「あれも大事、これも大事」と悩むのではなく、「何が本質なのか?」を考え抜く。そして、本当に大切な1%に100%集中する。シンプルに考えなければ、何も成し遂げることはできない――。LINE(株)CEO退任後、ゼロから新事業「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏は、何を考え、何をしてきたのか?本連載では、待望の初著作『シンプルに考える』(ダイヤモンド社)から、森川氏の仕事術のエッセンスをご紹介します。
優秀な人ほど「喧嘩」をしない
率直に伝える企業文化──。
僕は、これをいろんなところでお薦めしています。
ホンネをオブラートに包むことで、わかりにくいコミュニケーションをするよりも、お互いの真意が明確にわかるので、意思疎通に齟齬が生まれない。誤解や勘違いに基づいて仕事を進めて、後でやり直すようなムダもなくなる。相手の真意を探り合うような手間もストレスもなくなる。結果的に、仕事が格段にスムースに回るようになるからです。
この話をすると、必ず質問されることがあります。
「社内で衝突が増えてたいへんではないですか?」
もっともな質問だと思います。実際、LINE(株)で率直にモノを言うようになった当初、社内ではしょっちゅう喧嘩が起きました。社員はみな、それぞれ自分の「腕」に覚えがある者ばかり。「そのやり方は違う」「こんなクオリティじゃダメだ」……。そんな小競り合いが頻発したものです。
だけど、僕たちはそれを放置。あえて、とりなそうとはしませんでした。なぜなら、お互い納得もしていないのに、なんとなく丸く収めることに意味があるとは思えなかったからです。
そのうち、面白いことを発見しました。 優秀な人ほど喧嘩をしないのです。 彼らも人間です。カチンとくることを言われると腹を立てる。だから、喧嘩になる。だけど、すぐに気づきます。彼らは「いいもの」がつくりたいと思って働いていますから、喧嘩している時間がもったいない。そんなことに時間を使うのが、バカバカしいことに気づくのです。
そして、喧嘩をやめて議論を始めます。どちらの意見がユーザーのためになるか? 判断基準はこの一点。自分の意見と相手の意見をぶつけ合い、より説得力のあるほうを受け入れる。あるいは、両者の意見を戦わせることで、よりよいアイデアを生み出す。そして、自分が納得する結論を得たら、その結論をもとに全力を尽くす。そんな、建設的な議論を始めるのです。
「自分のために働く人」は淘汰される
一方で、いつまでも喧嘩を続ける人もいます。
「勝敗」がつくまで一歩も譲らない。「自分が正しい」ということを相手が認めるまで、喧嘩を続けるのです。
なぜ、そうなるのか? 僕は、じっと観察しました。そして、わかったのです。要するに、彼らは自分のために戦っている。「自分の正しさ」を守るために、相手を攻撃してやまないのです。決して、ユーザーのために戦っているわけではない。結局のところ、彼らは「いいもの」をつくりたいとは思っていない、ということ。もっと言えば、自分のために働いているのです。
だから、優秀な人たちは、「自分の正しさ」に固執する人を相手にしなくなります。「いいもの」をつくりたいと思っていない人といくらぶつかり合っても、そこに生まれるのはつまらない「勝ち負け」だけ。何も価値あるものが生まれないからです。そして、「いいもの」をつくりたい者だけが集まって、優れたプロダクトをつくり出すようになるのです。
こうして、社内で自然淘汰が始まりました。 喧嘩をする人は、自分のために働くのをやめるか、会社を去るか。自然と、その選択を迫られるようになったのです。
いまでも、LINE株式会社に新しく入った人は少々驚くそうです。 社員同士が、本音をオブラートに包むことなく議論を交わしているからです。しかし、それは喧嘩とはまったく異なります。たとえ、厳しい意見を投げつけられても、それは自分を攻撃しているのではない。ユーザーのために真剣に「答え」を探しているのです。そこにあるのは、お互いに「いいもの」をつくるために働いているという信頼感。この信頼感がベースにあるからこそ、率直にモノを言う文化が有効に機能する。よりよいプロダクトを生み出す原動力となるのです。
逆に言えば、そのような信頼関係のない会社で、率直にモノを言う文化を推進しようとするのは非常に危険です。なぜなら、自分のために働く者同士が潰し合いを始めるからです。結局のところ、問われているのは、その会社に集まった人々が「何のために働いているのか?」ということ。すなわち、「どんな会社なのか?」ということなのです。
優秀な人ほど「喧嘩」をしない
率直に伝える企業文化──。
僕は、これをいろんなところでお薦めしています。
ホンネをオブラートに包むことで、わかりにくいコミュニケーションをするよりも、お互いの真意が明確にわかるので、意思疎通に齟齬が生まれない。誤解や勘違いに基づいて仕事を進めて、後でやり直すようなムダもなくなる。相手の真意を探り合うような手間もストレスもなくなる。結果的に、仕事が格段にスムースに回るようになるからです。
この話をすると、必ず質問されることがあります。
「社内で衝突が増えてたいへんではないですか?」
もっともな質問だと思います。実際、LINE(株)で率直にモノを言うようになった当初、社内ではしょっちゅう喧嘩が起きました。社員はみな、それぞれ自分の「腕」に覚えがある者ばかり。「そのやり方は違う」「こんなクオリティじゃダメだ」……。そんな小競り合いが頻発したものです。
だけど、僕たちはそれを放置。あえて、とりなそうとはしませんでした。なぜなら、お互い納得もしていないのに、なんとなく丸く収めることに意味があるとは思えなかったからです。
そのうち、面白いことを発見しました。 優秀な人ほど喧嘩をしないのです。 彼らも人間です。カチンとくることを言われると腹を立てる。だから、喧嘩になる。だけど、すぐに気づきます。彼らは「いいもの」がつくりたいと思って働いていますから、喧嘩している時間がもったいない。そんなことに時間を使うのが、バカバカしいことに気づくのです。
そして、喧嘩をやめて議論を始めます。どちらの意見がユーザーのためになるか? 判断基準はこの一点。自分の意見と相手の意見をぶつけ合い、より説得力のあるほうを受け入れる。あるいは、両者の意見を戦わせることで、よりよいアイデアを生み出す。そして、自分が納得する結論を得たら、その結論をもとに全力を尽くす。そんな、建設的な議論を始めるのです。
「自分のために働く人」は淘汰される
一方で、いつまでも喧嘩を続ける人もいます。
「勝敗」がつくまで一歩も譲らない。「自分が正しい」ということを相手が認めるまで、喧嘩を続けるのです。
なぜ、そうなるのか? 僕は、じっと観察しました。そして、わかったのです。要するに、彼らは自分のために戦っている。「自分の正しさ」を守るために、相手を攻撃してやまないのです。決して、ユーザーのために戦っているわけではない。結局のところ、彼らは「いいもの」をつくりたいとは思っていない、ということ。もっと言えば、自分のために働いているのです。
だから、優秀な人たちは、「自分の正しさ」に固執する人を相手にしなくなります。「いいもの」をつくりたいと思っていない人といくらぶつかり合っても、そこに生まれるのはつまらない「勝ち負け」だけ。何も価値あるものが生まれないからです。そして、「いいもの」をつくりたい者だけが集まって、優れたプロダクトをつくり出すようになるのです。
こうして、社内で自然淘汰が始まりました。 喧嘩をする人は、自分のために働くのをやめるか、会社を去るか。自然と、その選択を迫られるようになったのです。
いまでも、LINE株式会社に新しく入った人は少々驚くそうです。 社員同士が、本音をオブラートに包むことなく議論を交わしているからです。しかし、それは喧嘩とはまったく異なります。たとえ、厳しい意見を投げつけられても、それは自分を攻撃しているのではない。ユーザーのために真剣に「答え」を探しているのです。そこにあるのは、お互いに「いいもの」をつくるために働いているという信頼感。この信頼感がベースにあるからこそ、率直にモノを言う文化が有効に機能する。よりよいプロダクトを生み出す原動力となるのです。
逆に言えば、そのような信頼関係のない会社で、率直にモノを言う文化を推進しようとするのは非常に危険です。なぜなら、自分のために働く者同士が潰し合いを始めるからです。結局のところ、問われているのは、その会社に集まった人々が「何のために働いているのか?」ということ。すなわち、「どんな会社なのか?」ということなのです。