)を食べに行った。
肉団子だけでなく、もつみたいなのも入っていておいしかった。
その後、Y田君の家で軽くお湯浴びをさせてもらい、服を着替えてさっぱり。
このままK原さんの車で無事にジャカルタまで帰り着くはずが、最後を締めくくるトラブルが待っていた…。
帰りの車でY田君が「胃の調子が悪い」と言い出し、そのうち「吐き気がする」とも言い出した。
渋滞しているので、ジャカルタまでは3時間はかかる。
途中、何度もコンビニに停車してトイレに駆け込み、高速に乗ってしまってからは高速道路で止まってゲエゲエ言い出した。
おいおい、インドネシアでは追い越しのために平気で路肩も走る車がいるから、こんなとこで停車してて後ろから追突されたらシャレにならんぞ!
Y田君の症状がどんどん悪化し、最後は24時間やっているタケノコクリニックという日本人向けのクリニックに連れ込んだ。
ちょうどK原さんがその建物の上に住んでいることもあり、とても助かった。
そこで点滴などを受け、一晩過ごしたY田君は、翌朝提携病院に移動してもう1泊入院。
我らは疲れているというのにY田君をタケノコクリニックに連れ込み、会社の看護師に応援を頼んだあと、大量の荷物を持ってタクシーで帰宅する羽目に。
女2人で自分たちのリュックだけじゃなく、テントその他装備が入ったリュック2個、自分の着替え荷物、さらにはぶっ倒れたY田君の荷物まで面倒を見ることになった…。
建物のフロントで、「ブルーバードタクシーを呼んでください」と依頼したのに、到着したのはまさかのシルバーバード。
シルバーバードの料金はブルーバードの2倍である…。
つべこべ言ってられないので、泣く泣くシルバーバードに乗り込み、アパートへ帰り着いたのは夜の10時半。
心底疲れた…。
そしてY田が「僕が洗っときますよ~」と豪語していたテント2張が、S部さんと私の手に残され、自宅アパートでテントを洗う羽目に…。
追伸:
インドネシアには素晴らしい自然がたくさんあるが、どこへ行っても深刻なのがゴミ問題。
街でも山でも、人々は躊躇なくゴミのポイ捨てをするので、それはもうひどい状態になっている。
せっかくの美しい景色も、おびただしいゴミの量を見てげんなりする。
ちなみにインドネシアにゴミ焼却場はなく、ジャカルタなどの大都市から出る大量の生活ごみは特定の場所に集められ、埋め立てというか、放置されるのみである。
インドネシア入り後初めての登山、トラブルに始まりトラブルに終わった。
アパート出発は午前4時半。
グヌン会(山の会)のS井さんの車で、私とお向かいのS部さん、それから近くに住むK原さんがピックアップしてもらう手筈となっていた。
が、朝4時過ぎにS井さんから入った一報は、「運転手が来ない。連絡もつかない。」だった。
出たよ、インドネシア人。
さて、どうするか。
急きょレンタカーを借りるにしても、午前4時過ぎでは当然電話もつながらない。
レンタカー会社が営業を始めてから手配していては、ジャカルタの道路が大渋滞するので、登山するには間に合わなくなる。
今回の案内役であるY田君に相談すると、「○○バスターミナルからチボダス行きのバスが出ている」とのこと。
バスかぁ…。
日帰り登山ぐらいならバスでもいいけど、泊まりの登山なのでテントやら食料やら荷物がとにかく多い。
この状態でバスに乗り込んでチボダスまで行ってたら、現地到着前に体力を使い果たしそうだ…。
K原さんもタクシーでうちのアパートまでやってきた。
話し合いの結果、「とりあえずバスをトライするしかないね。」ということになった。
S井さんにはバスターミナルへ向かってもらい、我々もタクシーを呼んでバスターミナルを目指した。
タクシーの中で運転手さんと話していると、なんと「このタクシーでチボダスまで行ってもいいよ」と言ってくれた!
すごい!普通はそんな長距離、タクシーは行ってくれない。
余談だが、こっちの運転手は、お客を乗せている途中でも、「もう家に帰りたいから降りてくれ。」とか平気で言う。
あと、「渋滞してるから嫌だ。そこへは行きたくない。」とか、ジャカルタでタクシー運転手をしている者にあるまじき発言をしたりもする。
そんな運転手が多い中、この運転手さんは遠くはるばるチボダスまで乗っけてくれるというのだ!
まさに渡りに船。
早速S井さんにも連絡。
先にバスターミナルに到着して待っていたS井さんをピックアップし、大人4人と荷物でぎゅうぎゅうになったタクシーでチボダスへと向かった。
こんな早朝の暗いうちからジャカルタの道路は結構な交通量があったが、渋滞はしていなかったため、スイスイ走って2時間ほどで無事にチボダスへ到着。
予定時刻より30分遅れただけで済んだ。
タクシー代も、高速料金やらチップやら色々入れても3,000~4,000円で済んだので、みんなで割れば大した金額ではなかった。
チボダスへ入ったころにようやくS井さんが自分の運転手と連絡がつき、「なぜ4時に来なかったんだ?」と聞くと、「午後の4時かと思っていました。」という、予想通りの答えが返ってきた。
S井さんは温厚な方なので怒りもせず、「ああ、そうか。」と言ってたが、私とS部さんは「絶対寝坊だよね。最初からその言い訳考えてたよね。」という意見で合意した。
それはさておき、現地ではグデ・パンランゴ国立公園勤務のY田君が待ち構えており、もう1人の参加者S谷さんもやってきた。
出発前にブブール・アヤム(鶏のお粥)とお茶の朝食を。
両方で70円ぐらい。
この辺りは登山客用にお土産物屋さんやら、食べ物屋さんやらがずらりと並んでいる。
腹ごしらえのあと、水を買いにコンビニへ。
実はバスで移動かもしれないと分かった時に、少しでも荷物を軽くするために半分水は置いてきたのだ。
個人用の水と料理用の水を購入し、いざ登山口へ。
ガタガタ道を車でしばし進み、ようやく到着。
ガイド1名、ポーター3名を雇ってあるので、ポーターに預ける水、テント、食料などと自分で持つ物を分ける。
そこから少し上ると入山登録をする小屋がある。
登山前にトイレに行くと、1個しかないので長蛇の列。
思わぬ時間ロスだった。
緑が綺麗で景色がいい。
すでに標高が高いので、ジャカルタより断然涼しく、肌寒いくらいだ。
でも日差しは強い。
しばらくはネギ畑やニンジン畑のわきを通る。
花が綺麗だ。
が、グデ登山は想像以上に過酷だった。
標高は2,958m。
登り始めの頃は中途半端に整備された階段状の道が続き、それが終わると木の根や石がゴロゴロしていて足場が悪く、急な傾斜の道が延々と続く。
インドネシアに来てからほとんど歩く機会もなく、予想以上に足が弱っており、もう辛いのなんのって…。
しかも標高が高いのですぐに息が切れる。
最初の計画では1時間に1回休憩を取る予定だったが、私がバテバテなので15~30分に1回休憩を取ることに。
それでも息絶え絶え。
私以外のメンバーは山の会の人たちなので全員達者。
ついには、「ガイドさんにリュック持ってもらった方がいいよ。」と言われてしまった。
いや、でも…。
「本当にバテると動けなくなるから、バテる前に持ってもらった方がいい。」とのプロからのアドバイスにより、ガイドのおじさんに荷物をお任せした。
本来、ガイドはガイドであって荷物持ちではないが、ポーターはテントを張る場所を確保するために先に登ってしまっているし、ガイドさんがとてもいい人だったので快く引き受けてくれた。
そんなわけで私だけ手ぶらで登山再開。
荷物がない分、ずいぶんと楽にはなったが、やはりしんどいことには変わりない。
もう無理じゃないだろうかと思った時、鬼のような傾斜が終わり、ようやく平地に出た!
そこはエーデルワイスが咲き乱れるアルン・アルン(高原)。
…の、はずが、霧で見えん
ちなみにこれがエーデルワイスの木。
まだ2分咲きぐらい。
インドネシアのエーデルワイスは、我々が持っている、ヨーロッパの山に咲く可憐なイメージとは裏腹に、「木」である。
少し霧が晴れてきて、周りが見渡せるようになると、エーデルワイスの木が羊の群れのように見える。
ところで先に行ったポーターたちは、「いい場所を確保してテント張っとけ」と指示したにも関わらず、「雨が降っていたから」と言って、全く場所の確保もテント張りもしていなかった…。
思い通りにならない、インドネシア。
とりあえずテント張りをし、一服するためにお茶を沸かす。
明日の朝ごはん用の食材はよけておく。
まわりには木いちごらしきものが生っていたが、食べてみるとちょっと酸味が強すぎた。
テントを張った後、S部さんと私はしばし昼寝。
その他男性陣は散策へ出かけた。
時折雨が降ったり止んだり、雷が鳴ったり。
夕方になり、夕飯準備を開始。
今日の夕飯メニューはY田君のリクエストによるキムチ鍋。
S部さんと私であらかじめ切って持ってきていた野菜やお肉などを鍋に投入。
だんだん野菜に火が通ってきた。
最後の〆はうどん。
6人ですっかり綺麗に平らげた。
夜は特にすることもないので、7時ごろには就寝。
明日はまた午前4時半出発で頂上をめざし、ご来光を拝む。
疲れているからぐっすり眠れるだろうと思いきや、周りでテントを張っているインドネシア人たちが大声で騒いでうるさい。
すぐ近くにテントを張っているガイドさんとポーターさんたちも、一晩中おしゃべりしたり、トランプなどをしているようだ。
う~ん、他人を思いやるマナーというのは、まだインドネシアでは根づいていない。
聞くところによると、インドネシア人の中には昼間の暑さを避けるため、日が暮れてから登り始める人たちもいるらしい。
真っ暗な中の登山、大変危険だと思うが、そんなことお構いなし。
夜通し歩いて、疲れたらその辺で寝るという、かなり野生児的な行動を取っているようだ。
だから夜中に高原に到着してワイワイ騒ぐ人もいるし、そもそも寝不足になることなど気にせずテント内で大騒ぎしている若者も多い。
そんなわけでほとんど眠れないまま3時半起床。
テントを畳んで、真っ暗な中ヘッドランプをつけて頂上を目指す。
お天気は悪い。
頂上に着いた時はまだ真っ暗だったが、
少しずつ日が差し始めた。
薄明るくなってくると、温泉の煙が立ち上っているのが見える。
あたりは硫黄のにおいに満ちている。
結構すごいよ、火口。
朝ごはんはサンドイッチ。
レタス、チーズ、ハムを各自挟む。
ところでイスラム教徒の女の子は、登山の時もジルバッブをかぶり、ロングスカートだった。
山はところどころ紅葉しているように見える。
正体はこの木。
葉っぱが赤くなっている。
たまに黄色い矢印を見つけると、カミーノが思い出される。
様々な角度から火口を眺める。
空が美しい。
さあ、ここからは長い長い下山開始。
苔むした、屋久島のような風景に出合う。
こちら、「絞め殺しの木」と呼ばれているそうだ。
ツタが木を絞め殺しているらしい。
これはランの一種。
こういう白い花もところどころに咲いていた。
時折滝などにも出合う。
少し行くと、温泉の水が滝となり川となっている場所に出た。
中で体を洗っている人などもいる。
湯気がもうもうと立ち込めるなか、この温泉の川を下っていく。
湯気でよく見えない上に、足元は非常に滑りやすく、張ってあるロープに捕まり慎重に降りていく。
いや~、なかなかいいよ、グデ山!
しかし、上り同様に下りも非常にきつい。
とにかく足場が悪く、足首や膝に負担がかかる。
自然の山だからしょうがないけど、あまりに過酷だ。
(富士山の下りの砂走りもしんどかったなあ…。)
途中まで降りたところで、なんとツワモノのS井さんは我らと別れ、ガイドさん1人を連れて別ルートで隣のパンランゴ山へと登って行った。
ちなみにパンランゴの標高は3,019m。
あり得ない…。
S部さんはじめ、他のメンバーも1回の登山でグデとパンランゴ両方に登ったことがあるそうだが、それはそれは過酷だったらしい。(そりゃそうだ。)
S井さんを見送り、我らは下へ下へと降りていく。
途中から大雨も降り始め、もう何も考えられないぐらい、辛い。
ようやくほぼ下りきったところで、「チボダスの滝」を見に寄り道。
こんな雰囲気のある遊歩道が作られているが、
メンテはほとんどできてない。
入場料4万2,000ルピアのうちの2,000ルピアは保険料らしいが、たった20円の掛け金で得られる保険などたかが知れている。
Y田君によると、観光客が死亡した場合は、800万ルピアの保障が出るとのこと。
…。死んでもたったの8万円しかもらえない…。
途上国では死にたくない。
チボダスの滝は見事だった。
ここから見えるだけで3本あった。
ちなみにこのエリアは軽装の観光客でにぎわっており、若者のデートスポットともなっているようだ。
あと、中東から来た人たちが滝の近くでお祈りをしており、それをなぜか同じイスラム教徒のインドネシア人が珍しげに写真を撮っている光景に出くわした。
余談だが、中東から来てしばらく滞在する人たちが地元の女の子たちを宿に連れ込むことが多く、景色の良さとは裏腹にこの辺りの風紀はあまりよくないらしい。
滝でマイナスイオンを補給したあとも、延々と石畳を下る。
わざわざこんなとこ石畳にしなくても、自然の道の方がよっぽど足には優しいのに…。
フラフラになって下っていると、背後から「追いついたぞ~」という声が。
まさかと思って振り返ると、パンランゴ登頂も済ませたS井氏の姿が!
まままさか追いつかれるとは!
そしてそのまま笑顔でS井氏は我らを抜き去って行った。
ま、まさか追い抜かれるとは…。
あの人、人間じゃない。
もう疲労もピークの頃、ようやく下山が終了した。
夕方4時ぐらい。
そのあと、「塩気のあるものが食べたい」というメンバーの意見が一致し、ミー・バクソ(鶏肉団子が入ったラーメン)を食べに行った。
肉団子だけでなく、もつみたいなのも入っていておいしかった。
その後、Y田君の家で軽くお湯浴びをさせてもらい、服を着替えてさっぱり。
このままK原さんの車で無事にジャカルタまで帰り着くはずが、最後を締めくくるトラブルが待っていた…。
帰りの車でY田君が「胃の調子が悪い」と言い出し、そのうち「吐き気がする」とも言い出した。
渋滞しているので、ジャカルタまでは3時間はかかる。
途中、何度もコンビニに停車してトイレに駆け込み、高速に乗ってしまってからは高速道路で止まってゲエゲエ言い出した。
おいおい、インドネシアでは追い越しのために平気で路肩も走る車がいるから、こんなとこで停車してて後ろから追突されたらシャレにならんぞ!
Y田君の症状がどんどん悪化し、最後は24時間やっているタケノコクリニックという日本人向けのクリニックに連れ込んだ。
ちょうどK原さんがその建物の上に住んでいることもあり、とても助かった。
そこで点滴などを受け、一晩過ごしたY田君は、翌朝提携病院に移動してもう1泊入院。
我らは疲れているというのにY田君をタケノコクリニックに連れ込み、会社の看護師に応援を頼んだあと、大量の荷物を持ってタクシーで帰宅する羽目に。
女2人で自分たちのリュックだけじゃなく、テントその他装備が入ったリュック2個、自分の着替え荷物、さらにはぶっ倒れたY田君の荷物まで面倒を見ることになった…。
建物のフロントで、「ブルーバードタクシーを呼んでください」と依頼したのに、到着したのはまさかのシルバーバード。
シルバーバードの料金はブルーバードの2倍である…。
つべこべ言ってられないので、泣く泣くシルバーバードに乗り込み、アパートへ帰り着いたのは夜の10時半。
心底疲れた…。
そしてY田が「僕が洗っときますよ~」と豪語していたテント2張が、S部さんと私の手に残され、自宅アパートでテントを洗う羽目に…。
追伸:
インドネシアには素晴らしい自然がたくさんあるが、どこへ行っても深刻なのがゴミ問題。
街でも山でも、人々は躊躇なくゴミのポイ捨てをするので、それはもうひどい状態になっている。
せっかくの美しい景色も、おびただしいゴミの量を見てげんなりする。
ちなみにインドネシアにゴミ焼却場はなく、ジャカルタなどの大都市から出る大量の生活ごみは特定の場所に集められ、埋め立てというか、放置されるのみである。
お遍路お疲れ様でした。
ありましたか、黄色い→。
思わず反応してしまいますよね。
今回の登山ばかりは本当にきつく、尋常じゃない筋肉痛ぶりでした。
4日目にして薬局でタイガーバームを買って塗りたくったところ、かなりの効果あり。
恐るべし、タイガーバーム。(おかげでちょっと肌荒れしましたが…。)
お伊勢さんまでの100キロ歩行以上のダメージが足にあったので、一時はどうなることかと思いましたが、1週間もすれば通常の状態に戻りました。
人間の体ってすごいなあ、と思いましたよ。
写真を追っているだけで、行った気になり、ミー・バクソの写真を見てほっとしてしまったわ。経済的空想旅行を楽しませてもらいました
次回の旅行ではトラブルのないことをお祈りします。
まさかここまで本格的とは思いませんでした。
いや、「登山するから日本からトレッキングシューズや寝袋を取り寄せろ」と言われた時点で気がつくべきだったかもしれません。
山の会のメンバーは、次はサラック山というところに登る予定にしているそうですが、つい先日飛行機がサラック山に墜落してました…。
私はもうちょっと軽めの山登りの機会を待っております。
運転手さんには笑いました。
私も昔、重要なときに遅刻されたら、
「寝てた」と一言言われましたよ~
Y田さんは大丈夫だったのですか??
山登り、これからも楽しんでくださいね。
長白山へ行きたいのですが、無理かも・・・
火山の景観はすばらしかったですが、次は自分の身の丈に合った登山をしようと心に誓いました…。
運転手、ありがちですよね。
S井さんは「車ごと逃げられたんじゃないか」と心配していたので、連絡ついただけで安心しちゃったみたいです。
私だったらクビにしてますな。。。
長白山って、中国と北朝鮮の国境の?
色んな意味でキケンそう…。
長白山は朝鮮族にとっては聖なる山だそうです。
頂上近くの「天湖」はそれはそれは
きれいだそうで、滞在中の日本人も連休に
よく行くらしいです。
行きたいけど・・・ううう(T_T)
私も是非行ってみたいなあ、長白山の天湖。
行ってきてほしいなあ、黒猫さんに。