アボルダージュ!!

文芸及び歴史同好会「碧い馬同人会」主宰で歴史作家・エッセイストの萩尾農が日々の思いや出来事を語ります。

「経済」の本当の意味

2014-09-28 | その他
うかうかとしているうちに、もう9月が終わる。
うかうかと過ごしていたわけではない。真ん中は国内に居なかったし…。

残暑―と覚悟していた9月は、例年よりずっと早く秋がきて、10月になって、置いて行かれた「残暑」が一気に、顔を上げたら嫌だなぁ―と思う。
きちんと暦の通りに彼岸前後に曼珠沙華(彼岸花)は咲き、太陽光も長く部屋に射し込むようになった。
やっぱり、秋なのだ。

恥ずかしながら、今になって、「経済」という言葉の本当の意味を知ることになったのは、経済学者・宇沢弘文さんが逝去した事を知らせる記事がでたその数日後の新聞コラムだった。
「経済」―とは、「経世済民」。
世を治めて、民を救う―これが、経済の本来の意味だった。
…と、なると、経済は、本来の意味から、相当、もう、かなり、ず~っと、離れた言葉となって、歩いていることになる。
「経世済民」などという言葉は、為政者の頭にはない。
民人は、いつまで経っても救われない。
昔から、救われない。
救われるのは、いつの時代も、冨有の人々だ。
民人が「大事に」されるのは、選挙期間だけだ。
そうして、うかうかとしていたら、いつの間にか、この国は、相当、危ない所まで、歩いて来ているのだ。

奨学金で学んだ若者たち、しかし、返済ができない。
文部科学省の有識者会議で、その対策として、
「返せなければ、防衛省で就業体験を」
との発言が…。
愕然とする。
「経済的徴兵制」―。
「軍隊に行けば、飯が食える」―という理由から、志願した若者もいたという、その昔の話。しかし、その昔ではなく、「現代の話」にもなる可能性がしっかりと存在していて、恐ろしい。
「ノホホンと、スマホ画面に見入っている時ではないぞ、若者たち」
などと言いたくなる。

子どもの貧困は16%以上にのぼるという。
お腹いっぱい食べたことが無い―とい、飽食とでもいっていいような、この国で…。
政府の「子どもの貧困対策大網」は、識者いわく、「あまりの中身のなさにがく然とする」と。
どうやれば、救えるか―簡単なことなのだが、行政のがんじがらめの思考が、足を引っ張る。
例えば、仕事でどうしても車が必要な母親、離婚して3人の子を抱える。児童扶養手当を足した収入から、家賃や光熱費を差し引いたら、母子四人の食費は2~4万円弱。生活保護申請をしても、車があるから―云々で通らない。
安倍首相は、地球儀外交などと称して、どう考えても外交のメリットはないだろうと思われる国も含めて、あちこちを回って、経済援助を約束してくる。〇(ゼロ)が沢山つくような、金額を提示して、その国から、拍手を送られて(それは、そうだ、莫大な金額の援助だもの)、悦にいっているが、足元のこの国の「子どもの貧困」の対策にも、もっと、莫大なお金額を回してほしい。
消費税が5%から8%になって、増税に関係なく、品物も値上がりして、確かに、我々の生活は苦しくなった。そして、来年10月には、さらに、10%にするという。景気の動向をみてーというが、多分、やるだろう。
それでも、増税分が、本当の意味での、社会保障や、子どもの貧困や、奨学金で学ぶ若者たちに回るなら、本当に、そうして使うなら、
「10%になってもよい」
と、思うが、国民に説明したようには、使わないのが、これまでの政府(おかみ)のやり方だから、やっぱり、我々は、そのまま「泣き寝入り」??

経済の本当に意味について書かれていたコラムは以下

《国が子どもたちへの金融教育に力を入れ始めたころ、時の日銀総裁が講演で、こんなことを
話した。「自分の持っている大切なものを手放してお金に換えてもそのお金は価値をきちんと保全し、次に必要なものを手に入れる時に役立ってくれる」
先日、八十六歳で逝去した経済学者・宇沢弘文さんはその言葉に怒りを感じたそうだ。
「大切なものは決してお金に換えてはいけない。人生で一番大きな悲劇は、大切なものを国家権力に奪い取られたり、あるいは追い詰められてお金に換えなければならなくなった時です」
 宇沢さんは十七歳で終戦を迎えた。貧困と失業、経済混乱に苦しむ人々の姿を見て経済学の道を歩み始めた。もともとは医師志望。「経済学は社会を癒やす学問」と考えてのことだ。
数理経済学でノーベル経済学賞候補に挙げられるほどの成果を挙げた頭脳は、社会・経済の病理に苦しむ人に向けられた。その深い洞察力が認められ、ローマ法王の助言役を務めたこともある。
生活の糧の海を大企業の利益のため汚され、健康と命を「換金」させられた水俣の人々や、国策による開発で先祖伝来の地を「換金」させられた人々…そういう人たちの心が救われるまで「日本経済の貧困は解決できない」と言っていたそうだ。
経済とは、経世済民。世をおさめ、民をすくう。言葉の本来の意味の経済学者だった。》