世界的な景気悪化懸念等を背景に,株式市場等から安全資産としての国債への資金供給が続いている。長期金利の指標銘柄である10年物国債の流通利回りは,前日比0.020パーセント低下して1.075パーセントを付けているが,これは2008年8月以来8年ぶりの低水準となるものである。
これを受けて官直人首相は,7月3日,甲府市内の街頭演説で,「日本は自分の力でちゃんと責任ある行動を取るだろうと世界が思っているから,国債の金利も下がっている。」などと述べて,自らの主張する財政健全化の姿勢が評価されているとする見方を示した。
官首相の言いたいことは次のようなものであろう。つまり政府は,様々な無駄の縮減を推進するとともに,税収の確保としての消費税の値上げを含む税制の抜本改革を大胆に推し進めることにより,危機的な現在の財政状況の立て直しが行われると期待できるから,市場は日本の財政破綻はないと考え,安心して国債の購入を続けているのである。市場の財政健全化策に対する信頼の帰結として国債への買いが集中し,必然としてその金利が低下したのだと。
確かに,市場が財政再建策に一定の期待を持っているからこそ,長期金利の上昇を招くには至っていないという見方もできなくはない。しかし,国の財政が危機的な状態にあって,早晩予算の編成自体が立ち行かなくなる恐れがあることは官首相も十分認識しているものの,それを選挙期間中ストレートに国民に問うことはできない。
長期金利低下の本当の理由はもっと別に求めるべきである。
経済の基本原則からすれば,政府の負債残高(国債の発行残高)が増大すればするほど,国債価格は下落し,長期金利は上昇するはずであるのに,逆に長期金利は下がっている。
これは,現在,新たに商売を始めようとする人や,売り上げの増加を見込んで設備投資に踏み切る事業者等がほとんどいなく,そのように資金需要がないため金融機関は貸し出しを行えず,結果的に資金の運用難に陥って国債の購入に至っている。それほどに国内における産業は活性化せず,資金の需要が落ち込んでいるのである。
このように長期金利が低位に安定しているのは,デフレの下で資金需要が極端に落ち込んでいるからであって,市場が,政府の財政再建策に期待し,安全な投資先として国債の購入を選択しているからではない。
巨額の借金を負う日本の財政は,間もなく破たんするのではないかということが最近話題になっている。政府は,37兆の税収しかないのに,税収を大きく上回る国債を発行して97兆円の一般予算を組み,今後も毎年50兆円以上の国債を発行しなければ毎年の予算が組めないという状況にあることに鑑みると,誰が考えても年金,医療費等の社会給付の水準を落とすとともに,一方で増税を断行して財政再建を図るしかないのである。
日本の財政破綻論については,日本には個人金融資産が1400兆円ある上,日本の国債は100パーセント円建てであり,しかもその国債の引き受けは90パーセント強が郵貯,銀行等の国内金融機関であるから,政府債務の7割を外国人が引き受けするギリシャとは異なり,日本が破たんするようなことはあり得ないのであり,日本人が日本に貸しているのだから誰も困らないとする見解がある。
しかしこのような国と国内金融機関のもたれ合いによって維持されるファイナンスがいつまでも維持できるはずがない。ギリシャのようなドラスチック崩壊には至らないにしても,巨大な蛸が自分の足を食べながら生きていくような日本の財政はいずれ破たんを免れないだろう。借金は借金であることに変わりはない。
また,異常な低金利のおかげで本来得られるはずの利息を国民が郵貯等を通じて政府に納付しているのと同じ効果を及ぼしているともいえる。個人金融資産1400兆円の2パーセントとしても毎年28兆円もの利息は預金者に払われず,その分,安い金利のお金を政府が調達している。
国に税を強制的に徴収されるか,知らぬ間に徴収されているかの違いに過ぎないのかもしれないが,それだけの状況が揃っていながら,誰も尻に火がつくまで,痛みを伴う施策を提示しようとしない。
だから個人としてはできるだけ不必要な出費を控え,嵐が来たときにも困らない備えをしておかなければならないのだろう。
これを受けて官直人首相は,7月3日,甲府市内の街頭演説で,「日本は自分の力でちゃんと責任ある行動を取るだろうと世界が思っているから,国債の金利も下がっている。」などと述べて,自らの主張する財政健全化の姿勢が評価されているとする見方を示した。
官首相の言いたいことは次のようなものであろう。つまり政府は,様々な無駄の縮減を推進するとともに,税収の確保としての消費税の値上げを含む税制の抜本改革を大胆に推し進めることにより,危機的な現在の財政状況の立て直しが行われると期待できるから,市場は日本の財政破綻はないと考え,安心して国債の購入を続けているのである。市場の財政健全化策に対する信頼の帰結として国債への買いが集中し,必然としてその金利が低下したのだと。
確かに,市場が財政再建策に一定の期待を持っているからこそ,長期金利の上昇を招くには至っていないという見方もできなくはない。しかし,国の財政が危機的な状態にあって,早晩予算の編成自体が立ち行かなくなる恐れがあることは官首相も十分認識しているものの,それを選挙期間中ストレートに国民に問うことはできない。
長期金利低下の本当の理由はもっと別に求めるべきである。
経済の基本原則からすれば,政府の負債残高(国債の発行残高)が増大すればするほど,国債価格は下落し,長期金利は上昇するはずであるのに,逆に長期金利は下がっている。
これは,現在,新たに商売を始めようとする人や,売り上げの増加を見込んで設備投資に踏み切る事業者等がほとんどいなく,そのように資金需要がないため金融機関は貸し出しを行えず,結果的に資金の運用難に陥って国債の購入に至っている。それほどに国内における産業は活性化せず,資金の需要が落ち込んでいるのである。
このように長期金利が低位に安定しているのは,デフレの下で資金需要が極端に落ち込んでいるからであって,市場が,政府の財政再建策に期待し,安全な投資先として国債の購入を選択しているからではない。
巨額の借金を負う日本の財政は,間もなく破たんするのではないかということが最近話題になっている。政府は,37兆の税収しかないのに,税収を大きく上回る国債を発行して97兆円の一般予算を組み,今後も毎年50兆円以上の国債を発行しなければ毎年の予算が組めないという状況にあることに鑑みると,誰が考えても年金,医療費等の社会給付の水準を落とすとともに,一方で増税を断行して財政再建を図るしかないのである。
日本の財政破綻論については,日本には個人金融資産が1400兆円ある上,日本の国債は100パーセント円建てであり,しかもその国債の引き受けは90パーセント強が郵貯,銀行等の国内金融機関であるから,政府債務の7割を外国人が引き受けするギリシャとは異なり,日本が破たんするようなことはあり得ないのであり,日本人が日本に貸しているのだから誰も困らないとする見解がある。
しかしこのような国と国内金融機関のもたれ合いによって維持されるファイナンスがいつまでも維持できるはずがない。ギリシャのようなドラスチック崩壊には至らないにしても,巨大な蛸が自分の足を食べながら生きていくような日本の財政はいずれ破たんを免れないだろう。借金は借金であることに変わりはない。
また,異常な低金利のおかげで本来得られるはずの利息を国民が郵貯等を通じて政府に納付しているのと同じ効果を及ぼしているともいえる。個人金融資産1400兆円の2パーセントとしても毎年28兆円もの利息は預金者に払われず,その分,安い金利のお金を政府が調達している。
国に税を強制的に徴収されるか,知らぬ間に徴収されているかの違いに過ぎないのかもしれないが,それだけの状況が揃っていながら,誰も尻に火がつくまで,痛みを伴う施策を提示しようとしない。
だから個人としてはできるだけ不必要な出費を控え,嵐が来たときにも困らない備えをしておかなければならないのだろう。