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アボルダージュ!!

文芸及び歴史同好会「碧い馬同人会」主宰で歴史作家・エッセイストの萩尾農が日々の思いや出来事を語ります。

真実『芝居』― 鹿賀丈史             萩尾 農

2011-07-31 | 演劇
先日、『芝居』を観た。
俳優の友人が多いこともあり、芝居はよく観る。
が、『』マークをつけてまで、『芝居』としたのは、真実(ほんとうに)芝居と感じられたからだ。
勿論、あちこちで沢山上演されている芝居は「本当のではない」とは言わない。
私の勝手な感じ方として、
「今日は、真実、芝居を観た!これが、心底、芝居だ」
と、思ったのだ。
『太陽に灼かれて』―旧ソビエト連邦のスターリンの大粛清時代の話だから、時代背景を掴んでいないと理解ができないかもしれない、若い人には苦手なものかもしれない(と言いつつ、私もスターリン時代のソビエトとなると、疎い)―等々、思っていたけど、成宮寛貴クンのおかげで若い観客も多かった。
テーマは重い。笑いは無い。
けれど、冷徹であるだろうコトフ大佐を鹿賀丈史が演ることにより、人間の哀しみが感じられた。
これは、じっと目を凝らし、耳を澄ませて、五感を研ぎ澄ませて観る芝居・・といえるかもしれない。
かつて、鐘下辰夫の作・演出の演劇集団ザ・ガジラの舞台が、そういう緊張感を孕んでいて、観ているこちらも疲れるのだが、私は、その「真剣な緊張感」を、むしろ、楽しんで、知り合いでもあるので、鐘下氏の芝居をよく観た。
そして、昨今、そういう緊張感が持てるものに出会わなくて、演劇にちょっと、寂しさを感じていた私の心を、『太陽に灼かれて』が、ある意味では衝撃的に満たした。
真実、芝居を観た―その満たされた心が、そういう言葉の表現となった。
それから、もうひとつ、この所、ミュージカルが続いていた鹿賀丈史の久しぶりのストレートプレイが、古い付き合いの私にとっては、ひどく嬉しかった。
彼の芝居を渇望していた。
ミュージカルが続いていたから、「芝居(ストレートプレイ)への鹿賀丈史の可能性」が、今、現在、どのくらいあるものか、わからなくなっていたのかもしれない。
勿論、私は、まだ、彼が俳優ではなく、私も物書きではなかった頃から知っていたこの人の俳優としての可能性を信じてはいた。
が、「数値」が欲しかった。
いや、「数値」という表現は適切ではないかもしれない。○○パーセントと表せるものではないから・・。
私の中の「納得の度合い」というものか・・。
・・で、私は、納得したのだ。観終わって・・。
「まだまだある可能性をみて、私はとっても、嬉しかったよ!」
と、終演後の楽屋での話で伝えた。
きっと、私はもう一度、観る―と、思いながら帰路についた。
そして、翌日には、完売に近いチケットを「何とかして」とお願いしている(笑)
東京ではなく、兵庫の公演で観ることにした。
ちょうど、大阪に行っている。
芝居三昧!
滞在中、『太陽に灼かれて』以外にも、いくつかの芝居をみるので、ずっと、観劇。
こんな贅沢を一度くらいはしてもよい―と自分に「許し」を与えて(笑)。
しかし、急に、大阪行きを決めたから、観劇とはいっても他の芝居のチケットが、無い!
・・で、その芝居の出演俳優さま(!)に、
「○月○日に大阪に行くことになった!ぴあにも劇場にもチケットが一枚も残っていない、お願い!」
と、無茶なお願いをして、こちらも何とかしてくれる―と、信じて(!)、何とか、なった(すごく嬉しかった!)
・・というわけで、東京でも観るのに、大阪上演の劇団新感線『髑髏城の七人』(小栗旬主演)も含めて、芝居三昧のこの夏(笑)。
それらの全てが「真実・芝居」かどうか・・・などとは考えない。
これは、感じ方の違いということだけであり、その時間、舞台の上で全力疾走している俳優たちを、私はいつも尊敬している。
それにしても、私のこの夏は「真実・芝居」ではなく「真実・芝居三昧」であることは確かだ(笑)

その何日間か、現状・現実から、ちょっと、目をそらさせてもらうので、現状について、このあと、ちょっと、書いてみよう。

七月も今日で終わり。
いつもの年と違うこの4カ月余の時間だった。
けれど、いつもの年のように、あっという間に時間は逝く。
時間は過ぎ去るが、過ぎた時間ほどには問題は解決の兆しさえないし、震災の後も災害はいつもに増しているような気がする。
そして、それら、一見、自然災害と思われるもののいくらかは人災であった事が日を追うごとに明るみに出る。
それで、私たちは、もう、深いため息をつくしかない。
私たちが考えていた以上に、原子力に関わる部署(行政)は「いい加減」だった事を、この数カ月で私たちは知り得た。
九州電力の「やらせメール」に呆れていたら、実は、原子力を監視しなければならない保安院も「やらせ」?!え~っ!・・では、私たちは何を信じたらいいのか?!
信じるものは何ひとつ無い!
こうなると政府ぐるみで国民を欺いていたということになる。
私は、民主党の味方ではないが、これは、今の政府ではない。
前政権の時からの「慣例」のようなものか―と、言いきっても、あるいは間違いではないかもしれない、原発推進の行政姿勢。
そうか、民主党政権になって、僅かでもよかった部分は、こういうことが「明るみ」にでてきたことか・・・と、あまりに、遅すぎる現政権の復興・復旧対策に希望を見出せない怒りの気持ちをなだめる(笑)
怒りや憤りといった感情は、ひとつのエネルギーではあるけれど、精神は疲弊していくので、持たないで済めばその方がよい。
若いうちは怒ってよい、大いに疑問を抱いてよい、そして、行動。
しかし、もう、若くない私たちが、この国の現状況に憤りを募らせ、拳を振り上げるのは、若い時の何倍ものエネルギーを要する。
けれど、「それなら」と黙して無関心となったら、未来は無い。
無関心であったことに、猛省をしている人々が今、巷に数多いる。
「無くなる未来」は、私たちの未来ではない。これから、来る子供たちの未来だ。
安心で安全な祖国を次世代に遺すのは、現在を生きている私たちの責務―と私は思っている。
なぜなら、私たちより前に訪れた人々は、私たちにこの国土を、故郷を遺してくれたから・・。
だから、私たちもその小さな手に渡してあげなくては・・・と思うのだ。
けれど、それが、本当に可能なのかーと、最近は、ふいと疑問が湧く。
いや、自信が無くなった。
だから、心の底の元気が失せている。
その空虚な心を『太陽に灼かれて』と「鹿賀丈史の可能性」が、ふっと満たしてくれたから、私は、元気になって、また、少し、闘えるかな、現状と・・。

今日の東京はひどく涼しい。
このあと猛暑がまた巡り、そして、「電力が足りない」と煽るのか、本当に、足りないのか―と、疑いが目いっぱい・・だ。
原発がひとつも再稼働しなければ、今、動いている原発も定期点検で徐々に停止し、来年夏には全部停止。
現に、先日まで19基稼働していたが、定期点検で停止して、現在は14基。
火力発電も稼働し始めたから、言っているほど、足りなくはないような気がする。
それに、この数日、涼しいから需要が少ない。
しかし、このままの気候がつづけばよいと安易に臨むことはできない。
作物に影響が大だ。
原発は過渡期のものとして、徐々に他のエネルギーに変えていかなければならない。
現に世界の自然エネルギーはすでに原発エネルギー量を超えている。
即、全部停止を!・・とはいわない。
けれど、本当に、真剣に、為政者たちは自分の権益ためではなく、国民の未来のために命がけで新しいエネルギーへと舵をきってほしいものである。

小栗旬クンの「いつか、きっと」その2      萩尾 農

2010-08-04 | 演劇
なぜ、「その2」かというと・・・
昨日の続きのようになったから、「その2」。
昨日、
「舞台を(板の上で演じることを)、スクリーンに姿を現すことを、まだ、棄てないで・・と、観客のわがままついでに願い、来年、公開の主演映画「岳」を楽しみにしよう。」
などと、観客のわがまま勝手を書いた翌日の今日、パソコンで他の事をいろいろと調べていたら、昔、結構、流行った(?)しかし、私は多分、何が何だかわからなかったのだろう映画『時計じかけのオレンジ』が来年、舞台になるという記事に突き当たった。
この舞台の主演が小栗旬だった。
「よかった、まだ、舞台をやるよ!」
と、内心でガッツポーズ(笑)
「カリギュラ」を見た脚本サイトが「時計じかけのオレンジ」の主演を小栗旬ーと決めたようだ。どちらも「狂気」。
さて、来年は年明け早々から、久しぶりに「狂気」に浸ろうかな…(笑)
「お前はいつも、狂気じゃないか」・・と、言わないように・・(笑)

それにしても、早く、終わらないか!この「狂気の夏}!!

自らの仕事に対して・・・      (萩尾)

2006-10-29 | 演劇
曇り、雨がぱらつくこともある―という天気予報だったが、気持ちよく晴れて、世田谷三軒茶屋へ。
山本耕史主演「tick,ticku...BOOM」観劇。
実力のある人々の歌を久しぶりに聴いた。
出演者は3人、3人とも本物の実力(ちから)がある。
ミュージカルであるのに、そして、結構、重要なキャストなのに、時々、歌がヘタ―という場面に出くわした事がある。何だか、損した気分になったものである。
なぜ、その人がその役に選ばれたのか、「???」と、首を傾げてみたり・・。
芸能界・・ばかりではなく、どの業界にも裏というものはあるから、それも、仕方ないか―と、思うが、素晴らしいミュージカルの中で、たった一人のために、「ぶち壊し」というのは、ホント、損した気分になる。
「tick,tick..」は得した気分になった。
3人で歌っても、それぞれがソロで歌っても、素晴らしかった。
山本耕史―大河「新選組」の土方歳三役を「心をこめて」演じて、この数年で、顔がすっかり変わった。もちろん、いい方に・・。いい顔になった、大人の顔―自らに責任を持つという自信の感じられる顔つきになった。いい目をするようになった=目に力がある。
そして、多才だ。多分、この人は、努力をするということが苦ではないのかもしれない。もちろん、ある意味、天才。が、「天才は99%の努力から生まれる」という言葉がある。その言葉を思い出すたびに、俳優山本耕史を思う。
その山本耕史は、TVドラマも、映画も、舞台も・・・どの役も「心をこめて」向き合っている。自らの仕事に対して、誠実なのだ―そうでなくてはいけないな・・と、「tick,ticku..」を「堪能」したあとに、自らを省みて、強く反省!